どうも、未来の時間軸からやってまいりました。なので愛人だらけのあなたとは婚約破棄をいたします。

亜綺羅もも

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「…………」
「…………」

 ジュリアン様が何を言うのか黙って待っていたが――
 彼は突然涙を流し、そして私の足にしがみ付いてきた。

「違うんだぁ……魔が差しただけなんだよ。俺が本当に大事なのはモニカだけなんだ。だってそうだろ? 俺が妻として選んだのは君だ! 君以外に大事な物なんて他にないんだよ。だから許してくれ! もう浮気はしないから……浮気相手とは別れるから!」

 必死な形相でそう訴えかけてくるジュリアン様。
 私はここで、彼を信じることにした。
 大の大人がこんなに情けなく、恥を捨てて泣きついてきているのだもの。
 
 別れてもいいのだけれど、ハッキリ言って、私には帰る家がない。
 もう両親は他界してしまい、ここ以外に頼れる場所がないのだ。

 ジュリアン様に対して怒りは収まらない。
 いまだ腹立たしい気持ちがあるし、殴りつけたい衝動にも駆られている。
 だけど我慢しなくては。
 そうしなければ、私自身これからどうすればいいのかも分からない。

 私はジュリアン様の頭を撫で、彼を許すことにした。

「今回だけですよ? 次はないとお考えください」
「ありがとう……ありがとう、俺のモニカ。もう絶対に裏切らないから信じていてくれ」
「……はい」

 それから一月の間、彼が外泊をすることは無かった。
 だがほとぼりが冷めたと考えたのか、また外で泊る日が増えていく。
 また一週間に一度の帰宅。
 これはまた浮気をしているのでは……?
 そう考えた私は、シフォンにまた話をすることにした。

「ジュリアン様はまた浮気をしているのかしら?」
「はい。そうだろうと思って、すでに確認しておきましたよ」

 淡々と感情の籠っていない声で私にそう言うシフォン。
 やはりそうなのか、と私は大きくため息をつく。

「あの人は……どうしようもないのね」
「もう別れるのが一番じゃないですか? あの方はどうしようもない人だと思いますよ」
「そう……よね。でも、私には帰る場所が無いから」
「…………」

 苛立ちと悲しみを抱き、泣き出しそうになる。
 しかし私は無理に笑って、話を続けた。

「きっとジュリアン様はそのことを理解しているのよね。私が他にいけないから、だから浮気を平気で続けているのよ」
「それを選ぶのも奥様ですけど……飛び出せば、人生なんとでもなるのではないですか?」
「飛び出す……か。でも、私には無理な話ね」

 ヴィクトール様のお顔がふと頭に浮かぶ。
 もし……もし、あの時彼と共にこの屋敷を飛び出していたとしたら、もっと違う人生を歩めていたのだろうか。
 こんな平気で浮気をするような人ではなく、彼と同じ人生を歩んでいたらどうなっていたのだろうか……

 私はそんな妄想じみた、ありえないことばかり考えていた。
 こんなこと考えたところで、過去が変わるわけではないのに。
 
 虚しくなった私は、シフォンの目の前で大きく嘆息をした。
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