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第二部 エピローグ
エピローグ➂ 『永遠』の二人
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――それから、俺たちは永い時を生きた。
俺はこの世界で魔道具技師として、飛行機や通信手段など、現代科学に並ぶ程の、技術の発展に貢献した。
俺のほんの少しの介入によって、この世界はそれまでの長年の技術の停滞が嘘の様に、飛躍的に進歩して行った。
エルの方はと言うと、それから歴史の表舞台に出る事は無かったが、細々と魔法学校の教師をやっていた。
とても優秀な先生で、生徒たちの間でも評判が良かった。
ただ、卒業生が久しぶりに顔を出しても当時と同じ先生がそのままの姿で居るものだから、それはさぞ驚いた事だろう。
そして、世界を救った永遠の魔女エルの名は後世にまで伝わっていた。
主にエレナのおかげだ。
ああ、そうだ。“エレナおばあちゃん”の最期に立ち会えたのは良かった。
大切な友人と、最期に言葉を交わせた。
エレナはしわしわになっても、あの頃の面影を感じさせる気品ある佇まいだった。
彼女の子や孫たちもまた、その意志を継いで新たな物語を紡いで行った。
そして、俺たちはこの神ラプリエルの世界の文明が終わるその時――つまり、世界の寿命を迎えるその時まで、この世界で共に生きた。
神ラプラスの世界とは違い、この世界は途中で滅ぶ事なく、最期の時を迎えることが出来たのだ。
時には旅をし、時には人々の営みに溶け込み、時には歴史に介入し。
本当の意味で、世界の隅から隅までを味わい尽くした。
俺は魔女様と、この異世界にて生きて来た。
元は自ら死を選んだ俺だが、幼き日のユウリの願いと、そして死する俺の未練が重なり、魔法という奇跡が形となって、俺はこの異世界へとやって来た。
異世界転移しようが何しようが、死んでしまっては全て遅いと思っていたが、魔女様に蘇生されて、結局俺の人生は死んだ後からの方が長かったのだから、本当に人生というのはどうなるか分からない。
そして、最期の時。
最期の人類の死を葬い、そして――。
「――久しぶりね。また会えるのを、ずっと楽しみにしていたわ」
「お久しぶりです、神様」
「……俺はあんまり、会いたく無かったですよ」
振り返れば、何も無い。誰も居ない、不毛の大地。
寿命を迎えた、終わった世界。
物語の最後、白紙の一ページ。
俺たちはこの世界で過ごした『永遠』の思い出を胸に、この世界に背を向けて、新たな旅に出る。
――目の前には、あの時の大樹の丘。
そして、俺の隣には、最愛の人の姿が有った。
「これからもよろしく、ユウリ」
「はい。ずっと一緒ですよ、侑利さん」
END
俺はこの世界で魔道具技師として、飛行機や通信手段など、現代科学に並ぶ程の、技術の発展に貢献した。
俺のほんの少しの介入によって、この世界はそれまでの長年の技術の停滞が嘘の様に、飛躍的に進歩して行った。
エルの方はと言うと、それから歴史の表舞台に出る事は無かったが、細々と魔法学校の教師をやっていた。
とても優秀な先生で、生徒たちの間でも評判が良かった。
ただ、卒業生が久しぶりに顔を出しても当時と同じ先生がそのままの姿で居るものだから、それはさぞ驚いた事だろう。
そして、世界を救った永遠の魔女エルの名は後世にまで伝わっていた。
主にエレナのおかげだ。
ああ、そうだ。“エレナおばあちゃん”の最期に立ち会えたのは良かった。
大切な友人と、最期に言葉を交わせた。
エレナはしわしわになっても、あの頃の面影を感じさせる気品ある佇まいだった。
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そして、俺たちはこの神ラプリエルの世界の文明が終わるその時――つまり、世界の寿命を迎えるその時まで、この世界で共に生きた。
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時には旅をし、時には人々の営みに溶け込み、時には歴史に介入し。
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異世界転移しようが何しようが、死んでしまっては全て遅いと思っていたが、魔女様に蘇生されて、結局俺の人生は死んだ後からの方が長かったのだから、本当に人生というのはどうなるか分からない。
そして、最期の時。
最期の人類の死を葬い、そして――。
「――久しぶりね。また会えるのを、ずっと楽しみにしていたわ」
「お久しぶりです、神様」
「……俺はあんまり、会いたく無かったですよ」
振り返れば、何も無い。誰も居ない、不毛の大地。
寿命を迎えた、終わった世界。
物語の最後、白紙の一ページ。
俺たちはこの世界で過ごした『永遠』の思い出を胸に、この世界に背を向けて、新たな旅に出る。
――目の前には、あの時の大樹の丘。
そして、俺の隣には、最愛の人の姿が有った。
「これからもよろしく、ユウリ」
「はい。ずっと一緒ですよ、侑利さん」
END
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