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アレン様と出逢い、彼に惹かれるのに時間はそうかからなかった。
何故か目が離せない容姿。
これまでこんなこと一度もなかったというのに。
そして話をすればするほど、素敵で素晴らしい考えの持ち主だということが分かる。
その上アレン様は誰にも優しく、とても王族の人間には思えないほどだ。
分け隔てなく誰にでも接するその姿に、また私は心を惹かれていた。
「シルビア嬢。今日は何をしているのですか?」
天気もよい朝の城。
私は庭先で散歩をしていた。
アレン様は私に話しかける理由がほしかったのだろう。
ただ歩いているだけだというのに、そんな風に私に訊ねてくる。
顔を少し赤くしたアレン様がとても愛らしく、抱きしめたい気持ちになっていた。
しかしまだ嫁入り前の乙女。
そんなはしたない真似はできない。
「散歩をしていただけでございます、アレン様。よければご一緒にどうですか?」
「それは嬉しい提案だ。さあ、どこへでもお供しましょう」
「ふふ……ただの散歩ですよ、アレン様」
「あ、そうだったね……どうも君を前にすると緊張してしまってね」
顔を真っ赤にするアレン様を見て、私も顔を赤くする。
自分の思った気持ちをストレートに伝えてくる彼の気持ちが、妙に嬉しくて。
私はドキドキしながらうっすらと笑みを浮かべる。
アレン様と庭を歩き、なんでもない会話をしていた。
たったそれだけのことなのに、とても幸せで、この世界には自分たちだけしか存在していないような、そんな錯覚を覚える。
彼の隣は温かく、ずっとここにいたいと思い始めていた。
ずっと彼といたい。
彼もそう感じてくれているのだろうか?
すると突然、アレン様は緊張した面持ちで、私の手を握ってきた。
ドキッと心臓が高鳴り、私は彼の黒い瞳を見上げる。
「わ、私と結婚してくれないか? 貧乏な国だけれど、きっと寂しい思いをさせることはない! お願いだ……死ぬまで私と一緒にいてくれ」
「……はい」
私は迷うことなく、彼にそう返事をした。
まるで神のお告げのようだった。
彼との出会いは必然で、彼とは結ばれる運命だったと私は悟る。
すると飛び上がって喜ぶアレン様は、私を抱いてクルクルとその場を回り出す。
「ありがとう、シルビア! 約束するよ。絶対に、一生君を愛することを!」
「……アレン様。私を妻に迎え入れてくれること、嬉しく思っています。そしてあなたには話しておかなければいけないことがあります」
「話しておかなければいけないこと?」
アレン様は私を抱いたまま、キョトンと私を見つめている。
そして私は神の加護――聖女の伝承をアレン様に話すのであった。
何故か目が離せない容姿。
これまでこんなこと一度もなかったというのに。
そして話をすればするほど、素敵で素晴らしい考えの持ち主だということが分かる。
その上アレン様は誰にも優しく、とても王族の人間には思えないほどだ。
分け隔てなく誰にでも接するその姿に、また私は心を惹かれていた。
「シルビア嬢。今日は何をしているのですか?」
天気もよい朝の城。
私は庭先で散歩をしていた。
アレン様は私に話しかける理由がほしかったのだろう。
ただ歩いているだけだというのに、そんな風に私に訊ねてくる。
顔を少し赤くしたアレン様がとても愛らしく、抱きしめたい気持ちになっていた。
しかしまだ嫁入り前の乙女。
そんなはしたない真似はできない。
「散歩をしていただけでございます、アレン様。よければご一緒にどうですか?」
「それは嬉しい提案だ。さあ、どこへでもお供しましょう」
「ふふ……ただの散歩ですよ、アレン様」
「あ、そうだったね……どうも君を前にすると緊張してしまってね」
顔を真っ赤にするアレン様を見て、私も顔を赤くする。
自分の思った気持ちをストレートに伝えてくる彼の気持ちが、妙に嬉しくて。
私はドキドキしながらうっすらと笑みを浮かべる。
アレン様と庭を歩き、なんでもない会話をしていた。
たったそれだけのことなのに、とても幸せで、この世界には自分たちだけしか存在していないような、そんな錯覚を覚える。
彼の隣は温かく、ずっとここにいたいと思い始めていた。
ずっと彼といたい。
彼もそう感じてくれているのだろうか?
すると突然、アレン様は緊張した面持ちで、私の手を握ってきた。
ドキッと心臓が高鳴り、私は彼の黒い瞳を見上げる。
「わ、私と結婚してくれないか? 貧乏な国だけれど、きっと寂しい思いをさせることはない! お願いだ……死ぬまで私と一緒にいてくれ」
「……はい」
私は迷うことなく、彼にそう返事をした。
まるで神のお告げのようだった。
彼との出会いは必然で、彼とは結ばれる運命だったと私は悟る。
すると飛び上がって喜ぶアレン様は、私を抱いてクルクルとその場を回り出す。
「ありがとう、シルビア! 約束するよ。絶対に、一生君を愛することを!」
「……アレン様。私を妻に迎え入れてくれること、嬉しく思っています。そしてあなたには話しておかなければいけないことがあります」
「話しておかなければいけないこと?」
アレン様は私を抱いたまま、キョトンと私を見つめている。
そして私は神の加護――聖女の伝承をアレン様に話すのであった。
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