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だったらお家に帰ります!夫婦喧嘩からはじめる溺愛婚(続行)
3.恋愛は惚れた方が負けだが、ズルい方が勝つこともある
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「えぇっと……?」
私の言葉に戸惑う義両親がチラリとクラリスの方を見ると、クラリスはにこりと微笑んで。
「はじまりはご両親にとって受け入れがたいものだったかもしれませんが、想像の100倍ラブラブではた迷惑なバカ夫婦でございます」
「ちょっと!!?100倍程度で私の愛が納まると思ってるの!?」
「そっちですかぁ~」
あーあ、と苦笑するクラリスを横目に私は義両親にしっかりと向き直して。
「酷いと思いませんか!?私からのプレゼントは、貰いすぎだからとか必要ないからとか言って買う前に断るくせに自分だけ!!私だってバルフにいっぱいプレゼントしたいのにッ」
「ね?はた迷惑でしょう」
「クラリス!!」
名前を呼ぶとわざとらしいくらい……というか、絶対わざとやってるのだが、クラリスが口笛を吹いてそっぽを向いた。
“その態度は私の前でしか許されないから!”
なんて内心文句を言うが、ちゃんとするときはちゃんとするクラリスがこのような態度を見せると言うことは、義両親を私の『内側』と認識したということでもあって。
そう思うと怒るに怒りきれず、うぐうぐと俯いてしまう。
「えっと、つまりシエラ様……じゃなくて、シエラちゃんは、バルフが嫌いになってここに来た訳ではないんだね?」
「もちろんです!バルフを嫌う人なんてこの世にいるはずがありませんもの」
「そ……れはちょっと、どうかなとは思うが……」
「あの子もシエラちゃんが好きだからプレゼントを用意していたんだと思うし……」
「それもわかっておりますわ。そこを疑うのはバルフに失礼ですからあえて断言いたしますが、私、バルフに愛されております」
“けど、だからこそ私からのプレゼントは断るくせにバルフだけ用意してるなんて格好良すぎるもの!私だって格好つけたいのに!”
「うわぁ、兄さんが『最愛の妻に贈る色』っていうルビーを売り出したの、名前を使った集客かと思ってたけど本心だったんだ」
「うわぁ~、バルフ兄様ってばベタ惚れ?」
「「ベタ惚れベタ惚れ~」」
「ちょ、部屋で大人しくしてなさいって言ったでしょ!?」
キイ、と扉が開いたかと思ったら、開いた扉の隙間からぴょこぴょこと顔を覗かせたのは12、3歳くらいの男女と、私と同じくらいの年の青年に私より少し年下だろう少年で。
「そ、その黒髪とオリーブ色の瞳って……!」
漏れなくその四人全員がバルフと同じ色を持っていた。
“こ、これってある意味バルフの成長過程を擬似体験してるということなの……!?”
少しやんちゃそうな遊び盛りの幼少期に、思春期を迎えそうな少年期。
今の落ち着いた姿を彷彿とさせつつ、どこかまだいたずらっ子のような雰囲気もある青年期。
「可愛い、全員可愛いわ……!!最高よ……っ」
「うわぁ、ベタ惚れなのは義姉さんかぁ」
「義姉……!素晴らしい響きね!?」
くすりと笑うと落ち着いたバルフに更に似る。
可愛いに囲まれて、私の胸は高鳴り続けていた。
「上からメティス、20歳」
「次男のメティスです」
「次がハビロン」
「三男だよ、今は15!」
「双子のデジーナとビジール、12歳」
「私がデジーナよ」
「僕がビジールだね」
一人ずつ紹介して貰い、私に手を振ってくれたりぺこりとお辞儀してくれたり。
唯一の女の子であるデジーナは少しぎこちないものの可愛いカーテシーをしてくれて。
“ここが天国なんじゃないかしら……!”
物理的にはち切れそうな私の胸が、精神的にもはち切れそうな錯覚に陥る。
「あと、今ここにはいないが……」
「ライトンね」
「あぁ、今年で9歳になるんだが、一番お兄ちゃんっ子で……」
私に体当たりをしてきた少年を思い出し、少し落ち込んでしまう。
今ここにいないということは、私は受け入れられていないということなのだろう。
「でも、義姉さんがこんなに美人だとか思わなかったなぁ~」
「メティス兄、シエラ姉はバルフ兄の奥さんだからね!」
「ねぇねぇ、さっきのケーキって食べていいの~?」
「遊んで欲しいわ!私がお姫様をやるからお義姉様が王子様とペットと魔王をやって!」
きゃっきゃと突然周りが騒がしくなり、思わずオロオロとしてしまうが……
“私、弟とか妹って憧れだったのよね……!”
バルフの妹弟たちだから、というだけではなく、本当にただただ嬉しくて。
「……いいわ!みんなまとめて相手してあげるんだから!」
スクッと立ち、両腕を腰に当ててそう断言した。
「凄いなぁ、僕の家にはメイドがいないから他のメイドさんのことはわからないんですが、世間のメイドさんって皆クラリスさんみたいに美人なんですか?」
「ありがとうございまーす」
「その素っ気なさも素敵だなぁ」
“全然相手にしてないクラリスも凄いけど、あんなに相手にされてないのにめげないメティスも凄いわね……”
嫡男だったバルフを私が拐ってしまったため、繰り上がりで嫡男になったメティス。
子爵家の嫡男がそんなにチャラくていいのかと思わなくもないが、セクハラ的なことを言っている訳でもジロジロと下心を滲ませた視線を送っている訳でもなくて。
“褒めてるだけ……なのよねぇ”
だからこそクラリスも流すだけにとどめているのだろう。
兄弟なのにバルフとは正反対で、なんだかそれが少し可笑しく――……
「隙ありいっ!」
「ひゃあ!?」
むにゅ、と後ろからおっぱいを鷲掴みされて思わず声をあげてしまう。
しかしそんな声にはお構い無しどころか、胸の弾力を確かめるように何度もゆっくりと持ち上げるように揉まれて。
「……おっぱいって、こんなに重いの……?」
「………………」
止めなくては、とは思うものの、揉んでいるのはまだ12歳のビジール。
しかも感想が感想なだけに思わず止めるのを躊躇ってしまう。
「ちょっと!お義姉様は今私と遊んでるの!邪魔しないでよビジール!」
「はぁ?デジーナの遊びって子供っぽいだけじゃん!」
「ちょ、ちょっと二人とも喧嘩は……っ」
「子供っぽくなんかないもんっ!今から雌牛調教ごっこに切り替えるもん!!」
「デジーナッ!!?」
ビジールに子供っぽいと言われたデジーナが、瞳に涙をいっぱい浮かべながらとんでもない爆弾発言を投げつけてきて。
“め、雌牛ってまさか私なの!?というかそういう方向での大人化は教育上良くないわ……!!”
ひぇ、と青ざめた私に聞こえてきたのは。
「ほんはほほひうへるほはほんへほはへはくはふほー」
「もう一回言ってくれるかしら?」
手土産のケーキを思い切り口に詰め込んだハビロンの言った内容が本気でわからず、双子と一緒にぽかんとした。
「んっ、んん、んーっ、と。『そんなこと言ってると嫌われるぞ』って言ったー」
ごきゅんとケーキを飲み込んだハビロンは、それだけ言うとまた口いっぱいにケーキを詰め込む。
彼もまたバルフとは違うマイペースさを持っていて。
「やだぁ!!嫌いにならないでぇっ」
「だめぇ!!嫌いになっちゃだめぇっ」
そしてハビロンの言葉に影響されたビジールとデジーナがぎゅうっと抱き付いてくる。
“バルフには私が抱き付くばかりだから、新鮮だわ”
私を甘やかすのが趣味なのかと思うくらい甘やかす夫を思い出し、そして彼も幼い頃はこんな風に甘えたりしたのだろうかと思いを馳せる。
バルフにどことなく似ていて、そしてやっぱり違う妹弟たちが可愛くて愛おしくて……
バルフの妹弟たちだからなのか、広い心ですぐに受け入れてくれてそれが堪らなく嬉しかった。
“……だからこそ、ライトンとも仲良くなりたいわ”
そんな私がまだ唯一仲良くなれていない末っ子。
バルフと喧嘩して家出したからここにいるくせに、そのバルフが迎えに来てくれるまでに打ち解けられたら……なんて当然のように考えてしまい苦笑する。
“でも、バルフはきっと迎えに来てくれるから”
ならそれまでに、バルフの大事な家族には少しでも印象を良くしたいから。
「頑張らないと……!」
私は小声で呟き、気合いを入れ直したのだった。
私の言葉に戸惑う義両親がチラリとクラリスの方を見ると、クラリスはにこりと微笑んで。
「はじまりはご両親にとって受け入れがたいものだったかもしれませんが、想像の100倍ラブラブではた迷惑なバカ夫婦でございます」
「ちょっと!!?100倍程度で私の愛が納まると思ってるの!?」
「そっちですかぁ~」
あーあ、と苦笑するクラリスを横目に私は義両親にしっかりと向き直して。
「酷いと思いませんか!?私からのプレゼントは、貰いすぎだからとか必要ないからとか言って買う前に断るくせに自分だけ!!私だってバルフにいっぱいプレゼントしたいのにッ」
「ね?はた迷惑でしょう」
「クラリス!!」
名前を呼ぶとわざとらしいくらい……というか、絶対わざとやってるのだが、クラリスが口笛を吹いてそっぽを向いた。
“その態度は私の前でしか許されないから!”
なんて内心文句を言うが、ちゃんとするときはちゃんとするクラリスがこのような態度を見せると言うことは、義両親を私の『内側』と認識したということでもあって。
そう思うと怒るに怒りきれず、うぐうぐと俯いてしまう。
「えっと、つまりシエラ様……じゃなくて、シエラちゃんは、バルフが嫌いになってここに来た訳ではないんだね?」
「もちろんです!バルフを嫌う人なんてこの世にいるはずがありませんもの」
「そ……れはちょっと、どうかなとは思うが……」
「あの子もシエラちゃんが好きだからプレゼントを用意していたんだと思うし……」
「それもわかっておりますわ。そこを疑うのはバルフに失礼ですからあえて断言いたしますが、私、バルフに愛されております」
“けど、だからこそ私からのプレゼントは断るくせにバルフだけ用意してるなんて格好良すぎるもの!私だって格好つけたいのに!”
「うわぁ、兄さんが『最愛の妻に贈る色』っていうルビーを売り出したの、名前を使った集客かと思ってたけど本心だったんだ」
「うわぁ~、バルフ兄様ってばベタ惚れ?」
「「ベタ惚れベタ惚れ~」」
「ちょ、部屋で大人しくしてなさいって言ったでしょ!?」
キイ、と扉が開いたかと思ったら、開いた扉の隙間からぴょこぴょこと顔を覗かせたのは12、3歳くらいの男女と、私と同じくらいの年の青年に私より少し年下だろう少年で。
「そ、その黒髪とオリーブ色の瞳って……!」
漏れなくその四人全員がバルフと同じ色を持っていた。
“こ、これってある意味バルフの成長過程を擬似体験してるということなの……!?”
少しやんちゃそうな遊び盛りの幼少期に、思春期を迎えそうな少年期。
今の落ち着いた姿を彷彿とさせつつ、どこかまだいたずらっ子のような雰囲気もある青年期。
「可愛い、全員可愛いわ……!!最高よ……っ」
「うわぁ、ベタ惚れなのは義姉さんかぁ」
「義姉……!素晴らしい響きね!?」
くすりと笑うと落ち着いたバルフに更に似る。
可愛いに囲まれて、私の胸は高鳴り続けていた。
「上からメティス、20歳」
「次男のメティスです」
「次がハビロン」
「三男だよ、今は15!」
「双子のデジーナとビジール、12歳」
「私がデジーナよ」
「僕がビジールだね」
一人ずつ紹介して貰い、私に手を振ってくれたりぺこりとお辞儀してくれたり。
唯一の女の子であるデジーナは少しぎこちないものの可愛いカーテシーをしてくれて。
“ここが天国なんじゃないかしら……!”
物理的にはち切れそうな私の胸が、精神的にもはち切れそうな錯覚に陥る。
「あと、今ここにはいないが……」
「ライトンね」
「あぁ、今年で9歳になるんだが、一番お兄ちゃんっ子で……」
私に体当たりをしてきた少年を思い出し、少し落ち込んでしまう。
今ここにいないということは、私は受け入れられていないということなのだろう。
「でも、義姉さんがこんなに美人だとか思わなかったなぁ~」
「メティス兄、シエラ姉はバルフ兄の奥さんだからね!」
「ねぇねぇ、さっきのケーキって食べていいの~?」
「遊んで欲しいわ!私がお姫様をやるからお義姉様が王子様とペットと魔王をやって!」
きゃっきゃと突然周りが騒がしくなり、思わずオロオロとしてしまうが……
“私、弟とか妹って憧れだったのよね……!”
バルフの妹弟たちだから、というだけではなく、本当にただただ嬉しくて。
「……いいわ!みんなまとめて相手してあげるんだから!」
スクッと立ち、両腕を腰に当ててそう断言した。
「凄いなぁ、僕の家にはメイドがいないから他のメイドさんのことはわからないんですが、世間のメイドさんって皆クラリスさんみたいに美人なんですか?」
「ありがとうございまーす」
「その素っ気なさも素敵だなぁ」
“全然相手にしてないクラリスも凄いけど、あんなに相手にされてないのにめげないメティスも凄いわね……”
嫡男だったバルフを私が拐ってしまったため、繰り上がりで嫡男になったメティス。
子爵家の嫡男がそんなにチャラくていいのかと思わなくもないが、セクハラ的なことを言っている訳でもジロジロと下心を滲ませた視線を送っている訳でもなくて。
“褒めてるだけ……なのよねぇ”
だからこそクラリスも流すだけにとどめているのだろう。
兄弟なのにバルフとは正反対で、なんだかそれが少し可笑しく――……
「隙ありいっ!」
「ひゃあ!?」
むにゅ、と後ろからおっぱいを鷲掴みされて思わず声をあげてしまう。
しかしそんな声にはお構い無しどころか、胸の弾力を確かめるように何度もゆっくりと持ち上げるように揉まれて。
「……おっぱいって、こんなに重いの……?」
「………………」
止めなくては、とは思うものの、揉んでいるのはまだ12歳のビジール。
しかも感想が感想なだけに思わず止めるのを躊躇ってしまう。
「ちょっと!お義姉様は今私と遊んでるの!邪魔しないでよビジール!」
「はぁ?デジーナの遊びって子供っぽいだけじゃん!」
「ちょ、ちょっと二人とも喧嘩は……っ」
「子供っぽくなんかないもんっ!今から雌牛調教ごっこに切り替えるもん!!」
「デジーナッ!!?」
ビジールに子供っぽいと言われたデジーナが、瞳に涙をいっぱい浮かべながらとんでもない爆弾発言を投げつけてきて。
“め、雌牛ってまさか私なの!?というかそういう方向での大人化は教育上良くないわ……!!”
ひぇ、と青ざめた私に聞こえてきたのは。
「ほんはほほひうへるほはほんへほはへはくはふほー」
「もう一回言ってくれるかしら?」
手土産のケーキを思い切り口に詰め込んだハビロンの言った内容が本気でわからず、双子と一緒にぽかんとした。
「んっ、んん、んーっ、と。『そんなこと言ってると嫌われるぞ』って言ったー」
ごきゅんとケーキを飲み込んだハビロンは、それだけ言うとまた口いっぱいにケーキを詰め込む。
彼もまたバルフとは違うマイペースさを持っていて。
「やだぁ!!嫌いにならないでぇっ」
「だめぇ!!嫌いになっちゃだめぇっ」
そしてハビロンの言葉に影響されたビジールとデジーナがぎゅうっと抱き付いてくる。
“バルフには私が抱き付くばかりだから、新鮮だわ”
私を甘やかすのが趣味なのかと思うくらい甘やかす夫を思い出し、そして彼も幼い頃はこんな風に甘えたりしたのだろうかと思いを馳せる。
バルフにどことなく似ていて、そしてやっぱり違う妹弟たちが可愛くて愛おしくて……
バルフの妹弟たちだからなのか、広い心ですぐに受け入れてくれてそれが堪らなく嬉しかった。
“……だからこそ、ライトンとも仲良くなりたいわ”
そんな私がまだ唯一仲良くなれていない末っ子。
バルフと喧嘩して家出したからここにいるくせに、そのバルフが迎えに来てくれるまでに打ち解けられたら……なんて当然のように考えてしまい苦笑する。
“でも、バルフはきっと迎えに来てくれるから”
ならそれまでに、バルフの大事な家族には少しでも印象を良くしたいから。
「頑張らないと……!」
私は小声で呟き、気合いを入れ直したのだった。
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