溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

13 金色

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 はぁ……

 1日しか経ってないのに久々に来た気がする。
「夏目さん、ちょっと待っててな~すぐ準備するし」
「想、ゆっくりでいいよ……」

 俺は急いで店を開けて、キッチンの中に入って準備をする。
 なんやかんや夏目さんにお世話になってるから美味しいコーヒーを淹れたいしな~


 ~カラン♪

 
 コーヒーを抽出してるとドアが開いた。

「いらっしゃいませ~って、りゅうくんやん!」
「想~今日店開くん遅ないか?」
「あ、あ、ごめん、ちょっと寝坊や」
「ふーん、まあええけど。いつもの頂戴!」
「ほいほーい」

 この龍くんは、俺と上京した時期が一緒で、たまたま何回か一緒のオーディションで知り合ってからすぐに仲良くなった同じ関西出身の役者さんやねん。
 大手の芸能事務所に入ってて、夢破れて借金を騙されて背負った俺と違って頑張ってるみたいや~。
 昔から演技は抜群に上手かったし、最近そこそこ売れてきた俳優になってきたって本人が言うてたけど……ほんまかいな?俺あんまテレビとか雑誌見やんしわからんわ~

「は~、やっぱこの店は落ちつくなぁ」
「ありがとう、嬉しいわ~」
「あれ?そういや今日は多部ちゃん来てないやん?」
「あ、多部ちゃん。た、多部ちゃんは忙しいんやろな……」
 多部ちゃんは常連さんになってから、いつもカウンターでコーヒー飲んでたから自然と龍くんとも仲良くなってた。
 そういえば龍くん、多部ちゃんの事大企業の秘書ちゃうか?って言うてたけど、あながち間違ってないな。


「そっか、まあしゃあないな~イケメンが拝めるかと思ってたのに!」
「いや、目の前みて!俺いるやん?」
「ん?」
「いや、俺やん!」
「おい、想!エイプリルフールはまだ先やぞ?」
「おいっ、なんでやねん!」

「あははははっ」
 どこから笑い声がするんかと思ったら、夏目さんがケラケラと笑ってる。

「ごめん、ごめん、2人の掛け合いが楽しくて」
「夏目さん……ありがとう~嬉しいわ」

「ありがとうございます…えっと、こちらは?」
「あ、夏目さん。ちょっとお世話になってる人……やな、うん」
夏目亮太なつめりょうたです。よろしくお願いします」
室井龍むろいりゅうです。よろしくお願いします」
「えっと、朝日向想です。」
「知っとる!」
「知ってる」

 完璧な二人のツッコミが同時に行われたので、俺達は三人で笑い合った。
 そこからは三人でたわいない話をしたり、最近の龍くんの出た作品の話を聞いたりしながら楽しく過ごしてた。


 ーーーーーー

「ごちそう様!ほなまた来るわ~」
「え~もう行くん?」
「売れっ子は忙しいんや~!ほな、想、夏目さん、またな~」
「また来てな~」

 龍くんと夏目さんが仲良くなってくれて何か嬉しいわ!
 そうや、帰ったら多部ちゃんにも二人が仲良くなった話しよーっと。

 さっきから常連さん達も沢山来てくれるし、手放す事にならんくてよかった…
 やっぱ店は落ちつくなぁ。



 ◇◇◇◇◇◇

 夏目side



「二人は仲良しなんだね」
「そやな~マスターが亡くなってお客さん減ったんやけど、俺のコーヒーを気に入ってくれる常連さんも増えて来たんよ。龍くんは昔からの知り合いやけどな~」
「そうなんだね、確かに想のコーヒーは美味しいよ」
「ありがとう!多部ちゃんもコーヒー美味しいって褒めてくれたねん」

 想と話しながらチラリと店内を見渡し、常連さん達という人を見ているけど、コーヒーもだけれど想に惚れてる人も多そうだ……

 想はあまり詳しく知らなかったみたいだけど、室井龍か……あの人今をときめく俳優だよ?
 奥の席に座ってるのは俺でも知ってる、アイドルグループのイケメンの子だし。
 それに、あのテーブルはイケメン社長で有名な大企業の社長とスポーツ選手。

 小さなコーヒー店には似つかわしくない程の面子が揃っている。多分、想が泣きついたら皆揃って借金なんて肩代わりして払いそう……
 
 現に多部がそうだったし。

 はあ……

 これは、連夜に報告がいるかなぁ?
 あー!気が重い!

  そんな事を考えていたら、ふいにドアが開く音がした。



 ~ カラン ♪


「やっほー!!想~」
「あ、佐倉さくらく~ん」
「空いてる?」
「ん~ちょっと待ってな~」
 空いてる席をキョロキョロとウサギのように探しているので、クスリと笑みがこぼれた。
「想、もう俺はそろそろ行くから、大丈夫だよ」
 そう言って席を立つ。

「えぇーそうなん?」
「ふふ、閉店前にまた迎えに来るよ」
 こっそり呟き、佐倉くんと呼ばれた金髪の小柄な男性に席を譲った。
「ここどうぞ?」
「えぇ?いいの?ありがとうございます!」
 元気いっぱいの人懐っこい笑顔を向けてありがとうを伝えてくれ、好印象だ。ただ何か、引っかかる……

 佐倉くんは多部ちゃんとも知り合いやで~なんて伝えてくる想の言葉に相槌を打ちながら、その男性とすれ違った時だった。

 懐かしい匂いが俺の鼻腔をくすぐる……
 
 そんな……まさか?

 いや、きっとたまたま同じ香りなだけだね……
 こんなところにいるはずも無いんだから。

 俺は毎日会いたくて、会いたくてたまらない人の事を思い出しながら想の店を後にした。


「元気にしてるかな。会いたいよ……彰太」


 


    
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