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【第一部:王位継承者】第十四章

台所女たちのたわごと③

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 夕陽が宮殿の白亜の壁を染め、人々の熱い心を静めていく。治世は変わり、ときはアルマニア七世の時代。波乱に満ちた即位だったが、貴族たちの生活は何も変わらず、平穏に過ぎていく。そして、使用人たちの生活に至っては、何かが変わるわけもない。その日も台所女たちは明け方から野菜を運び、朝食の給仕に間に合うよう休みなく働いた。それが終わると、早くも夕食の準備だ。すべてが終わり後片付けをするころには、辺りはすっかり暗くなってしまう。
その日も女たちは沈む夕陽を見ながら残飯の始末や皿洗いをしていた。

「それにしてもさ、王位継承順が四番目のリキュス様が国王になられたってのも意外だったけど、あのジュベール様が、びっくりよね! あ、今はジュノレ様だっけ」
「そうそう! そりゃとってもお美しい方だとは思っていたけど、まさか女性だったとはね」
「ジュノレ様のこと好きだった女の子、多かったんじゃないかな」
「あたしも好きだったのよ! もうすごくがっかり」
「あたしもちょっと好きだったけど……でもさ、不思議と、騙された感じがしないのよね」
「そうなのよね……。なんかさ、ジュノレ様も今は苦しんでおられるんでしょ? 体もろくに動かなくて、会話もできないっていうじゃない。今までだって、サルジア様のいいなりにさせられて……何かさ、確かにひどいことしたのかもしれないけど、もうその報いは充分受けたって感じだよね」
「うん……充分すぎるくらいだよ」

 女たちはいつもと違いしんみりとした様子で皿を洗っている。

「結局さ、ジュノレ様はジュノレ様なのよね。性格は変わらないのよ」
「そう、あの優しさはね……」

 そのとき、奥から料理長が出てきた。

「おしゃべりもいいけどな、さっさと手を動かさないと終わらないぞ」

 戻っていく料理長の後ろ姿を見て、女たちは顔を見合わせた。

「なんか今日の料理長、珍しく優しくなかった?」
「うん……きっと、あたしたちの気持ちわかってくれてんのよ」
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