34 / 150
第一章 百鬼夜行編
#34 最後の波
しおりを挟む
それからも、来人、テイテイ、ガーネの三人は、いつもの様に発生し続ける異界の処理を続けていた。
「――よっと、お疲れ、テイテイ君」
「お疲れ、来人。大分異界の発生も減って来たな」
戦闘を終えた来人の髪色は白金から茶へと戻り、来人とテイテイは拳を合わせて健闘を称え合う。
「だネ。ちょっとメガマップを確認してみるネ」
メガから貰った百鬼夜行の発生予想地点を示したマップーー通称メガマップ。
いつでもスマートフォンで確認出来て、リアルタイムで情報が更新されている。
「残すは――最後の波だけか」
来人やテイテイ、陸の地球側の戦力だけでなく天界から派遣された他の神々の協力も有って、メガマップに表示される印――つまりは異界の発生地点も残すは一際大きな反応のみ。
つまり、後は一際大きな波――最後の波を倒す事で、百鬼夜行の殲滅は完了だ。
ちなみに、来人の父来神が担当していた北米方面は、もうかなり前から小さな異界は全滅している。
マップの動きを見るに、そのまま南米に手が回っていた様だ。
メガマップに表示される大きな反応を指で触ると、ウィンドウが表示される。
そこには“発生まで残り四八時間”と記されていた。
「なんか、またアップデートしたな」
「流石メガだネ」
この情報は天界でも共有されている。
時期に、以前の話通りに最後の討伐隊が組まれ、来人の元にも作戦開始の連絡が来るだろう。
来人が家に帰れば、義妹の世良がソファでテレビを見ながら来人が買っておいたポテトチップスを食べていた。
「らいにい、おかえりー」
「ただい――おい、世良。それは僕のだぞ」
「……ぱりぱり」
無言でチップスを貪る世良。
まあいいか、と来人は隣に座って、横からチップスを数枚まとめて取って口に運ぶ。
テレビではニュース番組が流れている。
「天変地異だって、怖いねえ」
「そーだな」
テレビの中のキャスターが世界的に大型台風や地震の発生を知らせている。
ついには時代に即さない終末預言者まで出てきだした辺りで、面白くも無いのでチャンネルを変える。
天変地異というのは、おそらく百鬼夜行発生の影響によるものだろう。
外を見れば、大雨だ。
この辺りにも百鬼夜行の影響が天候という形で表れている。
しかし、その天変地異もすぐに収まるだろう。
何故なら、来人たちの手によって百鬼夜行は討たれるのだから。
(――待っていろよ、『赫』の鬼)
そうしていると、来人のスマートフォンにメッセージを知らせる通知音。
それは天界からの招集連絡だ。
「世良、ちょっと行ってくるよ」
「どしたの、らいにい。どこ行くの?」
「――世界を救いに」
「何しにじゃなくて、どこって聞いたんだけどなあ」
天界。
王の間の入り口の前アナが立ち、その周囲に多くの神々が集っている。
「――作戦概要は伝えた通りだ。各自持ち場に着き、大異界の発生次第突入、迅速に殲滅。以上だ」
大異界――それが最後の波に発生する、最上位クラスの鬼が現れる最も大きな異界だ。
アナが淡々と作戦を天界軍へと伝えて行く。
あの能天気な初代のアダンとは対照的に、神王補佐のアナは真面目で仕事のできる人物だ。
「今回の百鬼夜行は三代目候補のライトからの情報提供により、発生地点も時間も分かっている。出現する上位個体自体は強力だが、落ち着いて対処すれば問題ないだろう」
アナが来人の名前を出せば、その場の神々はざわつき始める。
中には混血を嫌う神々の妬みや嫌悪の声も混じっているが、その殆どは新人の活躍を称賛する物だ。
「あのティル様を負かしたっていう鎖使いか!」
「あの一人で上位個体を一網打尽にしたっていう半神半人の?」
と、少しどころではない尾ひれが付きまくっているが、来人は聞かなかった事にする。
「来人も大変だねー」
「あはは……」
その様子を隣で聞いていた陸は呑気な感想を述べるが、もう一つ隣で苛々を隠そうともしないティルも居るものだから来人としては居心地があまりよろしくない。
「それでは、各大異界を担当する部隊の部隊長を紹介する」
「あ、呼ばれたよー」
「ああ、行くか」
「ふん」
壇上に並ぶ三代目候補の三人と、そして対岸からはもう二人。
ヨーロッパの大異界を担当するゼウス。
北米担当のライジン。
南極担当のティル。
アジア圏、日本担当のリク。
そして中国担当のライト。
各大異界にそれぞれ王族を長とした部隊が配置される運びだ。
ライジンの隣にはメイドのイリスが、そして三代目候補たちの足元にはそれぞれの相棒とするガイア族も居る。
如何にも神様という見た目の白髪で長い髭をしたゼウスの相棒は居ない様だが。
ここ最近は百鬼夜行で単身米方面の鬼を殲滅していた来神は家に帰ってきていなかったので、来人自身父親とは久方ぶりの再会だ。
壇上でちらりと父の方を見れば、来人に気づいた様でにやりと笑い返してくる。
そして、校長先生の話の様な眠くなる長話をアナが始めかけた時。
「――まあとにかく、全員ぶっ倒して核持って帰りゃいんだよ!」
後方、つまり集った神々の群衆を割って、遅刻してきた二代目神王ウルスが現れた。
「おい、ウルス。遅いぞ」
「すまんな、道に迷った」
まさかの方向音痴だった。
天界軍の神々から笑いが漏れ、それに釣られてウルス自身も豪快に笑っている。
なんだかんだで、校長先生の長話よりは、粗雑で豪快な二代目の遅刻の方が神々の士気を上げた様だ。
「――よっと、お疲れ、テイテイ君」
「お疲れ、来人。大分異界の発生も減って来たな」
戦闘を終えた来人の髪色は白金から茶へと戻り、来人とテイテイは拳を合わせて健闘を称え合う。
「だネ。ちょっとメガマップを確認してみるネ」
メガから貰った百鬼夜行の発生予想地点を示したマップーー通称メガマップ。
いつでもスマートフォンで確認出来て、リアルタイムで情報が更新されている。
「残すは――最後の波だけか」
来人やテイテイ、陸の地球側の戦力だけでなく天界から派遣された他の神々の協力も有って、メガマップに表示される印――つまりは異界の発生地点も残すは一際大きな反応のみ。
つまり、後は一際大きな波――最後の波を倒す事で、百鬼夜行の殲滅は完了だ。
ちなみに、来人の父来神が担当していた北米方面は、もうかなり前から小さな異界は全滅している。
マップの動きを見るに、そのまま南米に手が回っていた様だ。
メガマップに表示される大きな反応を指で触ると、ウィンドウが表示される。
そこには“発生まで残り四八時間”と記されていた。
「なんか、またアップデートしたな」
「流石メガだネ」
この情報は天界でも共有されている。
時期に、以前の話通りに最後の討伐隊が組まれ、来人の元にも作戦開始の連絡が来るだろう。
来人が家に帰れば、義妹の世良がソファでテレビを見ながら来人が買っておいたポテトチップスを食べていた。
「らいにい、おかえりー」
「ただい――おい、世良。それは僕のだぞ」
「……ぱりぱり」
無言でチップスを貪る世良。
まあいいか、と来人は隣に座って、横からチップスを数枚まとめて取って口に運ぶ。
テレビではニュース番組が流れている。
「天変地異だって、怖いねえ」
「そーだな」
テレビの中のキャスターが世界的に大型台風や地震の発生を知らせている。
ついには時代に即さない終末預言者まで出てきだした辺りで、面白くも無いのでチャンネルを変える。
天変地異というのは、おそらく百鬼夜行発生の影響によるものだろう。
外を見れば、大雨だ。
この辺りにも百鬼夜行の影響が天候という形で表れている。
しかし、その天変地異もすぐに収まるだろう。
何故なら、来人たちの手によって百鬼夜行は討たれるのだから。
(――待っていろよ、『赫』の鬼)
そうしていると、来人のスマートフォンにメッセージを知らせる通知音。
それは天界からの招集連絡だ。
「世良、ちょっと行ってくるよ」
「どしたの、らいにい。どこ行くの?」
「――世界を救いに」
「何しにじゃなくて、どこって聞いたんだけどなあ」
天界。
王の間の入り口の前アナが立ち、その周囲に多くの神々が集っている。
「――作戦概要は伝えた通りだ。各自持ち場に着き、大異界の発生次第突入、迅速に殲滅。以上だ」
大異界――それが最後の波に発生する、最上位クラスの鬼が現れる最も大きな異界だ。
アナが淡々と作戦を天界軍へと伝えて行く。
あの能天気な初代のアダンとは対照的に、神王補佐のアナは真面目で仕事のできる人物だ。
「今回の百鬼夜行は三代目候補のライトからの情報提供により、発生地点も時間も分かっている。出現する上位個体自体は強力だが、落ち着いて対処すれば問題ないだろう」
アナが来人の名前を出せば、その場の神々はざわつき始める。
中には混血を嫌う神々の妬みや嫌悪の声も混じっているが、その殆どは新人の活躍を称賛する物だ。
「あのティル様を負かしたっていう鎖使いか!」
「あの一人で上位個体を一網打尽にしたっていう半神半人の?」
と、少しどころではない尾ひれが付きまくっているが、来人は聞かなかった事にする。
「来人も大変だねー」
「あはは……」
その様子を隣で聞いていた陸は呑気な感想を述べるが、もう一つ隣で苛々を隠そうともしないティルも居るものだから来人としては居心地があまりよろしくない。
「それでは、各大異界を担当する部隊の部隊長を紹介する」
「あ、呼ばれたよー」
「ああ、行くか」
「ふん」
壇上に並ぶ三代目候補の三人と、そして対岸からはもう二人。
ヨーロッパの大異界を担当するゼウス。
北米担当のライジン。
南極担当のティル。
アジア圏、日本担当のリク。
そして中国担当のライト。
各大異界にそれぞれ王族を長とした部隊が配置される運びだ。
ライジンの隣にはメイドのイリスが、そして三代目候補たちの足元にはそれぞれの相棒とするガイア族も居る。
如何にも神様という見た目の白髪で長い髭をしたゼウスの相棒は居ない様だが。
ここ最近は百鬼夜行で単身米方面の鬼を殲滅していた来神は家に帰ってきていなかったので、来人自身父親とは久方ぶりの再会だ。
壇上でちらりと父の方を見れば、来人に気づいた様でにやりと笑い返してくる。
そして、校長先生の話の様な眠くなる長話をアナが始めかけた時。
「――まあとにかく、全員ぶっ倒して核持って帰りゃいんだよ!」
後方、つまり集った神々の群衆を割って、遅刻してきた二代目神王ウルスが現れた。
「おい、ウルス。遅いぞ」
「すまんな、道に迷った」
まさかの方向音痴だった。
天界軍の神々から笑いが漏れ、それに釣られてウルス自身も豪快に笑っている。
なんだかんだで、校長先生の長話よりは、粗雑で豪快な二代目の遅刻の方が神々の士気を上げた様だ。
0
お気に入りに追加
238
あなたにおすすめの小説
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。
angel observerⅢ 大地鳴動
蒼上愛三(あおうえあいみ)
ファンタジー
審判の時が再び訪れた。試されるのは神か人か・・・。
ヒルデたちの前に立ち塞がるのはガイア、今なお心を探す彼女にガイアの圧倒的な力が猛威を振るう時人々は何を思うのか。
少女たちは死地へと赴く。
angel observer の第3章「大地鳴動編」開幕!
【中間選考残作品】医大生が聖女として異世界に召喚されましたが、魔力はからっきしなので現代医術の力で治癒魔法を偽装します!【3章終】
みやこ。@他コン2作通過
ファンタジー
♦️カクヨム様で開催されたコンテストで中間選考に残った作品です。
元医療従事者によるちょっぴりリアルな異世界転移ラブコメディ♡
唱える呪文はデタラメ、杖は注射器、聖水ならぬ聖薬で無垢な人々を欺き、王子を脅す。突然異世界に飛ばされても己の知識と生存本能で図太く生き残る......そんな聖女のイメージとはかけ離れた一風変わった聖女(仮)の黒宮小夜、20歳。
彼女は都内の医科大学に特待生として通う少しだけ貧しい普通の女の子だったが、ある日突然異世界に召喚されてしまう。
しかし、聖女として異世界召喚されたというのに、小夜には魔力が無かった。その代わりに小夜を召喚したという老婆に勝手に改造されたスマートフォンに唯一残った不思議なアプリで元の世界の医療器具や医薬品を召喚出来る事に気付く。
小夜が召喚されたエーデルシュタイン王国では王の不貞により生まれ、国を恨んでいる第二王子による呪いで国民が次々と亡くなっているという。
しかし、医者を目指す小夜は直ぐにそれが呪いによる物では無いと気が付いた。
聖女では無く医者の卵として困っている人々を助けようとするが、エーデルシュタイン王国では全ての病は呪いや悪魔による仕業とされ、治療といえば聖職者の仕事であった。
小夜は召喚された村の人達の信用を得て当面の生活を保障して貰うため、成り行きから聖女を騙り、病に苦しむ人々を救う事になるのだった————。
★登場人物
・黒宮小夜(くろみやさよ)⋯⋯20歳、貧乏育ちで色々と苦労したため気が強い。家族に迷惑を掛けない為に死に物狂いで勉強し、医大の特待生という立場を勝ち取った。
・ルッツ⋯⋯21歳、小夜が召喚された村の村長の息子。身体は大きいが小心者。
・フィン⋯⋯18歳、儚げな美少年。聖女に興味津々。
・ミハエル・フォン・ヴィルヘルム⋯⋯20歳、エーデルシュタイン王国の第二王子。不思議な見た目をしている。
・ルイス・シュミット⋯⋯19歳、ミハエルの護衛騎士。
⚠️ 薬や器具の名前が偶に出てきますが、なんか薬使ってるな〜くらいの認識で問題ございません。また、誤りがあった場合にはご指摘いただけますと幸いです。
現在、ファンタジー小説大賞に参加中です。応援していただけると嬉しいです!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
楽園の天使
飛永ハヅム
ファンタジー
女の子命で、女の子の笑顔が大好きな男子高校生、大居乱世。
転校初日にして学校中のほとんどの女子生徒と顔見知りになっていた乱世の前に、見たことがないほどの美少女、久由良秋葉が現れる。
何故か周りに人を寄せ付けない秋葉に興味を持った乱世は、強引にアプローチを始める。
やがてそのことをきっかけに、乱世はこの地域で起きているとある事件に巻き込まれていくこととなる。
全14話完結。
よろしければ、お気に入り登録や感想お願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる