「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも

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第二章

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「き、君たちは何者なんだ……? モンスターたちをあんな軽々と倒してしまって」
「そりゃ相手が弱えからだろうが」
「よ、弱くないだろ……ワーウルフなんて特に強敵のはずだぞ!」
「あれが強く感じるなら、それだけお前らが弱いってことだよ」
「ちょっとイド……イド基準で話しちゃダメだよ」

 イドは男の人たちに返事をしたのだけれど……とにかく口と態度が悪い。
 相手の人たちはイドの態度にムッとするがその強さに怯えている様子。
 これだけ実力差があれば喧嘩にはならないだろうけど、もう少し穏やかな方が私としては嬉しい。

 そう考えた私はイドをなだめるように、彼の手を握る。
 するとイドは少し恥ずかしいのか嬉しいのか、頬を染めてプイッと顔を逸らしてしまう。
 だけど私の手を振りほどこうとは一切しない。
 と言うか、その手には力がこもっていた。

「それより皆はなんでこんな所に?」
「あ、ああ……モンスターたちの数を減らさなきゃ、周囲に被害が及ぶからな……」
「なるほど……じゃあこれからそんな心配する必要無くなるかも」
「ど、どういうことだ……」
「また明日ここに来るから、その時に説明するね」
「え? ああ……」

 まだ準備は整っていない。
 明日にでも、目の前にある『黒い霧』を何とかしよう。
 
 皆が困っていることは明らかだ。
 早急に解決してあげないと。

「じ、じゃあな……」

 去って行く男の人たちに私は手を振り、見えなくなるまで見送った。
 その間イドが私の手を放すことは無く握り続けていたりする。

「じゃあ私たちも帰ろっか」
「おう」

 イドは龍の姿になり、私を背に乗せ空を舞う。

「イド、今日は好きな物作ってあげるね! レンも子供たちに料理を教えたりで忙しいみたいだし!」
「お、俺はお前が作ってくれた物ならなんでもいいんだからな!」
「そう? うーん……じゃあイドが好きそうな物作ってみるね」
「おお!」

 喜びと共に宙を舞う速度が増したような気がする。
 純粋に喜んでくれているなら嬉しいな。

 ◇◇◇◇◇◇◇

 家が夕方の赤に染まる頃、帰宅した私たち。
 クマたちはまだ帰っていないみたいだ。
 まだ子供たちの面倒を見ているのだろう。

 私はリビングでタブレットを操作しながら暇そうにするイドを見る。

「……テレビでも用意しようか?」
「テレビ? なんだそりゃ?」
「うーん……暇つぶしの道具。説明するより見た方が早いと思うよ」
「ふーん」

 イドは理解できない言葉に首を傾げるのみ。
 私はまるでドッキリでも仕掛けるような、ウキウキした気分でタブレットでテレビを購入する。

 玄関の方に向かうと、案の定商品は到着済み。
 本当にどうなってるのかな、これ。

 玄関においてあったのは細長い段ボール箱。
 中身は言わずもがなテレビ。

 イドに手伝ってもらい中から黒いテレビを取り出す。
 サイズは50インチで、これがあればまた映像を見ることができるのかとニヤニヤ笑みがこぼれてしまう。
 引きこもりの時は毎日ずっと何か見てたからなぁ。

「これ、あっちでいいのか?」
「うん。お願いするね」

 イドと共にテレビを運ぶ。
 もっと重たい物だと思っていたけど、凄く軽く感じる。
 これはこのテレビそのものが軽いのか、はたまた私の力が上がったからなのか。
 とにかくほとんど重さを感じないままリビングに運ぶことができた。

 そこでテレビ台が無いことに気づくのだが……それはまた明日にでもしよう。
 これから晩御飯の用意をしないといけないし、これはイドの暇つぶしでしかないから、一時的にだが直接床に置いておこう。

 テレビを操作するも、地上波は映らないようだった。
 だがネット環境は繋がっているらしく、ありがたいことに動画は見れるようだ。

 テレビに映る操作画面を、イドが興味津々で見ている。
 私はクスリと笑いながら操作を続けた。

 アクション物の映画ならイドでも楽しめるかな……
 私がアクション映画を選択すると、テレビには動画が流れ出した。

「な、なんだ!? 中で人が動いてるぞ!」
「これは映像って言ってね、中に人はいないんだよ。記録した物を流してるだけなんだ」
「い、意味がわかんねえ……どうなってんだよ、ったく」

 イドは驚きつつ、テレビの中に移る主人公の警官に人見知りをしているようだった。
 警戒ばかりしていたが、話が始まるとそれにも興味を持ったらしくテレビにくぎ付けとなっていた。

 私はイドの横顔を見ながら、晩御飯の献立を考え始める。

「……よし。今日はあれにするか」

 私は牛肉と玉葱、そしてサラダに使う野菜を購入し、また玄関の方へと回収に行く。
 
 肉は脂ののったいい物で、玉葱も包丁を入れると瑞々しく甘そうであった。
 これなら美味しい物ができそうだな。
 私はこれから作る物……イドが喜んで食べてくれるのを想像してニヤニヤと笑っていた。
 喜んでくれたらいいんだけどな……

 私はテレビを必死に見ているイドの顔を眺め、そして調理を開始するのであった。
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