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第二章 ガイアの遺伝子編
#56 六つに分かれた大地
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ガイア界について、来人が事前に聞いていた情報。
地を歩く天使、神の使い、ガイア族の故郷。
ガイア界と呼ばれるこの地は、地上に存在する六つに分かれた大地から成る。
五つの毛色の全く異なる大地と、一つの都市。
中央都市、メーテル。
自然の大地、リンクフォレスト。
水の大地、ディープメイル。
山の大地、グロッグウォール。
炎の大地、コルナポロニア。
氷の大地、リップバーン。
これらの地上の六つと、それらの地下に広がる迷路の様な広大な空間、アビスプルート。
これらがガイア界を構成する全てだ。
犬や猫の姿をしたガイア族は、中央都市メーテルに。
ライオンの様な肉食獣は、自然の大地リンクフォレストに。
イルカの様な水生生物は、水の大地ディープメイルに。
猿や豚、鹿なんかは、山の大地グロッグウォールに。
龍種の姿のままの生活を好む者たちは、炎の大地コルナポロニアに。
そして、初代の友バーガの眠る禁足地、氷の大地リップバーン。
ガイア族の多くが商業や日々の営みの中で利用する中央都市メーテルには、天界と繋がっている大きなゲートが存在していて、“普通”であればガイア界への出入りはそのゲートを潜るしかない。
もっとも、そのゲートは天界でアナの許可を得なくてはならない為、今回来人はその美しいと言われる大ゲートを見る事は無い。
では、今回『ハッキング・ゲート』を潜った来人がどこからガイア界への密入国を果たしたのかと言うと――、
「――うわあああああああああ!!!!」
来人は腹の奥底から叫び声を上げるが、声は慣性に乗って天に向かって消えて行く。
『ハッキング・ゲート』の白い光を抜けた先は、空中だった。
その結果、来人たちはガイア界の遥か上空に投げ出されてたのだ。
「坊ちゃま、お手を!」
「らいたん!」
イリスとガーネは来人を助け出そうと手を伸ばすが、空中に放り出された三人の身体は強い風に煽られて、伸ばした手も空を切って届かない。
「がああああねええええ!! いりすさああ――」
――ドボン。
来人の叫びが終わる前にその身体は落下。
海の中へと落ち、高く白い水飛沫が上がる。
「ごぼぼぼぼぼぼ」
来人は焦りから上手く体勢を立て直せない。
海の中で手足をバタバタと動かして藻掻く。
そうしていると、海の奥底から一つの影が来人の元へと泳いで来た。
「――!?」
驚く来人だったが、抵抗する間も無く、その影は鼻先で来人の身体を会場へと押し出した。
「ぷはっ!」
けほけほと水を吐き出し、呼吸を整える来人。
「らいたん!」
「坊ちゃま!」
ガイア族の二人は空中で受け身を取って、勢いを殺してゆっくりと海上へと着地し、そのまま来人の元に駆け寄って来る。
「はぁ、はぁ、助かった……。でも、誰が……?」
来人がそう周囲の様子を窺うと――、
「神様、何をされているのですか?」
人魚――いや、違う。
ごつごつとした灰色の肌の、丸太の様な生物。
「君が、助けてくれたの?」
「はい、僕はジュゴン六兄弟の五男、ジューゴです」
地を歩く天使は翼を持たないあらゆる動物の姿を模している。
海に住むガイア族、ジュゴンの姿をしたジューゴ。
「そっか、ありがとう、ジューゴ。僕は――」
そう名乗ろうとして、来人は考える。
密入国をした自分が正直に名乗っても大丈夫だろうか、と。
そうしている内に、ジューゴは来人の傍に近寄って来たガーネとイリスの存在に気付く。
「あれ? もしかして、イリスさん?」
「あら、わたくしの事、知っていますの?」
どうやら、ジューゴは一方的にイリスの事を知っていたらしい。
「それは勿論ですよ、あのライジン様の隣に立ち、神格を与えられ人型の姿を手に入れたガイア族。イリスさんは有名人ですから!」
ジューゴは嬉々として、憧れの人の様にイリスの事を語る。
来人の父、来神は最強の神として、そして血統でありながら王にならなかった者として、神々の間では良くも悪くも有名だ。
つまり、イリスと行動を共にしている時点で、来人は正体を隠す事が難しい訳だ。
なので、来人は改めて名乗り直す。
「――僕は三代目神王候補、天野来人。よろしくね、ジューゴ」
「おお! 王様! よろしくお願いします!」
「あはは……。まだ王様じゃないけどね?」
そして、来人はジューゴの背に乗って海を渡り、近くの小島まで連れて行ってもらった。
「広い海だね。って事は、ここが――」
「ええ。ここは水の大地、ディープメイルですわね」
水の大地、ディープメイル。
通常であれば中央都市メーテルから始まるはずだったガイア界の旅は、そんな広がる海から始まった。
「メガのやつ、『ハッキング・ゲート』の出口を間違えたのか?」
「メガに限ってそんなはずは無いネ。きっと、何か意味が有るはずだネ」
確かに、来人もこれまでメガが間違っていたり失敗しているのを見たことはない。
それに、信用しているからこそ今回も頼った訳だ。
「王様はどうして、ガイア界に?」
「ええっと、ほら。ガイア族が暴走する異変が起きてるって話が有ったから、その調査にね」
「おお! わざわざ王様が! それはありがたいのです!」
「あはは……」
“禁足地に行く為に”なんて馬鹿正直には言えない。
純真なジューゴを騙したみたいで、少し胸の痛む来人だった。
さて、狙い通りガイア界への密入国は叶った。
しかし、ここからどうやって禁足地である氷の大地まで行くのか。
そして、その前にイリスの目的である故郷の自然の大地リンクフォレストにも向かわなくてはならない。
「イリスさん、リンクフォレストってここから近いんですか?」
「そうですわね、中央都市メーテルを通ればすぐに着くでしょうが……」
「? 何か問題が?」
「あそこは人も多いですわ。もし坊ちゃまが密入国者だとバレてしまえば、騒ぎになりかねません。少し遠回りをした方が良いですわね」
「なるほど、分かりました」
イリスの開いた地図をみんなで確認する。
「ここが今居るディープメイルで、ここが目的のリンクフォレスト、その隣がリップバーンですわ」
ガイア界の地図は、メーテルを中心として囲うように、時計回りに、水、山、炎、自然、氷の順になっていて、水と氷の間には地下空間アビスプルートへと繋がる大きな奈落が有る。
「この奈落って、ガーネがドラゴンになって飛んで行けたりしないの?」
「無理だネ。アビスプルートはちょっと特殊で、ガイア族の力が弱まるんだネ」
「それで、誰も住んでいないのか」
「だネ」
ショートカットは出来ない。
やはり順当に、各地を巡って行くしかない様だ。
「それじゃあ、まずはこの水の大地を抜けて、山の大地を目指すか」
そう来人達が今後の計画を立てていると、横から話を聞いていたジューゴが顔を覗かせる。
「王様、王様」
「うん? どうしたの、ジューゴ」
「王様、密入国して来たのですか?」
「「「あっ」」」
普通に三人で作戦会議をしていた所為で、会話声が丸聞こえだった。
あっけなくジューゴに来人の犯した罪が露見してしまった。
「えっと、その……」
「坊ちゃま、こいつの首を刎ねましょう。今ならまだ間に合いますわ」
「待って待って、イリスさん!」
イリスが即決即断でジューゴに爪の刃を向けようとするのを、来人は慌てて静止する。
先程溺れかけた来人を助けてくれた命の恩人だ、首を刎ねる訳にはいかない。
「ジューゴ、確かに僕たちは正規のゲートを通って来た訳じゃないんだけど、別に悪い事をしようって訳じゃ無いんだ。信用して、秘密にしておいて欲しいんだけど……」
「王様がそう言うなら、分かりました。秘密は守るのです!」
「本当に、いいの……?」
「悪い事をしないんですよね? でしたら、王様の言う通りにします!」
純真なジューゴは、二つ返事で来人の要求を了承しれくれた。
しかし、やはりイリスは不安な様で――、
「こいつ、絶対に口が軽いですわ、泳がせておくのは危険ですの」
と、爪を治めようとしない。
そこで、来人は考えて代案を出す。
「じゃあ、ジューゴを連れて行きませんか?」
「え?」
「連れて行ってずっと監視しておけば、誰にも言いふらさないから安心ですよ」
「それはそうですが……」
イリスは言い淀んだ後、「はぁ」と小さく溜息を吐いて、ジューゴに向き直る。
「ジューゴ、あなたもわたくしたちの旅に同行しなさい。と、王は申していますわ。どうしますの?」
「分かりましたのです! 僕も王様に仕えられるのなら、本望なのです!」
ジューゴはまたもや二つ返事で了承する。
「本当にいいの?」
「はいです! ガイア族にとって、神に仕えるというのはとても名誉な事です! それが王様だというのなら、まだ若輩の僕からすれば望外の事なのです!」
「そういうものなのか……? まあ、いいか。それじゃあよろしく、ジューゴ」
「よろしくなのです!」
来人にはあまり分からない感覚だったが、純真なジューゴは心底嬉しそうにぴちぴちと跳ねている。――というか、宙を泳いでいる。
流石ガイア族、水が無くとも大丈夫な様だ。
「確かに、ジューゴ程の歳で神に仕えるなんて前代未聞では有りますわね。でも、事情が事情ですので、致し方ありませんわ」
「ネたちよりも一回り若いネ」
来人は見比べてみるが、動物の姿をした彼らの年齢の違いなんて分からなかった。
「ですが王様、出立は少し待っていただけますか? 僕は家族と長に挨拶をしてから行かねばならないのです!」
「ああ、分かった。僕も挨拶に行くよ、勝手に連れて行く訳にも行かないしね」
「ありがたいのです!」
こうして、来人は新たな同行者ジューゴを仲間に加えた。
そして、この水の大地ディープメイルの長に会う為に、水上に作られた街へと向かう。
地を歩く天使、神の使い、ガイア族の故郷。
ガイア界と呼ばれるこの地は、地上に存在する六つに分かれた大地から成る。
五つの毛色の全く異なる大地と、一つの都市。
中央都市、メーテル。
自然の大地、リンクフォレスト。
水の大地、ディープメイル。
山の大地、グロッグウォール。
炎の大地、コルナポロニア。
氷の大地、リップバーン。
これらの地上の六つと、それらの地下に広がる迷路の様な広大な空間、アビスプルート。
これらがガイア界を構成する全てだ。
犬や猫の姿をしたガイア族は、中央都市メーテルに。
ライオンの様な肉食獣は、自然の大地リンクフォレストに。
イルカの様な水生生物は、水の大地ディープメイルに。
猿や豚、鹿なんかは、山の大地グロッグウォールに。
龍種の姿のままの生活を好む者たちは、炎の大地コルナポロニアに。
そして、初代の友バーガの眠る禁足地、氷の大地リップバーン。
ガイア族の多くが商業や日々の営みの中で利用する中央都市メーテルには、天界と繋がっている大きなゲートが存在していて、“普通”であればガイア界への出入りはそのゲートを潜るしかない。
もっとも、そのゲートは天界でアナの許可を得なくてはならない為、今回来人はその美しいと言われる大ゲートを見る事は無い。
では、今回『ハッキング・ゲート』を潜った来人がどこからガイア界への密入国を果たしたのかと言うと――、
「――うわあああああああああ!!!!」
来人は腹の奥底から叫び声を上げるが、声は慣性に乗って天に向かって消えて行く。
『ハッキング・ゲート』の白い光を抜けた先は、空中だった。
その結果、来人たちはガイア界の遥か上空に投げ出されてたのだ。
「坊ちゃま、お手を!」
「らいたん!」
イリスとガーネは来人を助け出そうと手を伸ばすが、空中に放り出された三人の身体は強い風に煽られて、伸ばした手も空を切って届かない。
「がああああねええええ!! いりすさああ――」
――ドボン。
来人の叫びが終わる前にその身体は落下。
海の中へと落ち、高く白い水飛沫が上がる。
「ごぼぼぼぼぼぼ」
来人は焦りから上手く体勢を立て直せない。
海の中で手足をバタバタと動かして藻掻く。
そうしていると、海の奥底から一つの影が来人の元へと泳いで来た。
「――!?」
驚く来人だったが、抵抗する間も無く、その影は鼻先で来人の身体を会場へと押し出した。
「ぷはっ!」
けほけほと水を吐き出し、呼吸を整える来人。
「らいたん!」
「坊ちゃま!」
ガイア族の二人は空中で受け身を取って、勢いを殺してゆっくりと海上へと着地し、そのまま来人の元に駆け寄って来る。
「はぁ、はぁ、助かった……。でも、誰が……?」
来人がそう周囲の様子を窺うと――、
「神様、何をされているのですか?」
人魚――いや、違う。
ごつごつとした灰色の肌の、丸太の様な生物。
「君が、助けてくれたの?」
「はい、僕はジュゴン六兄弟の五男、ジューゴです」
地を歩く天使は翼を持たないあらゆる動物の姿を模している。
海に住むガイア族、ジュゴンの姿をしたジューゴ。
「そっか、ありがとう、ジューゴ。僕は――」
そう名乗ろうとして、来人は考える。
密入国をした自分が正直に名乗っても大丈夫だろうか、と。
そうしている内に、ジューゴは来人の傍に近寄って来たガーネとイリスの存在に気付く。
「あれ? もしかして、イリスさん?」
「あら、わたくしの事、知っていますの?」
どうやら、ジューゴは一方的にイリスの事を知っていたらしい。
「それは勿論ですよ、あのライジン様の隣に立ち、神格を与えられ人型の姿を手に入れたガイア族。イリスさんは有名人ですから!」
ジューゴは嬉々として、憧れの人の様にイリスの事を語る。
来人の父、来神は最強の神として、そして血統でありながら王にならなかった者として、神々の間では良くも悪くも有名だ。
つまり、イリスと行動を共にしている時点で、来人は正体を隠す事が難しい訳だ。
なので、来人は改めて名乗り直す。
「――僕は三代目神王候補、天野来人。よろしくね、ジューゴ」
「おお! 王様! よろしくお願いします!」
「あはは……。まだ王様じゃないけどね?」
そして、来人はジューゴの背に乗って海を渡り、近くの小島まで連れて行ってもらった。
「広い海だね。って事は、ここが――」
「ええ。ここは水の大地、ディープメイルですわね」
水の大地、ディープメイル。
通常であれば中央都市メーテルから始まるはずだったガイア界の旅は、そんな広がる海から始まった。
「メガのやつ、『ハッキング・ゲート』の出口を間違えたのか?」
「メガに限ってそんなはずは無いネ。きっと、何か意味が有るはずだネ」
確かに、来人もこれまでメガが間違っていたり失敗しているのを見たことはない。
それに、信用しているからこそ今回も頼った訳だ。
「王様はどうして、ガイア界に?」
「ええっと、ほら。ガイア族が暴走する異変が起きてるって話が有ったから、その調査にね」
「おお! わざわざ王様が! それはありがたいのです!」
「あはは……」
“禁足地に行く為に”なんて馬鹿正直には言えない。
純真なジューゴを騙したみたいで、少し胸の痛む来人だった。
さて、狙い通りガイア界への密入国は叶った。
しかし、ここからどうやって禁足地である氷の大地まで行くのか。
そして、その前にイリスの目的である故郷の自然の大地リンクフォレストにも向かわなくてはならない。
「イリスさん、リンクフォレストってここから近いんですか?」
「そうですわね、中央都市メーテルを通ればすぐに着くでしょうが……」
「? 何か問題が?」
「あそこは人も多いですわ。もし坊ちゃまが密入国者だとバレてしまえば、騒ぎになりかねません。少し遠回りをした方が良いですわね」
「なるほど、分かりました」
イリスの開いた地図をみんなで確認する。
「ここが今居るディープメイルで、ここが目的のリンクフォレスト、その隣がリップバーンですわ」
ガイア界の地図は、メーテルを中心として囲うように、時計回りに、水、山、炎、自然、氷の順になっていて、水と氷の間には地下空間アビスプルートへと繋がる大きな奈落が有る。
「この奈落って、ガーネがドラゴンになって飛んで行けたりしないの?」
「無理だネ。アビスプルートはちょっと特殊で、ガイア族の力が弱まるんだネ」
「それで、誰も住んでいないのか」
「だネ」
ショートカットは出来ない。
やはり順当に、各地を巡って行くしかない様だ。
「それじゃあ、まずはこの水の大地を抜けて、山の大地を目指すか」
そう来人達が今後の計画を立てていると、横から話を聞いていたジューゴが顔を覗かせる。
「王様、王様」
「うん? どうしたの、ジューゴ」
「王様、密入国して来たのですか?」
「「「あっ」」」
普通に三人で作戦会議をしていた所為で、会話声が丸聞こえだった。
あっけなくジューゴに来人の犯した罪が露見してしまった。
「えっと、その……」
「坊ちゃま、こいつの首を刎ねましょう。今ならまだ間に合いますわ」
「待って待って、イリスさん!」
イリスが即決即断でジューゴに爪の刃を向けようとするのを、来人は慌てて静止する。
先程溺れかけた来人を助けてくれた命の恩人だ、首を刎ねる訳にはいかない。
「ジューゴ、確かに僕たちは正規のゲートを通って来た訳じゃないんだけど、別に悪い事をしようって訳じゃ無いんだ。信用して、秘密にしておいて欲しいんだけど……」
「王様がそう言うなら、分かりました。秘密は守るのです!」
「本当に、いいの……?」
「悪い事をしないんですよね? でしたら、王様の言う通りにします!」
純真なジューゴは、二つ返事で来人の要求を了承しれくれた。
しかし、やはりイリスは不安な様で――、
「こいつ、絶対に口が軽いですわ、泳がせておくのは危険ですの」
と、爪を治めようとしない。
そこで、来人は考えて代案を出す。
「じゃあ、ジューゴを連れて行きませんか?」
「え?」
「連れて行ってずっと監視しておけば、誰にも言いふらさないから安心ですよ」
「それはそうですが……」
イリスは言い淀んだ後、「はぁ」と小さく溜息を吐いて、ジューゴに向き直る。
「ジューゴ、あなたもわたくしたちの旅に同行しなさい。と、王は申していますわ。どうしますの?」
「分かりましたのです! 僕も王様に仕えられるのなら、本望なのです!」
ジューゴはまたもや二つ返事で了承する。
「本当にいいの?」
「はいです! ガイア族にとって、神に仕えるというのはとても名誉な事です! それが王様だというのなら、まだ若輩の僕からすれば望外の事なのです!」
「そういうものなのか……? まあ、いいか。それじゃあよろしく、ジューゴ」
「よろしくなのです!」
来人にはあまり分からない感覚だったが、純真なジューゴは心底嬉しそうにぴちぴちと跳ねている。――というか、宙を泳いでいる。
流石ガイア族、水が無くとも大丈夫な様だ。
「確かに、ジューゴ程の歳で神に仕えるなんて前代未聞では有りますわね。でも、事情が事情ですので、致し方ありませんわ」
「ネたちよりも一回り若いネ」
来人は見比べてみるが、動物の姿をした彼らの年齢の違いなんて分からなかった。
「ですが王様、出立は少し待っていただけますか? 僕は家族と長に挨拶をしてから行かねばならないのです!」
「ああ、分かった。僕も挨拶に行くよ、勝手に連れて行く訳にも行かないしね」
「ありがたいのです!」
こうして、来人は新たな同行者ジューゴを仲間に加えた。
そして、この水の大地ディープメイルの長に会う為に、水上に作られた街へと向かう。
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