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「私と別れるとはどういうことですの?」
「そのままの意味だ。君とはもう付き合っていけない。金遣いが荒すぎる。家の財産を食いつぶすつもりだろ」

 シーナはカリスの言葉に鼻で笑う。

「カリス様はお金持ちだと思って今しがた……カリス様のお家は、私が少しばかり使った程度で潰れてしまうものなのですか?」
「そんなわけないだろ! お金は潤沢にある! それにシーナは、お金が目的なんじゃないのか? 君からは愛を感じない。ただお金を使えるのが嬉しくて、俺と婚約したとしか思えない」

 実際、シーナはお金だけが目的であった。
 カリスのことは愛していない。
 彼の家柄とお金、それだけが目的であったのだ。

 そんな彼女の考えをうすうす感じ取っていたカリス。
 それは的中しており、シーナは狼狽え、戸惑っていた。

「な、何をバカなことを言っているのですか……カリス様を愛しているからこそ、婚約したのですよ?」
「……どうだか」

 カリスがシーナを睨みつけると、彼女は笑顔を無理矢理貼り付け、彼に向ける。

「このことはまたお話しましょう。今のカリス様は冷静にお話できる状態ではないようですし……」
「…………」
「私、お金が無くとも、カリス様と結婚するつもりです」

 シーナは最後にそんな嘘を吐いて、その場を後にした。

 カリスは考える。
 もっといい女を探さなければ。
 だがどうやって探せばいい。
 どうすれば女の本性を見抜くことができるのだろうか。

 もっとエマがいい女だったら……

 そんな風に思案していたカリスは数日後、エマの噂を耳にする。

 それは以前よりもずっと綺麗になった彼女の噂だ。
 根暗なエマは、クロードと一緒にいることで明るくなり、そして笑顔の絶えない女性となっていた。

 心の内から明るくなったエマ。
 さらにクロードに恋をして美しさに磨きがかかっていた。

 カリスはそんな噂を聞き、ニヤリと笑う。

「そんないい女になったのか、エマは……」

 もし俺の満足いくだけの女になっているのなら……エマをもう一度婚約者にしてやるのも悪くないな。
 性格は悪くない。
 俺の財産をバカみたいに使うようなタイプでもない。

 以前は暗くて一緒にいるだけで嫌になるような女だったが……
 あいつが華やかになっているのなら、本当に俺が貰ってやるか。

 カリスは心の中でホッとしていた。

 これならシーナと結婚しなくて済みそうだ。
 だってエマは、俺のことを愛しているのだから。
 それに……借金のこともある。
 あの話を蒸し返せば、俺に逆らうこともできやしない。

 カリスはほくそ笑みながら屋敷を出て、エマのもとへと向かうのであった。
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