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9.脅しとは相手が嫌な事をするのではなく、自身に都合のいい事をすることである

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「なぁ、お前の服ちっせぇんだけど」
「誰がちびだうるっせぇ!文句言うなら裸で寝ろ!」
「え、いいの?」
「⋯えっ、そんなの⋯」

“嘉川が、裸で寝る⋯?”
先日のアレコレを思い出した俺は、マズイ事を口走ったのでは⋯と一気に青ざめて。

「か、風邪引くとダメなので我慢して着てて貰えますかね⋯」

すぐさま前言撤回した俺を可笑しそうに笑った嘉川は、了解、とすぐに頷いた。


警戒していた風呂も、自分家という事もあって戸惑うことも、もちろんローションなんてものもなく。
着替えだって、あんなフリフリや透け透けのエロぱんつじゃなくて普通のぱんつだ。

“一瞬あいつの下着、この間のエロぱんつにしてやろうかな⋯なんて思ったけど⋯”

万一そのぱんつをキッカケに、『お前の方が似合う』とか訳わからん理論を繰り出され再び履かされるような結果になっては困るので、クローゼットの奥の奥に片付けておいた。


「いやもう、完璧な回避⋯!回避全振りアサシンって感じ!」
「アサシンって?」
「うわぁぁ!?おまっ、アサシンの背後取るなよばかっ!」
「いや、アサシン名乗るなら背後取られるなよ⋯」


なんて会話をしつつ、俺達は寝る準備をする。

ワンルームの我が家に客間なんてあるはずもなく、客用布団なんてものもない。
仕方ないので冬用の分厚い掛け布団を下に敷き、クッションを枕に。そして夏用のブランケットを掛け布団に模したハリボテ布団を作った。

それを俺のベッドの横に並べると、寝転がった嘉川が少し恨めしそうに見上げてきて。

「一緒にベッドかなって期待してたんだけど」
「布団が出てきただけでも感謝しろって」
「なぁ、そっち行っていい?」
「絶対ダメ」

もちろん断固拒否の構えを取る俺に、嘉川は渋々ブランケットにくるまった。


「嘉川、明日講義は?」
「統計学基礎取ってる」
「あれって確か2限だっけ。じゃあ10時までは寝れるな」

ふむふむと納得しながらスマホの目覚ましをセットする。
俺自身は昼からだが、嘉川も案外ゆっくりで安心した。


「親切だな」
「え?」
「わざわざ俺の為に目覚ましセットしてくれてるんだろ?」

しみじみとそう言われ、尽くしているようだったか!?と焦る。

「ちが⋯っ、これは脅されてるから仕方なく!」
「なぁ、あんな写真で本当に脅されてくれてんの?」

言われた言葉が理解できず、きょとんとする俺を見た嘉川はむくっと上半身を起こしおもむろに俺の頭を撫でた。

「な、なにす⋯っ!」
「あの写真さ、エロぱんつを持ってるだけの写真だぞ。望月にとってそんなに困る写真とは思えない。本当に脅しの効力、あるのか?」

“脅しの効力⋯?”

嘉川の言葉を反芻する。
確かに構内でエロぱんつとツーショットなんて変態チックな写真は、俺にとってマイナスではあるが⋯

“そもそも罰ゲームで記念写真撮った、とか言えば解決する程度の写真⋯か?”


忘年会の景品に男物のエロぱんつが入っているくらいなのだ、近しい誰かに見られたとしてもただの悪ふざけで十分通る。

そもそも持っていたあのエロぱんつも、最初に見られたエロぱんつだって俺の物じゃないのだ。


なのに俺はその写真を理由に嘉川とデートし、キスされ、尻に指を入れられ散々イかされて。


『写真の流出?勝手にどうぞ』なんて放っておいても全然良かったはずなのに⋯

“なのに俺は、脅されてるからって自然と嘉川を受け入れていてー⋯”


「なぁ、少しくらいは俺といるのが楽しいからって自惚れてもいいか?」
「それは⋯」
「そもそもそこまで効力のない写真なんだ。なら望月が俺といるのが嫌じゃないから、こうして泊めてくれてるんだよな?」

念を押されるように。
どこか懇願するように。

じっと俺を見つめ答えを待つ嘉川の顔がどこか不安気に揺れて――


「まだ、わ⋯かんねぇ、よ⋯」
「それは、脅されてるかどうか?」
「⋯⋯⋯」
「それとも、俺の事をどう思ってるかって話⋯?」

ぽつりと溢すようにそう聞かれ、俺は小さく頷いた。


だって本当にわからないのだ。

俺は普通に女の子が好きだったし、男と付き合おうなんて考えたこともなくて。

“嘉川にキスされた時も、体を触られたときも⋯”
驚いたし突然の事で腹も立った。
だけど、不思議と嫌悪感なんかはなくて⋯

“あんなに散々されても、またこうして嘉川と二人きりになってるんだ”

そんなの、無意識に受け入れてしまっているからなんじゃないのか⋯?


「本当に無理なら、抵抗しろよ」
「え、かが⋯」

頭をそっと撫でていた嘉川が、そのまま俺の後頭部を引き寄せるようにして。

それは、ちゅ、と重ねるだけのキスだった。


「おま、また⋯っ!」

慌てて離れようとするが、頭を抑えている手とは反対の手が俺の腕を掴み、そのまま引きずり込むように自身のベッドから嘉川の布団へ落ちる。


「――っ!」

驚いた俺は慌てて両目をぎゅっと瞑るが、想像した痛みは来ず⋯
気付けば嘉川に抱き締められていた。


まるで宝物でも抱くかのように接され、それは俺自身が本当に大事にされているように感じて。


“これは、嘉川の体が熱いせいだ⋯”

強ばっていた体からふっと力が抜けたことを感じた。
そしてそれは嘉川も同じだったようでー⋯


「大丈夫だから⋯」
“大丈夫って、何がだよ⋯”

そんな俺の疑問は、嘉川の唇で塞がれて言葉にはならなかった。

そっと俺の下唇を食むように嘉川が唇を動かす。
それでも俺が口を開けずにいると、今度はそっと舐めるように舌を動かされて。

“なんかでけぇ犬みたいだな”
なんて想像しちょっと楽しくなった俺の胸を、突如鋭い刺激が襲う。


「――ッ!?」
「ん、やっと開いた⋯」

そんな呟きが聞こえたと思ったら、すぐさま奥まで嘉川の舌がぬるりと侵入し――

「や、ま⋯っ!んんっ」

無遠慮に口内を蹂躙しながら、嘉川が俺の両乳首をカリカリと爪先で引っ掻いた。

服の上から与えられる刺激は、どれだけ強くされてもどこか物足りなくてー⋯


“⋯って、俺男なのに乳首で感じて⋯!?”

そんな事あり得ない、そう思うのに俺の下半身がズクンと少しずつ熱を溜める気配を感じた。


そんな俺の下半身をチラッと確認した嘉川は、「期待には答えないとな」なんて笑って。


「ッ、待⋯っ、直接⋯はっ!」

グイッと服をたくしあげられたと思ったら、そのまま乳首に吸い付かれる。
服の上からの刺激に物足りなさを感じていた俺は、その直接的な刺激をまるで待っていたかのようで。

一気に背筋を駆け上がった痺れるような快感に、ビクビクと小刻みに肩が跳ねた。


「⋯ぁ、や⋯っ!」

ちゅうちゅうと執拗に吸われ、指ではクリクリと捏ねられる。
そう思ったら突然乳首を弾かれて。

「やめ、そこばっか⋯、や⋯っ」

じんじんと痛いくらい熱く痺れた乳首が赤く腫れ上がっている。
その光景は嘉川のモノにされたように卑猥に感じて⋯

「可愛い」

いつもなら絶対嬉しくないその言葉は、頭が麻痺してしまったのか、それとも嘉川だからなのか心を震わせた。


「望月気付いてる?」
「んぇ⋯?」

乳首への愛撫を止めた嘉川が意味深に耳元へ顔を寄せて。

「ズボンまで滲みてる」
「ーーッッ!」

ハッとし見ると、漏らしたようにその部分だけ色が変わってしまっていた。

“な⋯っ、触ってもねぇのに嘘だろ⋯!?”

恥ずかしいのか悔しいのか、自分でもわからないその感情で目元がじわりと滲む。
その涙さえも慈しむように、嘉川はそっと舐め取ってー⋯

「ぅ、あぁっ!?」

優しい舌とは反対にやや乱暴にズボンをぱんつごとずらした嘉川は、親指の腹で先端をグリッと刺激する。

そして既に垂れてしまっていた我慢汁を竿に刷り込むように動かすと、にちゅにちゅという音が部屋に響きだした。

「待っ、音が⋯っ」
「気持ちいい証拠だろ、ほら、しっかり聞いて」
「――ひっ、み、みぃ⋯!」

いきなり耳穴へ舌を這わされ、部屋に響く水音と耳に直接響くその音が混ざり俺を刺激する。

「や、ほん⋯と、だめ、や、だめだめだめっ、かがわ、イく、イっちゃうから⋯っ」
「いいよ、ほら、望月」
「ァ、ァア⋯ッ、ッッ!」

嘉川の声に促されるように呆気なく果ててしまった俺は嘉川の肩に顔を埋めた。

そんな俺を一度強く抱き締めた嘉川は、俺を布団にうつ伏せに寝かせー⋯

「望月ごめん、堪んない」
「⋯へ?」

達した事で意識がぼんやりとしていた俺は、気付けばうつ伏せで尻だけをあげるような体勢になっていて。

「え⋯な、に⋯⋯、ッ!?」

穴を擦るように嘉川のちんこが往復する。
嘉川の我慢汁なのか、それともさっき俺が出した精液が垂れていたのか、にちゃ、と音を溢していて。

“挿れられる⋯!”

ドクンと痛いくらいに心臓が跳ね、無意識に逃れようと動くがしっかりと腰を掴んだ嘉川はそれを許してくれはしない。

「⋯ぁ、や⋯っ」
バクバクと早鐘を打つ心臓が苦しくて、俺はいつくるかわからないその痛みを想像し息を呑んだのだが。


「大丈夫、挿れないから⋯ちょっとだけ、貸して」
「⋯か、す⋯?」

ついていけてない俺を置いて、嘉川はそのまま俺の足の間にグッと腰を入れる。
俺の太股に挟まれた嘉川のちんこが、俺のを掠めるように何度も突いて。

「待っ、や⋯それ、だめだって、き、気持ち⋯い、からっ」
「俺も」
「や、またイっちゃ、イっちゃう、からぁ⋯!」
「ん、一緒に、一緒にイきたい、イって望月、ほらっ」
「だめ、やだぁ、触っちゃ、またでる、でる⋯っ」

腰を掴んでいた右手を滑らせ、腰の動きに合わせて扱かれた俺はあっさり嘉川の手の中で2度目の絶頂を迎えさせられた。

「ぁ、うぅ⋯っ、く⋯っ」
ビュクビュクと痙攣する嘉川のちんこを太股で受け止めながら、嘉川の荒い息が耳に当たる。
それがくすぐったく、そして何故だか心地良く。


“風呂、さっき入ったのにな⋯”
なんて少し見当違いな事を、ドロドロにされた自身の体を眺めながらぼんやりと考えていた。
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