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最終話:愛していると言える関係

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「まさかこんなにあっさり受け入れて貰えるなんて思いませんでした」
「そうか? 俺は最初からそう予想していたが」

 部屋の扉が壊れてしまった後、そのままルミール様と一緒に公爵家へと帰ることになった。
 そして突然ルミール様と共に戻った私を、アドルフさんやシグネにイレナ、ミリーを含む公爵家のみんながまるで休暇から帰っただけのように「おかえりなさい」と迎えてくれたのだ。

“本当にいいのかしら……”

 閨係として娼婦を迎えるのと、妻として娼婦を迎えることは全然違う。
 外聞的に、これ以上の悪評が増えても落ちるものはないという理論は理解できるが、彼らにとっては仕える女主人になるのだ。
 公爵家の使用人だ。貴族出身の者だっているだろう。
 だからこそ反発があると覚悟していたのだが、実際戻って来た公爵家ではみんなが総出で出迎えてくれ、そして私が間借りしていた部屋の荷物がそのまま彼の寝室の隣、つまり『妻の部屋』へと移されていたのだ。

「あいつらだって、いやむしろあいつらの方が先に俺のサシャへ向ける好意の意味に気付いていたんだろう」
「でも」
「問題ない。それより今大事なのはこっちだろう?」
「んっ」

 それでもまだ不安を抱える私の唇を、噛みつくように塞いだルミール様。
 そのまま激しく口内に舌が入れられると、私の中の不安ごと食べられそうだと思った。

「昨日しなかっただけなのにな」

 ハッと荒い息を吐きながらぐちゅぐちゅと口内を掻き混ぜそんなことを呟かれると、グリッと固いモノが私の腹部に押し当てられる。

 「ッ」

 口付けだけでこんなになっているルミール様に、私の下腹部もきゅうっと反応した。

「今日は、こちらの部屋でしますか?」

 今私たちがいるのは、私の部屋だと案内されたルミール様の隣の部屋。
 この部屋と彼の部屋は扉一枚で行き来できるようになっているが、私ももう我慢できそうになかったのだ。

 そしてそんな私の気持ちを察したのか、ゴクリと喉を上下させたルミール様が私をそっと抱きかかえ、まっすぐベッドへと向かう。

“このベッドではシたことないわね”

 家でする時はいつもルミール様の部屋だった。
 娼館に帰ってからはいつも娼館だったので、ここにいる間使っていたベッドで改めて彼と、と思うと不思議な気持ちだ。

「考え事か?」
「あ、いえ」
「今は俺に集中して欲しい。やっと本当にサシャを手に入れたんだから」
「ひゃっ!」

 ムッと口を曲げ拗ねたような表情でそんなことを言ったルミール様の手がそっと私の胸を揉む。
 彼のコートを羽織って帰って来たが、その中に着ていたのは娼館でお客様を迎えるための薄い衣装だったので、彼の手のひらの感覚が強く伝わり私の体がビクリと跳ねた。

 胸を包むように両手で揉みながら、親指の腹で乳首を探すように服の上から何度も擦られる。
 布越しに与えられる刺激がもどかしくも気持ちよく、あっという間に私の乳首はツンと主張し出した。

「可愛いな」
「も、言わないで……っ」

 乳首を見付けた彼が執拗に先端を擦り、私の体に快感が走る。
 目を瞑ってそのもどかしい快感に委ねていると、服越しに彼が吸い付いた。

「あっ」
「もうコリコリになっている」
「ん、んっ」

 窄めた舌先で押し込み、ちゅうっと吸う。
 彼の唾液が服に滲み、胸の先端が濡れ透けていた。

「色まで見えるな」
「も、もうっ」
「はは、いつもより赤く見えるのはもう食べ頃ということか」

 肌に張り付いた布地越しにきゅっと摘ままれると、ジンと先端に痺れるような刺激が襲う。
 そのままくりくりと弄る彼の腕を掴んで睨むと、ふはっと吹き出したルミール様が私の服をそっと脱がした。

「からかったつもりはない」
「流石にわかってますよ」

 ムスッとした顔を作っていた私も、結局にこりと笑ってしまう。
 だって大好きな人との行為なのだ。これ以上に幸せな営みなどないだろう。

“しかも両想いだなんて”

 まさか娼婦の自分にこんな幸福が訪れるだなんて思わなかったので、その幸せを嚙みしめた。

「また考え事か?」
「ふふ、幸せだなって思っていたんです」
「そうか。俺もだ」

 私の回答に彼も微笑み返し、そしてゆっくり自身の服を脱ぎ捨てる。
 露になった彼の体は相変わらずがっしりとしておりしなやかな筋肉が美しいと思った。

 彼の腹筋をなぞるように触れた指先を動かすと、くすぐったかったのか彼もピクッと僅かに反応する。
 そんなところも愛おしい。

「悪戯は禁止だ」
「先に悪戯したのはルミール様ですけどね」
「だが、こうされるの好きだろう?」
「あぁっ」

 先ほどまでとは違い、直接乳首を舐められると燻っていた快感が一気に弾ける。
 そのままちゅぱちゅぱと舐められ、反対の乳首が指先で弾かれる度に私の体に快感が走った。

“音、響いてる”

 いつもより響いている気がするのは、きっと彼が私の羞恥を煽るためにわざと音を立てているからだろう。
 本当にいつの間にそんな技まで身に着けたのか。

 だが私はもう、彼が身に着けたこれら全ての練習相手ではなく本番の相手なのだと思うと胸の奥がくすぐったかった。

 「口付けがしたいです」

 胸へ愛撫している彼の頭をそっと撫でながらそう口にすると、パッと顔をあげた彼が優しい口付けをくれる。
 啄むように私の下唇を食み、唇同士を深く重ねたルミール様の舌が私の唇を割って侵入し、舌同士を擦りあわせた。
 そのまま扱くように動く彼の舌がもっと欲しくて必死に舌を伸ばしていると、彼の右手がそっと私の下腹部を撫でる。
 私の蜜口まで降りた彼の指先がくちゅりと音を溢れさせながら蜜壺へと挿れられると、浅いところをゆっくり掻き回された。

「あっ、はぁ……ん」
「いつもより濡れてるな」

 ぐちゅぐちゅと淫靡な音を響かせながら彼の指が何度も出入りし、私の弱いところを何度も擦りあげる。
 彼が指を抽挿する度に溢れる愛液を掬いながら解され、ドロドロに溶かされるようだった。
 
「ん、はっ、あぁっ」
「気持ちいいか?」
「気持ちい、気持ちいい……っ」

 甘く掠れた声で囁かれると、より一層刺激され私から嬌声があがる。
 囁きながら耳を食まれ、舌が耳穴を犯すと卑猥な水音が直接鼓膜を震わせ、上からも下からも響くこの粘液質な水音にゾクゾクと肌が粟立った。

「サシャ」
「あ、ん、ルミール、様?」
「今日はこのまま挿れていいか?」
「っ」

 情欲を滲ませた彼の瞳が懇願するように揺れ、思わずごくりと喉を鳴らす。

“このまま……?”

 いつもは挿入前に必ず避妊薬を使っていた。
 万が一が練習相手に起こってはいけないからだ。

“でも、もうその必要はないのね”

 だって私が彼の六番目の妻であり最後の妻になるのだ。
 まだ正式に書類を交わしたわけでもない、いわばただの口約束だけれど、それでも不安はひとつもなかった。
 いつから私はこんなにも彼を信頼していたのだろう。

 それに私も、望んでいるから。

「……はい。このまま全部、私にください」

 こくりと頷くと、じわっと彼の頬が赤く染まる。
 そしてきっと私の顔も赤くなっているだろう。

 重ねるだけの口付けをし、私のナカから指が抜かれる。
 そしてすぐにもっと熱くて固い彼のモノが、ぬち、とあてがわれた。

「んっ、あ……!」

 愛液を溢れさせながらぬぷりと挿入され、ゆっくりと奥まで埋められる。
 ズプズプとナカを抉りながら深く埋められると、その圧迫感に思わず息を詰める。

 何度も抱かれたけれど、この瞬間は慣れそうにない。それだけ彼のモノが大きいというのもあるのだろうが。

「くっ、サシャのナカ、熱くうねって……っ」
「あ、あんっ」

 ゆっくり抽挿を開始され、ナカを彼のモノが擦り動く。
 奥を貫かれると自身の膣壁がきゅうきゅうと彼に吸い付いているのを感じた。

「サシャ、サシャ……!」

 ばちゅばちゅと子宮口を何度も突き上げられ、その度に私の視界の奥が白く染まる。
 弾けそうな快感に脳が痺れたような快感がごちゃ混ぜに私を襲い、私はその快感を少しでも逃がそうと必死に背を仰け反らし耐えていた。

「全部俺のだっ」
「ひ、あぁあ!」

 背を仰け反らせたことでぶるんと大きく揺れた胸に彼が吸い付き、軽く歯がたてられる。
 同時に奥まで貫かれると、溜まっていた快感が一気に弾け視界の奥に星が散った。

「あぁ……っ!」
「く、そんなに締められると……!」

 ナカで彼のモノがびゅくりと熱いものを吐き出したことに気付く。
 じわじわと下腹部内に熱いものが広がり、私の体と心を満たすようだった。

「ルミール様……」

 はぁはぁと荒い息を必死に整えながら愛しい彼の名前を呼ぶと、少し眉尻を下げた穏やかな表情の彼が優しく微笑む。

「愛している、サシャ」
「私もです」
「だから、このままもう一回いいか? まだ足りないんだ」
「……、え」

 にこりとした笑顔を向けられつつ告げられたその言葉に、私の表情が固まった。

「も、もうですか? 今達したばかりというか」
「だが、俺のはまだこうなんだ」
「ひんっ」

 まだ埋められたままだった私の腰を押さえ、ゆっくりと腰が揺すられると、彼も達したはずなのにむしろさっきよりも質量を増した彼の昂りが私のナカを抉った。

“ど、どうして!?”

 確かに彼が娼館に通ってくれていた時は、私が他の客のところにいかないように複数回したけれど、抜かずに何度も、ということは無かったはずだ。
 というかそもそも、もう私が他の客を取ることなどないのだから、そんなに頑張る必要なんてないと思うのだが――

「サシャ、頼むよ。苦しいんだ」
「あ、うぅ……」

 誘うように情欲をちらつかせながらそう懇願するように見つめられると、もう何も言えない。
 だって仕方ないのだ。愛しい未来の旦那様がお望みなのだから。

「す、少しだけ、ですよ?」
「あぁ。約束しよう。俺基準の少しになるが」
「えっ、あ、あんっ」

 若干聞き捨てられない不穏な単語に震えつつ、私は再び彼の熱を受け入れたのだった。


 ――きっとこれから先、私たちには色んな困難が待っているのだろう。
 それは想像するに難くない。

 けれど、きっと私たちなら乗り越えられるという確信がある。
 だって私たちが二人で歩む人生は、今からはじまるのだから。
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