11 / 15
11
しおりを挟む
まず、雨が降った。
全ては少量の雨から始まる。
「雨、やまないな……もう三日も続いているぞ」
ソルディッチの住人たちは、軒先から空の様子を眺めていた。
心配などはしていない。
いずれ雨は止むであろう。
そう信じていた。
だが雨は止むことなく、その勢いは増すばかり。
強くなった雨は嵐に変化し、ソルディッチの畑や家屋を破壊する。
大勢の人が亡くなるが、しかし死体の回収もできないまま、家屋共々どこかへと流されていく。
「陛下……雨がやみません! もう一週間も降り続けています!」
「雨もいずれは止むであろう。それまで絶え凌ぐのだ」
兵士たちの不安な声を聞くも、ソルディッチ王は平然としていた。
こんなことぐらい、長い人生の中で一度ぐらいはあるだろう。
だが彼のその人生は終わりを迎えようとしていた。
雨も止まない中、今度は原因不明の病が流行り出す。
次々に倒れていく人々。
その中に、ソルディッチ王も含まれていた。
シェイクは愕然とした様子で、病床につく父親を見下ろしている。
まさか……このまま死ぬのではないだろうか……
彼は目の前で酷く苦しむ父親の顔を見ながら固まっている。
彼の予感は的中し、病に倒れてから一週間でソルディッチ王はこの世を去った。
だがそれでも、国で流行る病はと留まることを知らない。
依然として流行し、広がりを見せる病。
その頃になると、とうとう雨は止むも、今度は飢饉が国を襲う。
食べる物がなく、飢えに苦しむ人々。
シェイクは辛うじて食べる物があったが、絶対的に食料が足りていなかった。
少量の食料の取り合いが始まり、ソルディッチでは殺し合いが始まる。
親が子供を殺し、子が親を殺す。
世話になった人も殺し、他殺がこの国では常識と化していく。
人口は一気に減り続けていくが、それでも食糧難は依然として続いていた。
国としてまともに機能しなくなったソルディッチ。
次の標的はシェイクだという噂が、彼の耳に届く。
「な、なぜ僕を狙うのだ?」
「食料を保管しているからでしょう……誰もが飢えを満たすために必死になっているのです」
飢えを満たすために、王族を殺すというのか?
シェイクはこれまで羨まれてきたはずなのにと、驚きを隠せないでいた。
そしてとうとう、住民たちが城の門へとやって来る。
大木を大勢で担ぎ、門を破壊しようとしていた。
なぜだ……なぜこんなことになってしまったのだ……
ついこの間までは全てが上手くいっていたはずなのに。
シェイクは恐怖と戸惑いに、その場から動けなくなっていた。
全ては少量の雨から始まる。
「雨、やまないな……もう三日も続いているぞ」
ソルディッチの住人たちは、軒先から空の様子を眺めていた。
心配などはしていない。
いずれ雨は止むであろう。
そう信じていた。
だが雨は止むことなく、その勢いは増すばかり。
強くなった雨は嵐に変化し、ソルディッチの畑や家屋を破壊する。
大勢の人が亡くなるが、しかし死体の回収もできないまま、家屋共々どこかへと流されていく。
「陛下……雨がやみません! もう一週間も降り続けています!」
「雨もいずれは止むであろう。それまで絶え凌ぐのだ」
兵士たちの不安な声を聞くも、ソルディッチ王は平然としていた。
こんなことぐらい、長い人生の中で一度ぐらいはあるだろう。
だが彼のその人生は終わりを迎えようとしていた。
雨も止まない中、今度は原因不明の病が流行り出す。
次々に倒れていく人々。
その中に、ソルディッチ王も含まれていた。
シェイクは愕然とした様子で、病床につく父親を見下ろしている。
まさか……このまま死ぬのではないだろうか……
彼は目の前で酷く苦しむ父親の顔を見ながら固まっている。
彼の予感は的中し、病に倒れてから一週間でソルディッチ王はこの世を去った。
だがそれでも、国で流行る病はと留まることを知らない。
依然として流行し、広がりを見せる病。
その頃になると、とうとう雨は止むも、今度は飢饉が国を襲う。
食べる物がなく、飢えに苦しむ人々。
シェイクは辛うじて食べる物があったが、絶対的に食料が足りていなかった。
少量の食料の取り合いが始まり、ソルディッチでは殺し合いが始まる。
親が子供を殺し、子が親を殺す。
世話になった人も殺し、他殺がこの国では常識と化していく。
人口は一気に減り続けていくが、それでも食糧難は依然として続いていた。
国としてまともに機能しなくなったソルディッチ。
次の標的はシェイクだという噂が、彼の耳に届く。
「な、なぜ僕を狙うのだ?」
「食料を保管しているからでしょう……誰もが飢えを満たすために必死になっているのです」
飢えを満たすために、王族を殺すというのか?
シェイクはこれまで羨まれてきたはずなのにと、驚きを隠せないでいた。
そしてとうとう、住民たちが城の門へとやって来る。
大木を大勢で担ぎ、門を破壊しようとしていた。
なぜだ……なぜこんなことになってしまったのだ……
ついこの間までは全てが上手くいっていたはずなのに。
シェイクは恐怖と戸惑いに、その場から動けなくなっていた。
35
お気に入りに追加
669
あなたにおすすめの小説

神に愛されし聖女は、婚約破棄された妹の為に国を滅ぼす
宇田川リュウ
恋愛
神に愛されし聖女、マリアには、幼い頃に生き別れた妹、ユリアがいた。
妹には貴族の令嬢として何不自由なく暮らし、愛のある結婚をして、幸せな人生を歩んでほしいと願っていたマリアの祈りは、あっけなく打ち砕かれる。
カミーユ殿下とユリアの婚約に対し、聖女であるマリアの祝福を授けるはずだった場でーー妹が婚約破棄され、殺されかけるという、最悪な形で。
「あなた達に捧げる祝福はありません」
いっそ滅べ、と。聖女の逆鱗に触れた者達の末路とは……。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。
木山楽斗
恋愛
聖女であるクレメリアは、謙虚な性格をしていた。
彼女は、自らの成果を誇示することもなく、淡々と仕事をこなしていたのだ。
そんな彼女を新たに国王となったアズガルトは軽んじていた。
彼女の能力は大したことはなく、何も成し遂げられない。そう判断して、彼はクレメリアをクビにした。
しかし、彼はすぐに実感することになる。クレメリアがどれ程重要だったのかを。彼女がいたからこそ、王国は成り立っていたのだ。
だが、気付いた時には既に遅かった。クレメリアは既に隣国に移っており、アズガルトからの要請など届かなかったのだ。
婚約破棄からの国外追放、それで戻って来て欲しいって馬鹿なんですか? それとも馬鹿なんですか?
☆ミ
恋愛
王子との婚約を破棄されて公爵の娘としてショックでした、そのうえ国外追放までされて正直終わったなって
でもその後に王子が戻って来て欲しいって使者を送って来たんです
戻ると思っているとか馬鹿なの? それとも馬鹿なの? ワタクシ絶対にもう王都には戻りません!
あ、でもお父さまはなんて仰るかしら
こんな不甲斐ない娘との縁を切ってしまうかもしれませんね
でも、その時は素直に従いましょう


聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる