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第二章 ガイアの遺伝子編
#82 戦いを終えて
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戦いを終え、来人たちの『憑依混沌・完全体』も解かれて行く。
「ぐっ……。大丈夫か、みんな」
初めての事、ある程度覚悟してはいても想像以上に消耗が激しい。
「大丈夫だネ、けど――」
「身体が、重いですわ」
「ちょっと、動けないかもです……」
大きすぎる力の代償として、三人のガイア族の契約者たちはその場に倒れてしまい、立ち上がる力も残されていない様だ。
来人も全身を痛みに襲われるが、何とか立ち上がり、ゼノムの居た方を見る。
そこには、もう抵抗する力も残されていない、灰となって消えゆくのを待つばかりのゼノムの姿が有った。
その元へ、来人はゆっくりと歩んで行く。
「ああ……、翼が、翼が、消えて行く……」
ボロボロと崩れ行く身体はバーガの姿をしたゼノムと、猿の姿をしたファントム、に分裂していく。
しかし、ファントムはもう言葉を発する事は無い。
ゼノム復活の礎として、既に死している。
ゼノムはもはやまともに動かない身体を這いずらせて、ファントムへと近寄って行く。
来人はそんなゼノムの最後の姿を、静かに眺めていた。
「ごめん、ごめんな、ファントム。お前が繋いでくれたというのに……」
ゼノムが小さくそう呟き、犬の前腕を伸ばしファントムに触れると、そこで事尽きる。
そして、ファントムと共に崩れた身体は灰となって風に舞う。
来人はその風に舞う灰の一部をそっと手に取り、バブルの中へと記憶した。
これで、全て終わった。
来人の髪色から白金が抜けて行き、いつもの茶へと戻る。
「――『遺伝子』の色。貰って行くよ」
二つの大地の魂を乗せた灰は風に乗り、空へ、天高くへと、昇って行った――。
それから。
駆け付けたカンガスとその相棒ユキの手伝いも借りつつ、塔を降りる最中に下層でサンダーバードを倒し元の姿へと戻ったガイア族の手当てまで済ませ、涼しい顔で待っていたティルとダンデとも合流。
来人はイリスに肩を貸しつつ、ティルの憎まれ口を聞きながら。
疲れ果てたガーネとジューゴはカンガスとユキに担がれながら。
そんな感じで、皆でメガの元へと戻った。
来人たちに致命的な怪我は無いが、特に契約者たちは『憑依混沌・完全体』を使った戦闘による大量の波動の消費によって皆ガス欠の様な状態だ。
それでもきちんと処置をしてしばらく休めば時期に元に戻るだろう。
帰路で視界に入る景色は、既に鎮火され落ち着きを取り戻しつつあるメーテルの都市。
しかし、建物は倒壊し、怪我人も大勢居る。
復興まではしばらくの時間がかかるだろう。
メガの元、つまりガーネたちの実家の場所へと戻れば、そこは仮設のキャンプとして展開されていて、怪我人――というか怪我犬や怪我ライオンと、治療の必要な沢山のガイア族が集められていた。
救護班にの面々は自然の大地の民、ジャックやミーシャ、そして長のリーンまで駆けつけて来て働いていた。
水の大地の民、ジュゴンの兵士たちも宙を泳いで物資を運んだりと、無事なガイア族たちは皆一丸となって復興に向けて動き出している。
来人はそんなガイア族たちを見送りつつ、メガの元へ。
「お疲れ様だネ。ライト、お兄ちゃん」
メガはいつもの調子で、特に感情を乗せるわけでも無く親しい二人の名だけを呼んで労ってきた。
「ああ、メガもありがとう。――あと、これ」
そう言って、来人は懐からボール状となったあのバブルを取り出し、メガへと放り投げた。
そのバブルの中にはゼノムの遺灰が封じられている。
メガは特に説明を聞く訳でも無く、リュックサックから伸びたマジックアームでそれをキャッチして、
「ほい。ギザ、任せた」
と、そのままギザへ向かって投げて横流しした。
「ちょ、メガさん!?」と狼狽えなんとかキャッチするギザを他所に、メガは視線だけを来人に返し、来人もそれに頷いて応えた。
その様子を後ろから見ていたティルが、少し不機嫌な色を含んだ声を上げた。
「お前は何者なんだ? 見た所、ガイア族の様だが――」
メガは天界の神々の管轄から離れ、一人地球で生きるガイア族であり、言うなれば害を成さないだけで立場上はゼノムとファントムに近しい存在だ。
ティルが事情を知れば何かまた面倒事になるかもしれない。
そう思い来人が間に入ろうとするが、メガはふんと鼻を鳴らしてそれを制止し、ティルに答えた。
「ただの天才だヨ」
そして、こう付け加えた。
「それに、お前の治療をしたのもボクなんだ。感謝の気持ちが1ピクセルでも有るのなら、それ以上詮索しないで貰いたいネ」
ティルはそう言われて、自分の傷に巻かれた包帯に手を触れる。
どうやら、氷の大地でゼノムの漆黒の一閃を受けたティルを治療し、あの塔へと誘ったのもまたメガの様だ。
ティルは小さく舌打ちをした後、それ以上の詮索をせず背を向けた。
「行くぞ、ダンデ。アナ様に今回の一件を報告しに行く」
「はい、ティル様!」
ティルはさっさと歩いてメーテルの大ゲートへと向かって行く。
ダンデは数歩歩いた後、歩を止めて振り返り、
「――ありがとうございました」
と、一言を残し、早足で駆けて主人の背を追って行った。
「ぐっ……。大丈夫か、みんな」
初めての事、ある程度覚悟してはいても想像以上に消耗が激しい。
「大丈夫だネ、けど――」
「身体が、重いですわ」
「ちょっと、動けないかもです……」
大きすぎる力の代償として、三人のガイア族の契約者たちはその場に倒れてしまい、立ち上がる力も残されていない様だ。
来人も全身を痛みに襲われるが、何とか立ち上がり、ゼノムの居た方を見る。
そこには、もう抵抗する力も残されていない、灰となって消えゆくのを待つばかりのゼノムの姿が有った。
その元へ、来人はゆっくりと歩んで行く。
「ああ……、翼が、翼が、消えて行く……」
ボロボロと崩れ行く身体はバーガの姿をしたゼノムと、猿の姿をしたファントム、に分裂していく。
しかし、ファントムはもう言葉を発する事は無い。
ゼノム復活の礎として、既に死している。
ゼノムはもはやまともに動かない身体を這いずらせて、ファントムへと近寄って行く。
来人はそんなゼノムの最後の姿を、静かに眺めていた。
「ごめん、ごめんな、ファントム。お前が繋いでくれたというのに……」
ゼノムが小さくそう呟き、犬の前腕を伸ばしファントムに触れると、そこで事尽きる。
そして、ファントムと共に崩れた身体は灰となって風に舞う。
来人はその風に舞う灰の一部をそっと手に取り、バブルの中へと記憶した。
これで、全て終わった。
来人の髪色から白金が抜けて行き、いつもの茶へと戻る。
「――『遺伝子』の色。貰って行くよ」
二つの大地の魂を乗せた灰は風に乗り、空へ、天高くへと、昇って行った――。
それから。
駆け付けたカンガスとその相棒ユキの手伝いも借りつつ、塔を降りる最中に下層でサンダーバードを倒し元の姿へと戻ったガイア族の手当てまで済ませ、涼しい顔で待っていたティルとダンデとも合流。
来人はイリスに肩を貸しつつ、ティルの憎まれ口を聞きながら。
疲れ果てたガーネとジューゴはカンガスとユキに担がれながら。
そんな感じで、皆でメガの元へと戻った。
来人たちに致命的な怪我は無いが、特に契約者たちは『憑依混沌・完全体』を使った戦闘による大量の波動の消費によって皆ガス欠の様な状態だ。
それでもきちんと処置をしてしばらく休めば時期に元に戻るだろう。
帰路で視界に入る景色は、既に鎮火され落ち着きを取り戻しつつあるメーテルの都市。
しかし、建物は倒壊し、怪我人も大勢居る。
復興まではしばらくの時間がかかるだろう。
メガの元、つまりガーネたちの実家の場所へと戻れば、そこは仮設のキャンプとして展開されていて、怪我人――というか怪我犬や怪我ライオンと、治療の必要な沢山のガイア族が集められていた。
救護班にの面々は自然の大地の民、ジャックやミーシャ、そして長のリーンまで駆けつけて来て働いていた。
水の大地の民、ジュゴンの兵士たちも宙を泳いで物資を運んだりと、無事なガイア族たちは皆一丸となって復興に向けて動き出している。
来人はそんなガイア族たちを見送りつつ、メガの元へ。
「お疲れ様だネ。ライト、お兄ちゃん」
メガはいつもの調子で、特に感情を乗せるわけでも無く親しい二人の名だけを呼んで労ってきた。
「ああ、メガもありがとう。――あと、これ」
そう言って、来人は懐からボール状となったあのバブルを取り出し、メガへと放り投げた。
そのバブルの中にはゼノムの遺灰が封じられている。
メガは特に説明を聞く訳でも無く、リュックサックから伸びたマジックアームでそれをキャッチして、
「ほい。ギザ、任せた」
と、そのままギザへ向かって投げて横流しした。
「ちょ、メガさん!?」と狼狽えなんとかキャッチするギザを他所に、メガは視線だけを来人に返し、来人もそれに頷いて応えた。
その様子を後ろから見ていたティルが、少し不機嫌な色を含んだ声を上げた。
「お前は何者なんだ? 見た所、ガイア族の様だが――」
メガは天界の神々の管轄から離れ、一人地球で生きるガイア族であり、言うなれば害を成さないだけで立場上はゼノムとファントムに近しい存在だ。
ティルが事情を知れば何かまた面倒事になるかもしれない。
そう思い来人が間に入ろうとするが、メガはふんと鼻を鳴らしてそれを制止し、ティルに答えた。
「ただの天才だヨ」
そして、こう付け加えた。
「それに、お前の治療をしたのもボクなんだ。感謝の気持ちが1ピクセルでも有るのなら、それ以上詮索しないで貰いたいネ」
ティルはそう言われて、自分の傷に巻かれた包帯に手を触れる。
どうやら、氷の大地でゼノムの漆黒の一閃を受けたティルを治療し、あの塔へと誘ったのもまたメガの様だ。
ティルは小さく舌打ちをした後、それ以上の詮索をせず背を向けた。
「行くぞ、ダンデ。アナ様に今回の一件を報告しに行く」
「はい、ティル様!」
ティルはさっさと歩いてメーテルの大ゲートへと向かって行く。
ダンデは数歩歩いた後、歩を止めて振り返り、
「――ありがとうございました」
と、一言を残し、早足で駆けて主人の背を追って行った。
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