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5.鉄仮面が剥がれるとき

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 坊っちゃんに手を引かれ連れられたのは、先日閨教育を行ったばかりの坊っちゃんのベッド。

 促されるまま腰掛けた私は、そこでやっとあることに気付く。


“消毒って、そういう意味でしたか!”

 それなりに鍛えている私があんな石ころに怪我をさせられるはずなどないのに、と首を傾げていたのだが、性的な意味での消毒だと知り途端にバックンバックンと心臓が暴れだす。


「……怖かったよな」
「いえ全然」
「俺は怖かったよ」
「消して参りましょう」
「いいです」

“可愛い坊っちゃんを怖がらせるだなんて言語道断、欠片にして見逃すのではなく砕いて砂にしておくべきでしたね”

 すぐさま立ち上がろうとした私だったのだが、そんな私を引き留めるように坊っちゃんが口付けをして。


「うっかりについて、考えてきたか?」

 熱っぽく囁かれながら体重をかけられる。
 ぽすんとベッドに仰向けで転がった私の視界が天蓋と、そして可愛い坊っちゃんの艶かしい表情でいっぱいになった。

 至近距離で見つめられると私の頬をくすぐる坊っちゃんのアッシュグレーの髪が柔らかそうに揺れ、触れたい衝動に駆られる。

「イメルダ?」
「あ、それは……」

 つい見蕩れてしまっていた私は慌てて考えるが、正直わからないものはわからない。

“うっかりって……うっかり以外のどういう意味があるのかしら”

 うっかりと言うのだから、不本意だとか失敗したとかそういう類いのものだろう。

“ならば、うっかり挿入してしまわないように下着をつけようとしたのは正解ということになるはず”

 けれど実際は、私はもう全て脱がされた後だった。……と、いうことは。


「うっかりという可能性を完全になくすため、そもそも下着を脱がされたことが誤りでしたか?」
「不正解だ」

 なんでそんな回答になるんだ、と少し項垂れながら私のメイド服を脱がしはじめる坊っちゃん。
 するすると脱がされると、おっぱいがふるりとまろび出る。

 熱っぽい視線で見つめられれば体が火照り、少しひんやりとした外気が心地よかった。
 そのまま全て脱がされ、私はあっという間に全裸にされて。
 

“結局下着は脱がされてもよかったのよね?”

 うっかりの答え合わせで、下着を脱がされないようにすることは不正解だと判明したため、大人しく脱がされる。

 もちろん私の中に拒否という単語はないのだが、無抵抗な私が少し気になったのか、隠しもせず裸体を晒していた私に触れるのを坊っちゃんは少し躊躇われたようだった。


「次は本番だと言ったはずなんだが」
「そうですね」
「つまりこれから本番なんだが」

“なるほど、本番前夜ですね?”

 いざやってくる令嬢との本番に向けた最終確認だと認識した私が、ふとあることに気付く。
 

“汚れてもすぐに着替えられるようメイド服はシンプルな構造ですが、世のご令嬢はメイド服なんて着て初夜には挑みませんね”

 新婚二人の初夜なら、侍女が旦那様になられた坊っちゃんの好みに合わせた夜着を用意しているのだろうが、婚約発表もされていないのに入籍はない。

 けれど迫るらしい本番。

“ならば、お相手様が着ておられるのはドレスなのでは?”


 コルセットはもちろん、ドレス自体も着脱行程が多い。
 シンプルなメイド服を脱がすのとは訳が違うので、いざ本番で脱がすのに手こずる可能性が私の脳裏を過る。

 
「……ドレスを着れば良かったかもしれません」
「ど、ドレスだと!?」

 少しでも本番に近い状況での練習を、と思った私が何気なく口にしたそのドレスという言葉に過剰なほど反応される坊っちゃん。

「それはイメルダが着てくれるのか!?」
「?そうなりますが」

“何しろ今練習台としてここにいるのは私ですし”

 状況的にそれしかないことを改めて確認されて怪訝に思う。

「そのドレス、純白ので間違いないか!?」

 純白を誇張されて、そんなに白がお好きだったかしら?なんてますます首を捻っていると、言葉を重ねるように坊っちゃんが口を開いた。

「つまりその、う、ウェディングドレス、だなっ!?」
「ウェディングドレスですか?」

“あら?やっぱり結婚後の初夜を想定されての練習なのね”

 そして結婚後の初夜ならば、ウェディングドレスのまま盛り上がることもあり得ると考えて。

「そうですね、私はそれでも構いません」
「言質だ!今のは言質だからな!」

 肯定すると、途端に坊っちゃんから満面の笑みが溢れる。

「約束だ、忘れるなよ」

 何度も念を押された私が返事をしようと口を開ければ、くちゅりと舌が入れられ私から言葉を奪った。


「んっ」

 ちゅぱ、と舌を吸われ坊っちゃんの舌と激しく絡められる。
 口内を蹂躙するように動かされれば、じわりと痺れたような熱が全身を包んだ。


“――ッ!”

 激しい口付けに意識が奪われていると、坊っちゃんの両手が胸を揉み出す。
 むにむにと手の中で形を変える胸は、人差し指で乳首をカリカリと擦られるとすぐにツンと立ち上がった。

「この間より敏感だな」

 乳首へ視線を動かした坊っちゃんが、捏ねるようにクリクリと指を動かすと電流のような快感が体を走り、すぐにじゅんと下腹部が疼く。

“この間の熱が残っていたのでしょうか”

 そんな私の様子に気付いた坊っちゃんが乳首を捏ねつつ、もう片方の手で蜜壺をなぞった。


「もう濡れてるんだな」

 純粋な報告をするように淡々と感想を言われると、表情こそ変わらないがじわりと愛液が滲む。

 愛液をナカへ戻すように、そして指を馴染ませるようにゆっくりと奥まで沈められると、あっという間に指が一本挿入ってしまった。

“こんなにあっさり受け入れてしまうなんて”


 坊っちゃんの意向で挿入はご本命のお嬢様に取っているものの、指は前回何度も出し入れされたからだろうか。

 すぐにぬぽぬぽと指を動かしはじめた坊っちゃんに私の腰が甘く痺れる。

 敏感な内壁を優しく擦り上げられると、パチパチと視界に星が散った。
 私ばかりが気持ちよくなるのは、一応閨教育の師としてはまずいと思うのだが、抽挿される度に思考が奪われ呼吸するのが精一杯。

“どうしましょう、二回目でこんなに的確に気持ちよくさせられてしまうなんて”

 これはもちろん坊っちゃんが相手を思いやってしているからなのだろう。
 そんなお優しい坊っちゃんも堪らなく素敵で、やはり私は本当に本当に坊っちゃんが可愛くて大好きで。


“せめてこの閨教育の時間だけは、坊っちゃんを一人占めできるのかしら”

 本命のお嬢様のために最後まではシて貰えないが、それでも今私に触れているのは坊っちゃんなのだ。

 指でナカをほぐしながら、じっくり擦られ愛液が溢れる。
 ぬちゅぬちゅと粘りのある音が部屋に響くほどはしたなくも期待してしまっている私のソコに、熱い坊っちゃんのソレがくちゅ、と触れた。


“また生で擦るんですね”

 前回と同じく素股かと思ったが、私の足を左右に大きく開いた坊っちゃんが体を滑り込ませ、私の蜜壺の入り口を擦る。

 指で散々解されたソコをちゅぷちゅぷと掠めるように動かされれば、今度こそ本当に『うっかり』ナカまで挿入ってしまいそうで。


「坊っちゃん、お待ちください、そんなに強く擦られますと挿入ってしまいます」
「あぁ、そうだな」

 私の忠告を肯定しながらも、擦り続ける坊っちゃん。
 入り口に亀頭がつっかかり、たまにぐちゅ、と少し挿入りかけてはちゅぽんと外れまた擦られて。

 
「……純白のドレス、着てくれると言質は貰った」
「え?」
「うっかり、の答えはな」

“うっかりの、答え……?”

 坊っちゃんの深緑の瞳が赤く潤み、真っ直ぐ射貫くように見つめられる。
 その美しい坊っちゃんの瞳の中には、鉄仮面のはずの私がどこか期待し懇願するよな表情で、頬を赤く染めていた。


「うっかりに見せかけて挿入し、全部俺のにしたいってことだよ」
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