溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

31 親子

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 櫂side

 今日はパパとママと一緒に連夜の家に行くんだ~。
 昨日の夜に突然、ママが想君に会ってみたいって言うもんだから、ママ大好きなパパは二つ返事でOKをしたってわけ。
 まあ、俺も皆に会えるの嬉しいから今日は猛スピードで仕事を終わらせたよ。
「想くんってね、めっちゃ可愛いしあの連夜が溺愛してるんだよ~? 信じられないでしょ」
「櫂から毎回聞くけどホント? 信じられない……あの連夜がデレデレしてるの?」
「うん! もうね嫉妬の塊! でも想くんが話しかけたらすぐデレるから笑っちゃうよね~」
「ふはっ、あの連夜がねぇ~」
 ママもパパも半信半疑だけど、あの状態の連夜を見たらきっと納得するはずだよ。
「しかも、想くんに大キライになる! って言われて、最近佐倉君って言う人を雇ったんだよ」
「ん? 佐倉?」
「佐倉……いや、たまたまかも知れない……」
「佐倉って……」
「? どうしたの?」
  あからさまに二人が動揺してるけど……どうしたんだろ? 
「も、もしかして佐倉って、佐倉涼介じゃないよね?」
「……ちょっと小さくていつもニコニコの!」
「ヒヨコみたいな金髪でっ」
「笑うとえくぼが出来て目が真んまるで、天真爛漫!」
「えっ……? そんな感じだけど? たしか写真撮ったから……あ、あった! この人だけど」
 俺はこの前撮った佐倉君の写真を見せる。

「っ……知ってるも何も……」
「俺達ずっと佐倉を探していたんだ!」
「え……」
「櫂、今俺は猛烈に嬉しいよ! 早く連夜のところに行こ」
「ああ、急ぐぞ」

 そう言うと法定速度ギリギリのスピードでパパは運転しだした。
 車内で聞いたんだけど、なんとパパとママは佐倉くんと大学の同級生だったみたい! 同じサークルに所属していて(部員三人)仲良しだったけど……ある日何も言わずパタッと居なくなった佐倉君と音信不通になってしまい、二人は探しまくったけど見つからなくて、ずっと心残りだったんだって。

 (あれ? 俺、なんか余計な事を言っちゃったかな? まあいっか、二人とも嬉しそうだし)

 こうして俺達は連夜の家へと向かった。

 ――――――――

 佐倉side

 多部ちゃんが迎えに来てくれた後、もう一回家を出て想を迎えに行こうとしたら、連夜が行くからと言われそのまま家にいる。
 多部ちゃんに話があるからって言われてさっきからソファに座って待ってるけど……なんだろ?

「佐倉~ごめんね、待たせて!」
「全然待ってないけど、どうしたの?」
「あのね、想のお店の横が立退きしたんだけど……知ってる?」
「うん、最近挨拶に来てたよ? なんか奥さんが身体を壊したから田舎でゆっくりするんだって~あの店主さんすごくいい人だった」
「そうだね、たまに想の店にも来てたもんね?」
「うん。そっか……もう売っちゃったんだ……」
「そうだね……えっとね? ここからが本題なんだけど佐倉さえ良ければ、そこで猫カフェしない?」
「え……」
(一瞬何を言われているのか分からなかったけど……嘘だよね?)
 びっくりしている俺を見てクスリと笑いながら多部ちゃんは続ける。

「佐倉に今はまだ買えないと思うから、一旦土地と建物は俺が買って佐倉は俺に返済をしていく形を取ろうかと思ってるけど……どうかな?」
「っ……」
 ポロリポロリと涙が溢れ出る。
「佐倉? 嫌だった?」
「い、嫌なわけないじゃん! っ……本当に? 本当にいいの? また猫カフェできるの? グスッ……」
「うん! 連夜にも了解とってあるし……想の事も守りながらになるかもだけど、佐倉さえ良ければ」
「……う、うん! やりたい……やりたい多部ちゃん!」
「ふふ、よかった。じゃあ契約書書いて貰っていいかな?」
「うん!」
 あんまり難しい事は考えてなかった俺は、ただただ猫カフェがまた再開出来る喜びを噛み締めていた。
「ふふふ……可愛い。じゃあ簡単に説明するね?」
 多部ちゃんの契約書の内容は今ひとつ理解できて無いけど、だいたい土地と建物で一億円ぐらいするらしく、毎月百万円ずつ多部ちゃんに返していけばいいって事らしい……。
(でも、月に売上百万円とか……無理だ)
「月に百万円は猫カフェだけじゃ流石に無理だよ……ごめんね」
「あ、もちろん厳しいよね? だからそれ以外で想の事とか、俺のお願いとかお手伝いしてくれたら返せるようにするよ~利子も無しだからきちんと毎月それで返してくれたらいいよ」
(お、お手伝い? 肩もみとか? お茶入れるとか? マッサージ? 運転手かな?)
「どうする? どんなお手伝いがあるかの詳しい内容は後でまとめた契約書を一部渡すから、その中から選んでくれたらいいし……」
「うん……わかった! それで大丈夫!」
 多部ちゃんの事だし、きっと色々考えてくれてるはずだし大丈夫だよね!
 俺は多部ちゃんに契約する旨を伝えると、凄く嬉しそうな多部ちゃんにギュッと抱きつかれたので、ドキドキしたままでこの後も詳しく内容を読むことも無く自分の名前を契約書に記入した。
「佐倉ありがとう! よかった……」
「?」
 なぜか多部ちゃんにありがとうと言われて訳がわからなかったけど……

 俺はこの後、嫌でも知る事になったんだ。

 ――――――――

 多部side

 俺は今程自分を褒めたい事はないよ! やっぱりタイミングって大切だよね~
 佐倉……逃がさないから覚悟しててね?

 皆と楽しく夕食を囲みながらそんな事を考えていたのはもう少し先のお話し。



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