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第1章 邂逅

八顕学園の門の前で

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 冷躯れいくさんとカナンさんに厄介になって、あれから五年の月日が経った。
 あのとき10歳だった俺はもう15歳。

 そして今、俺はあのとき諦めかけていた【八顕学園はちけんがくえん】の巨大な学園門を見上げている。

「――ここが、か」

 ここが、俺がこれから通う15歳以上の【顕現者オーソライザー】の育成機関。
 あのときはもう、ここに来るのはあり得ないと思っていたのに。

 冷躯さん達の養子になって本当に良かったと思う。
 ――同時に、感謝している。

「さて、俺達はここでいいかな」

 そんな感慨に浸っていると、後ろの方から声がした。
 振り向くと、そこには金髪碧眼の美女と、灰髪の男。

 どちらも何かを俺に伝えることなく、目で語っている。

「カナンさん、冷躯さん。……いままでありがとうございます」
「お母さんとお父さんでしょ」

 拗ねるように頬を膨らませるカナンさん――じゃなくて母さんの指摘を受けて。
 これでも、5年経ったら結構変わってきたんだよと返事をする。

「これからも帰る場所はある。いつでも帰っておいで」

 八龍家の養子になって、もう5年。
 俺はもう刀眞とうまつぐではなくなった。
 姓名ともに冷躯とうさんのお陰で変えることが出来た。

 名前は【ゼクス】。
 万が一のことも考えてカナンかあさんの実家の名前である、【ファーヴニル】を名乗っている。
 お陰で、名前だけ見ればと完全に外国の人だ。
 
 ――変化はそれだけじゃない。すくなくとも髪の色と、目の色は変わったかな。

 俺はすくなくとも、他の人と比べものにならない程の訓練を、施される必要があった。
 自身の【顕現オーソライズ】能力を、限界突破する必要があった。

 その結果、顕現力によって変色してしまったんだけど、それもある意味では好都合。
 【彼ら】に初見で気づかれることは、ないだろう。

 髪は黒から灰……それもかなり白に近くなり、目の色は純粋な黒から黄色が混じるようになった。
 5年間で、何もかも変わった。
 
 ……勿論、俺も変わった。
 もうあのときの刀眞胤は、とっくのとうに消え去っている。

「父さん、母さん。――いってきます」
 
 ここまで、送ってくれたことに感謝して。
 背を向けた二人の姿が見えなくなってから、もう一度学園門を見つめる。
 そして家を出るときに、父さんに言われた言葉を思い返した。

『君は無能ではないし、最初からそうではなかった』
『少しくらい特異だったからといって、それが欠点になるかは自分次第だ』
『【顕現】は意志の力。あまり黒い感情に支配されない方が良いぞ』

 思い出した上で、心の中で「ごめんなさい」と養親2人に謝る。

 ごめんなさい、どうも……。
 ――やっぱり俺は、復讐のために、力を使ってしまいそうです。

 この5年間で、蒼穹城そらしろ家と刀眞家の態度は見つめてきていた。
 あのとき友人だった彼ら、家族だった彼らは。
 ただ俺があのとき【同等】の存在だったから、あの態度をしていたに過ぎない。

 1ヶ月前、【八顕】の顔合わせに冷躯さんと一緒に行った事を思い出して、俺は自分でも分かるほど苦い顔をした。

「……はぁ」

 俺はため息をつき、養親達に早くも罪悪感を覚えつつ、門をくぐる。
 ――さて、入学式までに、第二の人生で出来た友人達を探しに行きますか。
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