断捨離令嬢キャサリンの受難

春瀬湖子

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9.選べるならば一択じゃない?

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「「は?」」

レイモンド様の言葉に、私とガルシアの声が重なる。

“結婚?私と?レイモンド様が?”

なんでその結論になったのかわからず唖然としている私に、にこりと笑ったレイモンド様が話を続ける。


「俺結構リジーちゃんの事気に入ってるんだよね、面白い子は大好きだし」
「で、でも私は男爵家で、あまりにも身分が⋯」
「うーん、それはこの国では、でしょ?ガルから聞いてない?ベルハルトははじめての相手を尊重するって」

処女性の重視、それは確かにガルシアから聞いていた話だった。

“確実な血筋を残す為に、一人の相手としかしないという国は案外珍しくもないし、ベルハルトもその国の1つだって知ってはいるけど⋯”


「つまり今俺が君を抱けば、家格がどうであろうと関係なく俺は俺の国の法律にのっとって君を拐うことが出来る。そして君も、新しい婚約者とその国の法律を守るために仕方なく抵抗したら運悪くアソコを潰してしまった⋯ということにすればいい」


確かにその理由があれば、すぐにとはいかなくても最終的に無罪になる可能性が高い。

“この国だって、わざわざ隣国ベルハルトに対し正妃どころか愛妾予定の男爵令嬢1人の為に国をかけて抗議する⋯なんてことしないだろうし”


レイモンド様の提案は、確かに理にかなっていて。


「正式な手続きで婚約を結ぶ時間はないから、君と俺とで既成事実を作るのが必須なんだけど⋯ね、抱いていい?さっきも言ったけど、俺は君がいいなら構わないよ?俺を選んでくれるなら」


少し意地悪そうに目を細めて笑うレイモンド様を見る。


――選ぶ?私が?

“そんなの頷く一択よ。だって私は恋も愛もいらないんだもの”

全ては手に入らない。
私はそれを知っていて、断捨離すべきは想いだと繰り返し思っていて。

そしてこの目の前に降ってきたチャンスを必ず掴まなくちゃいけないともわかっていた。

“ここで頷くだけで、ずっと望んでいた優雅な暮らしと誰にも見下されない地位が手に入るわ。それにそもそも頷かなくちゃ私はこのまま処刑を待つしか出来ないんだし”


だから。
でも。


真っ直ぐ私を見るレイモンド様。
その隣には、いつも馬鹿みたいに真っ直ぐなガルシアが少し俯いていて。


「私は⋯」


選ばれる事を目標にしてきた。
けど。

本当に私が選べるというならばー⋯


「ガルシアが、いい⋯」


提案してくれているのはレイモンド様で。
彼の護衛は私を抱きたいとも好きだとも何も、本当に何も言葉を発してはいないのをわかっているのに、気付けば私は溢すようにそう口に出していた。


「だって。ガル、君は?俺は王太子として身を引けと命じることが出来るけど、友達としては君の気持ちを尊重したいな」
「俺は⋯」

戸惑いながら口を開いたガルシアは、すぐにそのまま口を閉じる。

“ー⋯そうよね、元々私にレイモンド様を薦めてくるくらいだったし⋯”

困らせたわね、と笑い飛ばさなきゃ。
それとも私じゃ不服なのぉ?なんて強がるべきかもしれない。

そう頭ではわかっているのに、上手く言葉が出なくって。


あ、と思った時にはもう遅く、ポロリと涙が零れていた。
そしてそんな私を見たガルシアが、気付けば私を抱き締めていて。


「⋯ッ、すみませんレイモンド様。俺は誰よりも強がりで⋯だからこそ脆いこいつを守りたい、です」


抱き締められ触れた彼の胸からドクドクという激しい鼓動が耳から伝わる。
その強い振動が何よりも嬉しくて。


「仕事として、仕える主人の妻として守るんじゃなく、俺の意思でキャサリンが欲しい」
「ふぅん、だって。良かったね、リジーちゃん」

目を細めて笑っていたレイモンド様が、満面の笑顔で私達を見ているのに気付き私の頬も一気に赤く染まった。


「ガルは俺の一番の側近だ。その婚約者を無理やり手篭めにしようとした⋯としてちゃんと王太子権限で戦ってきてあげるから、安心してね」


そう力強く言われ、私達3人はそのまま彼らが泊まっている離宮へ向かった。



そして方針が決まったならば。

“既成事実、を、作る⋯のよね!?”

リミットはアレクが抗議をしてくるまで。

“まぁ、そもそも抗議してくるかはわからないんだけど⋯”
しかし万が一の為にも既成事実は作らなくてはならない。

“既成事実を作ったら、私、このままガルシアと結婚する事になる⋯のよね?”

これからの事を想像し、彼の使っているベッドに腰かけている私はつい体を縮めてしまう。
それは嫌だからではなく、どこかむず痒いような羞恥からだったのだが――


「⋯嫌なら、今からレイモンド様に頼んで⋯」
「な!?なんでそーなんのよッ!あと遠いのよッ!」

何故かドアの前から一歩も動かないガルシアに怒鳴った。


“なによ、やっぱり相手が私じゃダメなわけぇ?”

そんな彼の態度に苛立った私は、プイッとガルシアから顔を背けもぞもぞと1人ベッドに潜り込む。
当たり前だが自分のベッドとは違った彼の香りに少しドキッとした。


「――本当に、いいのか」

いつの間にかベッドまで近付いていたガルシアがそっとそう聞いてきたので、苛立っていた私は彼の腕を掴んで無理やりベッドに引っ張り込んで。


「いいもなにも、あんたがいいって言ってんですけどぉ!」

精一杯の強がりでそう言うと、一瞬ぽかんとしたガルシアがふっと表情を和らげる。
そして。


「ー⋯んっ」

それは重ねるだけの口付けだった。
一瞬くっつき、すぐに離れる。

たったそれだけなのに胸がドキンと高鳴って。

目が合うと、彼の琥珀色の瞳が熱を孕んでいる事に気付く。


「⋯俺は、お前が欲しがっていた地位も何も与えてやれない。それでも俺を選んでくれるのか?」
「馬鹿ね」

最初から私は彼の前で私だったし、彼だってずっとただのガルシアだった。


そんなシンプルな事で良かったのだと、今ならわかるから。


「そこは未来の騎士団長の妻にしてやるくらい言いなさいよねぇ」

照れ隠しでそう言うと、一瞬きょとんとした彼が再び私に口付けを降らせて。

「約束しよう」



生まれてはじめてする口付けを刻むように、何度も角度を変えてキスをする。
重ねているだけだがそれだけで心が熱く、自然と呼吸が荒くなった。

「ん、ん⋯」

零すように小さく吐息を漏らし、少し開いた私の口をそのまま抉じ開けるようにガルシアの舌が一気に奥まで入ってくる。

その舌に委ねるように力を抜くと、彼に強く舌を吸われゾクリとした快感に驚いた。
思わずピクリと反応した私に気をよくしたのか、そのまま扱くように彼の舌が私の舌に強く絡んで。

「⋯ん、ふっ、ぁ⋯」

自然とガルシアの首に腕を回した私が彼にぎゅっと抱きつくと、彼の手のひらがそっと私の胸に這わされた。


“――ッ!”

その突然の感触に驚き体を固くすると、そのまま止まったガルシアが私の様子を窺ってくる。

「⋯い、嫌じゃ、ない⋯けど、その⋯」
「その?」
「私、胸⋯小さいから⋯」
「ふむ」

嫌じゃない、と口にしたからかそれとも相変わらず空気が読めない愚直さが発揮されたのか。

少し考え込んだ彼が突然容赦なく私の胸を両手で揉み、すぐに私を真っ直ぐ見つめて。


「俺は気にしないが、キャサリンが気になると言うならば今度胸筋を鍛えるトレーニングを考案しよう」
「胸筋とおっぱいは似て非なるものなのよ!そこには筋肉じゃなくて脂肪が欲しいっていってんのぉ!!」

やはりズレてるこの男の発言に、呆れつつも緊張が和らいだ私は、少し笑いながら手を伸ばし彼の服を緩める。

そんな私に釣られたのか、彼もふっと笑いを溢して。


「お前とだったら怒鳴り合うのも悪くないな」
「怒鳴ってばかり?」
「いや⋯幸せに、する。だから俺と結婚してくれ」
「うん」


――もしいつかプロポーズをされたなら。
頬を染めて、涙を流して、一番可愛い表情で『嬉しい』とか言うんだって思っていた。

“まさか、『うん』しか出ないなんてね”


それでも、そのたった2文字を聞いたガルシアが嬉しそうに笑ってくれたから私もすごく嬉しくなった。


コルセットを外すのに手こずるガルシアの代わりに自分で緩め、素肌を晒す。
幼児体型なのはどうしようもなかったが、それでも控えめな膨らみしかない胸にそっと口をつけたガルシアがぢゅ、と音をたてて先端を吸った。

「んっ」
「痛いか?」
「や、ちが⋯、でもなんか、変な感じ⋯」

私の返答を聞いたガルシアが反対の胸を揉みながら乳首をカリカリと指先で刺激する。
吸っていた方の胸も、彼の舌で強く押し込まれるように弄られて。

「ー⋯あ、やぁ⋯っ、んっ」

ぞわぞわとした快感が頭を痺れさせ、自然と腰が揺れていた。
私に覆い被さるような体勢だったせいで、腰が揺れる度に彼の下半身とも擦れてしまって。

「――ッ」

いつの間にか固くなったガルシアのそこに気がついた。


「ご、ゴリってしたんだけど⋯」
「ぅ、あー⋯。まぁそりゃ⋯そうなる、だろ」

思わずそのままそう告げると気まずそうにガルシアが視線を外す。
彼の顔が、耳まで赤く染まっているのがなんだか可愛く見えてしまって。


「ガルシアのは、蹴らない、わよ」
「それ萎えさせるセリフNo.1だぞ」
「そう?でも萎えてないわ」
「なっ!」

そっと手を伸ばし彼のを服の上から擦ると、ガルシアがビクッと肩を跳ねさせた。

「⋯苦しくない?」

私の言葉を聞いた彼が、少しやけくそ気味に上半身を起こし自身のズボンに手をかける。
そのままカチャカチャとベルトを外す姿を眺めていると、途中で彼の右手が私の両目を覆い隠した。

「ちょっと」
「それこっちのセリフだからな!」

視界が奪われたせいで、衣擦れの音がやたらと耳についた。

パサリと落とされた音を聞き、思わずごくりと唾を呑みそうになるのを必死に堪えていると、目隠しされたまま再び唇が重ねられる。

徐々に体重をかけながら激しくキスを重ねられ、私がしっかりベッドに沈むとガルシアの左手がそっと太股に這わされて。


――くち、と少し粘り気のある水音が響く。

「ッ!」
「良かった、濡れてるな」
「な、な⋯っ」
「なんだ?濡れなきゃ痛いだろ、でもこれじゃ足りないな⋯どうすればもっと濡れるんだ?」
「そ⋯っ、そんなこと私に聞かないでくれるかしら!?」

お互い初めての弊害かと思ったが、どう考えてもガルシアが無神経だからだと結論付けて文句を言う。

そんな私にガルシアが嗤った気配がし、目隠ししている手に力を入れるとあっさりと外されて。

“どんな顔して嗤ったのかと思ったのに⋯”

ふわりとまるで慈しむような笑顔がそこにあり、きゅうっと胸が締め付けられたように悔しくなった。


“想いなんて一番いらないと思っていたのに”

全て捨てた結果、私に残ったのは最初に捨てたはずの想いだけで。
そしてそれが一番大事だったのだと今ならわかるから。

「私、ガルシアが好きみたいだわ」
「あぁ、俺もだ」


目隠しを外した彼はそっと私の蜜壺に顔を近付けて。

「ちょっ!?」
「このままじゃ挿入出来ないだろ」
「ひ⋯っ!」

最初は入り口をなぞるように、次に溢れた愛液を舐めとるように。

「ひゃあ⋯っ」

最後に舌でナカを確かめるように、くちゅりと挿れられた。

熱い舌が動く感覚にゾクリとする。
それでも嫌悪感はなくて、必死にその不思議な感覚に身を委ねているとくぷ、と指が舌と一緒に挿れられた。

「や、待っ」
「解すのは大事だろ」
「そ、だけどぉ⋯っ」

ナカを指の腹で擦られ異物感が凄い。
気持ちいいだけの行為ではないと知っていたし、むしろはじめては痛いだけとも聞いてはいたけれどこの異物感には耐えがたくて。

「ふ、ぅう⋯っ」
「ほら、力抜けるか?」

舌を抜いたガルシアが私にそっと口付けをするが、指までは抜く気はないようで容赦なく指を抽挿する。

「痛いか?」
「わかんな、でもなんか、入ってるって感じが凄い⋯」
「んん⋯っ、そ、うか」

返事を聞いたガルシアが一瞬固まるが、すぐに咳払いし挿入している指を一本増やした。

「ちょ⋯っ」
「痛かったらすぐに言え」

指が増やされた事で異物感に圧迫感もプラスされる。
本当に何故世の夫婦はこんなことをしているのか。

一瞬現実逃避をしては、ナカで動く彼の指ですぐに現実に引き戻されて。


「⋯そろそろ、すまん、俺も限界で」

はっと彼の熱い吐息が耳にかかり、それだけでぞわりと私の体が熱を持つ。


「ん、あんたのお嫁さんに、して」

ちゅぽんと指が抜かれて。

「ガルシアのお嫁さんに、私がなりたいから」

ぐちゅ、と彼のモノがあてがわれる。


「煽るの大概にしろ、大事にしたいって言ってんのに、抑える自信が喪失しそうだ」
「いいわよ、それで」

だって私は、ずっとあんたに選ばれたかったんだから。


くそ、と小さく呟いたガルシアがズズッとゆっくり私のナカに挿ってくる。

指なんかとは比べ物にならないくらいの圧迫感に襲われ、思わず息を詰めた。
ピリッとした鋭い痛みが走り、これ絶対裂けてるでしょ、なんて頭を過りつつ彼の体にしがみつく。

最大限気遣っているだろうガルシアは、止まっては少し進んでを繰り返しゆっくり奥まで時間をかけてくれて。


「⋯ふ、う⋯っ、ぜんぶ、はいっ、たぁ?」
「あぁ」
「そ⋯か」

私の痛みが治まるのをまっているのか、じっとしてるガルシアになんだか笑いが込み上げてくる。

“痛いし、苦しいし。なんでこれをみんなするのかと思ったけど⋯”

繋がったところから感じる熱が、私の心も熱くさせるようで。
その熱が、彼が私を好きだと言ってくれてるようで。

“思ったよりも悪くないわ”
なんて私は思った。



「動いて、いいわよ」
「だ、だが」
「いいって。今日を忘れないように、いっぱい⋯刻んでよ」
「⋯っ、無理は、すんなよ」

こくりと頷いた私を見たガルシアが、ゆっくり腰を動かしはじめる。

ズキズキとした痛みは相変わらずだが、その痛みすらなんだか嬉しくて。


「⋯あ、ぅん⋯っ、ぁっ」

ぐちゅぐちゅと音を立てながらガルシアが少しずつスピードを上げる。

「ん、んんっ、ひゃ、ぁんっ」

相手がガルシアだからか、少しずつこの圧迫感にも慣れてきたからなのか、私の体はわずかだが少しずつ快感を拾いはじめていて。

「ん、が、ガル⋯シア、もっと⋯っ」
「だからっ、煽るな、と⋯っ!」
「やぁんっ」

ぱちゅんと奥まで貫き、奥をグリッと抉じ開けるように更に奥へと押し込む。
そのままズッと抜けるギリギリまで引かれまた奥まで一気に貫かれると、私の視界が白く瞬いた。


「ん、あんっ、がる、ガルっ」
「んっ、悪い、そろそろ⋯っ」
「きて、ぁんっ、はや⋯くっ」

何度も内側を抉るように擦られ突かれるのを繰り返し、一際ギリギリまで抜いたガルシアがより奥へ挿入して。

ビュクビュクとナカで彼のが震え、私のナカにじわりとした熱が広がった。


「⋯あっつい⋯」
「冷たいものでも飲むか?」
「そうじゃなくて、⋯その、あんたのが⋯お腹の中で熱いなって⋯」
「⋯⋯⋯」

正直に思ったことを告げると、ギシリとガルシアが固まる。

“今日よく固まるわね”
なんて、はじめてを終えた安堵感からかぼんやりとそんな事を考えていた、のだがー⋯


「⋯ちょっと、私のナカでなんかおっきくしてない?」
「キャサリン」
「か、固くなってる気がするんだけどっ!?うそっ、あんたまさか⋯」
「お前が悪いと俺は思う」
「絶対あんたが悪いでしょ!?!?」


何がトリガーになったのか、再び芯を持ち出した彼のソコに、私はただ青ざめるのだった。
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