溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

21 佐倉君

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 あの日から、連夜さんに抱かれる事も何度かあったりで……気付けばここに来てから二ヶ月が経つ。
 相変わらず毎日コーヒーを淹れる事と甘いキスは欠かさずある。
(ほんまに勘違いしそうになるからやめてほしい)
 まあ、そのおかげで最近、借金もかなり減った。
 でも……借金が終わったらこの生活も終るんやなぁって思うと何故か少し悲しい気持ちが芽生えるのはなんでやろか。
「はぁ……考えんとこ」
 店の開店準備をしながらそんなことを考えているとお客さんが来たみたいやった。

 ~ カラン♪ ~ 
「いらっしゃいませ~」
「想~やっほー! あれ? 今日多部ちゃんと夏目さんは?」
「今日はまだ来てないで~」
 あ、そうそう! この二ヶ月で変わったことといえば……この佐倉君と多部ちゃんと夏目さんが仲良くなった事もあるわ! 俺を挟んでカウンターでみんなでぺちゃくちゃ話してるうちにめっちゃ仲良くなったみたいで、嬉しい~!
 佐倉君はいつも笑顔で元気やし、俺も大好きや!

「二人の絡みはいつ見ても、子犬のじゃれ合いみたいだね~癒やされる」
 多部ちゃんがニコニコしながらそんなことを言ってたのを思い出す。
「ねーねー、想! 今日お店終わったら俺の店に来ない?」
「えっ? 佐倉君の?」
「うんうん! 想もこの間行ってみたいって言ってたから」
「うわぁ~行ってええの? それはぜひ行ってみたい!」
「あ、多部ちゃんと夏目さんは後で驚かせたいから、今日は想だけに見せたいんだけど……」
「うわっ! 秘密って事やな? もちろんええで~! それに今日はお客さんも少ないし十五時くらいに閉めて行くわ~」
「えっ! マジで? ヤッター」
「うん! 楽しみやわ~佐倉君のネコカフェ」
「よし! んじゃあ用意もあるし、一旦帰って迎えにくるね~あ、くれぐれも二人には内緒だよ?」
「もちろんやで!」
 佐倉君はネコカフェの店長さんしてるらしくて、よくネコちゃんの写真を見せてくれるねん! 可愛いでしょ~と甘々な顔で伝えてくれる佐倉君は正直ネコちゃんぐらい可愛かった。やって、金髪のふわふわな頭におめめがクリクリで……身体も小柄やし佐倉君がネコちゃんみたいやねんもん!
 でもな、何かふとした時に少し悲しそうな顔するんよな~なんでかは分からんけど……いつかそのことも聞けたらいいな~なんて思ってる。

 嬉しそうな佐倉君の背中を見送ると俺はまたコーヒを淹れ出した。

 ◇◇◇◇

 あの後、多部ちゃん達が来て、今日は佐倉来てないんかって聞かれて思わず笑ってもうたわ。
 出会ったん最近やのに、もうどんだけ仲良しやねん! 
 俺は嬉しくなりながら、今から行く佐倉君のネコカフェの事を伝えたいと思ったけど、サプライズで次回驚かしたほうが楽しいし、黙っておくことにした。
 多部ちゃんたちも一旦帰り、他のお客さんを接客してたら、気付けばもう時間は十五時前になってた。
「やば、おそなった~」
 急いで片付けしてCLOSEの札を店のドアにかけ、あわてて店から出ると丁度佐倉君が来てた。
「ごめんやで~待たせて!」
「全然いいよ~あ、ちょっと店まで距離あるから車で来てるんだ~」
「そうなん?」
「うん、この路地を出たところにあるから……」
「オッケー」
 一緒に少し歩くとそこには黒い車が停めてあった。
「どーぞ」
「お邪魔しま~す」
 そういうと俺は佐倉君の助手席に乗り込んだ。
「よっし、しゅっぱーつ!」
「しゅっぱーつ!」
「あ、想~これあげる~」
「うわ、ありがとう! 丁度めっちゃ喉乾いてたんや~」
 佐倉君は自分のカフェオレと一緒に俺の分も用意してくれてたみたいで、貰ったカフェオレを飲みながら助手席でおしゃべりして楽しく過ごしてた。

 でも……

(あれ? ……なんか、急に、眠気が……)
「佐倉君? なんでか、眠いんやけど……」
(あれ? 力も入らへん……なんで?)
「さ……っくら、くん……? な、んか……」
「……想……ご、めん……ね」


 そう言って泣きそうな佐倉の顔を見ながら、俺は意識を手放した。




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