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唖然としている私の顔を見て、ソフィアはほくそ笑んでいる。
いつもの悪事を働いている時の顔だ。
この状況を楽しんでるんだわ。
しかしその表情はルーファウス様に見えていない様子。
彼は隣で醜悪な笑みをしているソフィアに気づいていない。
「マリア。お前はいつも家の者たちに迷惑をかけているようだな」
「ええ? なんのお話ですか?」
「とぼけないで下さいませ、マリアお姉様! ルーファウス様は知っているのですよ。いつも私がお姉様から屋敷の方々を守っていることを!」
「あなた……何を言っているの? それは逆でしょう」
ふんと鼻を鳴らして笑うルーファウス様。
「俺はお前にすっかり騙されていたようだ。いつも善人みたいな顔をして胡散臭いと思っていたが……やはり裏の顔を隠していたんだな。いつもそうやって、自分の悪事をソフィアに擦り付けてきたようだが、それも今日までだ」
「な、擦り付けて……?」
ソフィアが声を殺して笑っている。
そうか……ルーファウス様に嘘を吹き込んだのか。
私は怒りを覚え、ルーファウス様に訴えかける。
「ルーファウス様、私を信じてください! ソフィアは嘘をついております!」
「黙れ。お前は口から嘘しか漏らさないのは把握している。これまでどれだけソフィアの心を傷つけてきたのか……自分自身が一番分かっているだろう!」
分かっていますとも。
ソフィアは嘘をついて今心の奥でケラケラと笑っていることは!
私は誤解を解くため、ルーファウス様に必死で訴えようと考えていたが……ここでふと冷静になる。
こんなバカな子の言うことを信じるって……ルーファウス様も案外バカなのかしら。
そう考えると、必死になるのもバカらしく思える。
「…………」
「ふん。ソフィアの言った通りじゃないか。もう言い返すこともできない。自分の非を認めるということだな?」
「はい。それで構いません」
「そうかそうか……なら、今ここでお前との婚約は破棄させてもらう」
「……それでよろしいのですね?」
呆れている私を見てルーファウス様は怒りを滲ませる。
「なんだその態度は……それが本性なのだな。いつも誰かを見下して、いつも周囲の人をバカにする。それが本当のお前だったんだな!」
「そうですわ、ルーファウス様。あれこそがお姉様の本性でございます」
「……結婚前にそれを知ることができて良かった」
「そうですか。では失礼してもよろしいですか」
嘆息して私は踵を返す。
背後ではまだルーファウス様が声を荒げている。
「俺はソフィアと一緒になる。お前みたいなクズと一緒にならなくて俺は幸せだ!」
「……あなたの幸せを祈っております。どうかソフィアとお幸せに」
その子を選ぶというのなら構いません。
結局あなたもその程度の人だったということでしょう。
でも、彼女が害悪でしかないことを知ったら……ルーファウス様はどう思うのだろうか?
私は苦笑いをしながら、その場を静かに立ち去った。
いつもの悪事を働いている時の顔だ。
この状況を楽しんでるんだわ。
しかしその表情はルーファウス様に見えていない様子。
彼は隣で醜悪な笑みをしているソフィアに気づいていない。
「マリア。お前はいつも家の者たちに迷惑をかけているようだな」
「ええ? なんのお話ですか?」
「とぼけないで下さいませ、マリアお姉様! ルーファウス様は知っているのですよ。いつも私がお姉様から屋敷の方々を守っていることを!」
「あなた……何を言っているの? それは逆でしょう」
ふんと鼻を鳴らして笑うルーファウス様。
「俺はお前にすっかり騙されていたようだ。いつも善人みたいな顔をして胡散臭いと思っていたが……やはり裏の顔を隠していたんだな。いつもそうやって、自分の悪事をソフィアに擦り付けてきたようだが、それも今日までだ」
「な、擦り付けて……?」
ソフィアが声を殺して笑っている。
そうか……ルーファウス様に嘘を吹き込んだのか。
私は怒りを覚え、ルーファウス様に訴えかける。
「ルーファウス様、私を信じてください! ソフィアは嘘をついております!」
「黙れ。お前は口から嘘しか漏らさないのは把握している。これまでどれだけソフィアの心を傷つけてきたのか……自分自身が一番分かっているだろう!」
分かっていますとも。
ソフィアは嘘をついて今心の奥でケラケラと笑っていることは!
私は誤解を解くため、ルーファウス様に必死で訴えようと考えていたが……ここでふと冷静になる。
こんなバカな子の言うことを信じるって……ルーファウス様も案外バカなのかしら。
そう考えると、必死になるのもバカらしく思える。
「…………」
「ふん。ソフィアの言った通りじゃないか。もう言い返すこともできない。自分の非を認めるということだな?」
「はい。それで構いません」
「そうかそうか……なら、今ここでお前との婚約は破棄させてもらう」
「……それでよろしいのですね?」
呆れている私を見てルーファウス様は怒りを滲ませる。
「なんだその態度は……それが本性なのだな。いつも誰かを見下して、いつも周囲の人をバカにする。それが本当のお前だったんだな!」
「そうですわ、ルーファウス様。あれこそがお姉様の本性でございます」
「……結婚前にそれを知ることができて良かった」
「そうですか。では失礼してもよろしいですか」
嘆息して私は踵を返す。
背後ではまだルーファウス様が声を荒げている。
「俺はソフィアと一緒になる。お前みたいなクズと一緒にならなくて俺は幸せだ!」
「……あなたの幸せを祈っております。どうかソフィアとお幸せに」
その子を選ぶというのなら構いません。
結局あなたもその程度の人だったということでしょう。
でも、彼女が害悪でしかないことを知ったら……ルーファウス様はどう思うのだろうか?
私は苦笑いをしながら、その場を静かに立ち去った。
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