溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

33 再会

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 佐倉side

 ―― ピンポーン ――

「あれ、誰だろ? ちょっと待っててね~」
 多部ちゃんと談笑して、そろそろ夕食会に向おうとした時、来客が来たみたいで急に玄関が騒がしくなった。

「多部ちゃん? 誰か来たの?」
「久しぶりだな、佐倉」
(嘘だろ? そんな、まさか……)
「……えっ! 辰巳? て、てるひさ?」
「っ……佐倉! やっぱり佐倉だよな!」
「お前、何してたんだよ!」
「……ずっと、ずっと探してたんだからな? グスッ……ばかっ!」
「てる」
 辰巳が輝久を抱きしめながら慰めている。それを見たのと同時に、あ、二人はくっついたんだなって安心した。
「……ご、ごめん。突然居なくなって……」
「ホントだよ! 佐倉のばかっ……でも、生きててくれてよかったよ」
「ああ、生きてりゃいい」
「……うんっ、うん! グスッ……うわ~ん! 二人ともごめんっ」
 辰巳と輝久に抱きつきながら俺はしばらく泣いてた。
(だけど、何か忘れてるような、、、あ、多部ちゃんだ! ごめん)
「えっ、えっと辰巳さん達と佐倉って知り合いなの?」
「ああ、俺達は学生時代の同級生なんだ」
 そういって俺達の関係を多部ちゃんに説明してくれた。
 そして、俺もなんで二人の前から姿を消したのか、そしてその後どう生きて想達と出会ったのかを話した。あの日……俺達が大学生の時、突然実家からの電話で久々に実家に帰った事を今でも覚えている。そこいたのは憔悴しきった両親の姿。実家の会社が悪い奴に騙され、多額の借金を背負いもうどうしようもないことを告げられた。そして次の日自分たちの保険金で俺と従業員達にと、二人は自らの命を絶った。
 悲しみと絶望の淵に居た俺だったけど、前を向こうとしていた矢先、両親の残してくれた俺のお金は親戚に搾取され、その日暮らしで逃げるように生きてきた。
 そんなある日たまたま訪れた猫カフェのオーナーに気に入られそこで働き始めた。事情を全て知っている猫カフェのオーナーに拾われ、ようやく幸せに過ごすことができていた。でも、幸せも続かず……大好きなオーナーが病気で余命が幾ばくも無いのがわかる。そんなオーナーから店を譲り受け、ようやく寂しさからも立ち直った時にまた借金取りに猫カフェを奪われ、つかいっぱしりとして連夜の叔父の元で過ごしていた。
 本当は変態に売られそうになっていたけれど、彰太のお気に入りということで何とかボスの元で暮らしていたんだよな~、ははは。
(初めてこんなに全部話したかもな)
「……」
「ば、ばかやろう! なんで言わなかった?」
「ホント佐倉は馬鹿! 大馬鹿野郎」
「俺達に言えよ! どんな佐倉でも見捨てる訳ねーだろ」
「馬鹿」
「うっ……ごめん……」
 辰巳と輝久への申し訳無さで地面に埋まりそう…

「まあまあ、二人とも落ちついてよ。過去はどうあれ、こうやって皆会えたんだから……」
「た、多部ちゃん」
 俺の肩をギュッと抱きながら二人にそういってくれる。
「……確かに、多部ちゃんの言う通りだね」
「ああ。佐倉、今後は何かあったら絶対言えよ? 絶対助けるから」
「う、うん! 二人共ありがとう」
「よかったね」
「うん」
 多部ちゃんがにっこり微笑むから顔が熱くなってきたのは内緒だよ?
 
 その後はしばらく夕食会の事も忘れて皆で楽しくおしゃべりしてた。
 辰巳と輝久が夫婦になってたのにはちょっとびっくりしたし、俺でも聞いた事ある会社の会長なのには、またまたびっくりしたけどね。

 ――――――――

 輝久side

 ずっとずっと会いたかった佐倉に出会えて本当に嬉しかった。きっと辰巳も同じはず……
 佐倉が歩んで来た過去はあまりにも辛すぎだったけど、またこうやって笑い会える時間が出来た事には感謝しかない。
(想、皆……連夜を止めてくれてありがとう)
 しかし、何か忘れてるような……
「あ、やばいっ! 時間忘れてた」
「やべっ、櫂、絶対怒ってるじゃん」
「辰巳、行こっか! あ、そういえば佐倉~ネコカフェしたいんだったら俺達のとこで雇おうか?」
 店無理やり潰されたって悲しそうに言ってたし、やれたら嬉しいだろうなぁ。
「ああ、俺達の新事業にするし、出資するよ? やれば?」
 辰巳も賛成みたいだ。
「二人共ありがとう! でも多部ちゃんが、お金貸してくれたから想のカフェの横に建てるんだ!」
「え……」
「多部が……」
 ちらっと多部ちゃんを見れば余計な事は言うなよのオーラを纏いながら笑顔で俺達を見つめる。
(怖えぇぇぇ……ガチで怖えぇ)
 チラッと隣を見れば辰巳もきっと同じ事考えてる顔をしていた。
「ふふふ、佐倉とはさっき契約書も結んだし、輝久さん達には頼らなくても大丈夫だよ? ね、佐倉?」
「うん! 多部ちゃんが色々考えてくれて猫カフェ以外でもお手伝いで返していけるようにしてくれたんだぁ」
 (ちょっと待て! 多部ちゃんは連夜以上に腹黒だよ? お手伝いって何? ヤバイやつ?)
 (怖い怖い怖い……多部は絶対ド変態だもん)
 辰巳と目で会話をしながら恐る恐る佐倉に尋ねる。
「ち、ちなみに……お手伝いの内容は?」
「えっとね~あれ? 多部ちゃん?」
「まだ佐倉にも内容言ってないんだよね? 二人の秘密! ね? 佐倉?」
「う、うん」
 (ひぃっ! 内容を言わずに契約書で縛るとか……これ本気のやつじゃん)
「……そ、そっか、佐倉頑張れよ」
「な、なにかあったら……言えよっ」
「えぇ~二人とも心配しすぎだよ? 佐倉? 何もないよねぇ? 猫カフェ楽しみだね(圧)」
「う……」
 多部ちゃんのものすごい圧に耐えきれず、先に行ってると伝えて急いで家を出る。
 連夜に佐倉を引き取ると頼み込んだのといい、一緒に住んだのといい、猫カフェをする為にと自分が店舗を買い契約書を結ばせたのといい……
(佐倉……とんでもない奴に気に入られてしまったな)
 多部ちゃんは一見普通に見えるけど、マジで色々と連夜以上だと思うよ。

 佐倉の骨は拾ってやろうと辰巳と誓い合い、連夜の屋敷へと向かった。

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