3 / 39
第1章 邂逅
八顕学園の門の前で
しおりを挟む
冷躯さんとカナンさんに厄介になって、あれから五年の月日が経った。
あのとき10歳だった俺はもう15歳。
そして今、俺はあのとき諦めかけていた【八顕学園】の巨大な学園門を見上げている。
「――ここが、か」
ここが、俺がこれから通う15歳以上の【顕現者】の育成機関。
あのときはもう、ここに来るのはあり得ないと思っていたのに。
冷躯さん達の養子になって本当に良かったと思う。
――同時に、感謝している。
「さて、俺達はここでいいかな」
そんな感慨に浸っていると、後ろの方から声がした。
振り向くと、そこには金髪碧眼の美女と、灰髪の男。
どちらも何かを俺に伝えることなく、目で語っている。
「カナンさん、冷躯さん。……いままでありがとうございます」
「お母さんとお父さんでしょ」
拗ねるように頬を膨らませるカナンさん――じゃなくて母さんの指摘を受けて。
これでも、5年経ったら結構変わってきたんだよと返事をする。
「これからも帰る場所はある。いつでも帰っておいで」
八龍家の養子になって、もう5年。
俺はもう刀眞胤ではなくなった。
姓名ともに冷躯さんのお陰で変えることが出来た。
名前は【ゼクス】。
万が一のことも考えてカナンさんの実家の名前である、【ファーヴニル】を名乗っている。
お陰で、名前だけ見ればゼクス・ファーヴニルと完全に外国の人だ。
――変化はそれだけじゃない。すくなくとも髪の色と、目の色は変わったかな。
俺はすくなくとも、他の人と比べものにならない程の訓練を、施される必要があった。
自身の【顕現】能力を、限界突破する必要があった。
その結果、顕現力によって変色してしまったんだけど、それもある意味では好都合。
【彼ら】に初見で気づかれることは、ないだろう。
髪は黒から灰……それもかなり白に近くなり、目の色は純粋な黒から黄色が混じるようになった。
5年間で、何もかも変わった。
……勿論、俺も変わった。
もうあのときの刀眞胤は、とっくのとうに消え去っている。
「父さん、母さん。――いってきます」
ここまで、送ってくれたことに感謝して。
背を向けた二人の姿が見えなくなってから、もう一度学園門を見つめる。
そして家を出るときに、父さんに言われた言葉を思い返した。
『君は無能ではないし、最初からそうではなかった』
『少しくらい特異だったからといって、それが欠点になるかは自分次第だ』
『【顕現】は意志の力。あまり黒い感情に支配されない方が良いぞ』
思い出した上で、心の中で「ごめんなさい」と養親2人に謝る。
ごめんなさい、どうも……。
――やっぱり俺は、復讐のために、力を使ってしまいそうです。
この5年間で、蒼穹城家と刀眞家の態度は見つめてきていた。
あのとき友人だった彼ら、家族だった彼らは。
ただ俺があのとき【同等】の存在だったから、あの態度をしていたに過ぎない。
1ヶ月前、【八顕】の顔合わせに冷躯さんと一緒に行った事を思い出して、俺は自分でも分かるほど苦い顔をした。
「……はぁ」
俺はため息をつき、養親達に早くも罪悪感を覚えつつ、門をくぐる。
――さて、入学式までに、第二の人生で出来た友人達を探しに行きますか。
あのとき10歳だった俺はもう15歳。
そして今、俺はあのとき諦めかけていた【八顕学園】の巨大な学園門を見上げている。
「――ここが、か」
ここが、俺がこれから通う15歳以上の【顕現者】の育成機関。
あのときはもう、ここに来るのはあり得ないと思っていたのに。
冷躯さん達の養子になって本当に良かったと思う。
――同時に、感謝している。
「さて、俺達はここでいいかな」
そんな感慨に浸っていると、後ろの方から声がした。
振り向くと、そこには金髪碧眼の美女と、灰髪の男。
どちらも何かを俺に伝えることなく、目で語っている。
「カナンさん、冷躯さん。……いままでありがとうございます」
「お母さんとお父さんでしょ」
拗ねるように頬を膨らませるカナンさん――じゃなくて母さんの指摘を受けて。
これでも、5年経ったら結構変わってきたんだよと返事をする。
「これからも帰る場所はある。いつでも帰っておいで」
八龍家の養子になって、もう5年。
俺はもう刀眞胤ではなくなった。
姓名ともに冷躯さんのお陰で変えることが出来た。
名前は【ゼクス】。
万が一のことも考えてカナンさんの実家の名前である、【ファーヴニル】を名乗っている。
お陰で、名前だけ見ればゼクス・ファーヴニルと完全に外国の人だ。
――変化はそれだけじゃない。すくなくとも髪の色と、目の色は変わったかな。
俺はすくなくとも、他の人と比べものにならない程の訓練を、施される必要があった。
自身の【顕現】能力を、限界突破する必要があった。
その結果、顕現力によって変色してしまったんだけど、それもある意味では好都合。
【彼ら】に初見で気づかれることは、ないだろう。
髪は黒から灰……それもかなり白に近くなり、目の色は純粋な黒から黄色が混じるようになった。
5年間で、何もかも変わった。
……勿論、俺も変わった。
もうあのときの刀眞胤は、とっくのとうに消え去っている。
「父さん、母さん。――いってきます」
ここまで、送ってくれたことに感謝して。
背を向けた二人の姿が見えなくなってから、もう一度学園門を見つめる。
そして家を出るときに、父さんに言われた言葉を思い返した。
『君は無能ではないし、最初からそうではなかった』
『少しくらい特異だったからといって、それが欠点になるかは自分次第だ』
『【顕現】は意志の力。あまり黒い感情に支配されない方が良いぞ』
思い出した上で、心の中で「ごめんなさい」と養親2人に謝る。
ごめんなさい、どうも……。
――やっぱり俺は、復讐のために、力を使ってしまいそうです。
この5年間で、蒼穹城家と刀眞家の態度は見つめてきていた。
あのとき友人だった彼ら、家族だった彼らは。
ただ俺があのとき【同等】の存在だったから、あの態度をしていたに過ぎない。
1ヶ月前、【八顕】の顔合わせに冷躯さんと一緒に行った事を思い出して、俺は自分でも分かるほど苦い顔をした。
「……はぁ」
俺はため息をつき、養親達に早くも罪悪感を覚えつつ、門をくぐる。
――さて、入学式までに、第二の人生で出来た友人達を探しに行きますか。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
隣の席の関さんが許嫁だった件
桜井正宗
青春
有馬 純(ありま じゅん)は退屈な毎日を送っていた。変わらない日々、彼女も出来なければ友達もいなかった。
高校二年に上がると隣の席が関 咲良(せき さくら)という女子になった。噂の美少女で有名だった。アイドルのような存在であり、男子の憧れ。
そんな女子と純は、許嫁だった……!?
写真を撮るときに一歩下がる親友がウザいので『人の顔を自然にデカくするカメラアプリ』を開発してみた
どっぐす
青春
親友の菜々子は一緒に写真を撮るとき一歩下がる。
ただでさえデカいわたしの顔がさらにデカくなるんですけど? 責任取れや。
野球の王子様3 VS習志野・練習試合
ちんぽまんこのお年頃
青春
聖ミカエル青春学園野球部は習志野に遠征。昨年度の県内覇者との練習試合に臨むはずが、次々と予定外の展開に。相手方のマネージャーが嫌味な奴で・・・・愛菜と取っ組み合い?試合出来るの?
【新編】オン・ユア・マーク
笑里
青春
東京から祖母の住む瀬戸内を望む尾道の高校へ進学した風花と、地元出身の美織、孝太の青春物語です。
風花には何やら誰にも言えない秘密があるようで。
頑なな風花の心。親友となった美織と孝太のおかげで、風花は再びスタートラインに立つ勇気を持ち始めます。
※文中の本来の広島弁は、できるだけわかりやすい言葉に変換してます♪
イーペン・サンサーイのように
黒豆ぷりん
青春
生まれたときから間が悪い真野さくら。引っ込み思案で目立たないように生きてきたけれど、中学校で出会った秋月楓との出会いで、新たな自分と向き合って行こうとするお話。
期末テストで一番になれなかったら死ぬ
村井なお
青春
努力の意味を見失った少女。ひたむきに生きる病弱な少年。
二人はその言葉に一生懸命だった。
鶴崎舞夕は高校二年生である。
昔の彼女は成績優秀だった。
鹿島怜央は高校二年生である。
彼は成績優秀である。
夏も近いある日、舞夕は鹿島と出会う。
そして彼女は彼に惹かれていく。
彼の口にした一言が、どうしても忘れられなくて。
物理部のアオハル!!〜栄光と永幸の輝き〜
saiha
青春
近年、高校総体、甲子園と運動系の部活が学生を代表する花形とされている。そんな中、普通の青春を捨て、爪楊枝一本に命をかける集団、物理部。これは、普通ではいられない彼らの爆笑アオハル物語。
夜空の軌跡
スイートポテト
青春
社会福祉法人星空学園。森の中にひっそりとそれは建てられ、児童養護施設として運営されている。ここは「自由に挑戦。」をもっとうに、様々な理由で入所してくる子どもを預かる施設だ。業界でも名の高い施設で、入所した子ども達はイキイキとした生活を過ごしている。
そんな星空学園には、ある5人のエリート高校生達がいる…この物語は、そんな天才達が、入所してくる様々な子供達の問題を解決する、青春ラブコメディである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる