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第一章 百鬼夜行編
#7 人間の想像性
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それからも、ユウリ先生の指導は続いていた。
頻繁に天野家を訪れて、来人に神の力の使い方を教えてくれるユウリ。
元の素質は勿論だが、ユウリの教えも有って、来人はめきめきと力を付けていた。
その甲斐有って、来人はもう一人で――正確には、ガーネと共に一人と一匹で神の仕事、鬼退治を熟していた。
最初は鬼が元は人間の魂だと聞いて少し尻込みしてしまった来人だったが、鬼を倒して“核”を集めればその魂を浄化し再び輪廻の輪に返すことが出来る。
つまり、鬼として歪んでしまった魂を救済できる。
そう考えると、来人は俄然その仕事に熱が入った。
それは来人の“鬼の被害によって悲しむ人を一人でも多く減らしたい”という目的にも合致して来る。
そして、実際にやっていて分かった事が有る。
ユウリに以前言われた通りで、来人はかなり強い。
それも、普通の鬼が相手なら然程苦戦する事も無い程度には。
王の血筋だからか、魂の器の大きさも波動の総量もユウリと比べても桁違いで、その分振るえる力は強大だ。
もっとも、上位個体が相手となると話は変わって来るが。
「来人君、本当に凄いですね。もうわたしが教えられる事は有りませんよ」
「ユウリ先生のおかげですよ。――何かお礼をしたいんですけど、欲しい物とか有ります?」
鬼を倒して集めた“核”もそれなりの数が集まって来た。
これを天界へ持って行けば報酬が出るらしいし、それで折角なら世話になった人にお礼をしたいと来人は考えていた。
「そんな、お給料はライジン様から頂いていますし、別に――あ、でも」
両手で手を目の前で降って遠慮のポーズを取っていたユウリだったが、ふと何かを思いついたのかその手が止まる。
「なんです?」
「漫画です! この世界には小説や絵本だけでなく、そんな読み物が有ると聞きました。わたしの生前居た世界には無かった文化なので、それを読んでみたいです!」
そして、ユウリの口から飛び出た言葉は意外な物だった。
「漫画ですか? 神の世界――天界でしたっけ、そこには無いんですか?」
「ええ、そもそも神様には物語を想像するという文化が無いんですよ。漫画どころか、わたしが好きな小説も神様は書きません」
そう言われると、確かに神様が小説や漫画の様な空想の物語を産み出すイメージは湧かない。
どちらかというと、神様はその物語に登場する側、想像される側の存在だ。
「そう聞くと、なんかつまんないですね」
「そうなんですよ! 物語を作る様な想像性、それは神様には無い人間の良い所です!」
ユウリ先生は力強く熱弁する。
余程小説の様な創作物が好きなのだろう。
「なるほど、良いですよ。今度お休みの日に本屋に案内しますよ」
創作の物語が好きなら、漫画だけでなくアニメやゲームなんかにも興味を示すだろう。
本屋だけでなく、そういった店も周ればユウリも楽しんでくれるはずだ。
「やった! 楽しみにしてますね!」
そう話していると、庭に母の照子が顔を出してきた。
少し髪がぼさぼさだ。
父曰く「今でも美人だけど、昔は眼鏡の似合う文学系美少女だった」とか。
「あら、ユウリちゃん、小説好きなの?」
「あ、奥様! はい、とっても! 大好きです!」
あれ、そう言えば。
「私も小説書くのよ。良かったら、私の書いた本持って行って頂戴」
「えっ、いいんですか!? 読みます! 是非読みたいです!」
母照子は小説家だ。
そして照子はこれを好機だと捉えたのか、ユウリを捕まえて自分の作品の布教活動を始め出した。
ユウリは天界には小説や漫画の様なそういう物語の創作という文化が無いと言っていた。
もしかすると、母がそういう人間独自の豊かな想像性に秀でていた人間だったからこそ、父もそれに惹かれて結婚したのかもしれない。
「それじゃあ、今度感想聞かせてね~」
「はーい! ありがとうございます!」
ユウリ先生はその日、紙袋いっぱいの本を持ってほくほく顔で帰って行った。
頻繁に天野家を訪れて、来人に神の力の使い方を教えてくれるユウリ。
元の素質は勿論だが、ユウリの教えも有って、来人はめきめきと力を付けていた。
その甲斐有って、来人はもう一人で――正確には、ガーネと共に一人と一匹で神の仕事、鬼退治を熟していた。
最初は鬼が元は人間の魂だと聞いて少し尻込みしてしまった来人だったが、鬼を倒して“核”を集めればその魂を浄化し再び輪廻の輪に返すことが出来る。
つまり、鬼として歪んでしまった魂を救済できる。
そう考えると、来人は俄然その仕事に熱が入った。
それは来人の“鬼の被害によって悲しむ人を一人でも多く減らしたい”という目的にも合致して来る。
そして、実際にやっていて分かった事が有る。
ユウリに以前言われた通りで、来人はかなり強い。
それも、普通の鬼が相手なら然程苦戦する事も無い程度には。
王の血筋だからか、魂の器の大きさも波動の総量もユウリと比べても桁違いで、その分振るえる力は強大だ。
もっとも、上位個体が相手となると話は変わって来るが。
「来人君、本当に凄いですね。もうわたしが教えられる事は有りませんよ」
「ユウリ先生のおかげですよ。――何かお礼をしたいんですけど、欲しい物とか有ります?」
鬼を倒して集めた“核”もそれなりの数が集まって来た。
これを天界へ持って行けば報酬が出るらしいし、それで折角なら世話になった人にお礼をしたいと来人は考えていた。
「そんな、お給料はライジン様から頂いていますし、別に――あ、でも」
両手で手を目の前で降って遠慮のポーズを取っていたユウリだったが、ふと何かを思いついたのかその手が止まる。
「なんです?」
「漫画です! この世界には小説や絵本だけでなく、そんな読み物が有ると聞きました。わたしの生前居た世界には無かった文化なので、それを読んでみたいです!」
そして、ユウリの口から飛び出た言葉は意外な物だった。
「漫画ですか? 神の世界――天界でしたっけ、そこには無いんですか?」
「ええ、そもそも神様には物語を想像するという文化が無いんですよ。漫画どころか、わたしが好きな小説も神様は書きません」
そう言われると、確かに神様が小説や漫画の様な空想の物語を産み出すイメージは湧かない。
どちらかというと、神様はその物語に登場する側、想像される側の存在だ。
「そう聞くと、なんかつまんないですね」
「そうなんですよ! 物語を作る様な想像性、それは神様には無い人間の良い所です!」
ユウリ先生は力強く熱弁する。
余程小説の様な創作物が好きなのだろう。
「なるほど、良いですよ。今度お休みの日に本屋に案内しますよ」
創作の物語が好きなら、漫画だけでなくアニメやゲームなんかにも興味を示すだろう。
本屋だけでなく、そういった店も周ればユウリも楽しんでくれるはずだ。
「やった! 楽しみにしてますね!」
そう話していると、庭に母の照子が顔を出してきた。
少し髪がぼさぼさだ。
父曰く「今でも美人だけど、昔は眼鏡の似合う文学系美少女だった」とか。
「あら、ユウリちゃん、小説好きなの?」
「あ、奥様! はい、とっても! 大好きです!」
あれ、そう言えば。
「私も小説書くのよ。良かったら、私の書いた本持って行って頂戴」
「えっ、いいんですか!? 読みます! 是非読みたいです!」
母照子は小説家だ。
そして照子はこれを好機だと捉えたのか、ユウリを捕まえて自分の作品の布教活動を始め出した。
ユウリは天界には小説や漫画の様なそういう物語の創作という文化が無いと言っていた。
もしかすると、母がそういう人間独自の豊かな想像性に秀でていた人間だったからこそ、父もそれに惹かれて結婚したのかもしれない。
「それじゃあ、今度感想聞かせてね~」
「はーい! ありがとうございます!」
ユウリ先生はその日、紙袋いっぱいの本を持ってほくほく顔で帰って行った。
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