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第二章 ガイアの遺伝子編
#55 密入国
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翌日、来人はガイア界への立ち入り許可を取りに、王の間を訪れていた。
神々の中にも階級が有り、許可なしにあらゆる世界を行き来する者も居れば、来人の家庭教師のユウリの様に末端の神では許可や用事無しに他の世界に干渉できない神も居る。
ユウリはライジンからの仕事を受ける事で、地球へ降り立つ許可を得ている訳だ。
ガイア界はそれら数多の世界の中でも、地球に並ぶ重要度の高い世界。
故郷とするガイア族だけならともかく、来人も同行するとなればきちんと申請を出して許可を得なければならない。
「ガイア界でガイア族たちが暴走しているという話を耳にしまして、その調査に行って来ようかと思います」
来人の手札、イリスから聞いたガイア界での異変の話。
“仕事”という大義名分を貰って、ガイア界への立ち入り許可を貰って、ちゃっかり禁足地にも足を踏み入れてしまおうという魂胆だ。
そんな訳で、天界の諸々を取り仕切る神王補佐のアナに立ち入り申請をしたところ――、
「いや、必要無いよ」
普通に拒否されてしまった。
「何でですか!? 一大事ですよ!」
少々わざとらしいながらも、来人は大げさにアピールする。
「そっちはもう既にティルに任せてある、君は地球の鬼退治に当たってくれ」
「うぅむ……」
まさかティルにガイア界の調査の仕事が既に割り当てられていたとは。
もっとも、世界と世界を超える調査任務なので、人間である来人に回すよりも理にかなってはいる。
来人は考え込む。
どうやってこの着物美人の神王補佐を説得しようか、と。
考えた結果、第二の手札が無かった来人がひねり出したのは泣き落としだった。
「アダン君からも、アナ様を説得してよ。ほら、ガーネのお爺ちゃんのバーガさんのお墓参りも行ってあげたいし――」
堅物のアナと違い、仲の良いアダンに言ってみれば意外とすんなり要求が通るのではないかという事だ。
しかし、アダンからの返事は、
「ごめんね、ライト。その気持ちは嬉しいけれど、バーガはゆっくり眠らせてあげたいんだ。ガイア界への立ち入りを厳しくしている理由には、そのバーガが眠る氷の大地がの存在が大きいんだ」
「そういう理由なら、なおさらガイア界への立ち入りは許可出来ない」
アダンからの返答も、アナと同じくNOだった。
というか、バーガの名前を出した所為で余計に許可を得るのが難しくなってしまった。
禁足地というだけあって、やはり簡単には入れない。
「ぐぬぬ……」
来人はがっくりと肩を落とす。
氷の大地どころか、ガイア界への立ち入りすら却下されてしまった。
これではイリスになんと言えば良いのか……。
「――という訳で、駄目でした……」
そんな訳で、とぼとぼと帰宅した来人はイリスとガーネの前で、成果ないの旨を伝えた。
「あら、どう致しましょう」
「らいたん置いて、二人で行くネ?」
「わたくしはそれでも構いませんが、坊ちゃまの目的は果たせませんわね」
ガイア族の二人は既に来人を置いて里帰りをする気満々だ。
「二人共、置いてかないでよ……」
このままではユウリとお留守番をしてアニメ観賞に浸る日々を過ごす事になってしまう。
来人はちょっと悪くないかな、と思いつつもその誘惑を振り切り、次の手を打つ。
来人の次の手、それは“頼る相手を変える”事だ。
祖父のウルスや父であるライジン、血縁者に天界の権力者は他にも居る。
それら人脈を有効利用して――と、いう訳は無く。
来人とガーネが訪れた場所は、またしてもメガコーポレーションの地下研究所だった。
ガイア界の事は、ガイア族に、だ。
「――メガ、この前使った『ハッキング・ゲート』でガイア界に密入国出来ないかな?」
「ライトは本当に、面白いやつだヨ」
来人がそう訊ねれば、メガは楽しそうにけたけたと笑う。
「勿論可能だヨ。何せボクは天才だからネ」
「流石メガだネ」
「もっとも、ガイア界へ繋がる道をハックする為に調整の時間が必要だヨ」
メガがそう言えば、助手のギザがすぐに動く。
「それでは、ワタシはガイア界へ繋がる様にゲートの調整をしておくのデス。先輩たちは準備を整えて明日また来てください」
「分かった、よろしくね」
こうして、来人はガイア界への密入国手段『ハッキング・ゲート』を手に入れた。
アナにばれたら大変だが、秋斗の為なので手段を選んでいる場合ではない。
非合法な方法でも、来人にとっては問題では無い。
「でも、イリスさんにメガの事伝えても大丈夫かな……?」
「天界側の者じゃなければ、構わないヨ。それに、ボクもイリスとは同郷だ」
「そっか、分かった」
そして、来人はガイア界への渡航手段を手に入れた事をイリスにも伝えた。
イリスは二つ返事でメガの存在の秘匿を了承してくれて、無事『ハッキング・ゲート』での密入国案で決まった。
来人は翌日に控えたガイア界への渡航を前に、家族や友人たちにしばらく留守にする事を伝える。
母照子には既に伝えてあり、ユウリがイリスの代わりに護衛をしてくれる事になっている。
美海には神様の仕事だと適当に誤魔化しておいた。
テイテイはスマートフォンを持っていないので、「共にガイア界へ行かないか」と誘う為に家まで行ったが、留守にしていた。
どこに居るのか分からなかったので、来人は置手紙だけを残しておく。
秋斗の居場所も分からないが、裏で動いている事は間違いない。
親友たちとは離れていても、同じ方向を向いている。
そして、来人は家を出る前に義妹の世良にも一言入れようと思い、部屋を訪れる。
来神だけでなく来人たちまでもがしばらく家を空ける都合上、照子と世良が残される形になる。
兄として「母さんをよろしく」くらいは言っておこうと思ったのだ。
「世良、居るー?」
こんこんとノックして、扉越しに声を掛ける。
しかし、反応は無い。
「あれ、出かけてるのかな? 珍しいな」
部屋の扉を開けてみる。
やはり、部屋の中に銀髪の可愛い義妹は居なかった。
「まあ、母さんから話は伝わるだろうし良いか」
女の子の部屋なので、不在の際に勝手に入るのも悪いと思いそのまま扉を閉める。
こうして、出立前の準備を済ませた来人。
今回ガイア界へ向かう一行は三名。
三代目神王候補、“鎖使い”来人。
来人の相棒、ガイア族のガーネ。
金髪ロングのメイド、同じくガイア族のイリス。
一行は再びメガラボを訪れ、太い管が何本も伸びた機械で出来た扉の枠縁『ハッキング・ゲート』の前まで来た。
「あら、風情の無いゲートですわね。天界にあるガイア界へ繋がるゲートはもっと大きくて美しいんですのよ。坊ちゃまにも見せて差し上げたかったのですが……」
イリスの言っていたお楽しみとは、その大きくて美しいゲートの事だったらしい。
ドラゴンの姿に変貌する様なガイア族が通る為のゲートなのだから、そのサイズも大きなものになっているのだろう。
対して、こちらは武骨でメカメカしい鉄のゲート。
サイズも人間用で寂しい物だ。
「イリス、文句言うんじゃないヨ」
「あら、気に障ったのでしたら申し訳ありませんわ。でも、見た目の美しさはともかく、メガの発明自体は評価していますのよ?」
「当たり前だヨ。この世の英知の結晶だからネ」
「うふふっ。久しぶりに会っても、変わりませんわね」
「そっちこそ、見てくれは変わっても相変わらずだネ」
同郷の二人は久方ぶりの再会に会話を弾ませていた。
「準備OKデス。いつでも行けますよ」
メガがカタカタとキーボードを叩くと、『ハッキング・ゲート』の内側が白い光に包まれる。
この光を抜ければ、ガイア界だ。
「それじゃあ、健闘を祈っているヨ」
メガがにやりと笑い、送り出してくれる。
来人はそれにこくりと頷く。
「よし、行くぞ」
「だネ!」
「はい、坊ちゃま」
来人たち一行は、『ハッキング・ゲート』の光を潜り、ガイア界へと密入国を果たす。
神々の中にも階級が有り、許可なしにあらゆる世界を行き来する者も居れば、来人の家庭教師のユウリの様に末端の神では許可や用事無しに他の世界に干渉できない神も居る。
ユウリはライジンからの仕事を受ける事で、地球へ降り立つ許可を得ている訳だ。
ガイア界はそれら数多の世界の中でも、地球に並ぶ重要度の高い世界。
故郷とするガイア族だけならともかく、来人も同行するとなればきちんと申請を出して許可を得なければならない。
「ガイア界でガイア族たちが暴走しているという話を耳にしまして、その調査に行って来ようかと思います」
来人の手札、イリスから聞いたガイア界での異変の話。
“仕事”という大義名分を貰って、ガイア界への立ち入り許可を貰って、ちゃっかり禁足地にも足を踏み入れてしまおうという魂胆だ。
そんな訳で、天界の諸々を取り仕切る神王補佐のアナに立ち入り申請をしたところ――、
「いや、必要無いよ」
普通に拒否されてしまった。
「何でですか!? 一大事ですよ!」
少々わざとらしいながらも、来人は大げさにアピールする。
「そっちはもう既にティルに任せてある、君は地球の鬼退治に当たってくれ」
「うぅむ……」
まさかティルにガイア界の調査の仕事が既に割り当てられていたとは。
もっとも、世界と世界を超える調査任務なので、人間である来人に回すよりも理にかなってはいる。
来人は考え込む。
どうやってこの着物美人の神王補佐を説得しようか、と。
考えた結果、第二の手札が無かった来人がひねり出したのは泣き落としだった。
「アダン君からも、アナ様を説得してよ。ほら、ガーネのお爺ちゃんのバーガさんのお墓参りも行ってあげたいし――」
堅物のアナと違い、仲の良いアダンに言ってみれば意外とすんなり要求が通るのではないかという事だ。
しかし、アダンからの返事は、
「ごめんね、ライト。その気持ちは嬉しいけれど、バーガはゆっくり眠らせてあげたいんだ。ガイア界への立ち入りを厳しくしている理由には、そのバーガが眠る氷の大地がの存在が大きいんだ」
「そういう理由なら、なおさらガイア界への立ち入りは許可出来ない」
アダンからの返答も、アナと同じくNOだった。
というか、バーガの名前を出した所為で余計に許可を得るのが難しくなってしまった。
禁足地というだけあって、やはり簡単には入れない。
「ぐぬぬ……」
来人はがっくりと肩を落とす。
氷の大地どころか、ガイア界への立ち入りすら却下されてしまった。
これではイリスになんと言えば良いのか……。
「――という訳で、駄目でした……」
そんな訳で、とぼとぼと帰宅した来人はイリスとガーネの前で、成果ないの旨を伝えた。
「あら、どう致しましょう」
「らいたん置いて、二人で行くネ?」
「わたくしはそれでも構いませんが、坊ちゃまの目的は果たせませんわね」
ガイア族の二人は既に来人を置いて里帰りをする気満々だ。
「二人共、置いてかないでよ……」
このままではユウリとお留守番をしてアニメ観賞に浸る日々を過ごす事になってしまう。
来人はちょっと悪くないかな、と思いつつもその誘惑を振り切り、次の手を打つ。
来人の次の手、それは“頼る相手を変える”事だ。
祖父のウルスや父であるライジン、血縁者に天界の権力者は他にも居る。
それら人脈を有効利用して――と、いう訳は無く。
来人とガーネが訪れた場所は、またしてもメガコーポレーションの地下研究所だった。
ガイア界の事は、ガイア族に、だ。
「――メガ、この前使った『ハッキング・ゲート』でガイア界に密入国出来ないかな?」
「ライトは本当に、面白いやつだヨ」
来人がそう訊ねれば、メガは楽しそうにけたけたと笑う。
「勿論可能だヨ。何せボクは天才だからネ」
「流石メガだネ」
「もっとも、ガイア界へ繋がる道をハックする為に調整の時間が必要だヨ」
メガがそう言えば、助手のギザがすぐに動く。
「それでは、ワタシはガイア界へ繋がる様にゲートの調整をしておくのデス。先輩たちは準備を整えて明日また来てください」
「分かった、よろしくね」
こうして、来人はガイア界への密入国手段『ハッキング・ゲート』を手に入れた。
アナにばれたら大変だが、秋斗の為なので手段を選んでいる場合ではない。
非合法な方法でも、来人にとっては問題では無い。
「でも、イリスさんにメガの事伝えても大丈夫かな……?」
「天界側の者じゃなければ、構わないヨ。それに、ボクもイリスとは同郷だ」
「そっか、分かった」
そして、来人はガイア界への渡航手段を手に入れた事をイリスにも伝えた。
イリスは二つ返事でメガの存在の秘匿を了承してくれて、無事『ハッキング・ゲート』での密入国案で決まった。
来人は翌日に控えたガイア界への渡航を前に、家族や友人たちにしばらく留守にする事を伝える。
母照子には既に伝えてあり、ユウリがイリスの代わりに護衛をしてくれる事になっている。
美海には神様の仕事だと適当に誤魔化しておいた。
テイテイはスマートフォンを持っていないので、「共にガイア界へ行かないか」と誘う為に家まで行ったが、留守にしていた。
どこに居るのか分からなかったので、来人は置手紙だけを残しておく。
秋斗の居場所も分からないが、裏で動いている事は間違いない。
親友たちとは離れていても、同じ方向を向いている。
そして、来人は家を出る前に義妹の世良にも一言入れようと思い、部屋を訪れる。
来神だけでなく来人たちまでもがしばらく家を空ける都合上、照子と世良が残される形になる。
兄として「母さんをよろしく」くらいは言っておこうと思ったのだ。
「世良、居るー?」
こんこんとノックして、扉越しに声を掛ける。
しかし、反応は無い。
「あれ、出かけてるのかな? 珍しいな」
部屋の扉を開けてみる。
やはり、部屋の中に銀髪の可愛い義妹は居なかった。
「まあ、母さんから話は伝わるだろうし良いか」
女の子の部屋なので、不在の際に勝手に入るのも悪いと思いそのまま扉を閉める。
こうして、出立前の準備を済ませた来人。
今回ガイア界へ向かう一行は三名。
三代目神王候補、“鎖使い”来人。
来人の相棒、ガイア族のガーネ。
金髪ロングのメイド、同じくガイア族のイリス。
一行は再びメガラボを訪れ、太い管が何本も伸びた機械で出来た扉の枠縁『ハッキング・ゲート』の前まで来た。
「あら、風情の無いゲートですわね。天界にあるガイア界へ繋がるゲートはもっと大きくて美しいんですのよ。坊ちゃまにも見せて差し上げたかったのですが……」
イリスの言っていたお楽しみとは、その大きくて美しいゲートの事だったらしい。
ドラゴンの姿に変貌する様なガイア族が通る為のゲートなのだから、そのサイズも大きなものになっているのだろう。
対して、こちらは武骨でメカメカしい鉄のゲート。
サイズも人間用で寂しい物だ。
「イリス、文句言うんじゃないヨ」
「あら、気に障ったのでしたら申し訳ありませんわ。でも、見た目の美しさはともかく、メガの発明自体は評価していますのよ?」
「当たり前だヨ。この世の英知の結晶だからネ」
「うふふっ。久しぶりに会っても、変わりませんわね」
「そっちこそ、見てくれは変わっても相変わらずだネ」
同郷の二人は久方ぶりの再会に会話を弾ませていた。
「準備OKデス。いつでも行けますよ」
メガがカタカタとキーボードを叩くと、『ハッキング・ゲート』の内側が白い光に包まれる。
この光を抜ければ、ガイア界だ。
「それじゃあ、健闘を祈っているヨ」
メガがにやりと笑い、送り出してくれる。
来人はそれにこくりと頷く。
「よし、行くぞ」
「だネ!」
「はい、坊ちゃま」
来人たち一行は、『ハッキング・ゲート』の光を潜り、ガイア界へと密入国を果たす。
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