溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

30 ヒヨコ

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 多部side

(はぁ……駄目だ駄目だ)
 意識しないでおこうと思ってたけど、自然と目が追いかけてしまう。
 黄色のヒヨコ……

 天真爛漫さと、屈託のない笑顔、可愛い顔に真ん丸おめめ……それに金髪のふわふわ頭。
 想の店で出会って俺は佐倉にどんどん惹かれていった。
 想はもちろん守ってあげたいと思ったけど……佐倉に関しては守って、甘やかして、俺に依存させて……誰にも渡したくないんだよね~
 連夜にも、らしくなく必死に頼んで佐倉を許して貰ったんだけど、まさか監視役で一緒に住むとか……もうさ! 意識しちゃうじゃん? 
 一つ屋根の下にあの可愛いヒヨコがいるんだよ? 俺は毎日理性をフル動員させながら耐えているんだよ?
 しかも、佐倉の過去を知れば知るほど、誰にも渡したくないし自分に甘えて欲しいって思うんだけど……
 何か避けられてる? ぐらい部屋からは出てこない。
 
 こうなったら迎えに行って、アピールしまくるから、覚悟して?
「まさかこんなに誰かの事に必死になるなんてね……」
 おれは自嘲気味に笑いながら、想の店へと向かった。

 しかし……想が佐倉くんに何かしたら、大キライになるって言われた時の連夜の顔は最高だった! あの二人もやる事やってるんだから、素直になればいいのに……連夜は好きな子に意地悪するタイプだし、想はネガティブに捉え過ぎだし。
 まあ、それが面白いんだけどね? ふふふ
「何か……多部ちゃん悪い事考えてる?」
 あ、ヤバッ! 佐倉には何故か気付かれちゃうんだよね? じゃあ、俺の気持ちも気付いてよ~って感じだけど……
 まあ、その鈍感さも可愛いけど。
 絶対逃さないから覚悟しててね?

「佐倉の事考えてただけだよ?」

 ニコリと微笑むと、その瞬間、顔が真っ赤になる佐倉を見て内心ニヤニヤが止まらなかった。
(はあ……いっぱい恥ずかしくさせて、困らせて、めちゃくちゃ甘えさせて俺の事だけをずっと考えさせたい)
「ふふふ、顔真っ赤だけどどうしたの?」
「……っ、な、なんでもないよ! 暑いからかなぁ~」
 ほんと可愛いなぁ……
 この手は使いたくなかったけど、連夜が想にしたように契約書で縛りつけようかな?猫カフェ再建の話も、連夜に許可は取ってあるし。
 もちろん土地も建物も俺が出すから……でも……ふふふ、聞いたら佐倉はどんな顔するかな?
 とりあえず、今日帰ったら話してみようかな。

 俺は今夜の事を考えるとワクワクが止まらなかった。

 ――――――――
 
 連夜side

 想の店に迎えにきたけれど、相変わらずうっとりしながらコーヒーを淹れてる。
(はぁ……可愛いが過ぎる)
 つくづく想に出会ってからの俺は甘すぎる。
 想に嫌われたくない! ただそれだけで佐倉くんくんを雇っちゃったし……
 あの二人、本当に気が合うみたいで、仲が良すぎてめちゃくちゃ苛つくし、羨ましい。

 だから……佐倉くんは、多部ちゃんに早く喰われてよ。あの多部ちゃんが必死で頼んで来たとか、笑えるっしょ? 他人なんて寄せ付けない多部ちゃんだよ? 
 俺より腹黒だから絶対囲う理由を何か考えてるはずだろうし……

 そういえば想の借金もだいぶ減ったんだけど、この先どうしようかな……想も俺の事嫌いではないと思うし、このまま一緒に居たいと思ってるはずだけど?

(あ、いい事閃いたかも)

「あ、連夜さん、いらっしゃいませ」
「……ん」
「もうすぐ終わるし、ちょっと待っててな?」
「わかった。そういえば、今日辰巳さんと輝久さんが家に来るから想を紹介しなきゃね」
「え……辰巳さん達って櫂の親御さん達やんな? だ、大丈夫やろか? すでに緊張してきた」
「ふふふ、ニ人共良い人達だし大丈夫だよ」
 まあ、想を買った時はモノじゃない! ってめちゃくちゃ怒られたけどね~櫂がきっと上手く話してるだろ。多分……

 不安そうにしている想の手を後部座席で握りながら、今後も想との関係を縛りつけれるようにさっき閃いた事を実行しようと頭の中で画策していた。
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