溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

20 気持ち

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「んっ……」
 あれから目を閉じるとすぐにまた寝てしまったみたいや。
 目を開けるとイケメンのドアップがある。
「……おはよ、よく寝れた?」
「……」
「想、可愛い…今日は1日ベッドで過ごそうか?」
 チュッとキスをされ、微笑んで俺を見る甘い雰囲気に身の危険を感じる。
「や……今日は、店行くから」
「はあ……」
 意外にもあっさり身を引く連夜さんに少し驚きを隠せない。
 やって……昨夜は離して! って何度言ってもあかんかったのに……。

「っ……」
 思い出したら、ボンッ! って顔から火が出るみたいに赤くなってきたんがわかる。
「ふふ、思い出したの? ……可愛い顔して、エッチなんだから」
「っ! ちゃ、ちゃうわ!」
 はいはいって軽くあしらわれながら目尻にキスをすると連夜さんは立ち上がる。
(あ、下着は履いてくれててちょっと安心した)
 同じように俺もベッドから立ち上がろうとしたんやけど……
(何これ? 立ち上がれへん……嘘やろ?)
 しかも、お尻は痛いし……ひゃっ……ちょっと中から垂れる感覚がヤバいかも。
「ごめんごめん、奥までは綺麗に出来てないからな~よいしょっ!」
 そういうと連夜さんは軽々と俺をお姫様抱っこしてバスルームまで連れてきてくれた。
「あ、ありがとう……後は一人でするから……」
「ん? 駄目だよ? 掻き出してあげるから」
「えっ……な、何もせん?」
「そこは想次第かな~ふふ」

 とにかく早くシャワーを浴びたいし、しぶしぶ一緒に入ったけど……結局、湯船に浸かるまでに散々泣かされた。

 連夜さんのアホっ!

 ◇◇◇◇
 
 お風呂の後は、何とか理由を付けて連夜さんの寝室を出て……ようやく自室に帰ってこれた。
「疲れた……絶倫すぎるしやばいわ……あんなん続けられたら体力もたん」
 一人で呟きながら着替えると、また思い出して赤くなる。
「あーもう! 忘れよ!」
 俺は一心不乱に身支度をして、ヘロヘロになった腰を庇いながらよろよろとダイニングに行くと、そこにはすでに連夜さんと多部ちゃん、夏目さんが揃っていた。
 絶対あの二人は何があったかわかってるはずやけど……何も言わんといてくれる優しさに胸が熱くなってた。
 なのに! 連夜さんはめっちゃニヤニヤしてこっちを見てくるから、またしても昨晩の事を思い出してしまった俺は軽くプチパニックやった。
(ここはもう……無になるしかない)

 夏目さんの用意してくれた美味しい朝ご飯の味を忘れそうになるぐらい、黙々と食べてごちそう様をした俺は、そろそろ支度せな間に合わへんから……と、ダイニングを出ようとした時やった。
「あ、多部ちゃん、想の借金から一千万引いておいてね~」
「なっ……」
「確か計算合ってると思うけど……ねえ? 想?」
 ちらっと多部ちゃんと夏目さんが俺の方を見たんやけど、恥ずかしくて耳まで真っ赤になる。  
「……う、うん分かったよ」
 何でそんだけ減ったんかなんて、あの契約書作った多部ちゃんになら想像ついたやろな……
「あ、アホなんちゃう?」
「ふふっ、意外と早く返せるかもね?」
「……こうなったら、す、すぐに返したるわ!」
「ははははは」
 笑ってる連夜さんなんか放っといておれはいそいそと自室に帰った。

 
 (ポロリ……)
 自室に帰ると何故か涙が頬を伝う。
 俺は連夜さんに買われたっていう事実を突きつけられたみたいで、苦しい……
「こんな気持ちはいらんねん」
 
 俺は連夜さんに対する気持ちにそっと蓋をして、重い身体で出勤の準備をすることにした。

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