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 天気のいい昼前。
 私は、両親と侍女たちと共に屋敷の前にいた。
 これからルーファウス様の下へ向かうためだ。

「では行って参りますわ」
「ああ、気をつけてな」
「……ところでソフィアは朝から顔を見ていませんが、あの子はどこにいったのですか?」

 両親が顔を合わせて首を傾げる。

「さぁ……何も言わずに朝早くに屋敷を出て行ってしまったよ」
「あの子は自由奔放だから……はぁ、困ったものだわ」
「自由ならいいが、自分勝手だからな……どうにかならんものか」

 ソフィアのことで頭を悩ませている両親。
 周囲の空気がどんより悪くなる程、暗いため息をついている。

「お、お父様、お母さま、これからルーファウス様のところに行くというのに、そんな暗い顔を止めてください」
「お、おお、そうであったな。すまんすまん。お前はルーファウス殿との時間を楽しんで来てくれ」

 両親は暗い表情を切り替え、明るい笑顔を私に向ける。
 
「それでは、夜には戻りますわ」

 私は馬車に乗り込み、屋敷の皆に小さく手を振る。

「行ってらっしゃいませ、お嬢様」

 深々と頭を下げる侍女たち。
 両親は満面の笑みで私を見送ってくれる。

 馬車での移動はそこそこ長い。
 私は穏やかな気持ちで流れる景色を眺める。
 ソフィアのことを気にしないでいいのは、本当に心が落ち着く。
 しかし次は何をやらかすのかと考えると、また気持ちが重くなってしまう……

 ダメよ。
 これからルーファウス様とお会いするというのに。
 こんな気持ちでいてはダメ。
 彼の前では明るくしていなければ。

 頭を振って、視線をまた外に移す。

 町に住む人たちの顔。
 自然に咲く花。
 緑豊かな森。

 それらの景色が通り過ぎ、ルーファウス様の屋敷に到着した。

「あ……マリア様」

 私が到着すると、警護をしている方がなんだか複雑な表情をしている。
 どうかしたのかしら?

「あの、どうかいたしましたか?」
「え、いや、その……」
「私、ルーファウス様に呼ばれて来たのですが」
「え? そ、そうでしたか……ではお入りください」
「?」

 何かあったのかしら。
 中で何か問題でも?
 
 私は中で起きていることを頭の中で考えながら、屋敷の中へと入って行く。
 するとその答えはすぐに把握することができた。
 玄関先に、彼女・・がいたのだ。

「ソフィア……?」
「待っていたぞ、マリア」

 ブラウンの髪をオールバックにし、鋭い目つきで私を睨む男性……
 彼はルーファウス様だ。

「……どういうことですか、これは?」
 
 そのルーファウス様はソフィアの肩を抱きながら、こちらを睨んでいる。
 問題は把握できたが、この状況は理解できない。
 一体どういうことなの?
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