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「ねえ、お茶が冷めてるのだけれど」
「申し訳ございません、お嬢様」
「申し訳ございません。じゃなくて冷めてるって言ってるの。謝罪する前に熱い物を用意しなさいよ」
カシャーンとカップの割れる音が食堂に響き渡る。
侍女たちが割れたカップを回収し、掃除をする中、それを酷い笑みで眺める女性が一人。
それはソフィア・アンフォール。
私と同じウェーブのかかった金色の髪と青い瞳。
性格が出ているのか、口元は少し曲がっているようにも見える。
傲慢で我儘で、どうしようもない妹だ。
「あらマリアお姉様。一緒にお茶でもいかが?」
「いいえ。私は一人でいただくわ」
「私と一緒じゃ嫌かしら?」
「ええ。人を大事にしない人なんかとは飲みたくないわ」
妹は私の言葉に舌打ちをする。
私はそんな妹を無視して侍女たちの掃除の手伝いを始めた。
「マ、マリアお嬢様、そんなことしなくとも……」
「いいのよ。私が好きでしていることなのだから」
「……ありがとうございます」
「あなたたちこそ、我儘な妹の相手をしてくれていつもありがとう」
私が笑みを向けると、侍女たちはうっすらと涙を目元に浮かべていた。
その様子を見ていたソフィアはまた舌打ちをし、食堂を出て行ってしまう。
侍女たちの緊張は解け、少し笑みをこぼす。
「おおマリア。何をしておるのだ?」
「お父様。ソフィアの後始末をしていますの」
「ソフィア……本当にどうしようもない娘だ」
お父様とお母さまがやって来て、この状況を聞いて深くため息をついている。
二人もソフィアの性格には悩まされているらしくどうしたものかといつも悩んでいるようだ。
「しかしソフィアと比べて、マリアは出来たいい子だわ」
「そんなことありませんわ、お母さま」
「いいえ。マリアお嬢様は素晴らしい人でございます! 私たちにも分け隔てなく接してくれて、皆マリア様をお慕いしております」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ」
侍女たちはそれが事実だと真剣な表情で私に伝えてくる。
その温かさが伝播し、私は胸を熱くさせていた。
「これだけいい子に育ったんだ。ルーファウス殿もさぞかし喜んでくれているだろう」
ルーファウス・エルレガーダ。
エルレガーダ侯爵家の跡取りで私の婚約者。
彼との婚約が決まった時、両親はとても喜び、あの時の表情を今でも忘れられない。
私はそんな両親、そして侍女に囲まれ温かい毎日を送っていた。
ソフィア以外には何も言うことは無い、順風満帆な日々であった。
「申し訳ございません、お嬢様」
「申し訳ございません。じゃなくて冷めてるって言ってるの。謝罪する前に熱い物を用意しなさいよ」
カシャーンとカップの割れる音が食堂に響き渡る。
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それはソフィア・アンフォール。
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傲慢で我儘で、どうしようもない妹だ。
「あらマリアお姉様。一緒にお茶でもいかが?」
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妹は私の言葉に舌打ちをする。
私はそんな妹を無視して侍女たちの掃除の手伝いを始めた。
「マ、マリアお嬢様、そんなことしなくとも……」
「いいのよ。私が好きでしていることなのだから」
「……ありがとうございます」
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私が笑みを向けると、侍女たちはうっすらと涙を目元に浮かべていた。
その様子を見ていたソフィアはまた舌打ちをし、食堂を出て行ってしまう。
侍女たちの緊張は解け、少し笑みをこぼす。
「おおマリア。何をしておるのだ?」
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「ソフィア……本当にどうしようもない娘だ」
お父様とお母さまがやって来て、この状況を聞いて深くため息をついている。
二人もソフィアの性格には悩まされているらしくどうしたものかといつも悩んでいるようだ。
「しかしソフィアと比べて、マリアは出来たいい子だわ」
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「いいえ。マリアお嬢様は素晴らしい人でございます! 私たちにも分け隔てなく接してくれて、皆マリア様をお慕いしております」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ」
侍女たちはそれが事実だと真剣な表情で私に伝えてくる。
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「これだけいい子に育ったんだ。ルーファウス殿もさぞかし喜んでくれているだろう」
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彼との婚約が決まった時、両親はとても喜び、あの時の表情を今でも忘れられない。
私はそんな両親、そして侍女に囲まれ温かい毎日を送っていた。
ソフィア以外には何も言うことは無い、順風満帆な日々であった。
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