溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

24 秘密

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「っ……た」
 痛みに何とか耐えながら、隣に投げ飛ばされた二人に声をかける。
 生きてるやんな?
「さ、佐倉君! あの、彰太くんで合ってるんかな? 二人とも大丈夫?」
「っ……いたたた、想……なんとか生きてるよ? 想も大丈夫?」
「……いってぇ……」
 二人が俺の代わりに何度も殴られて庇ってくれてたし、そこら中痛いけど……何とか大丈夫と伝えると佐倉君達はホッとしていた。
「よ、よかった……二人とも生きてて……それに、何とか動けそう?」
「……な、なんで、俺達庇った?」
「そ、そうだよ……俺達……想を騙して……グズッ//ご、ごめんね」
「な、泣かんといてや~二人共……俺な、二人共に生きて欲しかってん! やから、やから……グズッ//グズッ、あーよかったよぉ」
「うわぁぁん……ごめんね、想!」
「……すまない」
 謝ってくれるボロボロの二人を思わず抱きしめ、俺達三人は泣き崩れた。

 ◇◇◇◇
 
 もうしばらく泣いてたいけど、今がチャンスやし俺は涙を拭いて二人に話しかけた。
「あんな、あんな強気で叫んだけど……俺は連夜さんにとってそんな価値は無いと思うし、助けも来やんと思うねん! ……ちょっとは時間稼ぎ出来たけど、ここから逃げな!」
「ん、だいじょうぶ……きっと九条連夜も……夏目さんも来る」
「……どうだろうな」
 期待はしていないけれど、とにかく痛む身体を起こして立ち上がる……幸い三人共、骨は逝ってないみたいやった。
(よかった……)
 でも、ドアには鍵かかってるしどうしたらええんや?
 ……なんもわからん。
「あのさ、次にドアが開いたとき、俺が囮になるから想と彰太は隙をみて走って逃げて! 多分、真っ直ぐ行ったら……出口があるから運が良ければ逃げれるかも」
「……嫌や!」
「無いな」
 同時に応えた俺らの返答に佐倉君は驚いていた。
「いや、お前ら二人だけなら逃げれるから……」
「何言うてるん? そんなん嫌や! 三人で逃げるに決まってるやろ?」
「っ当たり前だ!」
「っ……なんで、こんな俺に……優しくするんだよ?」
 泣きそうな表情で佐倉君が言う。
「なんでっ……て、佐倉君が大切やからや! 最近知り合ったとか関係ない、騙したんも、きっと佐倉君なら理由があったんやろ? 俺の店で楽しそうにしてた佐倉君は、本心で楽しんでた佐倉君ちゃうん? やから、そんな辛そうに言わんといてや……」
「……ふえ~ん! 想……ごめんね……グズッ//」
 ワーワー泣き出した佐倉君を抱きしめて頭を撫でるけどなかなか泣きやんでくれへん。
 きっと色々抱えてたんやろな……もっと早く気付けばこんな苦しい想いを佐倉君にさせへんかったんやけどな……でも、よかった。

 置かれてる状況はめちゃくちゃ良くないけど、佐倉が泣いてるのを見ていつも頑張ってたんだなって思うと…自然と俺の頬にも涙が伝う。
「ゴホンッ!……あのさ……」
「あ、ごめん……彰太忘れてた」
「お前さぁ~」
 仲睦まじい二人を見てたら、さっき思い出した事言ってあげなと思った。

「あ……そういえば、夏目さんが何も言ってないて、さっき言ってたけどな……ちょっと思い出したんやけど、なんかある日だけ佐倉君の匂いが大切な人に似てるってこぼしてたわ……なんか気になってさ……」
 さっきまで泣いてた佐倉君も少し笑顔になって、横にいてくれる。
「……あ、もしかして夏目さんと最初に会った日かな? 何とも言えない顔してた時だよね~たしかあの日……彰太に黙ってカーディガン借りてたんだよね」
「っ、おまえ、また勝手に!」
「ごめん、ごめん!」
「あの、彰太さんとの関係って……その苗字も同じみたいだし……」
「しょうでいいよ、連夜からもそう呼ばれてるし……えっと想? でよかったっけ?」
 最初合った雰囲気とは全く違って、笑うその顔は優しかった。
「じゃあしょう君って呼ぶ……おれは想で大丈夫。えっと、しょう君は連夜さんらと知り合いなん? 夏目さんとも……」
「あ、それ俺も聞きたかった~」
 佐倉君も同じような疑問を感じてたらしい。
「ああ、連夜も亮もよく知ってるよ。もう隠しても仕方ないからな……」
 


 そう言うと、しょう君は昔の話を俺達にしてくれた……
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