捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。

2

　パーティーも終わり、そこでようやくニコライド様は私の方に視線を向ける。

「おいアニエル。こっちに来い」
「……はい」

　ニコライド様は茶色い髪をかき上げながらそう言った。
　私を見つめるその碧眼は氷のように冷たく思える。
　彼はいつも強気でいつも自身に溢れており、常にこういう命令口調をしているのだ。
　
「パーティーは楽しかったか？」
「はぁ……」

　楽しかったと思っているのでしょうか？
　一人隅っこの方で放置されて、友人など一人もいない状況で。
　
　ニコライド様は私の返事を聞いてふんと鼻で笑う。

「もう少し明るくできないものか？　これから隣でそんな暗い顔をされていたら気が滅入る。お前は俺という男の婚約者なんだぞ。もっと俺に相応しい女になれ」
「はい……申し訳ございません」

　私は気弱であまり明るいとは言い難い性格。
　それがニコライド様は気が食わないようだ。
　
　ニコライド様と結婚するとなれば、これからは明るく振る舞わなければいけないのか……
　あまりそういうのは得意ではないのだけれど、それが彼の伴侶として必要なことならばそうする他ないのね。

　ニコライド様が配下の人たちに会場の片づけの指示を出している。
　全てにおいて自分で口を挟まないと気が済まない性格のようで、順調にいっている作業の中あれやこれやと指示を出す。

「そう言えば今日、レイチェル・ヴァーマイズが来ていたな」

　その名に私はドキッとする。
　彼女に少し絡まれのを思い出し、少し嫌な気分。

「レイチェル様ですね……確かにいらっしゃいましたね」
「あれは中々いい女だったな。お前よりも明るく、そして美人だ」
「そう……でございますね」
「お前ももっと自分磨きをしろ。せめて俺が連れて恥ずかしくない程度にはな」
「はい……」

　彼の刺すような言葉。
　だけどきっと、私が彼に似つかわしくないのが原因なのだ。
　ニコライド様の言う通り、もっと自分磨きに精を出さねば。
　それがドルトムル家に嫁ぐ女の使命なのだろう。

　私は出来る限り明るい声を作りしっかりと返事をする。

「これから精進してまいります」
「俺の妻となるのだから、当然のことだ」

　ニコライド様はまた鼻で笑い、そして自室の方へと向かって行く。

「では今日はもういい。家に帰れ」
「はい。それでは失礼いたします」

　私はニコライド様に頭を下げ、そして彼の屋敷を後にするのであった。
　もっと、もっと頑張らないと……
　この時の私は、そうしなければいけないと思い込んでいたのだ。