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第一章 百鬼夜行編
#30 天才の最高傑作
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そんな訳で、『ハッキング・ゲート』の白い光を潜って違法転移をした一行は陸と合流した。
勿論陸には移動手段の事は秘密だ。
「やっほー、来人。ただで核貰えるって言うから来たよー」
「突然ごめんね、陸」
「いいよー、勝手にやってたら血祭だったけどー」
やっぱり陸はちょっと怖い。
「あ、初めまして。来人の妻の天野美海です。来人がお世話になってます」
「あ、これはご丁寧にどうも。初めまして、大熊陸ですー」
「待って、だからまだ結婚してないから! 苗字も勝手に名乗らない!」
そんな物騒な事を言う陸を物ともせず、美海がいつのも挨拶をするので、来人は改めて紹介し直す。
「宇佐見美海ちゃん、この前一緒に食べたお弁当作ってくれた子だよ」
「ああ、あの時のー」
「そう言えば、陸にもお弁当を作ってくれた幼馴染の女の子が居るんだよね」
確か、名前は――。
「そうそう、藍もとっても料理が上手なんだー」
「そうなんだ、私も会ってみたいなあ」
「いいよー。今度来人と一緒に遊びに来てよー。藍はあまり家から出たがらないから、良かったらお友達になってくれると嬉しいなー」
「やったー!」
そんな感じで、勝手に陸の家に遊びに行く予定まで立ってしまった。
「ていうか、これから鬼退治に行くんだけど、美海ちゃんも来て大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、いざって時は来人が守ってくれるでしょ?」
「まあ、それは勿論……」
二人がそう話していると、美海の腕の中のメガが口を開く。
「ま、ボクの最高傑作が鬼を討ち漏らす訳無いから、心配しなくても良いヨ」
そんな様子を見ていたガーネがぴょんぴょんと跳ねながら来人に飛びつく。
「メガだけ抱っこされててずるいネ、らいたんもネを抱っこするネ」
「お前普段は自分で歩くだろ」
「歩き方忘れたネ」
そんなこんなで、今ガーネは来人の腕の中、メガは美海の腕の中に納まっている。
その来人の隣で、何を思ったか同じくイタチのモシャをおもむろに抱きかかえる陸。
「俺は別にいいよ」
「まあまあ、折角だし抱っこさせてよー」
そして先頭を歩くのは、タブレット端末の画面に表示されたマップデータを見て目的地を目指すギザ。
まるでペットランにでも来たみたいになっている一行を連れて、異界の反応が有る地点へ。
「多分、この辺だと思うのデスが……」
すると、ガイア族三匹がぴくりと反応を示す。
「ギザ、そこだ」
メガの指す方を向けば、そこには空間が歪み、異界への入り口が出来ていた。
「それじゃあ行くよ、美海ちゃん。離れないようにね」
「う、うん……」
美海はぎゅっと腕の中のメガを抱き締める。
そして、一行は異界の中へ。
「ここは……神社?」
異界の入り口を抜ければ、まるで神社の様な空間。
ここが今回の異界だ。
カンッ……、カンッ……。
そして、その異界に響く奇怪な音。
「ギ……ギギギ……」
全身を丸い甲殻で覆った鬼。
両手の甲殻は全身を覆う物より更に肥大化しており、その様はまるで――、
「差し詰め、”『盾』の鬼“――と言ったところだネ。反応からしてこの異界の主で間違いないヨ」
「おいメガ、何呑気な事言ってるんだ、鬼が出たぞ。例の最高傑作ってどこに有るんだ?」
「どこって、“目の前”だヨ。――さあ、ギザ、やってしまいなさい」
メガがそう言うと、ギザが静かに答える。
「――イエス、マスター」
ギザが地を蹴る勢いで、爆風が吹き荒れる。
『盾』の鬼はギザの動きの速さに付いて行けず、ギザの蹴りを受けて吹き飛ばされる。
「ちょ、ギザって人間だよな!?」
なんと、メガの言う最高傑作とはギザそのものだった。
そして、その動きは人間のそれを遥かに超えていた。
「ああ、人間だヨ。――脳みそだけネ」
「はい?」
『盾』の鬼の反撃、大きな両手の盾を使ってギザに向かって突進――シールドバッシュだ。
今度は逆にギザが弾かれ、後方に吹き飛ばされる。
そして、ダメージを受けたギザの衣服と表皮が剥がれ、内から黒い金属の肌が露出する。
「ちょっと、ギザがやられてるわよ!?」
「大丈夫だヨ。ギザは波動を帯びた攻撃では壊れないからネ」
「どういう事だ?」
メガは嬉しそうに自身の最高傑作の紹介をする。
「あの黒い金属は“メガ・ブラック”――波動を完全に拒絶する特殊な鉱石を用いて作った物だヨ」
「そんな物がこの世に存在したのか」
「とある国の紛争地帯で採れる希少な物だヨ」
「もしかして、その国って――」
とある国、その言葉が来人の中で繋がった。
「ああ、流石ライトは聡いネ。ギザの生まれ故郷だヨ」
メガはギザとの馴れ初めを語る。
その間にも、ギザは『盾』の鬼と戦い続ける。
「ギザの生まれ故郷は紛争地帯で、その戦火に幼いギザは巻き込まれてしまった。丁度その時、ボクがメガ・ブラックの採掘に赴ていたんだヨ」
ギザと鬼は互いに殴り合うが、鬼の堅牢な盾はギザの打撃を全て防ぎ切り、一方的にギザだけがダメージを負い続けている。
「ギザを助けたのは気まぐれだった。もはや死にかけのギザから脳を摘出し、手に入れたばかりのメガ・ブラックで肉体を再構築した。つまり――」
「――つまり、ワタシはサイボーグなのデスよ!」
サイボーグ女子高生社長のその言葉と同時に、掌底打ち。
するとこれまでとは比べ物にならない程の衝撃。
その一撃によって、鬼の盾が砕け散る。
「――『ギザ・バウンド』」
ギザの必殺技が、炸裂。
「そして、メガ・ブラックと対を成すもう一つの鉱石。名を“メガ・ホワイト”――波動を拒絶するメガ・ブラックとは真逆の、波動を吸収して内側に記憶する性質が有るんだヨ」
「鬼の攻撃のダメージをブラックの肉体で実質無効化しつつ、ホワイトに吸収して溜め込んだ後倍にして解き放つ。それがギザの必殺技なのデス!」
神の力――色を用いずに、魔法と見紛う程の科学技術の力によって、鬼の上位個体が撃破されてしまった。
いや、そんなはずは無い。
「おいおい、食べ残しがいっぱいだぜ?」
いち早くそれに反応したのは陸だった。
いつの間にか、『盾』の鬼が背後から襲い掛かって来ていた。
陸は神化して盾の攻撃を大鎌で受け、『炎』の色で燃やし尽くした。
二匹目の『盾』の鬼が討たれる。
「こいつ、さっきギザが倒したはずじゃ……」
「百鬼夜行は鬼の群れ――なるほど。小鬼が居ないのは不自然だと思っていたが、『盾』の鬼は複数体で一体の上位個体、という事だネ」
そして、そうしている内に周囲から同じ『盾』の鬼が何体も出現。
一行の周りを取り囲む。
「――メガ、美海を頼めるか?」
来人の髪が白金に染まる。
勿論陸には移動手段の事は秘密だ。
「やっほー、来人。ただで核貰えるって言うから来たよー」
「突然ごめんね、陸」
「いいよー、勝手にやってたら血祭だったけどー」
やっぱり陸はちょっと怖い。
「あ、初めまして。来人の妻の天野美海です。来人がお世話になってます」
「あ、これはご丁寧にどうも。初めまして、大熊陸ですー」
「待って、だからまだ結婚してないから! 苗字も勝手に名乗らない!」
そんな物騒な事を言う陸を物ともせず、美海がいつのも挨拶をするので、来人は改めて紹介し直す。
「宇佐見美海ちゃん、この前一緒に食べたお弁当作ってくれた子だよ」
「ああ、あの時のー」
「そう言えば、陸にもお弁当を作ってくれた幼馴染の女の子が居るんだよね」
確か、名前は――。
「そうそう、藍もとっても料理が上手なんだー」
「そうなんだ、私も会ってみたいなあ」
「いいよー。今度来人と一緒に遊びに来てよー。藍はあまり家から出たがらないから、良かったらお友達になってくれると嬉しいなー」
「やったー!」
そんな感じで、勝手に陸の家に遊びに行く予定まで立ってしまった。
「ていうか、これから鬼退治に行くんだけど、美海ちゃんも来て大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、いざって時は来人が守ってくれるでしょ?」
「まあ、それは勿論……」
二人がそう話していると、美海の腕の中のメガが口を開く。
「ま、ボクの最高傑作が鬼を討ち漏らす訳無いから、心配しなくても良いヨ」
そんな様子を見ていたガーネがぴょんぴょんと跳ねながら来人に飛びつく。
「メガだけ抱っこされててずるいネ、らいたんもネを抱っこするネ」
「お前普段は自分で歩くだろ」
「歩き方忘れたネ」
そんなこんなで、今ガーネは来人の腕の中、メガは美海の腕の中に納まっている。
その来人の隣で、何を思ったか同じくイタチのモシャをおもむろに抱きかかえる陸。
「俺は別にいいよ」
「まあまあ、折角だし抱っこさせてよー」
そして先頭を歩くのは、タブレット端末の画面に表示されたマップデータを見て目的地を目指すギザ。
まるでペットランにでも来たみたいになっている一行を連れて、異界の反応が有る地点へ。
「多分、この辺だと思うのデスが……」
すると、ガイア族三匹がぴくりと反応を示す。
「ギザ、そこだ」
メガの指す方を向けば、そこには空間が歪み、異界への入り口が出来ていた。
「それじゃあ行くよ、美海ちゃん。離れないようにね」
「う、うん……」
美海はぎゅっと腕の中のメガを抱き締める。
そして、一行は異界の中へ。
「ここは……神社?」
異界の入り口を抜ければ、まるで神社の様な空間。
ここが今回の異界だ。
カンッ……、カンッ……。
そして、その異界に響く奇怪な音。
「ギ……ギギギ……」
全身を丸い甲殻で覆った鬼。
両手の甲殻は全身を覆う物より更に肥大化しており、その様はまるで――、
「差し詰め、”『盾』の鬼“――と言ったところだネ。反応からしてこの異界の主で間違いないヨ」
「おいメガ、何呑気な事言ってるんだ、鬼が出たぞ。例の最高傑作ってどこに有るんだ?」
「どこって、“目の前”だヨ。――さあ、ギザ、やってしまいなさい」
メガがそう言うと、ギザが静かに答える。
「――イエス、マスター」
ギザが地を蹴る勢いで、爆風が吹き荒れる。
『盾』の鬼はギザの動きの速さに付いて行けず、ギザの蹴りを受けて吹き飛ばされる。
「ちょ、ギザって人間だよな!?」
なんと、メガの言う最高傑作とはギザそのものだった。
そして、その動きは人間のそれを遥かに超えていた。
「ああ、人間だヨ。――脳みそだけネ」
「はい?」
『盾』の鬼の反撃、大きな両手の盾を使ってギザに向かって突進――シールドバッシュだ。
今度は逆にギザが弾かれ、後方に吹き飛ばされる。
そして、ダメージを受けたギザの衣服と表皮が剥がれ、内から黒い金属の肌が露出する。
「ちょっと、ギザがやられてるわよ!?」
「大丈夫だヨ。ギザは波動を帯びた攻撃では壊れないからネ」
「どういう事だ?」
メガは嬉しそうに自身の最高傑作の紹介をする。
「あの黒い金属は“メガ・ブラック”――波動を完全に拒絶する特殊な鉱石を用いて作った物だヨ」
「そんな物がこの世に存在したのか」
「とある国の紛争地帯で採れる希少な物だヨ」
「もしかして、その国って――」
とある国、その言葉が来人の中で繋がった。
「ああ、流石ライトは聡いネ。ギザの生まれ故郷だヨ」
メガはギザとの馴れ初めを語る。
その間にも、ギザは『盾』の鬼と戦い続ける。
「ギザの生まれ故郷は紛争地帯で、その戦火に幼いギザは巻き込まれてしまった。丁度その時、ボクがメガ・ブラックの採掘に赴ていたんだヨ」
ギザと鬼は互いに殴り合うが、鬼の堅牢な盾はギザの打撃を全て防ぎ切り、一方的にギザだけがダメージを負い続けている。
「ギザを助けたのは気まぐれだった。もはや死にかけのギザから脳を摘出し、手に入れたばかりのメガ・ブラックで肉体を再構築した。つまり――」
「――つまり、ワタシはサイボーグなのデスよ!」
サイボーグ女子高生社長のその言葉と同時に、掌底打ち。
するとこれまでとは比べ物にならない程の衝撃。
その一撃によって、鬼の盾が砕け散る。
「――『ギザ・バウンド』」
ギザの必殺技が、炸裂。
「そして、メガ・ブラックと対を成すもう一つの鉱石。名を“メガ・ホワイト”――波動を拒絶するメガ・ブラックとは真逆の、波動を吸収して内側に記憶する性質が有るんだヨ」
「鬼の攻撃のダメージをブラックの肉体で実質無効化しつつ、ホワイトに吸収して溜め込んだ後倍にして解き放つ。それがギザの必殺技なのデス!」
神の力――色を用いずに、魔法と見紛う程の科学技術の力によって、鬼の上位個体が撃破されてしまった。
いや、そんなはずは無い。
「おいおい、食べ残しがいっぱいだぜ?」
いち早くそれに反応したのは陸だった。
いつの間にか、『盾』の鬼が背後から襲い掛かって来ていた。
陸は神化して盾の攻撃を大鎌で受け、『炎』の色で燃やし尽くした。
二匹目の『盾』の鬼が討たれる。
「こいつ、さっきギザが倒したはずじゃ……」
「百鬼夜行は鬼の群れ――なるほど。小鬼が居ないのは不自然だと思っていたが、『盾』の鬼は複数体で一体の上位個体、という事だネ」
そして、そうしている内に周囲から同じ『盾』の鬼が何体も出現。
一行の周りを取り囲む。
「――メガ、美海を頼めるか?」
来人の髪が白金に染まる。
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