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第二章 ガイアの遺伝子編
#78 中央都市、メーテル
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メガからの一報を受けて、至急中央都市メーテルへと向かおうとする来人たち。
街ではバーガの肉体を依り代として復活し、そしてファントムと憑依混沌した、全盛期を超える力を持つゼノムが暴れている。
自身の『遺伝子』の色を使って、無差別にガイア族たちを暴走状態にしているのだ。
暴走状態となったガイア族は強制的に翼の姿へと変化させられ、我を失いその波動尽きるまで破壊の限りを尽くすだろう。
一刻も早くメーテルへ向かい、止めなければならない。
しかし、徒歩で向かっていては間に合わない。
「らいたん! 乗るネ!」
ガーネは状況を見るやいち早く翼の姿へと変化し、氷の龍となる。
龍となったガーネの背には来人、イリス、そしてジューゴが乗り、氷の大地を囲う壁を越えてメーテルへと向かった。
しばらく飛べば冷たい風は過ぎ去り、これまで来人たちが旅をして来た水、山、炎、自然、それらの大地のどれとも違う、無機質で文明的な都市が見えて来た。
「あそこが、中央都市メーテル――」
「酷い有様ですわ。地獄とは、こういう光景を言うのでしょうか……」
イリスが眉を顰め、そう呟く。
上空から見れば、大きな円形の都市の各所で時折爆発音が起こり、火の手が上がっている。
既にゼノムの魔の手は街の民たちに伸びており、多頭の龍や燃え盛る火の鳥など、翼を得たガイア族たちが暴れ回っている様だ。
そんな眼下の都市を眺めながら、メガと落ち合う予定地へと向かう。
『あ! あそこだネ!』
見えて来たのは一軒の家。
そこの屋根上でチカチカと人口の眩い灯りが点滅していて、上空から見下ろした遠目からでも、それがメガからの目印だとすぐに分かった。
話によれば、その家がガーネたちの実家だ。
ガーネがそれを見つけて、少しずつ高度を落としていると――、
「――危ない!」
龍の姿となったガーネが飛翔していれば、蛇の身体に二枚の翼を持つ、ドレイクの姿をした暴走状態のガイア族が襲ってきた。
大きく口を開き、鋭い牙で氷の龍に噛みつかんとする。
ガーネが体勢を崩しかけるが、そこにジューゴが飛び出してドレイクに応戦する。
「ジューゴカッター!!」
ジューゴは『岩』の礫を打ち出し、ドレイクに応戦。
礫は見事その頭部にヒットし、ドレイクはふらふらと蛇行しながら地上へと落ちて行く。
「いったい何人のガイア族がこうなっているんだ……」
そう来人が呟くと、脳内にまた声が響く。
『現在確認しているだけで16体、今の2体を除けば14体だ。――もっとも、ゼノムを止めるまでこれからまだ増えて行くだろうけどネ』
「メガ!」
メガはまたメガ・レンズを通じて来人に通信を送って来た。
すると、もう一体のドレイクが襲い掛かって来る。
しかし、そのドレイクの牙は龍のガーネに届く事は無かった。
ドレイクは轟音と共にすぐに撃ち落とされる。
見れば、ガーネの実家の屋根上の、チカチカと点滅する目印の根元から細い煙が立ち上っている。
どうやら先程の轟音はその場所から大砲が撃ち出された事による物らしい。
『もう付近に障害は居ない。降りて来ると良いヨ』
「よし。ガーネ、着陸だ」
メガの言葉を受け、来人は飛翔するガーネに指示を出す。
そうして無事着陸すれば、そこには犬の科学者メガと制服に白衣の女の子ギザの二人が出迎えてくれた。
ギザはその華奢な女の子の体躯に見合わない、大きな大砲を肩に担いでいて、先程の轟音を伴う砲撃はギザの手によるものだった事が分かる。
そんなギザの足元で、メガは辺り一面にノートパソコンやら何やら何本ものコードが繋がった用途不明の機会を並べ、背負ったリュックサックから伸びたマジックアームでカタカタと忙しなく打鍵音を響かせている。
やっと合流だ。
来人たちを降ろした後、氷の龍は砕け散り、中からひょこりと出て来たいつもの犬の姿のガーネは一目散に弟の元へと走って行く。
「メガ! お待たせだネ!」
「お兄ちゃん、お疲れ様。飛んで来て貰って休む間もなく悪いけれど、時間がない。早速だけど本題に入るヨ」
ガーネがこくりと頷けば、メガは「さて、何から話そうか」と前置きから話を始める。
「とりあえず、メガはどうしてこっちに来たんだ?」
「ライトのその『メガ・レンズ』を通して、全て見ていたヨ。各大地で起こった異変も、ファントムの暗躍も、そしてゼノムの復活も――」
来人はメガから貰ったこのコンタクトレンズにそんな盗聴機能の様な物が付属しているだなんて聞かされていなかった。
それでも生体モニタリング機能や通信機能まで付属したハイテクアイテムなのだから、今更どんな謎機能が追加されていようと驚く事も無いだろう。
多少プライバシーの侵害に抗議したい来人だったが、それどころではない為その抗議の意を呑み込んだ。
「それで、助けに来てくれたのか」
「それもそうだし、興味が湧いたのも有った。あと、ジュゴロクとジャック、そのファントム――いや、ゼノムの被害者となった二人の治療も終え、既に意識を取り戻しているヨ」
「ジュゴロクが!」
「お兄様! 良かったですわ……!」
そのメガの言葉に、親族であるジューゴとイリスの表情が少し明るくなる。
それを見てメガは満足気に小さく頷いた後、「おい、ギザ」と隣の助手へ指示を出す。
「はい、メガさん。――先輩、こちらです」
メガの意図をその短い一言だけで汲み取ったギザは、懐から一つの黒いキューブ状の物体を取り出した。
「それは?」
「これは『メガ・キューブ』と言って、内側に波動と記憶を記録し封じ込めることが出来る物デス。中には彼ら被害者から取り除いた“ゼノムの波動の残滓”が封じられています」
「それって――!?」
それは来人が求めていた物、このガイア界へ来訪した理由だ。
ゼノムの波動の残滓、つまり『遺伝子』の色、それが有れば魂の遺伝子を改変することが出来るかもしれない。
来人がそのキューブに手を伸ばそうとするが、しかしギザはさっとそれを懐へと仕舞い込んだ。
「まだ駄目デスよ、先輩。これはワタシたちが解析して、然るべき処置を施した後に、本当に望んだ効果が有れば、その時先輩へお渡しします」
「それに、それだけじゃ微弱過ぎて色として効果を発揮しないからネ」
それを聞いて来人は、少し肩を落としつつも伸ばしかけた手を引っ込める。
しかし、すぐに調子を戻して、
「じゃあ、何でそれを今出したんだよ。メガの事だから、何か意味は有るんだろう? 勿体ぶって話すのはお前の悪い癖だぞ」
「流石ライト、そろそろボクの事も分かって来たネ。その通り。微弱でこれ単体では使い物にならないが、ゼノムの色の特性を知る事は出来た。そして、色を知ればそれと相反する色をぶつけて相殺する事も出来る――」
それは、イリスの色『虹』の能力にも通ずる所だ。
そう言って、メガは先程の『メガ・キューブ』の小型版をいくつか取り出し、それを皆に配った。
「これは、さっきのとは違うの?」
「そっちのキューブには『絶色領域』を展開する為の機構と、ゼノムの色のデータが記録されている。――つまり具体的には、それを所持していればゼノムの『遺伝子』の色による干渉を受けない」
「『絶色領域』って、いつもながらそんな物をよくもまあ……」
キューブから発する微弱な波動がゼノムの波動に作用し、魂の遺伝子の改変を受けなくする、という効果のアイテムだ。
メガは『メガ・ブラック』と『メガ・ホワイト』という二つの鉱石を使ってあらゆるアイテムを開発している。
その内の一つ、『メガ・キューブ』は来人の『泡沫』の様な記憶と記録の保存をする性質を持っていて、様々な場面で応用が出来るのだ。
「ともかく、それが有ればお兄ちゃんたちガイア族もゼノムの色を気にする事無く、存分に戦えるヨ。それじゃあ、後の話の続きは道中だ。行ってこい」
「行ってこいって――」
「『メガ・レンズ』にルートガイドをインストールしたから、それを追えばゼノムの元へ辿り着けるヨ」
「――分かった」
来人が視界の中に映る『メガ・レンズ』のUIに、ルートガイドが追加された。
道に添うように軌跡が映し出される。
「行くぞ、みんな!」
「だネ!」
「ええ!」
「はい!」
来人の号令に、三人の契約者たちが応える。
一行はメーテルで暴れるゼノムの元へ向けて走り出した。
街ではバーガの肉体を依り代として復活し、そしてファントムと憑依混沌した、全盛期を超える力を持つゼノムが暴れている。
自身の『遺伝子』の色を使って、無差別にガイア族たちを暴走状態にしているのだ。
暴走状態となったガイア族は強制的に翼の姿へと変化させられ、我を失いその波動尽きるまで破壊の限りを尽くすだろう。
一刻も早くメーテルへ向かい、止めなければならない。
しかし、徒歩で向かっていては間に合わない。
「らいたん! 乗るネ!」
ガーネは状況を見るやいち早く翼の姿へと変化し、氷の龍となる。
龍となったガーネの背には来人、イリス、そしてジューゴが乗り、氷の大地を囲う壁を越えてメーテルへと向かった。
しばらく飛べば冷たい風は過ぎ去り、これまで来人たちが旅をして来た水、山、炎、自然、それらの大地のどれとも違う、無機質で文明的な都市が見えて来た。
「あそこが、中央都市メーテル――」
「酷い有様ですわ。地獄とは、こういう光景を言うのでしょうか……」
イリスが眉を顰め、そう呟く。
上空から見れば、大きな円形の都市の各所で時折爆発音が起こり、火の手が上がっている。
既にゼノムの魔の手は街の民たちに伸びており、多頭の龍や燃え盛る火の鳥など、翼を得たガイア族たちが暴れ回っている様だ。
そんな眼下の都市を眺めながら、メガと落ち合う予定地へと向かう。
『あ! あそこだネ!』
見えて来たのは一軒の家。
そこの屋根上でチカチカと人口の眩い灯りが点滅していて、上空から見下ろした遠目からでも、それがメガからの目印だとすぐに分かった。
話によれば、その家がガーネたちの実家だ。
ガーネがそれを見つけて、少しずつ高度を落としていると――、
「――危ない!」
龍の姿となったガーネが飛翔していれば、蛇の身体に二枚の翼を持つ、ドレイクの姿をした暴走状態のガイア族が襲ってきた。
大きく口を開き、鋭い牙で氷の龍に噛みつかんとする。
ガーネが体勢を崩しかけるが、そこにジューゴが飛び出してドレイクに応戦する。
「ジューゴカッター!!」
ジューゴは『岩』の礫を打ち出し、ドレイクに応戦。
礫は見事その頭部にヒットし、ドレイクはふらふらと蛇行しながら地上へと落ちて行く。
「いったい何人のガイア族がこうなっているんだ……」
そう来人が呟くと、脳内にまた声が響く。
『現在確認しているだけで16体、今の2体を除けば14体だ。――もっとも、ゼノムを止めるまでこれからまだ増えて行くだろうけどネ』
「メガ!」
メガはまたメガ・レンズを通じて来人に通信を送って来た。
すると、もう一体のドレイクが襲い掛かって来る。
しかし、そのドレイクの牙は龍のガーネに届く事は無かった。
ドレイクは轟音と共にすぐに撃ち落とされる。
見れば、ガーネの実家の屋根上の、チカチカと点滅する目印の根元から細い煙が立ち上っている。
どうやら先程の轟音はその場所から大砲が撃ち出された事による物らしい。
『もう付近に障害は居ない。降りて来ると良いヨ』
「よし。ガーネ、着陸だ」
メガの言葉を受け、来人は飛翔するガーネに指示を出す。
そうして無事着陸すれば、そこには犬の科学者メガと制服に白衣の女の子ギザの二人が出迎えてくれた。
ギザはその華奢な女の子の体躯に見合わない、大きな大砲を肩に担いでいて、先程の轟音を伴う砲撃はギザの手によるものだった事が分かる。
そんなギザの足元で、メガは辺り一面にノートパソコンやら何やら何本ものコードが繋がった用途不明の機会を並べ、背負ったリュックサックから伸びたマジックアームでカタカタと忙しなく打鍵音を響かせている。
やっと合流だ。
来人たちを降ろした後、氷の龍は砕け散り、中からひょこりと出て来たいつもの犬の姿のガーネは一目散に弟の元へと走って行く。
「メガ! お待たせだネ!」
「お兄ちゃん、お疲れ様。飛んで来て貰って休む間もなく悪いけれど、時間がない。早速だけど本題に入るヨ」
ガーネがこくりと頷けば、メガは「さて、何から話そうか」と前置きから話を始める。
「とりあえず、メガはどうしてこっちに来たんだ?」
「ライトのその『メガ・レンズ』を通して、全て見ていたヨ。各大地で起こった異変も、ファントムの暗躍も、そしてゼノムの復活も――」
来人はメガから貰ったこのコンタクトレンズにそんな盗聴機能の様な物が付属しているだなんて聞かされていなかった。
それでも生体モニタリング機能や通信機能まで付属したハイテクアイテムなのだから、今更どんな謎機能が追加されていようと驚く事も無いだろう。
多少プライバシーの侵害に抗議したい来人だったが、それどころではない為その抗議の意を呑み込んだ。
「それで、助けに来てくれたのか」
「それもそうだし、興味が湧いたのも有った。あと、ジュゴロクとジャック、そのファントム――いや、ゼノムの被害者となった二人の治療も終え、既に意識を取り戻しているヨ」
「ジュゴロクが!」
「お兄様! 良かったですわ……!」
そのメガの言葉に、親族であるジューゴとイリスの表情が少し明るくなる。
それを見てメガは満足気に小さく頷いた後、「おい、ギザ」と隣の助手へ指示を出す。
「はい、メガさん。――先輩、こちらです」
メガの意図をその短い一言だけで汲み取ったギザは、懐から一つの黒いキューブ状の物体を取り出した。
「それは?」
「これは『メガ・キューブ』と言って、内側に波動と記憶を記録し封じ込めることが出来る物デス。中には彼ら被害者から取り除いた“ゼノムの波動の残滓”が封じられています」
「それって――!?」
それは来人が求めていた物、このガイア界へ来訪した理由だ。
ゼノムの波動の残滓、つまり『遺伝子』の色、それが有れば魂の遺伝子を改変することが出来るかもしれない。
来人がそのキューブに手を伸ばそうとするが、しかしギザはさっとそれを懐へと仕舞い込んだ。
「まだ駄目デスよ、先輩。これはワタシたちが解析して、然るべき処置を施した後に、本当に望んだ効果が有れば、その時先輩へお渡しします」
「それに、それだけじゃ微弱過ぎて色として効果を発揮しないからネ」
それを聞いて来人は、少し肩を落としつつも伸ばしかけた手を引っ込める。
しかし、すぐに調子を戻して、
「じゃあ、何でそれを今出したんだよ。メガの事だから、何か意味は有るんだろう? 勿体ぶって話すのはお前の悪い癖だぞ」
「流石ライト、そろそろボクの事も分かって来たネ。その通り。微弱でこれ単体では使い物にならないが、ゼノムの色の特性を知る事は出来た。そして、色を知ればそれと相反する色をぶつけて相殺する事も出来る――」
それは、イリスの色『虹』の能力にも通ずる所だ。
そう言って、メガは先程の『メガ・キューブ』の小型版をいくつか取り出し、それを皆に配った。
「これは、さっきのとは違うの?」
「そっちのキューブには『絶色領域』を展開する為の機構と、ゼノムの色のデータが記録されている。――つまり具体的には、それを所持していればゼノムの『遺伝子』の色による干渉を受けない」
「『絶色領域』って、いつもながらそんな物をよくもまあ……」
キューブから発する微弱な波動がゼノムの波動に作用し、魂の遺伝子の改変を受けなくする、という効果のアイテムだ。
メガは『メガ・ブラック』と『メガ・ホワイト』という二つの鉱石を使ってあらゆるアイテムを開発している。
その内の一つ、『メガ・キューブ』は来人の『泡沫』の様な記憶と記録の保存をする性質を持っていて、様々な場面で応用が出来るのだ。
「ともかく、それが有ればお兄ちゃんたちガイア族もゼノムの色を気にする事無く、存分に戦えるヨ。それじゃあ、後の話の続きは道中だ。行ってこい」
「行ってこいって――」
「『メガ・レンズ』にルートガイドをインストールしたから、それを追えばゼノムの元へ辿り着けるヨ」
「――分かった」
来人が視界の中に映る『メガ・レンズ』のUIに、ルートガイドが追加された。
道に添うように軌跡が映し出される。
「行くぞ、みんな!」
「だネ!」
「ええ!」
「はい!」
来人の号令に、三人の契約者たちが応える。
一行はメーテルで暴れるゼノムの元へ向けて走り出した。
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