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第三章 原初の破壊編
#92 十二波動神
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アークの号令と共に、十二波動神たちが襲い掛かる。
元からその場に居た者たち――カンガス、ソル、ティル、ダンデ、陸、モシャは勿論、援軍に駆けつけた神々もそれに応戦する。
ソルとティル、ダンデの前には、肉親であるゼウスが立ち塞がり、相対する。
陸とモシャの前には、同じく大鎌を持った神が相対する。
何人たりともアークの元へと近づけぬ様に、と十二波動神たちは忠実に、新たな主神に従う。
単体では無力な世良を殺し、アークの力の半分を削ぐ。――それが神々の共通の目的だったが、そこに至るまでが既に至難だ。
十二波動神は選りすぐられた、神格を持った神々。
しかも、今はそれに加えて原初の神であるアークの力――『破壊』の色の一部を有している。
来人にも、十二波動神の一人が襲い掛かる。
水流を纏いし三又の槍を携えた一人の神が、その槍の切先を来人へと――、
「――王様!!」
しかし、その一撃をジューゴが身を挺して防ぐ。
ジューゴの色は『岩』、その鉄壁を以て自身の肉体を硬化させ、槍はジューゴの肌に傷一つ付けられない。
「ジューゴ! 僕は――」
「王様! 僕らは王様の味方ですよ!」
来人が顔を上げれば、そこにはジューゴだけでなく、イリスも、そしてガーネも居た。
「その、わたくしは世良という少女の事は、分かりませんわ。――ですが、坊ちゃまが大切にしている人だというのならば、わたくしも共に守りたいと思います」
「ネは、らいたんの相棒だネ! だから、いつでもらいたんの傍に居るネ!」
「――ありがとう、みんな。僕に――いいや、俺に力を貸してくれ。世良を救い出し、アークも倒す」
来人に再び、闘志が灯る。
「こいつは僕らに任せて!」
「だネ! らいたんは、世良を!」
「坊ちゃま、ご武運を」
契約者たち、三人のガイア族は三又の槍を携えた神と相対する。
「相手は神格持ち――海の神、ポセイドンですわね」
「神格持ちなら、こっちもイリスが居るネ」
「海なら、僕の庭ですよ!」
そして、来人は妹を――世良を救い出す為に、アークの元へ――。
「――ゼウス様、何故このような真似を!」
アークの手に堕ち、黒い稲妻を纏うゼウスは、ティルとダンデ、そしてソルの前に立ち塞がる。
「問答は無用。常々説いていたはずだ。我々に人間の血が混じる事など、あってはならぬ。しかし、王族たちは今にもその汚らわしい血を受け入れ、混じろうとしている」
ゼウスは左腕を前へ伸ばし、右腕を後方へ引き、腰を落とす。
まるで自分自身がレールガンの射出台となったかのように、どっしりと構え、そしてその前へ突き出した左腕の先から、纏う黒い稲妻と同じ物を、極太のレーザーとして放つ。
相手が子と孫であったとしても、その間に師弟関係があったとしても、もはや闇に染まった、自分の色を見失ったゼウスに容赦はない。彼らの声は届かない。
ティルは『光』の矢の雨をゼウスの頭上から降らせ、応戦する。
しかし、矮小な『光』の矢など、その圧倒的極光の前には無力同然。
「ティル様!!」
相棒のライオン、ダンデの叫び。
そしてティルの抵抗も虚しく、その極光に呑まれようとした、その時、ティルの眼前で大きな爆発が起こり、土埃と煙が舞う。
「――ティル、大丈夫ですか?」
ティルと極光との間に割って入ったのは、ティルの父、ソルだった。
ソルは武器も持たず、相対するゼウスと同じ構えを取り、同じく極太のレーザー、極光を放った。
しかし、その色はゼウスの黒とは違う。
眩い白い稲妻の光が、黒い稲妻の光とぶつかり合い、大きな爆発が起こった。
そして、土埃と煙が晴れ、ソルの姿が露わとなる。
ソルはその爆発を受けても微動だにする事なく、その場で腰を下ろし、立っていた。
「申し訳ありません、父上。私は――」
「良いのですよ。息子が無事で何より」
かつて二代目神王候補者であったゼウス、そしてかつて旧三代目神王候補者であったソル。
二人の先代の王族による戦いは、ティルの想像していた者よりも遥か高み――、圧倒的にレベルが違う。
普段の戦い方――『光』の矢の雨による波状攻撃では、火力が足りない。
ゼウスの極光に掻き消されてしまう。
その事をゼウスとソルとの一太刀合いで理解したティルは、
「父上、今の私の矢では、ゼウス様に届きません。ですが、波動を練り、一矢にその『光』を束ねれば、或いは。――前を、任せても良いでしょうか」
人前では気丈に振舞い、決して退かないティルだったが、父親の間では違った。
全くと言って良い程他人に頼ろうとせず、自分の力で何でも熟そうとするティルが見せた弱さ。子としての姿。
そして、それが現状の最適解でも有った。
弓を扱い近距離の格闘戦を苦手とするティルに対して、ソルはゼウスと同じ武器を持たぬ武闘派だ。
前衛のタンクとしての役割をソルに任せ、ティルは後方からの支援射撃に回るという役割分担。
「ええ、勿論ですとも。もっと父に頼りなさい、甘えなさい。私の事は心配しなくていい。だから、ただ全力の一矢を、あの愚かな師に向けて放つのです」
ソルはそう言って、もう一度構え直す。
今度は固定砲台として迎え撃つのではなく、ティルの攻撃の隙を作る為に俊敏に動き回り、タンクとしてゼウスの攻撃を受け続ける為に。
ゼウスとソル、圧倒的速さで縦横無尽に動き回る二人の稲妻の軌跡だけが、周囲に弧を描く。
そして、ティルは弓を構え、ただ一矢に全ての波動を集中しようとする。
そこに、傍に寄ったダンデが声を掛けた。
「ティル様、自分の事も頼っては頂けないでしょうか」
ティルはこれまで相棒のダンデにすら頼らず、戦ってきた。
しかし、このタイミングで見せたティルの隙に、すかさずダンデは滑り込む。
ダンデだって、ただ無意味にイエスマンとしてティルに付き従っていた訳では無い。
家臣であると同時に、まるで父や兄の様に、不遜で気位の高いティルを、傍で見守って来た。
「自分はずっと、ティル様の傍でお仕えしてきました。あなたの戦いは全て見てきています。多くの言葉は不要です。だから、ただ一言、命令を頂きたい」
戦い方も、その間合いも、テンポも、全てまるで我が事の様に理解出来る。
「自分を、あなたの傍に」
ダンデは獅子の頭を垂れ、ティルの足元へと傅く。
一瞬の間。
そして、ダンデは顔を上げないながらも、ティルが弓を降ろしたのが気配で伝わって来た。
「――ああ。ダンデ、共に行こう。私の命、預けたぞ」
ティルとダンデ、純潔の王子と百獣の王たる獅子。
両者を眩い光が包み込む。
「「――『憑依混沌』」」
元からその場に居た者たち――カンガス、ソル、ティル、ダンデ、陸、モシャは勿論、援軍に駆けつけた神々もそれに応戦する。
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陸とモシャの前には、同じく大鎌を持った神が相対する。
何人たりともアークの元へと近づけぬ様に、と十二波動神たちは忠実に、新たな主神に従う。
単体では無力な世良を殺し、アークの力の半分を削ぐ。――それが神々の共通の目的だったが、そこに至るまでが既に至難だ。
十二波動神は選りすぐられた、神格を持った神々。
しかも、今はそれに加えて原初の神であるアークの力――『破壊』の色の一部を有している。
来人にも、十二波動神の一人が襲い掛かる。
水流を纏いし三又の槍を携えた一人の神が、その槍の切先を来人へと――、
「――王様!!」
しかし、その一撃をジューゴが身を挺して防ぐ。
ジューゴの色は『岩』、その鉄壁を以て自身の肉体を硬化させ、槍はジューゴの肌に傷一つ付けられない。
「ジューゴ! 僕は――」
「王様! 僕らは王様の味方ですよ!」
来人が顔を上げれば、そこにはジューゴだけでなく、イリスも、そしてガーネも居た。
「その、わたくしは世良という少女の事は、分かりませんわ。――ですが、坊ちゃまが大切にしている人だというのならば、わたくしも共に守りたいと思います」
「ネは、らいたんの相棒だネ! だから、いつでもらいたんの傍に居るネ!」
「――ありがとう、みんな。僕に――いいや、俺に力を貸してくれ。世良を救い出し、アークも倒す」
来人に再び、闘志が灯る。
「こいつは僕らに任せて!」
「だネ! らいたんは、世良を!」
「坊ちゃま、ご武運を」
契約者たち、三人のガイア族は三又の槍を携えた神と相対する。
「相手は神格持ち――海の神、ポセイドンですわね」
「神格持ちなら、こっちもイリスが居るネ」
「海なら、僕の庭ですよ!」
そして、来人は妹を――世良を救い出す為に、アークの元へ――。
「――ゼウス様、何故このような真似を!」
アークの手に堕ち、黒い稲妻を纏うゼウスは、ティルとダンデ、そしてソルの前に立ち塞がる。
「問答は無用。常々説いていたはずだ。我々に人間の血が混じる事など、あってはならぬ。しかし、王族たちは今にもその汚らわしい血を受け入れ、混じろうとしている」
ゼウスは左腕を前へ伸ばし、右腕を後方へ引き、腰を落とす。
まるで自分自身がレールガンの射出台となったかのように、どっしりと構え、そしてその前へ突き出した左腕の先から、纏う黒い稲妻と同じ物を、極太のレーザーとして放つ。
相手が子と孫であったとしても、その間に師弟関係があったとしても、もはや闇に染まった、自分の色を見失ったゼウスに容赦はない。彼らの声は届かない。
ティルは『光』の矢の雨をゼウスの頭上から降らせ、応戦する。
しかし、矮小な『光』の矢など、その圧倒的極光の前には無力同然。
「ティル様!!」
相棒のライオン、ダンデの叫び。
そしてティルの抵抗も虚しく、その極光に呑まれようとした、その時、ティルの眼前で大きな爆発が起こり、土埃と煙が舞う。
「――ティル、大丈夫ですか?」
ティルと極光との間に割って入ったのは、ティルの父、ソルだった。
ソルは武器も持たず、相対するゼウスと同じ構えを取り、同じく極太のレーザー、極光を放った。
しかし、その色はゼウスの黒とは違う。
眩い白い稲妻の光が、黒い稲妻の光とぶつかり合い、大きな爆発が起こった。
そして、土埃と煙が晴れ、ソルの姿が露わとなる。
ソルはその爆発を受けても微動だにする事なく、その場で腰を下ろし、立っていた。
「申し訳ありません、父上。私は――」
「良いのですよ。息子が無事で何より」
かつて二代目神王候補者であったゼウス、そしてかつて旧三代目神王候補者であったソル。
二人の先代の王族による戦いは、ティルの想像していた者よりも遥か高み――、圧倒的にレベルが違う。
普段の戦い方――『光』の矢の雨による波状攻撃では、火力が足りない。
ゼウスの極光に掻き消されてしまう。
その事をゼウスとソルとの一太刀合いで理解したティルは、
「父上、今の私の矢では、ゼウス様に届きません。ですが、波動を練り、一矢にその『光』を束ねれば、或いは。――前を、任せても良いでしょうか」
人前では気丈に振舞い、決して退かないティルだったが、父親の間では違った。
全くと言って良い程他人に頼ろうとせず、自分の力で何でも熟そうとするティルが見せた弱さ。子としての姿。
そして、それが現状の最適解でも有った。
弓を扱い近距離の格闘戦を苦手とするティルに対して、ソルはゼウスと同じ武器を持たぬ武闘派だ。
前衛のタンクとしての役割をソルに任せ、ティルは後方からの支援射撃に回るという役割分担。
「ええ、勿論ですとも。もっと父に頼りなさい、甘えなさい。私の事は心配しなくていい。だから、ただ全力の一矢を、あの愚かな師に向けて放つのです」
ソルはそう言って、もう一度構え直す。
今度は固定砲台として迎え撃つのではなく、ティルの攻撃の隙を作る為に俊敏に動き回り、タンクとしてゼウスの攻撃を受け続ける為に。
ゼウスとソル、圧倒的速さで縦横無尽に動き回る二人の稲妻の軌跡だけが、周囲に弧を描く。
そして、ティルは弓を構え、ただ一矢に全ての波動を集中しようとする。
そこに、傍に寄ったダンデが声を掛けた。
「ティル様、自分の事も頼っては頂けないでしょうか」
ティルはこれまで相棒のダンデにすら頼らず、戦ってきた。
しかし、このタイミングで見せたティルの隙に、すかさずダンデは滑り込む。
ダンデだって、ただ無意味にイエスマンとしてティルに付き従っていた訳では無い。
家臣であると同時に、まるで父や兄の様に、不遜で気位の高いティルを、傍で見守って来た。
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戦い方も、その間合いも、テンポも、全てまるで我が事の様に理解出来る。
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ダンデは獅子の頭を垂れ、ティルの足元へと傅く。
一瞬の間。
そして、ダンデは顔を上げないながらも、ティルが弓を降ろしたのが気配で伝わって来た。
「――ああ。ダンデ、共に行こう。私の命、預けたぞ」
ティルとダンデ、純潔の王子と百獣の王たる獅子。
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「「――『憑依混沌』」」
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