溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

27 許さない※暴力表現あり

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 連夜side

 あの後すぐに叔父から想を返して欲しければ、九条グループを退き自分に全てを譲れという連絡がきた。
 「お久しぶりですね、いいですよ? では権利書を持って伺います」
 俺があまりにも素直に応じるので、電話口の叔父は少し驚いているように感じた。
(悪いが、俺は一度自分のモノになったものを渡す気はない。九条の権利も想も……)
 叔父の浅はかな考えに失笑しながら、夏目さんと多部ちゃんにこの件を伝え、指定された屋敷へと急いだ。

 しかし、さっきから聞こえてくる盗聴器の内容から察するに……
 どうやら想も彰太も殴られボロボロになっているようで、想が身を呈してあの二人を守ったようだ。
 自分を傷付けたら想を愛している俺が怒るだなんて……。
 当然だろ?
 本当は今すぐにでも駆け寄りたいが、まずは叔父を潰してからだ。
「はははは、怒りで震える事ってあるんだな?」
「連夜……」
 夏目さんと多部ちゃんに心底驚かれるが、深呼吸をして落ちつく。
 
 まあ、叔父が俺のモノに手を出した事への後悔をする頃には、この世に叔父は居ないだろうと思うと笑えたけどな?

 ◇◇◇◇

「連夜、大きくなったな? はるばる来てもらってすまないね」
「ふ、当然だろ? で?」
「ふんっ、相変わらずムカつく男だな兄さんに似て」
「なんとでも」
「では、持ってきて貰った権利書を見せてもらおうか……」
「……その前に想と彰太は無事か?」
「ああ、当然だ」
「手出しもしていないな」
「ああ」
「そうか……ははははははは、茶番はよせ!」
「ッ……」
 叔父もその側近たちにも緊張が走ったことが分かる。
「さて、ここに一枚の契約書がある……これからお前を地獄に落とすためのな?」

 ――――――――
 多部side
 
 想達が囚われてる屋敷に来て、連夜があの男と対面してからは、あっという間だった。
 あの男は彰太の時みたいに、想を人質にして脅すはずだったみたいだけれど……
 それは叶わなかった。
 俺も知らなかったんだけど、初めて想が来た日に書かせた契約書で想は連夜の所有物になっていた。
 つまり、連夜の所有物に手を出したのであれば、彰太を縛り付け結ばされていた協定は当然無効。お互いに所有物には手を出さないという契約の元この協定は成り立っていたので当然の結果である。
 え? 後から想を所有物にしたって? 協定の後に所有したものに対して手を出した場合は無効なんてどこにもそんなことは書いていないので、こちらから手を出せる……
(連夜はそこに気付いて、従う素振りをしたようだ)
 そこからはもう、武力行使で、めちゃくちゃだったよね? 想も彰太も、それに佐倉も殴られてたみたいで、ボロボロだということが分かりその様子が鮮明に見せられた途端、俺達も歯止めが効かずに久々に暴れちゃった。

「……終わったな」
「ああ、早く彰太に会いたい……」
「ほんと、二人とも相変わらずだね?」
 俺達三人はピンピンしているけど、床に這いつくばってるのは凄い人数……
 生きてるのかな? まあ、そんなのどうでもいいけど、とりあえず汚いから部下を呼んでお片付けしてもらおうと手配をする。
(しかし、連夜も夏目さんもあれだけ暴れて、息一つ乱れてないのは流石だわ)
「連夜、それどうするの?」
「あ? ゴミだし、捨てる」
「ふふ、こいつは腕……ってか命いらないよね?」
「当然」
 叔父だった物体と、想達に手を上げた男だった物体を足で踏みつけながら、連夜と夏目さんが話していた。
「……後はやっておくよ?」
「ありがとう、多部」

 一面血だまりの中、床から懇願が聞こえるけど……ほんと、どーでもいいんだよね。
(それより……佐倉大丈夫かな? ふふ、まさか自分が誰かを心配する日がくるなんてね……)
 
 金髪のふわふわ頭を思い浮かべながら、部下が来たらとりあえず顔を見に行こうと思い、俺は靴に付いた血をその辺りにいる屍で拭った。



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