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1.だからそれは俺のぱんつじゃありません!

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"まぁ、履いてみたら普通だな⋯"
レースがくすぐったいかと思ったらそんな事もなく、テロテロした生地はむしろ肌触りが良いくらいで。

「と言ってもまた履きたい訳じゃねぇけどな」
なんて呟きながら、俺はトイレに向かっていた。

本当なら講義と講義の合間にコンビニでぱんつを買い履き替えるつもりをしていたのだが。

"言っても俺、寝坊したせいで昼からの講義2コマしかねぇしな"
履き替えるまでもないか、と考えたのはその履き心地が悪くなかったからかまだ前日の酔いが残っていたからなのかーー⋯

念のため人の少ないトイレを選んだものの、特に周りを気にする事なく勢い良くジッパーを下げる。
そのまま用を足し終えたタイミングで、コツ、と足音が聞こえた。

"っと、急がなきゃ"
ハッとした俺は慌ててジッパーを上げようとして⋯

「ッ!?」

ギチッと上がらないジッパーに気付く。

"は!?なんで⋯、ってゲッ!レースとジッパーが噛んでやがるっ"

気を抜いて勢い良く下ろしたからか、それとも慌てて上げようとしたからか⋯
重ねられていたフリルに、しっかりジッパーが噛んでしまっていて上げることも下げることも叶わない。

「や、やばいやばい⋯っ」

迫り来るコツコツという足音に俺はどんどん顔色を悪くしてーー⋯


「⋯ぁ?」
「あ⋯はは、よ、よう⋯」
「あー、あぁ⋯」

とりあえずもう一度ションベンをしてるフリをしながら引き続きジッパーと格闘する。
そんな俺の横で黒に近い焦げ茶色の髪をしたその男はさっさとトイレを終えて。


"早く行ってくれ~~っ!"
なんて俺の願い虚しく、「⋯長くねぇか?」なんて話しかけてきた。

「そっ、そうかぁ?」
「つか顔色もなんか変⋯?」

さっさと出てってくれたらいいのに、今最も必要としていない親切心を出した奴は怪訝そうな表情を向けながら俺に近付いてーー⋯


「⋯学びに来てんのになんでそんなエロぱんつ履いてるんだ?」
"ぎゃ!見られた⋯っ!!"

唖然とした表情で大真面目にそう聞いてきた。

「ちがっ、違うんだ、これには深い事情がだな⋯」
「なに、望月ってそういう趣味なん?」
「⋯え、俺の事知ってんの⋯?」

さらりと名を呼ばれ、思わずキョトンとしてしまう。
そんな俺の顔をまじまじと見たその男は⋯


「他の奴が入ってきて困るのは望月じゃね?」
「あ、え!?嘘、誰か来ー⋯ちょ、おい!?」

ガシッと俺の腕を掴んだかと思ったら、一番奥の個室に連れ込まれた。

"⋯はっ!?え、え!?"
慌てる俺を奥にやり、無情にもガチャンと鍵を閉められたと思ったら、おもむろにしゃがみ俺の股間へ顔を近付ける。
逃げ場のないこの状況に焦った俺の額にじわりと冷や汗が滲んで⋯

「しっかり噛んでんな」
としみじみ言ったその男はカチャカチャと俺のぱんつ⋯には触れず器用にフリルだけ掴みジッパーから外しはじめて。

その突然の行動に焦ったのが恥ずかしいほど、真剣に噛んでしまっているジッパーと格闘するその男をぼんやりと眺める。

"本当に俺の事気遣って個室まで来たのか⋯"

ぱんつに噛んだズボンのジッパーを外すには、確かに今目の前の男がしているように俺の股間の前へしゃがみ込むしかない。
それは端から見ればフェラをしているようにも見える訳で⋯

"勘違いされなかったとしても、何してるのかと覗かれでもしたらこのエロぱんつが見られるし⋯"

なんだ、いい奴じゃん!なんて思った俺はされるがままそいつに自分のぱんつを任せていた。


そこまで時間はかからずジジッと音を鳴らしたジッパーは「取れたぞ」のかけ声に合わせゆっくり上げられて⋯

今度は勢いよくジッと音を鳴らし再び下げられる。

「いやっ、なんで!?」

閉められたのに再び全開にされた社会の窓に動揺した俺は反射的にそいつの頭を押さえた。
しかしそんな事お構い無しなそいつは唐突にふにっと俺の息子をぱんつの上から握ってきて⋯

「なぁ、これ勃ったらぱんつからはみ出んの?」
「し、らねぇ⋯っ!」
「なんで?望月のぱんつだろ」
「違⋯ッ!それっ、俺のじゃ⋯!」
「望月が履いてるんだから望月のだろ」

"だから俺のぱんつじゃねぇっつってんだろ!"
と内心怒鳴るが、絶妙な力加減でふにふにと繰り返し握られるせいで漏れそうになる声を堪えるしか出来なかった。

暫く握ったり離したりを繰り返していたそいつは、そのままゆっくり竿を上下に擦り上げる。
テロテロした肌触りのいい生地が滑り、俺のがどんどん大きくなるのを感じてーー⋯

「ははっ、こんなエロぱんつ履いて、しかも男に扱かれてこんな勃たしてんの?変態じゃん」
「変態⋯っ、じゃ⋯!」
「いやこんなぱんつ履いてる時点で変態だから」
「だか、ら⋯っ!このぱんつは俺のじゃ⋯⋯ひっ!」

すっかり完全に勃起させられぱんつからはみ出した俺のちんぽは、気付けばそいつの口の中に飲み込まれていて。

「ーーぁ、あ⋯っ!?」
「ひもちひーの?」

俺のをしゃぶりながら上目遣いで見上げるのが可愛い女の子なら最高だったのだが、相手はどう見ても可愛くない男。
それなのに生ぬるい舌が裏筋を舐め上げる快感からか俺のちんぽは萎むどころかどんどん熱を集めてしまって。

「ーーーッ、も、やめ⋯、んくっ」

呆気なくドピュ、とそいつの口に出してしまった。


"こ、こんなん賢者タイムじゃなくて絶望タイムじゃん⋯"
一気に青ざめる俺に見せつけるように、口の端から垂れた一滴まで舐めとったかと思ったらそのまま口角をニッと上げて。

「最近ご無沙汰?すげぇ苦かったけど」
「ーーッ!!!」

青ざめた顔色が一瞬で赤く染まるのを感じる。
早くこの場から⋯というよりそいつから逃げ出したくてトイレの鍵に手を伸ばすが、ドアにもたれるよう阻まれて。

「嘉川伊織」
「⋯⋯は?」
「だから、かーがーわ、いーおーり、な?」
「な⋯に」
「好きに呼んでよ」
「は?いや呼ばねぇし!」
「なんで」
「なんで!?って言われても⋯」

きょとん、とした顔をされ"え、俺が間違ってんの?"と混乱し思わず目線を逸らす。
そんな俺を何故か嘉川が抱き締めて。

「助けたご褒美が欲しいんだよなぁ⋯」
「⋯ご、ご褒美⋯!?」
「断られたら、俺フラれちゃったって皆に愚痴っちゃうかも⋯」
「ぐ、愚痴?お、おい、まさか変なこと言う気じゃ⋯」
「エロぱんつで誘惑されて、助けてついでにフェラまでしたのにご褒美すら貰えないのかぁ⋯」
「いや!おっ、お前が勝手に舐めただけっていうか⋯!」

俺を抱き締めながら嘉川の腕がゆっくり背中を撫でつつ下がり、いきなりギュッと尻を鷲掴みされる。

"!!?"

「ご褒美か⋯お仕置きか⋯」
ボソリと耳元でそう告げられた俺の背を嫌な汗が伝った。

"ご褒美かお仕置きかって⋯それ⋯"
「結末同じじゃねぇだろうな⋯っ!?」

焦りながらそう抗議する俺を何故か楽しそうに眺めた嘉川は、その整った口元で弧を描く。

「望月がその体で確かめてよ。それに同意してくんないと俺、誰になんて愚痴るかわかんねぇよ?」
「お、お、脅しかバカヤローっ!?」

耳元で嘉川の熱い吐息を受け止める。
クスクスと笑うその声が鼓膜に響き、俺の脳を痺れさせて。


"ーーって、だからそれ!俺のぱんつじゃねぇんだってばぁ~!!"
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