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第三章 原初の破壊編
#146 現神《アマノライト》
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美海がメガコーポレーション本社ビルに入れば、すぐに地下研究施設に通された。
以前よりも大きく広くなった社内は、至る所に最新テクノロジーが使われていてもはやSF映画に出て来る近未来施設の様だ。
地下研究施設の最奥部の部屋、メガが私室として使っていた場所だ。
そこに、皆は集まっていた。
「ども、お久しぶり」
まだやや見慣れない人間の姿をした秋斗。
そして、
「……む」
相変わらず来人たち以外にはやや無愛想ながらも、目が合えば手を挙げて挨拶をしてくれるテイテイ。
そして、遠方どころか他の世界に居てこの場には居ないながらもビデオ通話越しに顔を見せているガーネやジューゴ、ユウリなんかの懐かしの顔ぶれ。
更には美海にとっては今や義父に当たるであろうライジンや、なんとアークと世良も参加している様だった。
ここに集められたメンバー、その共通点は――。
と、部屋の奥からパンと柏手を一つ叩く音がした。
注意をそちらへ向ければ、以前はメガが座っていた社長イスにギザが座っている。
「皆さん、お集まり頂きありがとうございます。それでは、始めましょうか」
数年前よりもいくらか日本語が流暢になり所長の風格も出て来たギザのそんな言葉から、今日の集まりは始まった。
そして、膝の上にはタブレット端末が一つ。
ギザが画面に触れれば、そこには大きくメガが映し出される。
メガは前置きも無しに、いきなりこう切り出した。
「それじゃあ、ライト復活作戦をはじめるヨ。まずは――」
「ちょっとちょっと! 待って、今なんて!?」
流石に聞き流せなかった。
美海は堪らず声を上げる。
「……ギザのスケジュールが詰まっているんだ。手早く済ませたいんだがネ」
「えっ、あっ、ごめん……って、違うでしょ! それ、どういう事よ!? 流石にちゃんと説明して欲しいんだけど!?」
メガははあと大きく溜息を吐き、大げさに心底面倒くさそうな素振りを見せがらも、
「仕方ないネ。君らにも分かる様に一から説明してあげようじゃないか」
と、待ってましたと言わんばかりににやりと笑った。
それを見たギザの小さな溜息が、パソコンのファンの音に呑まれて消えて行った。
「――あの日、世界が再び始まったあの日だ。光の雨が降り注いだ“天の光現象”は覚えているだろう?」
「……来人の魂の波動、よね?」
「そうだ。地上全土に降り注ぎ、最近ではそれが原因で別の厄介事まで引き起こしたアレだヨ。でも、あれは来人が死す瞬間にその内から溢れ出た王の波動の“ほんの少し”だ」
「ほんの少しって、それで地球全体で光の雨が降ったっていうの?」
メガは首肯する。
「本来始まりの島と呼ばれる神々の聖域の内を満たすに留まるはずだったそれが、ライトのあまりに強すぎる波動の所為でほんの少し溢れ出たんだヨ。コップに水を注ぎ過ぎて、少し零してしまった経験が誰にだってあるだろう? あれと同じだヨ」
「……それで、その天の光現象がどうしたのよ」
同じじゃないだろうという言葉を何とか呑み込み、美海は先を促す。
「何を隠そう、その呼称を最初に提唱し、そしてわざわざ世界に広め、定着させたのはこのボクなんだヨ。我がメガコーポレーションの力を以ってすれば、その程度のプロパガンダ造作も無い」
「それで、そんな事に何の意味があるって言うのよ。話が見えてこないわ」
そう困惑する美海を他所に、この“ライト復活作戦”に参加した面々の何人かは「なるほど……」「そういう事か」と、何やら理解して驚きの表情を見せていた。
それにより一層困惑を強める美海と、反して満足げで楽し気なメガ。
「おさらいをしようか。神の力とは想像の創造。想いが重なり、それが力と成る。想いとは即ち信仰。そして、“強い信仰を受けた名は神格となる”」
メガは続ける。
「世間ではあの天の光現象を色々な呼称で呼ばれていたり、様々な理屈を引っ付けて理解した気になっている連中だって居るだろう。それでも、大衆の大多数にとっては“天の光現象という名の未知の現象”だ。未知とは恐怖であり、畏敬の対象だ」
すると、ギザが片手でキーボードを操作する。
背後のモニターにはあの光の雨のイメージ画像と共に、“天の光”と表示されていた。
「あの光の雨に、ボクはこう名付けた。“天の光”――つまり、天の光と。皆のイメージはボクの名付けたその一つに集約している。この地球上の人間たち全てが、アマノライトという存在に畏敬という信仰を注いでるんだ! 彼らはその天の光に神秘性を見出し、神格化し、ついにはそれを崇める新興宗教まで出来た始末だ! もう分るだろう! アマノライトという神への信仰の土壌は、もうこの世界に出来上がっているんだ!」
メガは熱を上げ、紅潮しながら弁を立てる。
ああ、やっと美海にも話の筋が見えて来た。
「つまり――」
「そう! 後は、その神格に器という確かなカタチを与えるだけだ! そのカタチとはもちろん君らの良く知る天野来人だ!」
再び、ギザがキーボード操作する。
すると、床の一部が開き、そこから『メガ・キューブ』がせり上がって現れた。
「あの光の雨の粒全てが、ライトの魂の欠片だ。そして、その欠片は世界各地のライトの想いに引き寄せられ、集まって、塊となっている!」
次々と宙にホログラムのモニターが浮かび上がり、様々な場所の映像を映し出す。
湖の畔、雲をも貫く岩山の麓、中央都市メーテル、ウルスの天山、いつだったか皆で行ったショッピングモール跡地、崩界アーク城跡、勿論来人の実家や、ゴールデン屋なんかも在った。
そんな様々な来人の記憶が、記録が残されている地に、ぼんやりとした白い光が浮いている。
「勿論、ここメガコーポレーションにもその内の一つは在った。それはもうキューブに集約済みだし、ここに居ない者にも同じキューブを既に送っている。玄関前でも確認してみるといいヨ」
メガ・キューブが呼吸をするように、ぼんやりと光を放つ。
「じゃあ、残りも全部そこに集めれば――」
「――ああ。我らが王は、再び姿を現す事だろう!!」
皆の眼の色が変わったのを感じられる。
覚悟と、そして希望に満ち溢れているのだ。
「来人が……!」「らいたんが!」「王様が!」「らいにいが!」「来人君が!」「ライトが!」
皆、動き出すのは同時だった。
美海はキューブを手に取り、テイテイと秋斗もそれに続く。
モニターの向こうでも、既に皆席を立っていた。
「――さあ、帰っておいで。ボクらにはまだ“天野来人”が必要だ」
to be continued
以前よりも大きく広くなった社内は、至る所に最新テクノロジーが使われていてもはやSF映画に出て来る近未来施設の様だ。
地下研究施設の最奥部の部屋、メガが私室として使っていた場所だ。
そこに、皆は集まっていた。
「ども、お久しぶり」
まだやや見慣れない人間の姿をした秋斗。
そして、
「……む」
相変わらず来人たち以外にはやや無愛想ながらも、目が合えば手を挙げて挨拶をしてくれるテイテイ。
そして、遠方どころか他の世界に居てこの場には居ないながらもビデオ通話越しに顔を見せているガーネやジューゴ、ユウリなんかの懐かしの顔ぶれ。
更には美海にとっては今や義父に当たるであろうライジンや、なんとアークと世良も参加している様だった。
ここに集められたメンバー、その共通点は――。
と、部屋の奥からパンと柏手を一つ叩く音がした。
注意をそちらへ向ければ、以前はメガが座っていた社長イスにギザが座っている。
「皆さん、お集まり頂きありがとうございます。それでは、始めましょうか」
数年前よりもいくらか日本語が流暢になり所長の風格も出て来たギザのそんな言葉から、今日の集まりは始まった。
そして、膝の上にはタブレット端末が一つ。
ギザが画面に触れれば、そこには大きくメガが映し出される。
メガは前置きも無しに、いきなりこう切り出した。
「それじゃあ、ライト復活作戦をはじめるヨ。まずは――」
「ちょっとちょっと! 待って、今なんて!?」
流石に聞き流せなかった。
美海は堪らず声を上げる。
「……ギザのスケジュールが詰まっているんだ。手早く済ませたいんだがネ」
「えっ、あっ、ごめん……って、違うでしょ! それ、どういう事よ!? 流石にちゃんと説明して欲しいんだけど!?」
メガははあと大きく溜息を吐き、大げさに心底面倒くさそうな素振りを見せがらも、
「仕方ないネ。君らにも分かる様に一から説明してあげようじゃないか」
と、待ってましたと言わんばかりににやりと笑った。
それを見たギザの小さな溜息が、パソコンのファンの音に呑まれて消えて行った。
「――あの日、世界が再び始まったあの日だ。光の雨が降り注いだ“天の光現象”は覚えているだろう?」
「……来人の魂の波動、よね?」
「そうだ。地上全土に降り注ぎ、最近ではそれが原因で別の厄介事まで引き起こしたアレだヨ。でも、あれは来人が死す瞬間にその内から溢れ出た王の波動の“ほんの少し”だ」
「ほんの少しって、それで地球全体で光の雨が降ったっていうの?」
メガは首肯する。
「本来始まりの島と呼ばれる神々の聖域の内を満たすに留まるはずだったそれが、ライトのあまりに強すぎる波動の所為でほんの少し溢れ出たんだヨ。コップに水を注ぎ過ぎて、少し零してしまった経験が誰にだってあるだろう? あれと同じだヨ」
「……それで、その天の光現象がどうしたのよ」
同じじゃないだろうという言葉を何とか呑み込み、美海は先を促す。
「何を隠そう、その呼称を最初に提唱し、そしてわざわざ世界に広め、定着させたのはこのボクなんだヨ。我がメガコーポレーションの力を以ってすれば、その程度のプロパガンダ造作も無い」
「それで、そんな事に何の意味があるって言うのよ。話が見えてこないわ」
そう困惑する美海を他所に、この“ライト復活作戦”に参加した面々の何人かは「なるほど……」「そういう事か」と、何やら理解して驚きの表情を見せていた。
それにより一層困惑を強める美海と、反して満足げで楽し気なメガ。
「おさらいをしようか。神の力とは想像の創造。想いが重なり、それが力と成る。想いとは即ち信仰。そして、“強い信仰を受けた名は神格となる”」
メガは続ける。
「世間ではあの天の光現象を色々な呼称で呼ばれていたり、様々な理屈を引っ付けて理解した気になっている連中だって居るだろう。それでも、大衆の大多数にとっては“天の光現象という名の未知の現象”だ。未知とは恐怖であり、畏敬の対象だ」
すると、ギザが片手でキーボードを操作する。
背後のモニターにはあの光の雨のイメージ画像と共に、“天の光”と表示されていた。
「あの光の雨に、ボクはこう名付けた。“天の光”――つまり、天の光と。皆のイメージはボクの名付けたその一つに集約している。この地球上の人間たち全てが、アマノライトという存在に畏敬という信仰を注いでるんだ! 彼らはその天の光に神秘性を見出し、神格化し、ついにはそれを崇める新興宗教まで出来た始末だ! もう分るだろう! アマノライトという神への信仰の土壌は、もうこの世界に出来上がっているんだ!」
メガは熱を上げ、紅潮しながら弁を立てる。
ああ、やっと美海にも話の筋が見えて来た。
「つまり――」
「そう! 後は、その神格に器という確かなカタチを与えるだけだ! そのカタチとはもちろん君らの良く知る天野来人だ!」
再び、ギザがキーボード操作する。
すると、床の一部が開き、そこから『メガ・キューブ』がせり上がって現れた。
「あの光の雨の粒全てが、ライトの魂の欠片だ。そして、その欠片は世界各地のライトの想いに引き寄せられ、集まって、塊となっている!」
次々と宙にホログラムのモニターが浮かび上がり、様々な場所の映像を映し出す。
湖の畔、雲をも貫く岩山の麓、中央都市メーテル、ウルスの天山、いつだったか皆で行ったショッピングモール跡地、崩界アーク城跡、勿論来人の実家や、ゴールデン屋なんかも在った。
そんな様々な来人の記憶が、記録が残されている地に、ぼんやりとした白い光が浮いている。
「勿論、ここメガコーポレーションにもその内の一つは在った。それはもうキューブに集約済みだし、ここに居ない者にも同じキューブを既に送っている。玄関前でも確認してみるといいヨ」
メガ・キューブが呼吸をするように、ぼんやりと光を放つ。
「じゃあ、残りも全部そこに集めれば――」
「――ああ。我らが王は、再び姿を現す事だろう!!」
皆の眼の色が変わったのを感じられる。
覚悟と、そして希望に満ち溢れているのだ。
「来人が……!」「らいたんが!」「王様が!」「らいにいが!」「来人君が!」「ライトが!」
皆、動き出すのは同時だった。
美海はキューブを手に取り、テイテイと秋斗もそれに続く。
モニターの向こうでも、既に皆席を立っていた。
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