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 ジュリアン様と結婚してから三年……
 彼が家に帰って来ることは稀だ。
 外泊する日が多く、週に一度帰って来るだけ。

「ただいま、モニカ」
「……おかえりなさいませ」

 帰って来ると、いつも明るい笑顔を私に向ける。
 しかし私は、その明るさとは逆に暗い表情を浮かべるだけ。

「どうしたんだ、モニカ。お前らしくないじゃないか。いつもみたいに明るい顔を見せてくれよ。折角帰って来たと言うのに」
「浮気相手の家から帰って来ておいて、それを笑って出迎えろと?」
「……モニカ、何を言っているんだ?」

 少し顔色が変わるジュリアン様。
 彼は浮気をしている。
 それは間違いのないことだ。

 私に仕えてくれているシフォンという男がいる。
 茶色い髪に青い瞳の美男子。
 私がここに来て一年ほど経ったぐらいの時から、この屋敷にやって来た男子だ。
 歳はまだ十五。
 まだ若いのに、フォンシーヌ家に奉公しに来たみたいだ。
 彼は私の言うことを何でも聞いてくれた。
 基本的に無茶な頼み事をしたことないが、とにかく私が望めばどんな願いでも聞いてくれる、完璧な男の子だ。

 家に帰ってこないジュリアン様のことをある時から怪しいと考えていた私は、このことをシフォンに相談した。
 こんな子供に何を相談しているのだと、今思えば愚かなことをしたと思うが……その時は気が気ではなかったのだ。
 毎日旦那様の帰りを待ち続けているのに、一向にジュリアン様は帰って来ない。
 寂しさと不安、それに怒りなどの色んな感情が入り乱れ、当時の私の頭の中はグチャグチャになっていた。
 気を許せる友人というのもいなかったし、相談できる相手がシフォンぐらいしかいなかったのだ。

 相談を受けてくれたシフォンは、なんとジュリアン様の身辺調査を申し出てくれた。
 この子はなんでもできるのだなと感心していたが……まさか彼がジュリアン様が浮気している全てのことを調べ上げるとは思ってもみなかった。
 
 シフォンが調べた情報によると、浮気相手は六人。
 毎日違う女の所で寝泊まりしており、週に一回、私の元に帰って来るというわけだ。
 ふざけた生活ルーティーンをお持ちのジュリアン様。
 この話を聞いた時、私は嘘だと思っていた。
 だがシフォンに連れられ、一度浮気現場を目撃したこともある。
 彼が言っていることは本当なのだ。

 証拠などはない。
 だが、この目でその浮気をハッキリと見た。
 それ以外に証拠など必要ないだろう。

「私、知っていますの。私以外に六人も浮気相手がいるのでしょう?」
「…………」
「……それも全員、結婚前からのお付き合いらしいではありませんか。本当に、ふざけたお方ですわね」

 ジュリアン様は私の怒りの声を聞き、表情を真っ青にしていた。
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