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【第五部:聖なる村】

★★★★★第四部のあらすじ★★★★★

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※※※※※  ネタバレ注意  ※※※※※

第四部【神の記憶】のみのあらすじです。
ここまでのあらすじすべてを知りたい方は、各部冒頭にある、【これまでのあらすじ】→【第二部のあらすじ】→【第三部のあらすじ】→【第四部のあらすじ】の順に読み進めてください。

惜しげもなくネタバレをしていますので、最初からお読み下さる方は、避けて通ってください。
また、このあたりから物語の後半となります。ちょっとした伏線やら謎やらは、このあらすじで絶妙に表現することが不可能ですので、あらすじのみでは、本編への予備知識としては不十分となります。ご了承下さい。




 エルシャたちは、ニコルの町で「神の民」として町人から家を追われる青年ハーレルを目撃する。焼き払われたあとのハーレルの家には、母親の遺体が置かれていた。そしてその体からは、神のかけらを取り出したと思われる傷跡があった。
 彼女の遺体を埋葬しているとき、ハーレルと出くわすが、彼はエルシャたちの話を聞かずに逃げ出してしまう。そのとき頭を強打したフェランは、その衝撃で記憶を失い、イルマでの事件のことや、エルシャやナイシェたちのこともわからなくなってしまっていた。
 記憶を失ったフェランは、ニコルの町でラミという少女と出会う。ラミとはナリューン語で『愛』という意味であり、ラミの母親メリライナは記憶の民クラマネであった。娼婦として独りでラミを育てるメリライナは、当初はサラマ・アンギュース探しの旅への参加を拒否していたが、彼女もまたハーレル同様町を追われることとなり、母子ともにエルシャたちと行動を共にすることになる。

 一行はテサロの町でハーレルを見つけるが、彼を追って入った山で崖から転落したフェランは、そのあと記憶を取り戻す。その反動でラミとメリライナのことを忘れ去ってしまったフェランだったが、フェランを慕うラミとの絆は揺るがなかった。
 フェランの予見の力で再度ハーレルを探し出した一行は、ハーレルに雇われ用心棒をしていたゼムズと偶然にも再会する。ハーレルは、エルシャやゼムズ、メリライナから、サラマ・アンギュース探しの話を聞かされ説得されるも、「神の民は嫌いだ。このかけらのせいで、僕の母は死ぬ羽目になり、僕は町を追われることになった」といい、協力はできないといって姿を消すのだった。

 一方、アルマニア宮殿では、王族しか入ることの許されない金庫から、前アルマニア6世の紋章が盗まれるという前代未聞の事件が発生していた。王族の手引きがなければ成り立たないと思われる事件であり、現国王リキュスの失脚を望む王族の謀反の可能性が疑われる中、テュリスが捜査の指揮を執ることとなった。
 複数人の犯行と推察され、運び屋のひとりとして容疑者に名を連ねたのがハーレルであった。ハーレルを追ってエルシャたちのもとにやってきたテュリスに、エルシャは彼は無実だと訴える。その一方、同じく容疑者のひとりと目される、頬に傷のある男を捕らえるため、エルシャとゼムズは一肌脱ぐこととなった。ゼムズの活躍で捕らえた頬傷男の衣服から紋章が見つかったことで、男は連行される。しかし、エルシャはその様子からこの男も濡れ衣に違いないと主張し、そんな中、護送中の紋章盗難事件の容疑者が次々と殺されるという事件が発生する。

 頬傷男も殺害され、紋章は取り戻したものの、盗難事件の捜査は暗礁に乗り上げる。真犯人による口封じの連続殺人だと思われたが、エルシャは、容疑者の中に無実と思われるハーレルや頬傷男が含まれること、また、頬傷男が殺害されたときの不思議な状況から、この事件はサラマ・アンギュースを狙う何者かによる犯行ではないかと推理する。事件について詳しく調べるため、エルシャたちはテュリスとともにアルマニア宮殿に一度戻ることとする。

 旅の仲間となったメリライナは、以前から彼女を苦しめている悪夢が悪化の一途をたどり、不眠や極度の疲労から体調を崩していた。彼女の悪夢とは、1万年前のタラ・ム・テール〈すべてを意味する戦い〉であった。これは、神と悪魔の、この世の存亡を賭けた戦いの記憶であった。メリライナは、かけらを埋めたときから、20億年以上に渡る
神の記憶を有しており、中でも特にタラ・ム・テールの壮絶な戦いの光景は、寝ても覚めても彼女を苦しめるのだった。しかし彼女によると、タラ・ム・テールの結果は、神が勝つのでも悪魔が勝つのでもない、別の結末が訪れたのだという。神の記憶はまだ不完全であり、真実はほかにいるはずの記憶の民が握っているらしい。

 アルマニア宮殿で資料を確認したところ、紋章事件に関わって殺害された者の中に、気になる男がいた。まだ宮廷の者に捕らえられる前に惨殺されたティルセロ・ファリアスという男で、他の殺害と異なり全身を切り刻まれるという残忍な手口であった。神の民との関わりの可能性を捨てきれないエルシャは、彼についてさらに調べることを決意する。
 さらに、13年前のイルマ襲撃事件についても調べた結果、襲撃した男たちは、当時、幼い少年からの「知らない人からの預かり物」として、金貨と引き換えに襲撃を請け負ったことがわかる。ただ一人捕らえることのできた実行犯は、捕らえた翌日から口が利けなくなり、真相は闇の中のまま処刑された。その不思議な結末に、やはりエルシャは、イルマ襲撃事件もサラマ・アンギュースと関係があるような気がしてならないのだった。

 このころ、国王でありエルシャの弟であるリキュスは、あいからわず謎の発作に悩まされていた。彼の母ナキアは庶民であるにも関わらずエルシャの父によって宮殿に招かれた、いわば妾の身であり、そんな母親から生まれた自分が国王として貴族たちの承認を得られたのは、エルシャとその母リニアの寛大な心のおかげだと考えるリキュスは、身分制度の改革や、紋章事件の対応に追われる中、これ以上自分の健康問題で周りに負担をかけてはならないと思うのだった。

 メリライナは、アルマニア宮殿の最先端の医療をもってしても回復せず、記憶のかけらに翻弄されながら、息を引き取った。フェランは死後の彼女の体から、人知れずかけらを取り出す。実は、フェランはメリライナの死期が近いことを予見しており、それを知ったメリライナから、「自分の死後、かけらを取り出して娘のラミにお守りとして渡すように」といわれていたのだ。母をなくし、かけらを受け取ったラミは、苦しみながら早くに亡くなった母親のこと・神の民のことを知るために、エルシャたちとともに旅をすることを決意する。

 かくして、エルシャ、フェラン、ナイシェ、ディオネ、ゼムズ、ラミの6人は、サラマ・アンギュース探しの旅を続けるのだった。
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