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私はシェイクの言葉に唖然としていた。
この人、何を言っているのだろうか?
「シルビア……僕は聖女の話を信じていなかった。だけど今分かったんだ! あの伝説は本当だったんだと」
「はぁ……」
シェイクは馬から降り、ジト目で見ている私に膝まづく。
「神がそれを僕に教えてくれた……そうとしか考えられない。ソルディッチに壊滅的な被害をもたらし、ヒメラルダの色香に騙されていた僕の目を覚まさせたんだ。君もそう思わないか?」
「いや、思いません」
「え……? あ、いや、まずは君に謝るべきだった。君のことを信じなくて本当に悪かった。許してくれ。だから僕と一緒にソルディッチに戻って――」
「すまないが、俺の大事なシルビアを誘惑しないでもらえないか?」
「……誰だお前は?」
私の前に立ち、アレン様はシェイクを見下ろす。
シェイクはそんなアレン様に怪訝そうな視線を向けている。
「この方、私の旦那様でございます。なのであなたとソルディッチに戻るなどという選択肢はございません」
「……な、何を言っているんだ?」
「話を理解できていないのか? 彼女は俺の妻であり、生涯をここで共に暮らしていくんだ。もう君とは無関係な人間なんだよ」
「お、お前……裏切ったのか! 僕を、ソルディッチを!」
私はシェイクの言葉に呆れ返り、立ち眩みを起こす。
この方はバカなのかと思っていたが、どうやら本物のバカのようだ。
先に裏切ったのはそちらの方だというのに。
「とにかく、もうあなたとは無関係ですので、お引き取りくださいませ」
「…………」
私とアレン様は踵を返し、城の方へと戻ろうとした。
するとシェイクが背後で涙を流しながら叫び出す。
「シルビア! 僕とやり直してくれ! 頼む……君がいないとソルディッチが――」
「お前は自分のことしか考えていないのだな。お前が大事なのは自分とその身分。それを維持するためにシルビアを呼び戻しにきたのだろう」
「な、なんだと……だがそれならお前も同じだろ! 彼女の加護を信じているから――」
「俺が信じているのは加護の力などではない。彼女自身を信じている」
アレン様は一度私に微笑みかけ、そしてシェイクを睨み付ける。
「彼女のためならば、俺はこの身分を喜んで捨てよう。神の加護だっていらない。。国も他の者に任せ手放しても構わないと考えている。俺はシルビアを愛している。だからこそ、シルビアは俺を選んでくれたんだ」
私はアレン様の言葉に胸を高鳴らせていた。
こんなにも私のことを想ってくれていただなんて……
だからこそなのかもしれない。
彼と共にいる時間が、とても穏やかなのは。
私は何も言わず、彼の手を握る。
するとアレン様も私の手を握り返してきた。
「もうお分かりでしょう? 私とアレン様の絆は永遠。あなたが入り込む余地など最初からないのです」
「嘘だ……嘘だ! シルビア! 俺を選んでくれ、シルビア!!」
シェイクが私たちの後ろで泣き叫んでいるが、私は気にすることなくアレン様と城へと戻って行く。
そこで永遠に嘆いていればいいわ。
この人、何を言っているのだろうか?
「シルビア……僕は聖女の話を信じていなかった。だけど今分かったんだ! あの伝説は本当だったんだと」
「はぁ……」
シェイクは馬から降り、ジト目で見ている私に膝まづく。
「神がそれを僕に教えてくれた……そうとしか考えられない。ソルディッチに壊滅的な被害をもたらし、ヒメラルダの色香に騙されていた僕の目を覚まさせたんだ。君もそう思わないか?」
「いや、思いません」
「え……? あ、いや、まずは君に謝るべきだった。君のことを信じなくて本当に悪かった。許してくれ。だから僕と一緒にソルディッチに戻って――」
「すまないが、俺の大事なシルビアを誘惑しないでもらえないか?」
「……誰だお前は?」
私の前に立ち、アレン様はシェイクを見下ろす。
シェイクはそんなアレン様に怪訝そうな視線を向けている。
「この方、私の旦那様でございます。なのであなたとソルディッチに戻るなどという選択肢はございません」
「……な、何を言っているんだ?」
「話を理解できていないのか? 彼女は俺の妻であり、生涯をここで共に暮らしていくんだ。もう君とは無関係な人間なんだよ」
「お、お前……裏切ったのか! 僕を、ソルディッチを!」
私はシェイクの言葉に呆れ返り、立ち眩みを起こす。
この方はバカなのかと思っていたが、どうやら本物のバカのようだ。
先に裏切ったのはそちらの方だというのに。
「とにかく、もうあなたとは無関係ですので、お引き取りくださいませ」
「…………」
私とアレン様は踵を返し、城の方へと戻ろうとした。
するとシェイクが背後で涙を流しながら叫び出す。
「シルビア! 僕とやり直してくれ! 頼む……君がいないとソルディッチが――」
「お前は自分のことしか考えていないのだな。お前が大事なのは自分とその身分。それを維持するためにシルビアを呼び戻しにきたのだろう」
「な、なんだと……だがそれならお前も同じだろ! 彼女の加護を信じているから――」
「俺が信じているのは加護の力などではない。彼女自身を信じている」
アレン様は一度私に微笑みかけ、そしてシェイクを睨み付ける。
「彼女のためならば、俺はこの身分を喜んで捨てよう。神の加護だっていらない。。国も他の者に任せ手放しても構わないと考えている。俺はシルビアを愛している。だからこそ、シルビアは俺を選んでくれたんだ」
私はアレン様の言葉に胸を高鳴らせていた。
こんなにも私のことを想ってくれていただなんて……
だからこそなのかもしれない。
彼と共にいる時間が、とても穏やかなのは。
私は何も言わず、彼の手を握る。
するとアレン様も私の手を握り返してきた。
「もうお分かりでしょう? 私とアレン様の絆は永遠。あなたが入り込む余地など最初からないのです」
「嘘だ……嘘だ! シルビア! 俺を選んでくれ、シルビア!!」
シェイクが私たちの後ろで泣き叫んでいるが、私は気にすることなくアレン様と城へと戻って行く。
そこで永遠に嘆いていればいいわ。
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