82 / 150
第二章 ガイアの遺伝子編
#82 戦いを終えて
しおりを挟む
戦いを終え、来人たちの『憑依混沌・完全体』も解かれて行く。
「ぐっ……。大丈夫か、みんな」
初めての事、ある程度覚悟してはいても想像以上に消耗が激しい。
「大丈夫だネ、けど――」
「身体が、重いですわ」
「ちょっと、動けないかもです……」
大きすぎる力の代償として、三人のガイア族の契約者たちはその場に倒れてしまい、立ち上がる力も残されていない様だ。
来人も全身を痛みに襲われるが、何とか立ち上がり、ゼノムの居た方を見る。
そこには、もう抵抗する力も残されていない、灰となって消えゆくのを待つばかりのゼノムの姿が有った。
その元へ、来人はゆっくりと歩んで行く。
「ああ……、翼が、翼が、消えて行く……」
ボロボロと崩れ行く身体はバーガの姿をしたゼノムと、猿の姿をしたファントム、に分裂していく。
しかし、ファントムはもう言葉を発する事は無い。
ゼノム復活の礎として、既に死している。
ゼノムはもはやまともに動かない身体を這いずらせて、ファントムへと近寄って行く。
来人はそんなゼノムの最後の姿を、静かに眺めていた。
「ごめん、ごめんな、ファントム。お前が繋いでくれたというのに……」
ゼノムが小さくそう呟き、犬の前腕を伸ばしファントムに触れると、そこで事尽きる。
そして、ファントムと共に崩れた身体は灰となって風に舞う。
来人はその風に舞う灰の一部をそっと手に取り、バブルの中へと記憶した。
これで、全て終わった。
来人の髪色から白金が抜けて行き、いつもの茶へと戻る。
「――『遺伝子』の色。貰って行くよ」
二つの大地の魂を乗せた灰は風に乗り、空へ、天高くへと、昇って行った――。
それから。
駆け付けたカンガスとその相棒ユキの手伝いも借りつつ、塔を降りる最中に下層でサンダーバードを倒し元の姿へと戻ったガイア族の手当てまで済ませ、涼しい顔で待っていたティルとダンデとも合流。
来人はイリスに肩を貸しつつ、ティルの憎まれ口を聞きながら。
疲れ果てたガーネとジューゴはカンガスとユキに担がれながら。
そんな感じで、皆でメガの元へと戻った。
来人たちに致命的な怪我は無いが、特に契約者たちは『憑依混沌・完全体』を使った戦闘による大量の波動の消費によって皆ガス欠の様な状態だ。
それでもきちんと処置をしてしばらく休めば時期に元に戻るだろう。
帰路で視界に入る景色は、既に鎮火され落ち着きを取り戻しつつあるメーテルの都市。
しかし、建物は倒壊し、怪我人も大勢居る。
復興まではしばらくの時間がかかるだろう。
メガの元、つまりガーネたちの実家の場所へと戻れば、そこは仮設のキャンプとして展開されていて、怪我人――というか怪我犬や怪我ライオンと、治療の必要な沢山のガイア族が集められていた。
救護班にの面々は自然の大地の民、ジャックやミーシャ、そして長のリーンまで駆けつけて来て働いていた。
水の大地の民、ジュゴンの兵士たちも宙を泳いで物資を運んだりと、無事なガイア族たちは皆一丸となって復興に向けて動き出している。
来人はそんなガイア族たちを見送りつつ、メガの元へ。
「お疲れ様だネ。ライト、お兄ちゃん」
メガはいつもの調子で、特に感情を乗せるわけでも無く親しい二人の名だけを呼んで労ってきた。
「ああ、メガもありがとう。――あと、これ」
そう言って、来人は懐からボール状となったあのバブルを取り出し、メガへと放り投げた。
そのバブルの中にはゼノムの遺灰が封じられている。
メガは特に説明を聞く訳でも無く、リュックサックから伸びたマジックアームでそれをキャッチして、
「ほい。ギザ、任せた」
と、そのままギザへ向かって投げて横流しした。
「ちょ、メガさん!?」と狼狽えなんとかキャッチするギザを他所に、メガは視線だけを来人に返し、来人もそれに頷いて応えた。
その様子を後ろから見ていたティルが、少し不機嫌な色を含んだ声を上げた。
「お前は何者なんだ? 見た所、ガイア族の様だが――」
メガは天界の神々の管轄から離れ、一人地球で生きるガイア族であり、言うなれば害を成さないだけで立場上はゼノムとファントムに近しい存在だ。
ティルが事情を知れば何かまた面倒事になるかもしれない。
そう思い来人が間に入ろうとするが、メガはふんと鼻を鳴らしてそれを制止し、ティルに答えた。
「ただの天才だヨ」
そして、こう付け加えた。
「それに、お前の治療をしたのもボクなんだ。感謝の気持ちが1ピクセルでも有るのなら、それ以上詮索しないで貰いたいネ」
ティルはそう言われて、自分の傷に巻かれた包帯に手を触れる。
どうやら、氷の大地でゼノムの漆黒の一閃を受けたティルを治療し、あの塔へと誘ったのもまたメガの様だ。
ティルは小さく舌打ちをした後、それ以上の詮索をせず背を向けた。
「行くぞ、ダンデ。アナ様に今回の一件を報告しに行く」
「はい、ティル様!」
ティルはさっさと歩いてメーテルの大ゲートへと向かって行く。
ダンデは数歩歩いた後、歩を止めて振り返り、
「――ありがとうございました」
と、一言を残し、早足で駆けて主人の背を追って行った。
「ぐっ……。大丈夫か、みんな」
初めての事、ある程度覚悟してはいても想像以上に消耗が激しい。
「大丈夫だネ、けど――」
「身体が、重いですわ」
「ちょっと、動けないかもです……」
大きすぎる力の代償として、三人のガイア族の契約者たちはその場に倒れてしまい、立ち上がる力も残されていない様だ。
来人も全身を痛みに襲われるが、何とか立ち上がり、ゼノムの居た方を見る。
そこには、もう抵抗する力も残されていない、灰となって消えゆくのを待つばかりのゼノムの姿が有った。
その元へ、来人はゆっくりと歩んで行く。
「ああ……、翼が、翼が、消えて行く……」
ボロボロと崩れ行く身体はバーガの姿をしたゼノムと、猿の姿をしたファントム、に分裂していく。
しかし、ファントムはもう言葉を発する事は無い。
ゼノム復活の礎として、既に死している。
ゼノムはもはやまともに動かない身体を這いずらせて、ファントムへと近寄って行く。
来人はそんなゼノムの最後の姿を、静かに眺めていた。
「ごめん、ごめんな、ファントム。お前が繋いでくれたというのに……」
ゼノムが小さくそう呟き、犬の前腕を伸ばしファントムに触れると、そこで事尽きる。
そして、ファントムと共に崩れた身体は灰となって風に舞う。
来人はその風に舞う灰の一部をそっと手に取り、バブルの中へと記憶した。
これで、全て終わった。
来人の髪色から白金が抜けて行き、いつもの茶へと戻る。
「――『遺伝子』の色。貰って行くよ」
二つの大地の魂を乗せた灰は風に乗り、空へ、天高くへと、昇って行った――。
それから。
駆け付けたカンガスとその相棒ユキの手伝いも借りつつ、塔を降りる最中に下層でサンダーバードを倒し元の姿へと戻ったガイア族の手当てまで済ませ、涼しい顔で待っていたティルとダンデとも合流。
来人はイリスに肩を貸しつつ、ティルの憎まれ口を聞きながら。
疲れ果てたガーネとジューゴはカンガスとユキに担がれながら。
そんな感じで、皆でメガの元へと戻った。
来人たちに致命的な怪我は無いが、特に契約者たちは『憑依混沌・完全体』を使った戦闘による大量の波動の消費によって皆ガス欠の様な状態だ。
それでもきちんと処置をしてしばらく休めば時期に元に戻るだろう。
帰路で視界に入る景色は、既に鎮火され落ち着きを取り戻しつつあるメーテルの都市。
しかし、建物は倒壊し、怪我人も大勢居る。
復興まではしばらくの時間がかかるだろう。
メガの元、つまりガーネたちの実家の場所へと戻れば、そこは仮設のキャンプとして展開されていて、怪我人――というか怪我犬や怪我ライオンと、治療の必要な沢山のガイア族が集められていた。
救護班にの面々は自然の大地の民、ジャックやミーシャ、そして長のリーンまで駆けつけて来て働いていた。
水の大地の民、ジュゴンの兵士たちも宙を泳いで物資を運んだりと、無事なガイア族たちは皆一丸となって復興に向けて動き出している。
来人はそんなガイア族たちを見送りつつ、メガの元へ。
「お疲れ様だネ。ライト、お兄ちゃん」
メガはいつもの調子で、特に感情を乗せるわけでも無く親しい二人の名だけを呼んで労ってきた。
「ああ、メガもありがとう。――あと、これ」
そう言って、来人は懐からボール状となったあのバブルを取り出し、メガへと放り投げた。
そのバブルの中にはゼノムの遺灰が封じられている。
メガは特に説明を聞く訳でも無く、リュックサックから伸びたマジックアームでそれをキャッチして、
「ほい。ギザ、任せた」
と、そのままギザへ向かって投げて横流しした。
「ちょ、メガさん!?」と狼狽えなんとかキャッチするギザを他所に、メガは視線だけを来人に返し、来人もそれに頷いて応えた。
その様子を後ろから見ていたティルが、少し不機嫌な色を含んだ声を上げた。
「お前は何者なんだ? 見た所、ガイア族の様だが――」
メガは天界の神々の管轄から離れ、一人地球で生きるガイア族であり、言うなれば害を成さないだけで立場上はゼノムとファントムに近しい存在だ。
ティルが事情を知れば何かまた面倒事になるかもしれない。
そう思い来人が間に入ろうとするが、メガはふんと鼻を鳴らしてそれを制止し、ティルに答えた。
「ただの天才だヨ」
そして、こう付け加えた。
「それに、お前の治療をしたのもボクなんだ。感謝の気持ちが1ピクセルでも有るのなら、それ以上詮索しないで貰いたいネ」
ティルはそう言われて、自分の傷に巻かれた包帯に手を触れる。
どうやら、氷の大地でゼノムの漆黒の一閃を受けたティルを治療し、あの塔へと誘ったのもまたメガの様だ。
ティルは小さく舌打ちをした後、それ以上の詮索をせず背を向けた。
「行くぞ、ダンデ。アナ様に今回の一件を報告しに行く」
「はい、ティル様!」
ティルはさっさと歩いてメーテルの大ゲートへと向かって行く。
ダンデは数歩歩いた後、歩を止めて振り返り、
「――ありがとうございました」
と、一言を残し、早足で駆けて主人の背を追って行った。
0
お気に入りに追加
238
あなたにおすすめの小説
【中間選考残作品】医大生が聖女として異世界に召喚されましたが、魔力はからっきしなので現代医術の力で治癒魔法を偽装します!【3章終】
みやこ。@他コン2作通過
ファンタジー
♦️カクヨム様で開催されたコンテストで中間選考に残った作品です。
元医療従事者によるちょっぴりリアルな異世界転移ラブコメディ♡
唱える呪文はデタラメ、杖は注射器、聖水ならぬ聖薬で無垢な人々を欺き、王子を脅す。突然異世界に飛ばされても己の知識と生存本能で図太く生き残る......そんな聖女のイメージとはかけ離れた一風変わった聖女(仮)の黒宮小夜、20歳。
彼女は都内の医科大学に特待生として通う少しだけ貧しい普通の女の子だったが、ある日突然異世界に召喚されてしまう。
しかし、聖女として異世界召喚されたというのに、小夜には魔力が無かった。その代わりに小夜を召喚したという老婆に勝手に改造されたスマートフォンに唯一残った不思議なアプリで元の世界の医療器具や医薬品を召喚出来る事に気付く。
小夜が召喚されたエーデルシュタイン王国では王の不貞により生まれ、国を恨んでいる第二王子による呪いで国民が次々と亡くなっているという。
しかし、医者を目指す小夜は直ぐにそれが呪いによる物では無いと気が付いた。
聖女では無く医者の卵として困っている人々を助けようとするが、エーデルシュタイン王国では全ての病は呪いや悪魔による仕業とされ、治療といえば聖職者の仕事であった。
小夜は召喚された村の人達の信用を得て当面の生活を保障して貰うため、成り行きから聖女を騙り、病に苦しむ人々を救う事になるのだった————。
★登場人物
・黒宮小夜(くろみやさよ)⋯⋯20歳、貧乏育ちで色々と苦労したため気が強い。家族に迷惑を掛けない為に死に物狂いで勉強し、医大の特待生という立場を勝ち取った。
・ルッツ⋯⋯21歳、小夜が召喚された村の村長の息子。身体は大きいが小心者。
・フィン⋯⋯18歳、儚げな美少年。聖女に興味津々。
・ミハエル・フォン・ヴィルヘルム⋯⋯20歳、エーデルシュタイン王国の第二王子。不思議な見た目をしている。
・ルイス・シュミット⋯⋯19歳、ミハエルの護衛騎士。
⚠️ 薬や器具の名前が偶に出てきますが、なんか薬使ってるな〜くらいの認識で問題ございません。また、誤りがあった場合にはご指摘いただけますと幸いです。
現在、ファンタジー小説大賞に参加中です。応援していただけると嬉しいです!
angel observerⅢ 大地鳴動
蒼上愛三(あおうえあいみ)
ファンタジー
審判の時が再び訪れた。試されるのは神か人か・・・。
ヒルデたちの前に立ち塞がるのはガイア、今なお心を探す彼女にガイアの圧倒的な力が猛威を振るう時人々は何を思うのか。
少女たちは死地へと赴く。
angel observer の第3章「大地鳴動編」開幕!

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる