【R18】悪徳公爵の閨係~バツ5なのに童貞だなんて聞いてませんッ!~

春瀬湖子

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16.この痛みを忘れない

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 デートを切り上げ公爵家へ戻った私たちが真っすぐ向かったのは、ルミール様の寝室だった。
 
 道中は私の手を握り歩幅も大きくついていくのが少し大変で、きっと貴族のエスコートとしてはあまり好まれないだろうと思う。

 もちろん私が転ばないようにしっかり手を繋いでくれていたし、歩く速度も若干早いとは思ったが決してついていけないスピードではなかった。
 彼の足の長さならもっと速度が出るはずなので、私のことを気遣う気持ちは忘れてないらしい。

“むしろ、それだけ余裕なく求められてるって思うと嬉しい、かも”

 師としては注意すべきところだったのかもしれないが、高鳴る胸が抑えられず結局そのことを私が指摘することはなかった。


 そうして戻った寝室。
 荒々しく部屋の扉を閉めたルミール様に抱き寄せられて口付けられる。

「ん、んんっ」

 ちゅくちゅくと互いの舌を絡ませると、すぐに私の体から力が抜けてカクンと膝をつきそうになった。

「ここは危ないな」
「ひゃっ!」

 私が床で膝を打つ前に抱き上げたルミール様が、そっとベッドへと私を横たえる。
 この部屋に入るまで少し乱暴なくらい性急な動きだったのに、まるで壊れ物のようにそっと寝かせられて胸が高鳴った。

“今から最後までするんだわ”

 さっきの余韻でまだ体は火照ったままの私は、少しの不安とそれ以上の期待でそっと彼を見上げる。
 そんな私と目があったルミール様は、部屋に入った時とは違い軽く啄むような口付けをくれた。

「ルミ……んっ」

 ちゅ、ちゅと唇同士が合わさり、下唇が彼の唇で食まれると、今度は舌が唇をなぞる。
 だが焦らすように口内へは侵入せず、もどかしい刺激だけを私へ与えた。

“どうして”

 もっと欲しいのに。深く深く彼の舌で犯されたいのに。

 彼からの熱を求め焦れた私が舌を伸ばし、彼の唇を割ると、まるでそれを待っていたと言わんばかりの勢いで舌が吸われる。
 舌が扱かれ、唾液を絡ませ合うと僅かに満たされた。

“でも、足りない”

 もっと欲しくて私も夢中で舌を動かす。
 彼の首へ回した腕に力を入れ体をぴったりと引っ付けると、その密着している体の隙間を縫うように彼の手のひらが動き私の胸をゆったりと揉んだ。

「あっ」
「脱ぎ方を見せて貰ったからな。学習したぞ」

 ふふん、と得意気に笑ったルミール様は、その宣言通り私の服を難なく脱がす。

“この服の脱がせ方を覚えたって仕方ないのに”

 これは庶民の服。
 きっと彼の六番目の花嫁は着ない服。

 だがその事実は指摘しなかった。
 娼婦ではない、私の女の部分が、彼に脱がされることを悦んでいたから。

「あぁ、本当に柔らかいな。いくらでも揉んでいられそうだ」
「最初は触れることすら躊躇っていたのに」
「良さを教えたのはサシャだろう」

 ふっと互いに小さく吹き出し再び唇が軽く重なったと思ったら、ルミール様の口付けが顎へ滑り首に舌が這わされる。
 そのまま鎖骨を甘噛みされ、胸の上部に強く吸い付かれるとチリッとした鋭い痛みが私に走り、痕が残された。

“きっとこの痕が消える頃にはもう私のことは忘れてしまっているわね”

 鬱血痕の痛みよりも胸の奥がズキズキと痛い。
 だがそのことに気付かれないようなるべくゆったりとした手つきで彼の髪を撫でた私は、くすぐるように指先で彼のうなじにも触れた。

「ッ」

 つつ、と首筋をなぞるとルミール様がピクッと反応し息を詰める。
 感じさせられたことが悔しかったのか恥ずかしかったのか、ニッと口角を上げて私を射貫くように見つめると、私の胸へとむしゃぶりついた。

「ひぁっ!?」
「さっきまでの余裕はどこへやった?」
「ん、やっ、余裕、なんて……っ、あぁ!」

 ぢゅっと強く吸われ、口内で乳首が弾かれる。
 反対の乳首も彼の指先が先端を摘まみ、捏ねられた。

「あっ、つよ……っ」
「だが反応がいい。気持ちいいのか?」
「ん、きもち、い……!」
「本当に可愛いな」

 私の胸元でクスリと笑うと、その吐息が乳首を掠めゾクリとする。
 舌と指で蹂躙されていたせいか、敏感になった先端が更なる刺激を求めふるりと揺れた。

「サシャ」
「あん、ルミール、さま」
「サシャ、サシャっ」

 私の名前を何度も呼びながらちゅぱちゅぱと乳首を吸われ、ピンとした尖りが指先で押し込まれ何度もカリカリと引っ掻かれる。
 もう何度も経験したこの快感に私が体を震わせていると、彼の手のひらがそっと私の下腹部へと触れた。

「……最初は、指で優しく」
「ひ、ぁ……!」

 私が書いた指南書の通りに優しく彼の手が動く。
 最初は蜜口を撫でるように、徐々に浅いところを擦り、そして蜜壺へと指が埋められた。

「ナカに触れる時は解すように時間をかけて奥に触れる」

 ぬぷ、と愛液を溢れさせながら口にした言葉の通りに指が埋められ、膣壁が指の腹で擦られると私の奥に快感が蓄積した。

 ゾクゾクと体を震わせ溜まる快感を逃がそうと体を捩る。
 だがのし掛かられているせいで逃げることは叶わず、気付けば二本に増えていた彼の指がナカでバラバラに動いた。

「ひ、あぁっ、んっ」
「次は舌で、だったな」
「……ぁ」

 グッと私の足を左右に大きく開き、彼の顔が私の下半身へと近付くのをただ見つめる。
 見られるのが恥ずかしいという気持ちと、それを求め書き記したのが自分だという事実に目が離せない。

“舐められちゃう”

 そう思った瞬間、蓄積した快感が一気に弾けビクリと腰が大きく跳ねた。

「――、――?」

 何が起きたか自分でもわからず呆然としていると、そっと彼の指が滴った愛液を掬う。

「達した、のか? 俺に舐められることを想像して?」
「え、あ……っ」

“そんな、私……!”

 指摘されたことで遅れて理解し、沸騰しそうなほど全身が熱くなった。
 あまりの羞恥に視界が滲む。その滲んだ視界のその先で、ルミール様の少し薄く形のいい唇が三日月型に歪むのが見えた。

「あぁ。期待には応えよう」
「ひ、あッ」

 れろ、と彼の舌が蜜口を舐め上げ溢れる愛液がちゅうっと吸われる。
 指と一緒に蜜壺へと舌が挿入され、二種類の刺激が一度に襲い私は思い切り背を仰け反らせた。

「やっ、だめっ! それ、だめぇ……っ!」
「ダメには見えない、気持ちいいな?」
「やっ、こわいっ、気持ち良すぎて、こわいのっ」
「――ははっ、可愛い、よがる姿が蠱惑的で美しいな」

 堪らない、という呟きが聞こえ愛芽が舌で押し潰されると、舌と指の激しい愛撫でプシッと私から潮が吹いた。
 だが、恥ずかしいと感じる前にカリッと愛芽が甘噛みされ、私は小さな悲鳴を上げる。

 じくじくと頭が痺れ目の焦点が合わない。
 ビクッ、ビクッと痙攣したように体が跳ね、呆然としながら天蓋へと視線を彷徨わせていると、ぬち、とした熱く固いモノが蜜口へとあてがわれた。

「あ……」
「サシャ、いい、か?」

 ついにこの瞬間が来たのだと、ドクンと心臓が大きく跳ねる。
 それと同時にきゅうっと下腹部が伸縮し、彼のモノを欲しているのだとそう知った。

「……はい、もちろんです」

 こくりと頷くと、彼の喉が上下する。
 私も彼と同じく少し不安で、そしてそれ以上に今を待ち望んでいたのだろう。

 自然と頬が緩む。そんな私へとそっと口付けを降らせたルミール様が、ゆっくりと私のナカへと腰を進めた。

「あ、はぁ……ッ」

 ぐぷ、と押し返す膣壁を抉るように押し広げながら挿入される。
 あれだけ時間をかけて解したのに、裂けるような痛みに思わず両目をぎゅっと瞑る。

“痛い……!”

「すまない、一度抜」
「ダメッ!」

 痛みを堪えていることに気付いたルミール様が体を起こし、私のナカから出ようとするのを体にしがみついて拒否をする。

「痛い、です。はじめてですから」
「サ、シャ?」
「でもそれ以上に嬉しいです。やっと、貴方と繋がれて」

 私の言葉を聞き、抜こうとしていた体がピタリと止まる。
 進むでも抜くでもなくじっと見つめる彼の瞳に促されるように、私はゆっくりと口を開いた。

「私がそう思うのは」
“私がそう思うのは” 
「ルミール様が、はじめてを大切にしてくれたから」
“ルミール様を、いつの間にか好きになっていたから”

 口にしたい、けれど口に出来ない娼婦失格の言葉を飲み込みもうひとつの本音だけを口にする。

 はじめてを気遣い、傷付けないよう大切に触れてくれた貴方だからこそ、純潔を捧げたいと思ったことも本当だった。

「ゆっくり、ちゃんと全部、挿入してください」
「っ、サシャ……!」
「はぅっ」

 ぬぷぷ、と再びゆっくりと彼のモノが奥へと進み私の心と体を暴いていく。

 不器用で、でもだからこそ真面目で真っ直ぐなところが好ましいと思っていることだけはバレないように、私は彼の体にしがみついた。

“嘘、まだ挿いるの……!?”

 ずぷずぷと深く貫かれ、その圧倒的な質量と長さに愕然とする。
 これ以上奥なんてないと思うほど深く突き刺され、私は息を詰めた。

「動いて、いいか?」

 ぐっぐっと行き止まりに先端を押し付けるようにしながらそう聞かれ、混乱したまま思わず頷く。

「ひ、あっ!?」

 するとゆっくりと全て抜けるギリギリまで腰が引かれ、そして一気にぱちゅんと奥まで貫いた。

「あっ、あぁっ」

 ナカが抉られ、ばちゅばちゅと隠微な粘り気のある水音が部屋へと響く。
 痛みを塗り替えるように快感が与えられ、私はもう喘ぐしか出来なかった。

“苦しい……っ”

 はじめて受け入れるその圧倒的な異物感は違和感として私を襲い、痛みも苦しさも無くならない。
 けれど汗を滲ませながら必死に腰を振るルミール様を見ると言い表せないほどの幸福感が私の中に溢れるようだった。

“幸せ”

 痛くて苦しいけれど。
 でもこの痛みを忘れないようにもっともっと刻んで欲しい。

「るみ、る……さま」
「サシャっ」

 彼へと手を伸ばすと、その手にすり寄り彼の頬が触れる。
 手を伸ばせば触れられる、今だけの特権。
 ねだれば与えられる口付けに夢中になりながら嬌声を上げ、打ち付けられる腰に体を委ねた。

 何度も何度も抽挿され、その度にゾクゾクとした快感が私の体を駆け巡る。
 蓄積する快感に翻弄されよがるしか出来ない私を、彼の太い腕が強く抱き締めると最奥を穿つように深く貫かれた。

 もうこれ以上は挿入らないのに、もっと深くと更に奥までグリグリと押し付けられればその快感で視界がチカチカとする。

 もう一度ギリギリまで抜かれた剛直が再び私を貫いた時、視界の奥に舞う星が一気に散った。

「――ッ!」
「く、サシャ……っ」
「あ、あぁあ……!」

 私のナカで彼のモノがびゅくりと震え、熱いものがじわりと広がる。
 脱力したようにはぁはぁと荒い呼吸のルミール様が私の体に体重をかけると、しっとりと汗ばんだその重さに胸がきゅうっと締め付けられた。
 

“――これでこの仕事も完遂だわ”

 元々ほぼ身一つで来たので、明日の朝にでもノースィルへ帰れるだろう。
 思えば長いようで短い、あっという間な時間だった。

「これ以上長引かなくて良かったわ」

 ポツリと溢れたその呟きはルミール様には聞こえなかったのだろう。
 何も反応が無かったことに安堵と、そして僅かな寂しさを感じながらゆっくりと目を閉じた。
 

 ここにいる時間が長くなれば長くなるほど、心が締め付けられただろう。
 胸がズキリと痛むのは、きっと破瓜の痛みと混同してしまっているからだ。

 そう思えるうちに帰れることに安堵する。

“まだ大丈夫。きっとこれからはただの娼婦として生きていけるから”

 これで、終わり。
 

 ――こうして、私は初仕事を終えたのだった。
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