4 / 13
4
しおりを挟む
唖然としている私の顔を見て、ソフィアはほくそ笑んでいる。
いつもの悪事を働いている時の顔だ。
この状況を楽しんでるんだわ。
しかしその表情はルーファウス様に見えていない様子。
彼は隣で醜悪な笑みをしているソフィアに気づいていない。
「マリア。お前はいつも家の者たちに迷惑をかけているようだな」
「ええ? なんのお話ですか?」
「とぼけないで下さいませ、マリアお姉様! ルーファウス様は知っているのですよ。いつも私がお姉様から屋敷の方々を守っていることを!」
「あなた……何を言っているの? それは逆でしょう」
ふんと鼻を鳴らして笑うルーファウス様。
「俺はお前にすっかり騙されていたようだ。いつも善人みたいな顔をして胡散臭いと思っていたが……やはり裏の顔を隠していたんだな。いつもそうやって、自分の悪事をソフィアに擦り付けてきたようだが、それも今日までだ」
「な、擦り付けて……?」
ソフィアが声を殺して笑っている。
そうか……ルーファウス様に嘘を吹き込んだのか。
私は怒りを覚え、ルーファウス様に訴えかける。
「ルーファウス様、私を信じてください! ソフィアは嘘をついております!」
「黙れ。お前は口から嘘しか漏らさないのは把握している。これまでどれだけソフィアの心を傷つけてきたのか……自分自身が一番分かっているだろう!」
分かっていますとも。
ソフィアは嘘をついて今心の奥でケラケラと笑っていることは!
私は誤解を解くため、ルーファウス様に必死で訴えようと考えていたが……ここでふと冷静になる。
こんなバカな子の言うことを信じるって……ルーファウス様も案外バカなのかしら。
そう考えると、必死になるのもバカらしく思える。
「…………」
「ふん。ソフィアの言った通りじゃないか。もう言い返すこともできない。自分の非を認めるということだな?」
「はい。それで構いません」
「そうかそうか……なら、今ここでお前との婚約は破棄させてもらう」
「……それでよろしいのですね?」
呆れている私を見てルーファウス様は怒りを滲ませる。
「なんだその態度は……それが本性なのだな。いつも誰かを見下して、いつも周囲の人をバカにする。それが本当のお前だったんだな!」
「そうですわ、ルーファウス様。あれこそがお姉様の本性でございます」
「……結婚前にそれを知ることができて良かった」
「そうですか。では失礼してもよろしいですか」
嘆息して私は踵を返す。
背後ではまだルーファウス様が声を荒げている。
「俺はソフィアと一緒になる。お前みたいなクズと一緒にならなくて俺は幸せだ!」
「……あなたの幸せを祈っております。どうかソフィアとお幸せに」
その子を選ぶというのなら構いません。
結局あなたもその程度の人だったということでしょう。
でも、彼女が害悪でしかないことを知ったら……ルーファウス様はどう思うのだろうか?
私は苦笑いをしながら、その場を静かに立ち去った。
いつもの悪事を働いている時の顔だ。
この状況を楽しんでるんだわ。
しかしその表情はルーファウス様に見えていない様子。
彼は隣で醜悪な笑みをしているソフィアに気づいていない。
「マリア。お前はいつも家の者たちに迷惑をかけているようだな」
「ええ? なんのお話ですか?」
「とぼけないで下さいませ、マリアお姉様! ルーファウス様は知っているのですよ。いつも私がお姉様から屋敷の方々を守っていることを!」
「あなた……何を言っているの? それは逆でしょう」
ふんと鼻を鳴らして笑うルーファウス様。
「俺はお前にすっかり騙されていたようだ。いつも善人みたいな顔をして胡散臭いと思っていたが……やはり裏の顔を隠していたんだな。いつもそうやって、自分の悪事をソフィアに擦り付けてきたようだが、それも今日までだ」
「な、擦り付けて……?」
ソフィアが声を殺して笑っている。
そうか……ルーファウス様に嘘を吹き込んだのか。
私は怒りを覚え、ルーファウス様に訴えかける。
「ルーファウス様、私を信じてください! ソフィアは嘘をついております!」
「黙れ。お前は口から嘘しか漏らさないのは把握している。これまでどれだけソフィアの心を傷つけてきたのか……自分自身が一番分かっているだろう!」
分かっていますとも。
ソフィアは嘘をついて今心の奥でケラケラと笑っていることは!
私は誤解を解くため、ルーファウス様に必死で訴えようと考えていたが……ここでふと冷静になる。
こんなバカな子の言うことを信じるって……ルーファウス様も案外バカなのかしら。
そう考えると、必死になるのもバカらしく思える。
「…………」
「ふん。ソフィアの言った通りじゃないか。もう言い返すこともできない。自分の非を認めるということだな?」
「はい。それで構いません」
「そうかそうか……なら、今ここでお前との婚約は破棄させてもらう」
「……それでよろしいのですね?」
呆れている私を見てルーファウス様は怒りを滲ませる。
「なんだその態度は……それが本性なのだな。いつも誰かを見下して、いつも周囲の人をバカにする。それが本当のお前だったんだな!」
「そうですわ、ルーファウス様。あれこそがお姉様の本性でございます」
「……結婚前にそれを知ることができて良かった」
「そうですか。では失礼してもよろしいですか」
嘆息して私は踵を返す。
背後ではまだルーファウス様が声を荒げている。
「俺はソフィアと一緒になる。お前みたいなクズと一緒にならなくて俺は幸せだ!」
「……あなたの幸せを祈っております。どうかソフィアとお幸せに」
その子を選ぶというのなら構いません。
結局あなたもその程度の人だったということでしょう。
でも、彼女が害悪でしかないことを知ったら……ルーファウス様はどう思うのだろうか?
私は苦笑いをしながら、その場を静かに立ち去った。
18
お気に入りに追加
1,487
あなたにおすすめの小説


王太子は婚約破棄騒動の末に追放される。しかしヒロインにとっては真実の愛も仕事に過ぎない
福留しゅん
恋愛
公爵令嬢エリザベスは学園卒業を祝う場にて王太子ヘンリーから婚約破棄を言い渡される。代わりに男爵令嬢パトリシアと婚約すると主張する王太子だが、その根拠にエリザベスは首をかしげるばかり。王太子は遅れてやってきた国王や王弟にもヘンリーは堂々と説明するが、国王と王弟からの反応は……。
ヘンリーは一つ勘違いしていた。エリザベスはヘンリーを愛している、と。実際は……。
そしてヘンリーは知らなかった。この断罪劇は初めからある人物に仕組まれたものだ、とは。
※別タイトルで小説家になろう様にも投稿してます。そちらに合わせて改題しました。

記憶喪失を理由に婚約破棄を言い渡されるけど、何も問題ありませんでした
天宮有
恋愛
記憶喪失となった私は、伯爵令嬢のルクルらしい。
私は何も思い出せず、前とは違う言動をとっているようだ。
それを理由に婚約者と聞いているエドガーから、婚約破棄を言い渡されてしまう。
エドガーが不快だったから婚約破棄できてよかったと思っていたら、ユアンと名乗る美少年がやってくる。
ユアンは私の友人のようで、エドガーと婚約を破棄したのなら支えたいと提案してくれた。

【完結】アナタが選んだんでしょう?
BBやっこ
恋愛
ディーノ・ファンは、裕福な商人の息子。長男でないから、父から預かった支店の店長をしている。
学生でいられるのも後少し。社交もほどほどに、のんびり過ごしていた。
そのうち、父の友人の娘を紹介され縁談が進む。
選んだのに、なぜこんなけっかになったのだろう?

婚約破棄された令嬢は、それでも幸せな未来を描く
瑞紀
恋愛
伯爵の愛人の連れ子であるアイリスは、名ばかりの伯爵令嬢の地位を与えられていたが、長年冷遇され続けていた。ある日の夜会で身に覚えのない婚約破棄を受けた彼女。婚約者が横に連れているのは義妹のヒーリーヌだった。
しかし、物語はここから急速に動き始める……?
ざまぁ有の婚約破棄もの。初挑戦ですが、お楽しみいただけると幸いです。
予定通り10/18に完結しました。
※HOTランキング9位、恋愛15位、小説16位、24hポイント10万↑、お気に入り1000↑、感想などなどありがとうございます。初めて見る数字に戸惑いつつ喜んでおります。
※続編?後日談?が完成しましたのでお知らせ致します。
婚約破棄された令嬢は、隣国の皇女になりました。(https://www.alphapolis.co.jp/novel/737101674/301558993)

王太子に婚約破棄言い渡された公爵令嬢は、その場で処刑されそうです。
克全
恋愛
8話1万0357文字で完結済みです。
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に投稿しています。
コーンウォリス公爵家に令嬢ルイ―ザは、王国の実権を握ろうとするロビンソン辺境伯家当主フランシスに操られる、王太子ルークのよって絶体絶命の危機に陥っていました。宰相を務める父上はもちろん、有能で忠誠心の豊かな有力貴族達が全員紛争国との調停に送られていました。万座の席で露骨な言い掛かりで付けられ、婚約を破棄されたばかりか人質にまでされそうになったルイ―ザ嬢は、命懸けで名誉を守る決意をしたのです。

[完結]君に好きだと伝えたい〜婚約破棄?そうですか、貴方に愛を返せない私のせいですね〜
日向はび
恋愛
表情は動かず、愛の言葉は囁けない。そんな呪いをかけられた伯爵令嬢の元に愛する人から婚約破棄の手紙がとどく。さらに彼は腹違いの妹と恋をしているという。絶望しながらも、全ては自分の責任と別れを決意した令嬢は愛するひとに別れを告げるために彼の家へ訪れる。そこで煌めくナイフの切っ先を目にした彼女は、愛する人を守るためその身をナイフの前に曝け出すのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる