溺愛コーヒーの淹れ方

茶山さく

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第一章

8 契約書

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 多部side




「おーい、多部ちゃん……多部ちゃん、多部ちゃん!ねぇ、大丈夫?」
 肩を揺さぶられ、目の前には連夜の顔がドアップであった……

「うわぁっ!れ、連夜?なに?びっくりするんだけど……」
「……酷くない?フリーズしてたから起こしてあげたのに」
「あ、あ、ごめん」
 連夜に謝りながら、そういえば直近の記憶がないけど…そ、そうだ!想は?想はどこに行った?
 キョロキョロと周りを見渡すけど、夏目さんと想がいない?
 あれ?
 
 確か連夜が想の借金を肩代わりするって想に言ってたのを聞いて……あまりの衝撃にその発言以降全く聞いてなかったし、そこからの記憶があいまいになっている。

 

 いや、今も衝撃中だけど……
 だってあの連夜が誰かのために動くんだよ?借金を肩代わりするとか前代未聞だよ!今までどんな人が来ても表情一つ変えなかったあの連夜がだよ??


「そうだ!な、夏目さんと、想は?」

 ニヤニヤしてる連夜に冷や汗が出てくる……
 ま、まさか想を売り飛ばしてないよね?!

「ん?ああ、想の借金は俺が肩代わりした。後は……コーヒーを淹れるのが得意だと言っていたから、今は夏目さんと一緒にキッチンにいるけど?あ、そうそう今日からこの家に住んでもらって返済を頑張ってもらうつもり」
「…えっ!?はぁ?」
 噓でしょ?あの連夜が……こんなことするなんて。よっぽど想を気に入ったってこと?


「それで、多部ちゃんには…この後、想との契約書を作って欲しい」
「えっ……?」
「オッケーだよね?まあ、イエスしかないけど」


 連夜は楽しそうにクスクスと笑っているけれど、俺はちょっと頭の整理が追いつかない……

 
 だけどさ、主の決めた事はここでは絶対だ。
 後で何があったかは、夏目さんに詳しく聞いてみるとして……

 とりあえず俺は連夜の要望通りの契約書作りに取りかかった。




 ーーーーーー


 「……いや、ねぇ!これっ……本気!?」
 連夜の考えている想の返済計画を聞き、それに沿って契約書を作ってるんだけど……
 連夜って……ど変態なのかもしれない。

 「はぁ、頭痛くなってきた」
 自室に籠りながら、俺は徹夜でその資料作りに励んだ……


 想、ごめんね。
 もう逃げ場はないかもしれない……






 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 連夜side


 想が淹れてくれたコーヒーは普通に美味かった。
 その事を想に伝えると、嬉しそうに笑いホッとしたのか床にヘタリ込む。


 はぁ……

 可愛いが過ぎる。

 さあ、どうしようかな?想をこのまま逃がしたくなくなってしまった。
 とりあえず借金を俺宛にして、逃げられないようにしよっかな?あ、毎日コーヒーも飲みたくなった……いっそ、この家に住まわすのはどうだろうか?……そうだな、それがいい。
 
 想が俺に毎日コーヒーを淹れて借金を返済できるようにするか。
 まあ、後は……想の身体を使って返済できるようにしてみようかな。多部ちゃんが起きたら、契約書作ってもらおう……想にさせてみたいことが色々と浮かんでくるし……しかも、何でもするらしいからな?

 我ながら頭に思いつく事が変態チックだなぁと自嘲しているけど……

 とりあえず可愛い声で俺を呼んでもらうか。

「想、連夜って呼んでみろ?敬語もいらない」
「や、それはおかしいですって!」
 まあ抵抗されるのは当然だろう……でも俺は連夜ってなぜか想の口から聴きたくなっていた。

「……想?ほら、早く」
 じっと想を見つめながら、無言の圧力を出すと諦めたのか、想は俺の名前を小さな声で震えながら呼んだ。
「れ、れ、連夜…さん、わ、わ、わかりました」

 ……良い。
 あとは敬語もいらないことを伝えると想は困りながらも、
「……っ、わ……わかった」
 と応えてくれ、何故か嬉しくなった俺は気付けば笑っていた。


 ”ありのままの想を知ってみたい”

 なぜ?こんなに執着をして離したくないのか……この感情を何と呼ぶのかはまだ分からないが、俺自身も知らなかった自分にさせたことを、想には責任とってもらわないとな。


 あー明日から楽しみだ。


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