35 / 44
第一章
31 親子
しおりを挟む櫂side
今日はパパとママと一緒に連夜の家に行くんだ~。
昨日の夜に突然、ママが想君に会ってみたいって言うもんだから、ママ大好きなパパは二つ返事でOKをしたってわけ。
まあ、俺も皆に会えるの嬉しいから今日は猛スピードで仕事を終わらせたよ。
「想くんってね、めっちゃ可愛いしあの連夜が溺愛してるんだよ~? 信じられないでしょ」
「櫂から毎回聞くけどホント? 信じられない……あの連夜がデレデレしてるの?」
「うん! もうね嫉妬の塊! でも想くんが話しかけたらすぐデレるから笑っちゃうよね~」
「ふはっ、あの連夜がねぇ~」
ママもパパも半信半疑だけど、あの状態の連夜を見たらきっと納得するはずだよ。
「しかも、想くんに大キライになる! って言われて、最近佐倉君って言う人を雇ったんだよ」
「ん? 佐倉?」
「佐倉……いや、たまたまかも知れない……」
「佐倉って……」
「? どうしたの?」
あからさまに二人が動揺してるけど……どうしたんだろ?
「も、もしかして佐倉って、佐倉涼介じゃないよね?」
「……ちょっと小さくていつもニコニコの!」
「ヒヨコみたいな金髪でっ」
「笑うとえくぼが出来て目が真んまるで、天真爛漫!」
「えっ……? そんな感じだけど? たしか写真撮ったから……あ、あった! この人だけど」
俺はこの前撮った佐倉君の写真を見せる。
「っ……知ってるも何も……」
「俺達ずっと佐倉を探していたんだ!」
「え……」
「櫂、今俺は猛烈に嬉しいよ! 早く連夜のところに行こ」
「ああ、急ぐぞ」
そう言うと法定速度ギリギリのスピードでパパは運転しだした。
車内で聞いたんだけど、なんとパパとママは佐倉くんと大学の同級生だったみたい! 同じサークルに所属していて(部員三人)仲良しだったけど……ある日何も言わずパタッと居なくなった佐倉君と音信不通になってしまい、二人は探しまくったけど見つからなくて、ずっと心残りだったんだって。
(あれ? 俺、なんか余計な事を言っちゃったかな? まあいっか、二人とも嬉しそうだし)
こうして俺達は連夜の家へと向かった。
――――――――
佐倉side
多部ちゃんが迎えに来てくれた後、もう一回家を出て想を迎えに行こうとしたら、連夜が行くからと言われそのまま家にいる。
多部ちゃんに話があるからって言われてさっきからソファに座って待ってるけど……なんだろ?
「佐倉~ごめんね、待たせて!」
「全然待ってないけど、どうしたの?」
「あのね、想のお店の横が立退きしたんだけど……知ってる?」
「うん、最近挨拶に来てたよ? なんか奥さんが身体を壊したから田舎でゆっくりするんだって~あの店主さんすごくいい人だった」
「そうだね、たまに想の店にも来てたもんね?」
「うん。そっか……もう売っちゃったんだ……」
「そうだね……えっとね? ここからが本題なんだけど佐倉さえ良ければ、そこで猫カフェしない?」
「え……」
(一瞬何を言われているのか分からなかったけど……嘘だよね?)
びっくりしている俺を見てクスリと笑いながら多部ちゃんは続ける。
「佐倉に今はまだ買えないと思うから、一旦土地と建物は俺が買って佐倉は俺に返済をしていく形を取ろうかと思ってるけど……どうかな?」
「っ……」
ポロリポロリと涙が溢れ出る。
「佐倉? 嫌だった?」
「い、嫌なわけないじゃん! っ……本当に? 本当にいいの? また猫カフェできるの? グスッ……」
「うん! 連夜にも了解とってあるし……想の事も守りながらになるかもだけど、佐倉さえ良ければ」
「……う、うん! やりたい……やりたい多部ちゃん!」
「ふふ、よかった。じゃあ契約書書いて貰っていいかな?」
「うん!」
あんまり難しい事は考えてなかった俺は、ただただ猫カフェがまた再開出来る喜びを噛み締めていた。
「ふふふ……可愛い。じゃあ簡単に説明するね?」
多部ちゃんの契約書の内容は今ひとつ理解できて無いけど、だいたい土地と建物で一億円ぐらいするらしく、毎月百万円ずつ多部ちゃんに返していけばいいって事らしい……。
(でも、月に売上百万円とか……無理だ)
「月に百万円は猫カフェだけじゃ流石に無理だよ……ごめんね」
「あ、もちろん厳しいよね? だからそれ以外で想の事とか、俺のお願いとかお手伝いしてくれたら返せるようにするよ~利子も無しだからきちんと毎月それで返してくれたらいいよ」
(お、お手伝い? 肩もみとか? お茶入れるとか? マッサージ? 運転手かな?)
「どうする? どんなお手伝いがあるかの詳しい内容は後でまとめた契約書を一部渡すから、その中から選んでくれたらいいし……」
「うん……わかった! それで大丈夫!」
多部ちゃんの事だし、きっと色々考えてくれてるはずだし大丈夫だよね!
俺は多部ちゃんに契約する旨を伝えると、凄く嬉しそうな多部ちゃんにギュッと抱きつかれたので、ドキドキしたままでこの後も詳しく内容を読むことも無く自分の名前を契約書に記入した。
「佐倉ありがとう! よかった……」
「?」
なぜか多部ちゃんにありがとうと言われて訳がわからなかったけど……
俺はこの後、嫌でも知る事になったんだ。
――――――――
多部side
俺は今程自分を褒めたい事はないよ! やっぱりタイミングって大切だよね~
佐倉……逃がさないから覚悟しててね?
皆と楽しく夕食を囲みながらそんな事を考えていたのはもう少し先のお話し。
32
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
未経験でも出来ますか?
七々虹海
BL
両親が事故で死んでしまった。
俺、島野瑞希。残されたのは多額の借金。
借金を返せとやってきてのは、高校時代の同級生…鈴木遼一で。
借金返済の為に男性向けソープで働けって……それってなに?
瑞希と遼一、視点が変わる時はページを変えていきます。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる