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【第三部:とらわれの舞姫】第一章

ショーの形見

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 四人は首都アルマニアに向かっていた。

「それにしても、国のど真ん中に山があるってのも不便だねえ」

 四人のうちのひとり、気の強そうな顔立ちの女性がこぼす。
 国を横断する山脈を境に、アルマニア王国の大都市は二つに分かれている。南半分は首都アルマニアを中心に、北半分はニコルを中心に栄えている。これらの都市を行き来するためには、山脈を迂回して遠回りしなければならない。

「でも、考えてみたら、気が遠くなりそうなことよね。すべての町を回って、名前も歳もわからない女性を探しだそうだなんて」

 まだあどけない顔をした少女がいう。しかし彼らは、どんなに無謀だとわかっていてもやらなければならなかった――それが、四人の大切な友の願いだから。


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 はじめにショーの妹を探そうといい出したのはディオネだった。

「あいつと約束したのよ、一緒に妹を探そうって。……一緒にっていうのは、もう無理だけど……」

 エルシャはしばらく黙っていたが、やがてうなずいた。

「探そう。必ず見つけよう。そして……」

 ゆっくりと左の手を開いた。そこには、小指の爪くらいの大きさの小さなガラス片のようなものが載っていた。

「これを、渡すんだ」

 その光るかけらを見た瞬間、ディオネが勢いよく叫んだ。

「それ、もしかして……!」
「……やはり、そうか」

 二人のやり取りがわからず、ナイシェが口を挟む。

「ちょっと待って、『それ』って何?」

 するとディオネが返答した。

「かけら――サラマ・アンギュースの持つ、かけらだよ」
「かけら……」

 ナイシェは再びその破片を見つめた。ただのガラスと変わりないと思ったけれど、よく見ると少し違う。普通のガラスよりも割面が細かく、そのぶん光を反射してよく輝いている。普通は人間の体内にあるものなので、目にすることは非常に稀な、神の民のかけら――。

「……ショーから、受け取ったんだ」

 エルシャの言葉に、フェランが尋ねる。

「でも、かけらは埋めた場所から取り出さない限りずっと体内にあるはずでは……?」

 埋める場所には、ほとんどの場合簡単には奪われないよう体の急所を選ぶ。つまりショーは、エルシャに渡すために自ら命を断ったことになる。

「いや、あいつから受け取ったのは、サラマ・エステの頂上でだ」

 エルシャがそう付け加えた。

 そう――俺がすぐ助けてやるといったとき、あいつは俺の手にかけらを握らせた。そして、何かをいおうとした。……おそらく、自分がもうすぐ死ぬことを感じていたに違いない。それで、俺たちが生きて帰る可能性に賭けたんだ。

「だから、このかけらを妹に渡さなければならない。そして、ショーの死も……告げなければ」

 死を告げる――それは四人にとって、言葉にできないほどつらいことだった。自分たちが巻き込みさえしなければ、ショーは死ななかったのだ。その事実を、ショーの妹はどう受け止めるだろうか?
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