溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

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「はあ、はあ、なんやねんあのエロ大魔神//」
 ファーストキスではないけど…そんなことほとんど経験したことない俺は、ほっぺを抑えながら長い廊下を歩いていた。

 いや、キッチンどこやねん!!
 部屋から飛び出したはいいねんけどさ~広すぎる洋館で案の定迷子……どうしよ。


「ふふふ、想?キッチンはこっちだよ」
「うぁっ!な、夏目さん」
「迷子になるんじゃないかと思って付いてきて正解だったみたいだね」
「うぐっ……」
 その通り過ぎてなんも言えねぇ……
 でも、後ろから夏目さんに声をかけられ驚きと同時に安心したわ~夏目さんにキッチンまで連れてきて貰って一安心したんやけど、道中改めてじっくりとこの屋敷の中を見たけど、この家めちゃめちゃ広いねん!
 まじでプールとか、温泉とかもありそうやし、あっても不思議ちゃうわ…

「あるよ?」
「えっ?」
「さっきからずっと声に出てたから?」
「ひっ////」
「ふふふ、想は可愛いね」
 ……うわぁ、恥ずっ!//
 恥ずかしい気持ちを隠そうと必死で誤魔化そうと話題を変える。

「な、な、夏目さんはここに住んでるん?」
「俺と多部はね、この敷地内に建てている家に住んでるよ」
「…うわ…凄っ!」
「ふふふ、まあ表向きは大企業だからね?俺達もそれなりに稼いでるよ」
 そうやんな……
 きっと皆にしたら俺の借金なんて、はした金なんやろな…
 何かちょっと虚しい。

「あ、そうだ、今日この後一緒に想のお店に行っていい?想の淹れたコーヒー飲んでみたいなぁって」
「えっ……」
「店なら流石に一杯五十万じゃないだろうし……」
「せやけど…」
「ふふふ、よかった~」
 …何かさ、多部ちゃんも夏目さんもやけどホンマに自然に優しいんよな~
 正直この二人が何でこの仕事してるんかわからへんわ。

「はい、想、着いたよ。後は使い方わかるよね?」
「うん、ありがとう…でもっ、夏目さんここまでなん?」
「ちょっと用事あるから…ごめんね。想が後で店に行く時はご一緒するよ」
「うん、わかった。ほなまた後で……」
「あ、早くしないと待ち切れない連夜がくるかもよ?……ふふふ」

 はあ?いやいや、待って!!

 お、恐ろしい事を言い捨てて夏目さんは去って行ったわ。
 あかん、急がなっ!!


 さっきのキスがなかなか頭から離れへんけれど、俺はとにかく忘れるべくコーヒーを淹れることに専念した。










 コポコポコポ……




 キッチンにコーヒーの香りが立ち込める。
 何も考えず目の前のカップを愛おしく眺めながら、ゆっくりとお湯を落としていく…

 それはひとときの幸せな時間やった。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇


 連夜side




 勢いでキスをしてみたけれど…何だあれ?
 反応が……可愛すぎないか?
 もっとしたくなったんだけど?
 俺自身かなり淡白な方だと思っていたけれど、それは思い込みだったみたいだ……
 正直男女問わず相手に不足したことはないけれど、想だけは何としても手に入れたくなっている。
 想にはめちゃくちゃ触りたいし、鳴かせたい。この気持ちはなんなんだろうか……

「多部ちゃん、この契約書を金庫にしまっておいて。あと今日は休んでいいよ、お疲れ様」
「えっ…う、うん」
 微妙な顔をしてる多部ちゃんを部屋から退出させて、想を待つけど遅くないか?
 キッチンにコーヒー淹れに行ってるだけだよな?

 迷子になったとか?
 ははは、まさかね。

 待ちきれなくなった俺は、とりあえずキッチンに向かってみる事にした。



 ーーーーーー


「っ……//」
 キッチンで見たのは愛おしそうにコーヒーをゆっくり抽出してる想の姿……
 なぜか声をかけるのも躊躇ってこっそり見続ける。

 やばい…

 あれさ、俺のことを考えながら淹れてるの?
 絶対そうだよな?淹れる相手のことを想いながらに違いない……



 でもちょっと待てよ……
 店で沢山の人にそんな顔見せつけてるのか?
 見せつけてるよね?
 マジで全員の客の目潰してやろうかと思うんだけど。

「チッ……」
 こんな事なら働いていいと契約書に書くんじゃなかった。
 でも、今更働いたら駄目だという契約書に書き変えたら、きっと想に泣かれるな…

「はぁ…」
 俺は自身の甘さにイラつきながらさっきの応接室に戻り、想を待つ事にした。


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