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「レオ……ちょっと合わない間にずいぶん変わってしまったのね」
「ああ。僕は真実の愛を知ってしまったから……今思うと君に対して僕はなんの感情も抱いていなかった。形だけの婚約。それを理解したよ。そして本当の恋というのは、こんなにも素晴らしいものだということに気が付いた」
「真実の愛ぃ? はっ! それはあんたの勘違い。思い込みよ。レオは私を愛していたらそれでいいのだから、私の言う通りにその女と別れればいいのよ」
「その通りだ。アニエルの幸せは俺といること。お前らの間に本当の愛などありはしない」
こちらの意見を全否定する二人。
話し合いをしようにも話にならない。
とにかく自分たちの思い通りに事を進めたいと考えているのだ。
こんなの、どうやって話を付ければいいの?
レオ様の顔を見上げると、彼は苦笑いを私に向ける。
「アニエル。何があろうと僕は君と別れるつもりはない。たとえニコライド様を敵に回したとしても絶対に手放さないよ」
「私もレオ様と離れません。これからもずっと一緒にあなたと過ごしていきたいです」
「おまっ……何を言っているんだ、アニエル! 俺が別れろと言ってるんだぞ! いいからさっさと別れるんだ! この男と一緒にいてもお前は大した女になれない! 俺といれば、もっともっと女を磨けるはず――」
「私は……私なりに自分を磨きたいと考えております。ニコライド様の求める女性像を演じるのはもう私には無理なのです……私をそのまま認めてくれるレオ様に出逢ってしまったのだから。本当の自分を理解してしまったのですから」
レオ様といれば無理しないで自分らしく、等身大のままでいられる。
それがとても楽で、そしてそれがどれだけ大事かということが分かった。
他人の求める自分なんてどうでもいい。
ニコライド様の婚約者だった頃にはそれが気づけなかった。
自分を殺して、世間一般的な女性の理想像を演じることこそが幸せだと考えいた自分はもういないのだ。
だからもうこの方の思考にはついていけない。
だからこの方に従うことは絶対にできない。
私が言い返したことに腹を立てたのか、ニコライド様は私に手を上げようとする。
しかし、寸前のところでレオ様がその手を止めてくれた。
「ニコライド様。アニエルはあなたの人形ではないのです。彼女は一人の人間なのです。それを理解せずにあなたの理想を押し付けて……そんなところにアニエルの幸せなどない。あなたではアニエルを幸せにすることはできない。彼女を幸せにできるのは僕だけなのです」
レオ様はニコライド様にそう言い放った。
だがそれを聞いた二人は、さらに顔を怒りに歪め激昂する。
もうこの方たちには何を言っても無駄なのだ。
この瞬間にそのことを私たちは理解していた。
「ああ。僕は真実の愛を知ってしまったから……今思うと君に対して僕はなんの感情も抱いていなかった。形だけの婚約。それを理解したよ。そして本当の恋というのは、こんなにも素晴らしいものだということに気が付いた」
「真実の愛ぃ? はっ! それはあんたの勘違い。思い込みよ。レオは私を愛していたらそれでいいのだから、私の言う通りにその女と別れればいいのよ」
「その通りだ。アニエルの幸せは俺といること。お前らの間に本当の愛などありはしない」
こちらの意見を全否定する二人。
話し合いをしようにも話にならない。
とにかく自分たちの思い通りに事を進めたいと考えているのだ。
こんなの、どうやって話を付ければいいの?
レオ様の顔を見上げると、彼は苦笑いを私に向ける。
「アニエル。何があろうと僕は君と別れるつもりはない。たとえニコライド様を敵に回したとしても絶対に手放さないよ」
「私もレオ様と離れません。これからもずっと一緒にあなたと過ごしていきたいです」
「おまっ……何を言っているんだ、アニエル! 俺が別れろと言ってるんだぞ! いいからさっさと別れるんだ! この男と一緒にいてもお前は大した女になれない! 俺といれば、もっともっと女を磨けるはず――」
「私は……私なりに自分を磨きたいと考えております。ニコライド様の求める女性像を演じるのはもう私には無理なのです……私をそのまま認めてくれるレオ様に出逢ってしまったのだから。本当の自分を理解してしまったのですから」
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他人の求める自分なんてどうでもいい。
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この瞬間にそのことを私たちは理解していた。
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下記の作品で第14回ファンタジー小説大賞に参加しています。
よろしくければ、投票のほどお願いします。
「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません!
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