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第一章
34 危険な接触
しおりを挟む佐倉side
皆で食事会の後、俺は想と連夜の借金返済の契約書の話を聞いて衝撃を隠せなかった。
(ちょっと待って、俺も多部ちゃんと契約書結んだよね? ま、まさかね……)
多部ちゃんに限って連夜みたいな内容は無いよね? あ、あんなエッチなの……もう! エッチだぞ佐倉! 何考えてるんだ!
でもさ、よく考えたら俺まだ毎月返せない時のお手伝い内容を聞いてないよね?
……不安になって多部ちゃんを見るけど、いつも通りにっこり笑顔だった。
とりあえず家に帰ってから確認しないと。
しばらく俺がフリーズしてるうちに辰巳と輝久は帰ってたし、その後は想達と何話したか、どうやって帰ってきたかは記憶がないけど、気付けば多部ちゃんちの自室に居た。
「多部ちゃん? どこにいるの?」
家中探してるんだけど、外出したみたいでいない……。
仕方ないからまた明日確認するしかないか。
俺はザワザワする胸を抑えながら眠りに付いた。
結局次の日も多部ちゃんと契約書の話は出来ず、想をお迎えに行く時間になっていた。
今夜は必ず聞いてみよう! と意気込み出発したんだけど、今夜はそれ以上の事が起こり当然聞けなかった事はこの時の俺はまだ知らなかった。
――――――――
想side
「想! お疲れ様~迎えにきたよ?」
「ありがとう、ちょっと準備するな~」
あわただしく閉店をすると佐倉君と一緒に歩き出す。
久々に佐倉くんと帰るけど、今日は車がいつものとこに停められへんくてちょっと歩くみたいやった。
(これはこれで楽しいな)
昨日の夕食会の後、めっちゃ微妙な感じで別れたし……よかった。
(やっぱあの契約書の話で引かれてるんやろか? その、エッチすぎるし……あーもう! 恥ずかしすぎるて)
何となくいつもより元気がない佐倉くんに何で元気が無いか尋ねたら、多部ちゃんとの契約書の事を聞かされた。
(た、多部ちゃん? まさか! 連夜さんとはちゃうやろうけど……お手伝いか……なんやろな)
あんな爽やかで優しい人やし、きっと変な事は考えてないはず。佐倉君のことしっかり考えてるやろ~きっと。
「なあ、佐倉くん。せっかくやし久々に散歩でもしやん?」
「うん、いいね」
「やったー! あ、佐倉くん、あれ食べよ」
「クレープ?」
「うん! 久々に食べたい」
「うわあ~ 俺も食べる!」
二人でキャッキャ言いながら、女性達の列に並んでクレープを買う。
楽しくてちょっと舞い上がってたのは内緒やで。
「うわ、めっちゃ美味しそう」
「あ、そこのベンチに座ろ~」
「オッケー!」
「うわぁ! めっちゃ美味しいね、想」
「ほんまや~! 久々に食べたー! あ、しょう君に持ち帰り出来るかな?」
「にゃははは、彰太喜ぶだろうね」
佐倉くんとはしゃぎながらクレープを食べて、そろそろ帰ろうかと車の方に歩き出した時、後ろから声をかけられた。
「あれ、想くん?」
「あ、ほんとだ~」
声をかけてくれたのは以前よく店に来てくれていたお客さんの二人やった。たしか、一人はスポーツ選手やったような……
「うわぁ、久々ですね? 最近店に来てくれへんから、忙しいんかと思ってました」
「えっ……忙しいと言うか」
「知らないの? 俺達、想くんのお店出禁になったんだよ?」
「そうそう、俺達、結構巷じゃ有名人なのにねぇ? なんでだろ」
「え? そうなんですか? なんでやろ……」
何でかわからんけど、連夜さんが俺に色目を使ってるお客さんを出禁にしたって言ってたけど、そんな感じ全然せーへんけどな?
「そ、想、そろそろ急がないと」
「おん! せやなー」
あれ? 何か気付けば人通りが少ない路地にいる。
「っちょっと! 離して……」
「ねえ、想くんのお友達? 君も可愛いね?」
(……ちょっとやばい雰囲気や、話そらして、佐倉君と早く帰ろ)
「もう! 浮気ですか~? 出禁とか俺よく分からんけど、また店に来てくれて大丈夫なんで……ほな、佐倉くん行こか~」
「うん……じゃあ失礼します(帰ったら多部ちゃんに報告しないと)」
適当にあしらってさよならを告げると、ぐっと後ろから身体を抱きしめられた。
(き、気持ち悪い……嫌や)
「っ……はな、してっ……」
その瞬間、布を嗅がされて意識が遠のいていく。
ごめん、佐倉君……逃げて。
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