溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

15  お仕置き?

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 連夜side

 本当に想は悪い男だ。
 俺以外の誰にでも、ふらふらと可愛い顔を見せる。
 ただでさえ働く事を了承した事を後悔してるのに……夏目さんから報告があった内容にもイラ立ちを隠せない。
 あの後こっそり部下に見張らせたけど、常連らしき客の中には明らかに想を狙っているだろうという男や女がゴロゴロいた。しかし、本人は全く気になっていない様子で、誰にでもあの笑顔をふりまいている。
(なあ、全員殺っていい? バレないように出来るし)
 ……とりあえず監視カメラを付けるのは絶対だな。
 明日こっそり部下に付けさせるように手配をする。
 ……もちろん店のキッチンにも付けなきゃいけないな。
 こんな心配事が増えるのなら、あの時想が泣いても店を潰せばよかったと何度も思っているが、余裕を見せた大人な対応を今更覆すなんて俺のプライドが許さない。

 そんな事を考えながら仕事をしてたら、夕方になって閉店時間がギリギリになっているのに気付き、急いで運転手に想の店まで連れていくように指示をした。

◇◇◇◇

  「あ、すみませんもう終わりなんです」
 このイライラする気持ちもどこへ行ったかな? っというほどに可愛い想の声を聞き、顔を見たらスッキリしていた。
(これは……もう恋? 愛? いや独占欲や執着に近いのか?)
 とにかくこんな感情を誰かに抱くなんて……初めてだった。
 それぐらい想という人間に俺は惹かれ始めていた。でも、欲しいものは全て手に入れてきた俺が我慢するなんて自分らしくないと感じていた。
 
 今夜……想を抱こう……抱き潰そう! 
 お互いに気持ちも大事だけど、まず身体からもらうか……契約書もあることだし断われないでしょ? ふふふ、楽しくなりそうだ。
 早速連れて帰ろうとした時、櫂からメールが来た。
 内心舌打ちをしながらその内容を見ると、今すぐ想を櫂の所に連れて来ないと家に今日行くから~っという脅しのメール……。 

「はあ……仕方ねーな」 
 今夜は想をゆっくり堪能したい一心で、櫂の所に連れて行ったけど、案の定櫂に気に入られた想は少し目を離したすきに抱きしめられていた。
(どこまで人たらしなんだ)
櫂は俺を気にすることなく想を抱きしめてるし、電話では辰巳さんと輝久さんに想を無理やり囲ったことを怒られるしで散々だった……。

 こうなったら一日フラフラ他の男に笑顔を向けたお仕置きに……と帰りの車内でたまらず噛みつくようなキスをしたら、必死で応える想が可愛すぎた。
(あーこのままベッドに行きたいけど……最初だしね? 準備の時間あげるか)

 つくづく想には甘いな。

「ふふ……もっとキスしてたかった?」
「……っちゃう、わ」
 名残り惜しそうな唇を解放してあげると、想は真っ赤になりながら必死で俺を押して身体を離そうとする。
(あーもう食べたい)
 先ほど自分の決めた事を早々に破ってしまいかけ、俺は苦笑いした。

――――――――――――――

 想side
 
 車内で連夜さんに激しいキスをされ、もうガクガクやった……。
 アカン、このまま食べられそう! って思ったんやけど、意外にも家に着くと連夜さんはあっさり解放してくれた。

「想、ご飯食べよっか」
「う、うん」
 そういうと蓮夜さんは何事も無かったように食卓に付き、俺等は夏目さんが作ったっという夕食を食べ始めた。食卓には目の下の隈が取れた多部ちゃんと夏目さんもいる。

「えっ……美味し過ぎてやばい!」
「だよね~!」
 一口食べ思わず声が出ると、多部ちゃんが嬉しそうにしてくれていた。
「専属コックもいるけど夏目さんには負ける」
「またまた、連夜は誉め上手だね」
「本当だよ」
 連夜さんに褒められ、どことなく嬉しそうに微笑む夏目さんの手料理は本当にどれもこれも美味し過ぎた。
「久々にめっちゃいっぱい食べれそう……」
「ありがとう」
 無心でご飯を食べている俺を見て、
「喉につめるよ?」
「ッ//……」
 連夜さんが笑顔で俺を見てくるもんやから、また赤くなってしまった。
 イケメンに見つめられるのは全然慣れへん!

 話題をそらす為にも龍くんと櫂にあった話を夏目さん達にするけど、連夜さんはやっぱりニコニコして俺を見て聞いてた。

 賑やかな食事も終わり、俺はお腹いっぱいになってぼんやりしてた。
「夏目さん、ありがとう~ホンマ美味しかった」
「ありがとう。あ、多部ちゃんちょっと……」
「何?」
……

「……えっ!? ええ!!」
「んじゃあ、よろしくね?」
「……うん」
 蓮夜さんは多部ちゃんに何か耳うちをすると、めちゃくちゃ嬉しそうに近付いてきた。
「想、デザート食べたい?」
「う、うん」
「俺も……じゃあ準備しよっか?」
(えっ……何の? 準備いるデザートってどんなんやろ?)
「多部ちゃん、中綺麗にするやり方教えてあげてね? あ、でもお触りと見るのはダメ」
「な、中? 綺麗って?」
「ふふふ、デザートは想に決まってるでしょ? 俺が準備一緒にしてもいいけど……想は初めてだから、恥ずかしいでしょ?」
(え、ちょっと、待って……中って、、、まさか)


 ……無理、無理やっ!

「準備出来たら寝室においで?」
「無理や! できひん……」
 泣いて言うたけど、連夜さんは聞いてくれへん。
「ふふ……借金返済がんばろうね?」
「……っ」
(そうやった、俺はこの人に買われたんや。店のために何でもするって言ったもんな)
 そういうと蓮夜さんはチュッと俺の頬にキスして、耳元でセクシーに呟きダイニングを後にした。

「想……部屋に行こう?」
「う、うん……」
 しばらく放心状態だった俺は、多部ちゃんに声をかけられ泣きながらよろよろと立ち上がり一緒に部屋に帰った。

 連夜さんに逆らえへん事は、俺が一番わかってる。
    
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