妹に醜くなったと婚約者を押し付けられたのに、今さら返せと言われても

亜綺羅もも

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 クリスをヴァンの元に送り出したエル。
 彼女は男の値踏みをしながら、パーティーに参加していた。

 どれもこれも大した男じゃないわ。

 エルの容姿は大変優れており、彼女に見呆ける男たちは多数。
 近寄ってくる男たちに笑みを向けるも、内心はため息ばかりついていた。

「エ、エルリーン様」
「あら、ルード様。こちらにいらしたのですね」

 ルード。
 爵位は侯爵。
 気が弱いが端正な顔立ちをしている青年。
 
 他にまともな男がいないため、ルードのことをキープぐらいに考えているエル。
 だがルードは、自分だけには好意的に見える態度を取るエルに本気で惚れていた。

「よ、よろしければダンスを踊りませんか」
「ええ。喜んで」

 ルードに誘われるがまま、ダンスを踊るエル。

 ヴァン様と肩を並べる男など他にはいない。
 理想が高すぎてもダメだ。
 どこかで妥協しなければ行き遅れてしまう。
 最悪この男にしておくか……

 天使のような外見の裏で、悪魔のようにほくそ笑むエル。

 ルードの外見も家柄もいいし、基本的に善人だしで悪いところはないはずだ。
 しかし理想の高いエルにとっては、彼でもまだ物足りない。

 ヴァンとまではいかなくても、もう少し自分の理想により近い人がいれば……
 ルードとダンスを踊りながら、目の端で男を探すエル。

 そんなエルに心酔しているルード。

 彼女がほしい。
 なんとしてでも彼女と一緒なりたい。
 どうすれば彼女は僕の物になってくれるだろうか……

「……エル様は、ヴァンニール様といつ婚約なされたのですか?」
「ああ。その話は無くなりました」
「……え?」
「私、ヴァン様とは結婚いたしませんの」

 ルードはいまだかつて感じたことのない喜びを胸に抱く。
 まさか……エル様がヴァンニール様と結婚しないなんて。
 そんな奇跡みたいな話があるのだろうか。
 これは夢じゃないのか。

 だが自分の腕の中で踊るエルのぬくもりは本物。
 これは夢ではない。
 現実なのだ。
 エルはヴァンニールと結婚しない。
 なら、なんとしてでもこの人と僕が。
 そう考えるルード。

 エルはルードの気持ちには気づいている。
 彼でも悪くはないが、もう少しだけ選別したい。
 最悪ルードでもいいが、もしかしたら彼より優れた男性が現れるかもしれない。
 決断するにはまだ早い。
 後少し……後少しとエルは考えていた。
 
 そしてそんなエルの元に、一人の男性が現れることとなる。
 彼は黒い短髪に青い瞳の持ち主。
 ルードと踊っているパーティー会場に突如としてやってきたのであった。

「…………」

 エルはその男性の姿を見て、何か感じるものがあったのだろうか、ニヤリと心の中で笑みをこぼしていた。
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