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ミルコ様が侍女を殺した日、彼は気分が良いと言い、遅れた私を許してくれた。
何事もなく無事に家に戻る私。
しかし家で一人、私は恐怖に震えていた。
あの人は人を殺して笑っていた……
まるで虫を殺して愉しむ少年のような……
人を人と思っていない節がある。
自分以外の人は人以下だと、そう思っているのだ。
それに一番の問題は、彼を罰することができる人間がいないこと。
このままミルコ様の振る舞いは増長していくのではないか。
私はそんなミルコ様と一緒にならなければいけないという将来に、隠しきれない不安を抱いていた。
だがそれから一週間後。
信じられないことが起きる。
またミルコ様に呼び出され、私は彼の城へと向かった。
今日の城の様子は以前ほどではないが少し暗いように思える。
きっとミルコ様の言動に手を焼いているのだろう。
城に仕えている人たち全員が俯いていた。
私は促されるままに食堂へと通される。
するとそこにはミルコ様がおり……彼のすぐそばで食事をする女性がいた。
ウェーブのかかった茶色の髪。
絹のように滑らかな肌。
瞳は大きく唇はふっくらとしており、絶世の美女と言う言葉がよく似合うとても美しい人であった。
「よく来たな、ローザ」
「はい……あの、その方は?」
「こいつはメディア。俺の新しい婚約者だ」
「婚約……者」
その言葉を私は一瞬理解できなかった。
だが数秒の後、ようやく事態を飲み込むことができた。
そうか……ミルコ様は私を捨ててこの人と結婚するのか。
正直、嬉しい。
ミルコ様と一緒にならなくていいだなんて……喜びでしかない。
「ふん。お前は顔だけが取り柄だったからな……だがお前以上の美人が現れた。俺にはより良い女が似あうと思わないか」
「……はい」
私は落ち込んだフリをして、彼の言葉に頷く。
内心は喜びに満ちていた。
だがそれと同時に、彼女の心配もする。
この人と一緒になって大丈夫なのだろうかと。
まだ何も知らないのか、彼女は微笑を浮かべたままこちらをずっと見つめている。
ミルコ様の噂は知らないわけないと思うのだけれど……まぁ本人がいいのならそれでいいけれど。
「事情は分かったな。お前との婚約は解消する。分かったらさっさと帰れ」
「はい……失礼いたします」
私が踵を返すと、ミルコ様は後ろでゲラゲラと笑い出す。
メディアと呼ばれたあの女性も彼に合わせて少し笑っているようだ。
だが一番笑いたいのは私。
彼から解放されるという安心感を胸に、私は笑顔で城を後にした。
何事もなく無事に家に戻る私。
しかし家で一人、私は恐怖に震えていた。
あの人は人を殺して笑っていた……
まるで虫を殺して愉しむ少年のような……
人を人と思っていない節がある。
自分以外の人は人以下だと、そう思っているのだ。
それに一番の問題は、彼を罰することができる人間がいないこと。
このままミルコ様の振る舞いは増長していくのではないか。
私はそんなミルコ様と一緒にならなければいけないという将来に、隠しきれない不安を抱いていた。
だがそれから一週間後。
信じられないことが起きる。
またミルコ様に呼び出され、私は彼の城へと向かった。
今日の城の様子は以前ほどではないが少し暗いように思える。
きっとミルコ様の言動に手を焼いているのだろう。
城に仕えている人たち全員が俯いていた。
私は促されるままに食堂へと通される。
するとそこにはミルコ様がおり……彼のすぐそばで食事をする女性がいた。
ウェーブのかかった茶色の髪。
絹のように滑らかな肌。
瞳は大きく唇はふっくらとしており、絶世の美女と言う言葉がよく似合うとても美しい人であった。
「よく来たな、ローザ」
「はい……あの、その方は?」
「こいつはメディア。俺の新しい婚約者だ」
「婚約……者」
その言葉を私は一瞬理解できなかった。
だが数秒の後、ようやく事態を飲み込むことができた。
そうか……ミルコ様は私を捨ててこの人と結婚するのか。
正直、嬉しい。
ミルコ様と一緒にならなくていいだなんて……喜びでしかない。
「ふん。お前は顔だけが取り柄だったからな……だがお前以上の美人が現れた。俺にはより良い女が似あうと思わないか」
「……はい」
私は落ち込んだフリをして、彼の言葉に頷く。
内心は喜びに満ちていた。
だがそれと同時に、彼女の心配もする。
この人と一緒になって大丈夫なのだろうかと。
まだ何も知らないのか、彼女は微笑を浮かべたままこちらをずっと見つめている。
ミルコ様の噂は知らないわけないと思うのだけれど……まぁ本人がいいのならそれでいいけれど。
「事情は分かったな。お前との婚約は解消する。分かったらさっさと帰れ」
「はい……失礼いたします」
私が踵を返すと、ミルコ様は後ろでゲラゲラと笑い出す。
メディアと呼ばれたあの女性も彼に合わせて少し笑っているようだ。
だが一番笑いたいのは私。
彼から解放されるという安心感を胸に、私は笑顔で城を後にした。
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