没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも

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「私を助けたら、ティファ様にも危険が及ぶのではないですか?」
「そうだとしても、目の前で傷ついている人を無視するわけにはいきません」

 私はキラ様に笑顔を向け、どうということないという印象を与える。
 もちろん、それは強がりではあるけれど。
 
 これからどうなるのか見当もつかないけど、それでも後悔はしない。
 私はきっと将来胸を張ることできる。
 あの日、あの時、あの人を助けることができたと。
 後悔し続けるよりはよっぽどマシだ。
 自分は自分の心に従って選択した。
 それでいいと私は満足できている。

「……優しい方なんですね」
「優しくなんてありませんわ。ただ、公正に生きているだけです」
「なるほど……正しい人なのですね」

 キラ様は穏やかに笑い、そして物珍しそうに私を見る。

「こんな方もいるのですね……この国には」
「悪い人ばかりではないですよ。きっと。私はそう信じたいです」

 キラ様は悪い人ではない。
 その瞳を見ればわかる。
 人を見下したりなどとは無縁の方。
 瞳から優しさが滲み出ている。
 人より身分が高かったとしても、この人は優しいままだ。

「この学園では、私たちは嫌われ者のようですね。良ければ、嫌われ者同士で仲良くしていただけませんか? ティファ様」
「ええ。喜んで。私も友人が欲しいと思っていたところです」

 私たちは顔を合わせて笑いあう。
 これは傷をなめ合うような仲……ということだろうか? 
 いえ、違う。
 そうではない。
 同じ人の痛みを知る者同士だと私は思う。
 そう信じたい。
 自分はルイーナ様とは違う。
 むやみに人を傷つけたりはしないもの。

 キラ様と仲良くなったその日からも、嫌がらせは続いた。
 私がキラ様を助けたことは、大して影響はしていないようだ。
 元々酷い扱いを受けているから、これ以下がないという可能性もあるけれど……
 でもとりあえずは別段変化は無かった。

 私への対応の変化は無かったが――ある日、大きく変化が起きた。
 それには理由が二つある。
 一つは公爵家嫡男、ハルベルト・ヴィルトン様が転入してきたこと。

 そしてもう一つは公爵令嬢である、マリナ・ビルデイン様がこの学園に転入してきたことによってだ。

 ハルベルト様の登場は、男子たちの勢力図が変化をもたらす。
 しかしそれ以上に、マリナ様の存在が大きかった。
 自分よりも身分の高い方が学園に現れたことにより、彼女を頂点とした新しいルールが出来上がっていたのだ。

 マリナ様は人をいたぶるような人間が嫌いなようで、彼女の目が届く範囲では分かりやすい粗暴行為は無くなった。
 これによりルイーナ様が苦虫を潰したような顔をしていたが……
 だが彼女は、陰ではまだ似たようなことをしようとしていた。
 もちろん標的は私だった。
 
 彼女は虎視眈々と、私にちょっかいを出す機会を窺い続けていたのだ。
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