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9.
しおりを挟む◆竹山 海
「海…泡をきちんと流さないと」
広いバスルームで、立ったままシャワーを浴びている。
三条さんの背中を壁に押さえ込んで、湯が伝った後の首筋に夢中で舌を這わせる。三条さんの方から来るシャワーの細かな滝は、俺の背中の向こうに降り注いでいる。
「…分かってます」
スチームで視界はぼやけてしまうが、泡交じりの瑞々しい肌を手の平と指先で確かめていく。
「あ、待て…」
「ちゃんと流さないとでしょ?」
シャワーヘッドを取って三条さんの肩に当てながら前を触る。
「寒くないっすか?光留さん」
「平気だ、元々暑がりなんだ。そうでなくても…ココ…今は相当の熱気だぞ」
床暖房の効果もあって、湯船を使わなくても身体は十分に温まる。
手の中の反応に合わせてふと目を閉じる三条さんの頬に、濡れてはっきりとしたウエーブの髪がはらりと落ちて俺の欲情を促してくる。
「俺、倒れそうっす」
「え?大丈夫か?」
はっとして心配してくれる三条さんにシャワーを預け、背中に腕を回した。
「興奮して、っすよ」
「あー、そうか」
腰を流すふりをしながら、尻に手をずらして時折指を割れ目に入れ込む。前にもまた手を添えると三条さんは俺の身体の泡を流しながらぴくりと腰を動かした。
「光留さんいつも良い服着てるけど、裸が一番綺麗っすよ」
「裸じゃ職場行けないだろう?」
笑うタイミングだったのに色っぽい息が聞こえて俺は堪らずしゃがんだ。
「待て海…」
「無理っす」
まだ少し柔らかいそれを咥えると、三条さんはシャワーを止めた。
愛撫を続ける俺の視界の端、シャワーのホースがヘッドの重みで三条さんの手先を徐々に滑り、床に落ちたヘッドがことんと心地よい音を立てた。
「ん…」
小さな息が響いて、ついまた強く吸ってしまう。
「あ…駄目だぞ…」
「風呂、出てからっすか?」
「ああ、髪を乾かさないとな」
三条さんは唇を笑わせて俺の髪に指を通した。
風邪を引かせるわけにはいかないので、俺は従った。
三条さんが用意してくれた肌馴染みの良いお揃いのガウンだけを着て、ドライヤーで髪を乾かしてあげていると鏡の中から三条さんが言ってくる。
「シャンプーの時も思ったけど、上手だな」
「一応美容師の免許持ってるんで。実家が美容院っす」
「あ!それでか!あとシャンプー市販のじゃないだろう?」
「そっすね。俺のはブリーチした髪専用のですけど、パーマ専用の良いのありますよ?持って来ましょうか?」
「買うよ。匂いが爽やかで良いな」
「光留さんデジタルパーマっすね?」
「そう。へー、分かるんだな」
「何となくっすよ。カールが濡れてもあまり縮まなかったんで」
「ちょっとくせ毛だし、すぐにパーマ伸びるしって言ったら勧められて」
「手入れ楽でしょ?」
「そうなんだよ。普段は洗って乾かした後は何も付けたくないからさ。面倒臭い」
「はは!緩めのウェーブ、すげー似合ってます」
「そうか?」
振り返る三条さんを抱き締める。
「けど、今は髪の話し、どうでもいいっす。すみません」
「おーい」
三条さんは苦笑いしたが俺の鼻を噛んだ。
そして俺は次に自分の髪を乾かすが、その作業をじっと見ている三条さんに気を取られてしまう。
「どうしたんすか?」
「そうやって乾かすのかと」
「あ、俺は前に流したいんで、こうやって後ろ斜め下、ココくらいから逆の前に、逆の斜め下からも逆の前に、トップは…って、これ、また今度で良いっすか?」
「ん?」
「もしかして、ヘアセットの講習会の方が楽しいっすか?もっと詳しくやりましょうか?ドライヤーはマジで結構重要なんで、知ってると仕上がりが断然違いますよ?」
すると、三条さんは胸の前で腕を組んで一歩近付いて来た。
「どうでもいいっす。ドライヤーとか、マジで。話しクソつまんないっす」
「はははははは!!可愛い過ぎでしょ!」
「ヘアセットは君がしてくれればいいだろう?」
「御尤もです」
三条さんが俺の頬に鼻を当てて、俺も三条さんの首の匂いを嗅ぐ。香水が流れ落ちて温もった素肌の匂いがすると、つい薄いガウンの上から腰を摩って尻を軽く掴む。
「ベッドに行こうか」
「はい」
寝室に入って直ぐに掻き抱いて、頬や首を舐めながら三条さんのガウンの上を開く。
「ベッドは…すぐ横にあるんだ海」
「分かってます…」
細い鎖骨に食いついて胸を撫でるとさっきまでよりもセクシーな吐息が聞こえ、急かされる気分で耳を噛んで身体を密着させると勝手に腰が疼いて前を擦り付けた。サラサラした生地で滑ってもどかしい。
「光留さん…」
ガウンの下から手を入れて尻を撫でる。
「ん…」
強く擦り合わせた互いのものが硬さを増してくるとどうしようもなく興奮した。
「そうだ、ちょっとだけ待ってて下さい」
「なんだ?」
「秘密道具、取ってくるんで」
密着したまま身体で三条さんをベッドまで押して座らせてから一旦寝室を出た。
大きな黒いポーチを手に寝室に戻ると三条さんは横向きでベッドに寝そべっていて、俺はポーチをその足元に放り出して上に覆い被さった。
「おいおい…」
「あ、お邪魔します。ベッド広いっすね」
「明かりを落とそう」
ベッドの枕元にあったリモコンを押して照明を消した三条さんは、その手を横のライトスタンドに移して点けた。
「明るいままがよかったです。全部見たいのに」
俺が堪らずに三条さんのガウンの前を解くと、
「勘弁しろ」
と髪の下で唇が笑った。
「男の体なんて冷めるだけだぞ」
「信じて貰えないと思いますけど、俺普段こんな焦んないっすよ?」
「怪しいな…」
ふっと鼻で笑われても興奮は止まず、臙脂色のベッドに浮かび上がる身体をゆっくりと両手で撫で回す。
「信じて貰えないって言ったっしょ?」
小さな乳首を指先で摘んで、力を持って内腿に影を伸ばすそこに吸い付くと三条さんの腰がくねった。
「脚…もっと開いて下さい」
「海…」
「膝、曲げて」
片方の膝裏を持って持ち上げると興奮のままに前をしゃぶる。
「っ…!強いぞ…」
「ここも…今日はいっぱい、いじめますから」
垂れ下がる柔らかい部分を舌で掬って舐め上げると、俺がする度に揺れて夢中になった。
「あ…もう、やめろ…」
「めっちゃエロいっすよ…?この中の、全部出して下さい光留さん…」
「駄目だ…」
「駄目じゃないっす」
逃れようと身を返した股の間にぶら下がって、余計に俺の執着をかった。
「海…!」
「柔らかくて美味しいっす。腰浮かせて…前も触りたいんで」
「あ…あっ…待て」
ベッドとの間に無理矢理手を差し込んで前を撫でると、びくりと尻が持ち上がった。そのまま柔らかい餅を喰みながら硬い竿を手で扱くと三条さんの吐息が大きくなって耳に届いた。
好きに続けると三条さんの声が妖しくなる。
「ああ…も…海!」
息の混じる男の声。
(やっぱ…めっちゃエロい)
男のこんな声に背中がゾクゾクするのは三条さんが初めてだ。
目の前の尻が揺れて俺の意識はそのきゅっと窄まった場所に集まってくるがまだ早い。
「ヤベェ…頭狂いそ…」
俺は股の間に頭を突っ込んで仰向けになると四つん這い状態の三条さんの顔を見上げた。
俺に気付いて顔を下げた三条さんはショックでも受けたみたいに困った表情をしたが、チュっと内腿を吸うとまた熱い息を溢した。
三条さんのガウンをその腰の上にまとめ上げて、少し強めに腰を下げさせると先端を咥えた。
「だめだ…海」
「気持ち良いっすか?光留さん…」
「…あぁ…あ」
「すっげ…漏れてる」
「美味い…か?」
「めっちゃエロい味してる…もっと腰振って…全部絞ってあげますから」
「ん…エロいワンちゃんだな…」
「光留さんにだけっすよ」
「んんっ!あ…」
「光留さんのちんこ、すげー好物なんで俺…めちゃくちゃにイかせてあげます」
「あ…んっ!ん…痛いぞ…強く吸うな」
「痛いだけっすか?柔らかいココも好きっすよ…ほら…」
ゆらゆらと、三条さんの腰が動く。
「今日、は…君の好きにさせてあげるよ」
「良いんすか?そんな事言って。マジでやりたい放題やられますよ?」
「あっ…!」
頭を持ち上げて半分まで喉に入れ、揉んでいたものもきゅっと握ると三条さんの尻が堪らず震えた。
俺も堪らず根元まで飲み込む。また夢中になってずっと続けてしまうと三条さんが頭を掴んで口から引き摺り出した。
「何すか?」
目の前でヒクヒクと跳ねる先端を舌先で突っつくと、透明な蜜が滲んだ。
(たまんねー…)
更に舌を出そうとすると指先で止められてその指をしゃぶる。
「今日は…だからな。この先俺はセックスの手解きなんて…しないからな?君が自分で考えてやれよ?」
「光留さんと他の男のやり方なんて訊いてないっすよ?」
「そう言う意味じゃない」
「今光留さん抱いてるの俺ですから」
顔を見上げると三条さんは俺を見つめてくる。
「分かってる…」
三条さんは静かな息でそう言って片足だけしゃがむように態勢を変えると、自分から指先で挟んでその先端を俺の口元に当てた。
「今日のあんたは、俺の男っすよ?」
わざと大きな音立ててしゃぶると三条さんのものがいよいよ膨らむ。
「ああ…君も、な」
腰のガウンを三条さんの身体に一周させて掴むと腕の力で好き放題に上下させて根元まで愛撫する。
「んっ!ああっ…ああ!」
じゅるじゅると濡れて止められない。
「海…あっ…あぁ、イ…」
三条さんも背を反らせてゆっくり腰を振る。
「ああ…もうイク」
口の中に三条さんの味がじわりと広がり、髪を優しく梳かれながら必死で追って吸い付くと、
「…海。全部、飲めよ…」
吐息混じりの色っぽい声と共に、三条さんは放った。
俺は力が抜けた後もその腰を支えて、最後まで吸い付いて飲んでやった。
三条さんが息を整えている間に身体を滑らせてシーツの上を背中で上がると平たい胸を揉んで乳首を噛む。
「いっ!」
三条さんは顔を天井へ向けて逃げたが、俺は後ろ手に肘を着いて興奮のままに乳首を吸い立てた。
「…んんっ」
「光留さんっ…」
俺の上に跨がるようになった三条さんが腰を落として前が当たる。
「そのまま腰振って、光留さん…」
自分のガウンの前を開いて三条さんの腰を掴む。
「海…」
「もっと擦って」
「待て…まだ」
「何すか?聞こえないっすよ?」
尻や腿を摩りながら腰を押し上げる。
「君ので俺の…潰れるぞ」
「そんな硬いっすか?俺の」
「ば…」
「え?」
耳を傾けると熱い息の唇に噛まれる。
「煽ってんすか…?」
自分のものを手に握って三条さんの柔らかい所に擦り付ける。
「待て…」
「…嫌っすよ」
ぶら下がる二つの間を割るように先端で擦っていると尻の方へつるりと滑った。
「光留さんのここ…挿れていいんすか?今日…」
窄まりまでの距離を何度も擦って、時々突く。
「ああ…慣らして、からだぞ?」
「勿論…準備して来てるんで。ゆっくり遊びましょ…」
俺がそう言うと、三条さんは熱い吐息のまま俺の首を舐める。
「ちょ、ヤバいって…」
言っても止めない舌に興奮して、腰を押し上げて尻を擦りながら三条さんの前を摩る。
「海…」
呼ばれて身震いする。
「光留さん…舐めていいっすか?ここ…」
「汚いから…やめておけ」
「汚くないっす。全然」
俺はずっとギリギリだ。
ずっと理性の端っこギリギリで三条さんを守っている。
壊したいという意識と一緒に。
三条さんの後ろにまわって腰を持ち上げると薄い尻を夢中で舐める。
「海…!」
鼻先を突っ込んで、冷たい肌に包まれた膨らみの中に張りのある玉を探り当てると、唇で咥えて、舌で撫で回して、しつこくしつこく嬲る。
甘い喘ぎ声がして、尻が高く上がった。
(光留さん…)
「俺が、誰よりもあんたを気持ち良く出来るはずなんで…」
そこからそのまま更に下を潜って、また少し力を持ち始めている竿を吸う。
この人が愛しいと、俺の身体が熱を出す。
吸って離して、吸って離して。
「ん…っあ…あ…!」
揺れなくなるまで虐めて、滲んだ蜜を音を立てて吸い取る。
「今日は全部…。光留さんの全部、俺のものです…」
三条さんの胸ががくっとシーツに落ちると尻の窄まりに舌を差し込む。
「海…!」
シーツで篭った声が、脳の真ん中に響く。舌を押し付けて舐めては舌先で開く。
「ここ…可愛いっす…」
「あっ!待て…」
狭くて、本当にそんなものを挿れられるのかと心配になるが、
「めっちゃ興奮する…」
三条さんの何処を舐めるよりも強く興奮した。
「ホント、ヤバい…」
ポーチから華奢なローションのボトルを取り出して指先で温めてから窄まりに塗った。
「ん…」
「冷たかったっすか?」
「君の舌ベロの後じゃ何でも冷たいよ」
三条さんは笑ったようだ。
「俺の舌、熱いっすか?」
「ああ、熱くて凄く気持ちいいよ…」
「嬉しいっす…」
俺はまた柔らかい餅も喰んで薬指を中へ少し入れた。
三条さんの身体が少し緊張したようだったがローションの滑りで簡単に半分まで入って行く。
「あ…」
「痛いっすか?」
「いや…平気だよ」
ゆっくりゆっくり抜き差ししていると三条さんの腰がビクっと跳ねた。
「今のトコロっすか?」
「ん…?何がだ?」
「え?前立腺?」
「あー…かな?」
お馴染みの男の性感帯。昨日調べた結果でもアナルセックスでそこは死ぬ程気持ち良いポイントとあった。
もう一度探ってみるとまた三条さんの腰が反応した。
「遊ぶな…」
「遊んでないっす、教えて下さい。光留さんのイイとこ」
「手解きしないって、言ったろ?」
「気持ち良くしたいんすよ光留さんのこと」
三条さんはシーツに頬を着けたまま、俺を振り返る。
「セオリーなんていいから、君の好きにして君が見つけなよ…」
その仕草もその目も色っぽくてドキッとする。痛い程の高鳴りを感じるのも初めてだった。
「…いいんすね?」
「ああ、怒ったりしないよ」
三条さんはそう言ってまた姿勢を戻した。
「じゃあ…遠慮なく、エロい事ばっかりしますね」
三条さんがふふっと笑ったのでまたドキドキしながら、ローションを足して薬指を再びゆっくり抜き差しする。
「ああ…すげ…」
引き抜いた指が滑りで光っている。
「んん…」
「中、熱いっすよ」
気の逸りを紛らわせる為、また股間のものを好きにしゃぶると三条さんの尻が揺れた。
「あぁ…」
「エロ…」
ローションを更に増やして中指に変えるとさっきよりも大きく跳ねた。
「あっ…」
「声…ヤベェ…」
三条さんは大きな咳払いをしたが、それすら上擦って色っぽいし、直ぐにまた悩ましい声を洩らした。
(持つかな…俺の精神)
◆三条司
もう、色々と限界だ。
海は平気で恐ろしくエロい事しかしないし、俺はとっくに恥ずかしいを通り越している。
俺の精神が海からの快楽を受け入れてしまったのが手に取るように分かっていた。
「あ…もう…駄目だ海…」
海は横向きになった俺の股の間に頭を挟んでフェラをしながら、右手の中指に黒く太めの突き指サポーターみたいなグローブをして、それを俺の尻に入れようとしている。
「これ、めっちゃ人気のグッズらしいです。気持ち良いんだって、店員が…」
「へえ…」
(そんな場所で喋るのか?)
さっき取説みたいなものがベッドに落ちて、恐る恐る、しかし必死で見たそれには確か『中指・C・』ほにゃららと書いてあった。全部は読み取れなかったが、この使い方に由来した名前だったのだろう。無駄に厨二病めいた見た目のそれは、海が装着すると寧ろ格好が良いから面白い。
「挿れますよ…?」
股の間から見てくる海に頷いて、目を閉じる。
さっきまで海に一時間近くもの間ずっと指で慣らされ、最終的には三本は入っていたのだから今更怖くは無い。
しかし、それがまあまあの圧迫感で挿入されるとある場所をゴリっとやった。
「ああっ…!」
強烈な刺激にまた声が出る。
「んん、可愛いっす…。当たりますか…?」
海が熱い舌を這わせて、ちゅっと音を立てて先を吸う。
「もうっ…ちんこやめ…」
「駄目っす…」
また奥まで咥えて頭を動かす。
「ああ…バカになる…」
「ずっと蜜…出てますよ…ほら、腰振って光留さん」
海には見せたくない姿ばかりだ。
そのくせに身体はずっと快感に素直に反応し続ける。
「海…!」
「光留さん…」
海は低く呼んで、グローブの指を少し速めて抜き差しする。
「あっ!あっあっああっ…!」
コリコリと引っ掛けられて意識が危うい。
(強烈だ!!バカバカバカ!!)
海の髪を両手で必死に混ぜて訴えるも、腰は震えてその寛容な唇に愛撫を強請るばかりだ。
「ああっクッソエロい…イきそうっすか…?中、気持ちい?」
海はよりフェラを強くし、中の指をくねらせる。
「もう抜け…!おかしくなる…」
「じゃあ…抜いて俺の挿れていっすか…?光留さん」
海も一気に興奮したように荒い息を撒いて身体を起こすと、俺の尻を撫で回しながら指をより激しく動かす。
「だめ…だ!ああ…っ!」
「駄目…?これが気に入ったんすか?」
俺の内腿に自分の熱いものを擦り付けながら手を止めない。
「ちがう…!」
「指でイキたいっすか?」
「…あっ!海…怒るぞ!」
海は指を引き抜いて舌を突っ込んで来る。
「バカ…!!だめだ…ああ…。んっああ」
ぐちゅぐちゅと音が聞こえ、中を強く舐め回してはまた指を挿れる。
「綺麗なあんたが腰振るの、めっちゃ興奮する…」
「イ…ああ…待て…海」
また尖らせた大きな舌を捻じ込んではピストンの動きで突いてくる。
「うぅ…あっ…」
ベッドの上でシーツを破くように掴み、力の入った腕を向こうへ向こうへと伸ばし尻を突き出して海を見る。海は色んなもので口元や頬を光らせていて、俺の中を黒いマッドな指で掻き回しながら真っ赤な舌で唇の端を舐めた。
「ああっ!あっあっイっ…ああ!」
(バカー!!)
ピンと張った性感帯を指でビンビンと弾かれるような感覚に枕を掻き抱いて堪える。
「いま奥まで挿れたら気持ちよさそ…」
「なっ!?」
(バカバカバカバカバカバカ…!!)
そして海はまた直ぐに噛み付く勢いで尻に顔を埋めて、舌を差し込んで舐め回す。
「ああ…イ…く!もう舌…だめだっ!」
「光留さんもう少しだけっす。なんか、ココすご…」
「海…!!」
押し寄せる何かの感覚に声を大きく張り上げた。
「海!!待てだ!!」
海は驚いてぴたっと止まった。
「光留さん?」
「挿れろよ…。君のがいい…」
「……マジっすか?」
海は背中に被さって首を啄ばんで来る。
「いいんすか?ホントに?」
「ああ…」
海の頭に手を伸ばして鼻に噛み付くと、キスをされるのではないかと思う程、俺の唇のギリギリ外に唇を付けた。
「光留さん…痛かったら蹴って下さいね」
低い声は熱く、その唇で何度も焦れったい「輪郭」を辿りながら、海の手は俺を横向きに寝かしつけて離れて行き、後ろで準備を済ませた。
ぱちんっとゴムの音がして、俺は覚悟を決めた。
(ああ、さよなら。俺の三十八年)
この後どうなろうが救いを求められる相手は海しか居ない。
俺の背に沿うように寝転んだ海を手で呼んで頬にキスをすると、海もいくつか頬にキスを返して来た。そして後ろへ離れて行く優しい笑顔が、とても可愛いと思った。
(もう、アウトだな…)
海は先端を軽く擦り付けながらローションをたっぷり足した。
静かな部屋で海の息遣いが聞こえる。
「光留さん…」
ぐっと押される感覚の後、ゆっくりと入って来る。
「う…!」
(あ、痛え!!)
俺が息を殺した時に海の余裕の無い息が溢れる。
一瞬だけ頭の中が真っ白になった。
「はぁ…あ…」
情け無い声が勝手に出てしまう。
「…あ、やべえ」
そう言った海が、腹の中でビクリと動いた。
痛みはあるが、ゆっくりゆっくりと動かれて先程まで弄られていた部分からじわじわと熱くなってくる。
(あ…。ちょっと待て…)
「光留さんの中…ヤバいっす…」
「あっ…」
尻を撫でながら腰を揺らす海に、段々と興奮してくる。
繰り返されるうちに痛みが鈍くなって、違う感覚に変わってくる。
「ああ、めっちゃエロい…光留さんの中…」
スローペースで何度も何度もじっくりと擦られてもどかしい。
「海…」
「もう少しだけ、奥、いいっすか?」
更に中を熱いもので突かれるとまた意識が怪しくなった。
「…んっ…あ…」
「ここ…奥、すげ狭いっすね、痛い?」
俺は返事をする余裕が無い。
海は自分の腰の動きに合わせるように、両手で俺の腰や腿や背中を撫でる。
「あ…ほら、柔らかくなってめっちゃ奥入ってる」
(言うなーーー!)
「あっ…駄目…だ」
「駄目…?奥、駄目っすか…」
でもほら、と息で言った海に手を引かれて自分の尻に触ると、殆ど引っ付くくらいにまで近づいてた海の腰に現状を知ってしまった。
「ああ…っ海…」
そしてまたゆっくりと中へ進んで来られると、奇妙な感覚が襲って来た。
「ああ……」
身体をぴったりと引っ付けて腰をゆるゆると揺らす海。
「光留さん…」
「う…ぁあ」
「痛いっすか?」
「ちが…あ!」
ずるりと奥が擦れると俺の身体が跳ねた。
「海…!」
声が上擦って、咄嗟に後ろの海の髪を掻き混ぜる。
「あ…奥、いれるな…」
海が何かに堪えるように腰を止めて、熱い息で俺の背中を舐める。
「やっぱり痛いっすか?」
「そうじゃない…けど…」
「この辺りなら平気っすか?」
海の舌は頸まで登ってきて慰めるような声が耳にかかり、俺は海を振り返るが、浅い部分をまたゆるゆると擦られると顔から火が出そうになった。
「そこもっ…だめだ…!」
散々と指で突っつかれて敏感になった場所を今度は海自身に押されて腰が揺れる。
「ちょ…ヤバいって…」
海はまた腰を止めて上体を少し起こすと俺の肩を引いて肩先に舌を伸ばす。
「めっちゃエロい…光留さん」
「仕方ない…だろ?わざとじゃ…」
「俺の、分かります?」
海は腰をくねらせる。
「あ…!」
「これ…俺のっすよ…光留さん」
「う…ああ」
「ほら…聞こえますか?」
海が動く度にくちゅっと小さな音が聞こえて羞恥心を煽られるも、
「光留さんのここ気持ちいい…」
嬉しそうに、それでも衝動に堪えるように光る海の目を見ると、身体や意識までもの力みが抜けてしまった。
首筋に唇を当てて来る海の頭を抱えていると身体が熱くなってきた。
「……かる」
「え?」
海の目を見る。
「分かるよ、君の」
それが欲望できらきらと光る。
「もう平気だから、おいで…」
微笑む余裕の無い俺は海の額にキスをしようとして届かず、だが同時に海が顔を寄せて耳元にキスをした。
それで互いの身体が、気持ちが繋がってしまうのを感じた。
それでも海は、俺を気遣って逸る息のままゆっくりと動いた。
「光留さん…!」
耳に聞こえる呼吸と合わないリズムで奥をじわじわと突かれ続けるともどかしい。
「ん…ああ…」
自分の唇の間から溢れて出る甘ったるい声が海を呼んでいる。
暴れられれば壊れる。だがそうならない事に二人の脚がシーツを掻いて肉体の卑猥な音と切ない衣擦れを重ねていく。
海の身体が一際熱くなって、中にあるものが何度もぐっと動くとバイブレーションのように広がって俺の脳内を白ませた。
「海…!ああっ…」
「たまんね…もう…中、すげ…溶けて…」
海の腰が大きく跳ねて、ゆっくりだが大胆な動きになってくると俺の身体は痺れたように快感を覚え始める。
「ああ…あ…ん…だめだ…」
(こんなことしては駄目だ)
このままでは良くないと身体に力を入れるも、余計に海のものをはっきりと感じて声が出る。
「光留さん…!」
焦れた海が俺の腰を掴んでぐっと奥を突いた。
「ああ!そんな奥入れ…ぁあ…頭が…だめにな…」
「光留さん…」
低い声を押し殺しながら大きな動きで何度も擦られていると、もうワケが分からなくなって縋るように後ろ手に海の尻を掴む。
そうすると余計に海の動きを知らされて、奥の方の仄かな痛みも羞恥心までもが快感に変わって追い込まれてしまう。
「バカ…ああっもう…」
「押さえないでください…ほら、こうして」
海は俺の手を取って俺の前に回し、自分の手で俺のものを握ると搾り出すような手つきで愛撫を始める。
すると中の感覚が何やらおかしい。
(何だ…?なんかヤバいぞ…?)
何か自分の知らないものが襲い来るのを感じて唖然とするも、
「ああ…やべ、気持ちっ…」
海の声の方に反応して正体を掴めなかった。
「あ…光留さん…」
海が限界に近付いたのだと思うと途端に脳が沸騰して、前への愛撫が効いてくる。
「ああっだめだ…!もうイ…!」
「声エロ過ぎ…。ん…俺も…いいっすか?光留さんの奥でイって…」
胸をぴったりと俺の背に付けて抱いたまま段々と腰を使い始めた海に、恐ろしい程に優しく理性が壊されていく。
「ああっちょっ!ああ…あ!!海!」
喉を絞るような声が出て、必死に赤い髪を掴む。
「もうイ…ク?いいっすよ。光留さん…!ほら…!」
今は男らしいような子供っぽいようなその声が時折詰まって、興奮する。海の手は速くなり中を突くリズムも乱れ、身体も脳も掻き乱されるように一気に正気が吹っ飛ばされる。
「んっんん!あ、イっ…イク!あっあっああっ!ああっ!」
「ああ…すげ…!」
俺の腰がビクビクと跳ね、海の手がそれを押さえ付けて更に奥を突く。
「あああっ…!んん!!」
激しい衝撃に歯をくいしばりながら、海に握られた自分をひたすらに見続ける。
「もう…!もおイクっ…!」
「ヤベ…マジで気持ちいい!」
海に露骨に中を突き回されながら、俺のものから白濁が飛び出すのを見ると、
「あっ!あああ!!海!」
急な快感に咄嗟に尻を突き出してしまい、もっと奥の狭い場所を貫かれ、その痛みと共にあの謎の感覚がまた目覚めそうになった。
(これ以上は駄目だ…!!)
本能なのか何なのか、もっと激しく突かれてしまいたいという期待と、未知に対する恐怖が交錯する。
「もう…イ、ケ…!海!」
「光留さんっ…!!」
暫くはどちらも動けずに、息だけが激しく交じった。
(さっきの…何だったんだ?)
何かのギアがもう一段階あったような不思議な違和感が尻にあるが、海の手が肩に乗って我に返る。
「…光留さん、大丈夫っすか?」
俺はコクコクと頷く。
「最後やっちゃたっす、すみません」
またコクコクと頷いて、枕で顔を拭ってから後ろに居る海の髪を撫でた。
ずっと堪えていた海が、快楽に負けたというのは案外悪い気分では無い。
(それでも君は良心的だったさ)
そしてまた暫く経ってから、海はゆっくりと俺の中から抜けた。
「ホントに平気っすか?」
背を抱き締めながら心配そうに訊かれ、俺もやっと身体を仰向けにして天井を見た。
「だ…大丈夫だ」
「それならいいっすけど」
一安心した海がコンドームの処理をするのを見る。
「…って、そんなに!?」
「え?ちょっ、ははははは!」
「ああ…ごめん」
(そんなに!?)
「ヤバいくらい興奮したんで、めっちゃ出ましたね俺」
海は顔の前にそれを掲げ、好青年の照れ笑いで揺らした。
(………あ…可愛い)
それをティッシュに包んで摘んだまま、ゴミ箱に入れていいかと仕草で問うて、俺が頷くとポイと指を離した。
「さあ、シーツ…変えようか…」
俺も装着するべきだったと後悔していると海が頬にキスをした。
俺もその頭を抱えて胸に引き寄せる。
「先に身体だけでもシャワーしますか?」
「そうだな」
身体が酷く怠い俺を知ってか、海は微笑んで言う。
「俺が連れてってあげますよ」
「よろしく」
「キスしてくれたらっすよ?」
海は自分の鼻を指でちょんと押した。
不思議な気分だ。
セックスをリードされたのも初めてだった上、こんな風にいつまでも寝そべっているのも、今までならあり得なかった。
「おいで」
腕を伸ばして両手で頬を挟むと鼻の先っぽにキスをする。海の目は嬉しそうに笑って、俺の首にキスを返した。
「ガウン汚れるし、このまま行きましょっか」
「ああ。全裸でいいな、もう」
足首に引っかかっていたガウンの紐をぺっと蹴った。
「あっははは!!」
女の子の前では絶対にしないだらしなさだ。
今日、これまでの人生の全てを棒に振るものだと思っていた俺は、
(大してショックも無いもんだな)
俺のままだった。
その後は風呂場で海と『イチャイチャ』しながら丁寧に身体を洗ってもらい、自分がシーツを取り替えると言う海にあっさり甘えてリビングで待ち、さっぱりとキレイに仕上がったベッドで海と寝転んだら最後、いつの間にか眠ってしまった。
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BL短編まとめ(甘い話多め)
白井由貴
BL
BLの短編詰め合わせです。
主に10000文字前後のお話が多いです。
性的描写がないものもあればがっつりあるものもあります。
性的描写のある話につきましては、各話「あらすじ」をご覧ください。
(※性的描写のないものは各話上部に書いています)
もしかすると続きを書くお話もあるかもしれません。
その場合、あまりにも長くなってしまいそうな時は別作品として分離する可能性がありますので、その点ご留意いただければと思います。
【不定期更新】
※性的描写を含む話には「※」がついています。
※投稿日時が前後する場合もあります。
※一部の話のみムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
■追記
R6.02.22 話が多くなってきたので、タイトル別にしました。タイトル横に「※」があるものは性的描写が含まれるお話です。(性的描写が含まれる話にもこれまで通り「※」がつきます)
誤字脱字がありましたらご報告頂けると助かります。

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