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おまけ:if それはいつかの遠い未来にあるかもしれない新しい何か

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「いつかリザ様達の子供と私達の子供が産まれたら、婚約者にするのも素敵ですわね」

「それは確かにとても素敵ですが、ちょっと身分が合わない気がしなくもないかなって思います」

「そんなことありませんわ!ファクマ殿下には既に男の子が二人と女の子が一人のお子がおりますし、もし私達の子が男の子であったとしても継承順位は低いです。それにアリアデール様は聖騎士ですもの。もうすぐ副隊長に昇進も予定されておりますし⋯」



そんな話を王子妃になったダージリン様としていたのはいつ頃の話だったか。



「あれであの2人はロマンチストだったからな。運命の夫婦だったか?」

「赤いリボンで結ばれてたもんね、物理的に」


卒業と共にアリアと結婚した私は、アリアの仕事に合わせてファルビア領には帰らずそのまま王都に残っていた。

今では副隊長どころか隊長職を与えられ、かつ聖人としての仕事もしているアリアは望めばかなり大きな邸に住めるのだが⋯
元々貧乏男爵家と貧乏子爵家育ちの私達には気が重く、執事やメイドなどは雇わず二人で仲良く暮らしている。


学園時代の繋がりもまだしっかりあり、私はよく王城でダージリン様とお茶をするようになっていた。
なんと頻度はほぼ毎日。

と、言うのも。


「リザ!今日の体調はどうだった?」
「アリア、お仕事お疲れ様!もう悪阻も治まってるしそんなに過保護にならなくても大丈夫だよ⋯?」
「まぁいいんじゃないか?ダージリンも楽しそうだしな」
「私は二人めですが、リザ様ははじめての妊娠ですもの。先輩として側におりますわ」


実は私とダージリン様は現在妊娠中だったりするのだ。

職場が近いこともあり、またはじめての妊娠で一人家に残しておくのが不安だというアリアと、二人めで落ち着いているので話し相手になって欲しい(という理由をつけて心配してくださっている)ダージリン様とミリアン殿下の希望を叶えるという形で、有り難くもゆっくりぬくぬくさせていただいていた。



そしてとうとうはじめての出産の時が来て。
不安もあったけど、何があっても私の治癒がありますわよ!と自身も出産してまだまもないダージリン様まで側に控えてくれるというかなりのVIP待遇で出産に望んだ。

そして無事に元気な女の子が産まれて、アリアが泣きながらありがとうを連呼するのを見て私までつられて笑い泣きしてしまって。


本当に本当に穏やかで幸せな毎日。
子育てで悩む日も、親子喧嘩なんかをする事もあるかもしれないけど、どの悩みもきっと幸せなものだから。


だから、まさかこんな悩みを持つ日が来るなんて思いもしなかったのだ。




クーゲル様は卒業後モスコット領に帰り、現在は侯爵家を継いでいた。
相変わらず百合に対する情熱は持っているが、それはそれ、これはこれ。としっかり愛妻家になっていて、今年サテラオス魔法学園に入学する息子がいる。

入学手続きで王都に行くので久々に会わないかと連絡が来たので、アリアの仕事の休みに合わせて家に招くことにした。


「リザ達の子供は来年サテラオス魔法学園に入学だったな?」
「ストライクール夫人って呼ぼうな」
「えぇ、クーゲル様の息子さんは今年でしたね」

「ミリアン殿下とダージリン王子妃の二人めの息子も来年入学だな」
「えぇ、年齢も入学も同じですねって話しておりましたの」

「メルベルク公爵家の息子は今年入学した事を知ってるか?」
「そういえばアルマンがそう言ってたな」

アルマン様は卒業後、噂の通りダージリン様の生家のメルベルク公爵家へ養子に入っていた。
メルベルク公爵家にはダージリン様しか子供がおらず、またミリアン殿下の元へ嫁いだのでアルマン様が次期公爵の予定だ。

「あの、デジール先生って⋯」
「デジール先生は今も先生をされてるな。んでもって弟が今年度から新任教師として来たらしい」
「先生も⋯?」


そこまで聞いて、ふと嫌な予感が頭によぎる。

「⋯⋯まさか」
「気付いたか」
「え、お前に出した茶が実は三日前のだってことバレた?」
「アリアそれどこに置いておいたの」
「そのお茶の話は後で改めてゆっくり話そうか?」


相変わらずアリアのクーゲル様への態度がなかなか辛辣だが、これは師匠に対する所謂ツンデレと認識しているので置いておく。


それよりも。
『輝きのアリア』の攻略キャラ達の子供や関係者が全員同時期に学園に⋯?
あのゲームには続編はなかったとは思うんだけど、私が死んだあとに出てたりした⋯?


「しかも、リザ達の子供は娘だったな」
「そして他の子はみんな男の子⋯?」
「⋯⋯⋯えっ」

遅れてアリアが何かをやっと察する。


「ヒロインの娘が次作のヒロインになるというのは定番の展開だと思わないか?」
「まさか、まさかうちの子、ヒロイン⋯⋯?!」


少し面白そうに目を細めるクーゲル様と、焦る私。
そんなまさかうちの子が?!
でも偶然にしてはあまりにも重なりすぎてる気がしなくもない!


そんなとき、話を聞いてハッとするアリアが名案を思い付く。

「そういえば、ミリアン殿下から娘の婚約話をいただいていた!婚約を受けたら王子殿下の婚約者だ。ヒロインとやらには該当しないんじゃないか?」
可愛い娘は誰にもやらんと流しに流しまくっていた婚約話を思い出したらしく、変なことに巻き込まれるくらいならとそんな提案をしてくるが。


「「王子殿下の婚約者ってそれ、悪役令嬢ポジションだから!」」

私とクーゲル様の声が揃ってしまった。


婚約を受けないとヒロインフラグが立って、婚約を受けたら悪役令嬢フラグが立つとか?!


そんなことある⋯?!
焦る私に、少し落ち着いたアリアが声をかける。

「まぁ、さっきはああ言ったけどさ。きっと自分の力でなんとかするよ」
「でも⋯」
「だって、俺とリザの子だしな!」


そう断言するアリアに私も落ち着いてきて。

「そうだね、あの子なら。あの子達ならきっと大丈夫。」

助けてって言われたら何でもしてやるけどな、と笑うアリアを見てクーゲル様も穏やかに笑っていた。



もしまたゲームのようなことがあったとしても。
私達はここで生きてるから。
ここが私達の現実だから。


私達の子供達も、とびっきりの幸せを掴めますようにーー⋯
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